中居会見 日テレ圧勝は何故~明暗はふだんの放送と当日の編集方針から~

(写真:アフロ)

元SMAPのリーダー中居正広(47)の、ジャニーズ事務所退所と個人事務所『のんびりな会』設立が、21日の会見で発表された。

4時に始まった会見は、民放4局で6時30分から放送された。

各局同じような内容だったが、視聴率では明暗がわかれた。

成否の鍵は何だったのか、各種データから考察してみた。

世帯視聴率の明暗

中居会見を放送したのは、日本テレビ『news every.』・テレビ朝日『スーパーJチャンネル』・TBS『Nスタ』・フジテレビ『Live News it!』の4局。

各局に共通したのは、会見放送の直前にCMを入れた点。会見をなるべく長く、そしてCMを入れないようにして、視聴率アップを狙ったのである。

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会見ネタが最も短かったのは17分ほどのテレ朝。

関東地区で2000世帯5000人の視聴動向を調べるスイッチ・メディア・ラボによれば、世帯視聴率は0.4%しか上昇せず、会見ネタをやめて以降で1%以上を失った。

会見効果がほとんどなかったのは、19分放送したTBS。

会見に入っても数字はほとんど上がらず、テレ朝が会見ネタをやめ、日テレがCMに入った47~48分に0.5%上昇したが、49分でやめてしまったので、すぐに1%ほど失った。

日テレとフジは、6時半から番組の最後まで続けた。

その結果、フジは1.5%数字を上げた。4.9%から6.4%なので3割持ち上げた計算だ。

日テレは11.3%で会見が始まったが、1%強しか率を上げていない。途中2回もCMがあった影響が大きいが、他局にダブルスコアの差をつけている余裕とも映る。

高い視聴率の中でたくさんCMを露出させたので、広告ビジネスとしては最も成功したといえよう。

ちなみにNHK『首都圏ネットワーク』は、ニュースフラッシュの中で1分ほど触れただけ。

そしてテレビ東京は、アニメを放送し続け、唯一中居会見には全く触れなかった。他局とは一線を画す“逆張り”テレ東らしい編成だった。

前四週平均との比較

ではこの日の見られ方は、ふだんとはどう違っていたのだろうか。

業界では前四週平均と比較することで、その日の視聴率を評価することが多い。これで見ると、中居会見はやはり絶大な力を持っていたことがわかる。

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日テレは、ふだんの1割増で会見が始まった。そして最後は2割増まで上げた。

フジは5%増で始まったが、途中CMを1回で済ませ、ほぼ30分まるまる放送したおかげで、最後は3割以上も視聴率を押し上げた。

テレ朝はなんと3割以上高く会見放送が始まった。

会見自体は4時から始まっていたが生中継はされず、SNSでは「会見はまだか!!」「待ち遠しい!」などの声が飛び交った。しかも会場がテレ朝という情報が出回っていたので、早くからテレ朝にチャンネルを合わせて待っていた人が多かったようだ。

しかも放送が始まると、テレ朝だけふだんより4割増と急伸した。飛び交ったネット情報の効果だろう。

ただし17分ほどと最も会見ネタが短かったために、その後は日テレやフジに後れを取ってしまった。

ちなみに会見ネタを放送したにもかかわらず、TBSはふだんより数字を失った。

去年4月の改元特番・7月の参院選特番・10月の台風19号報道でも、同局は振るわなかった。平時でも『あさチャン!』『グッとラック!』『NEWS23』などの報道・情報番組の数字がいま一つ伸びない。送り手の論理と視聴者の生理に乖離が生じている可能性がある。

さらに中居独立を1分ほどで済ませたNHKも、ふだんより視聴率を落とした。

ただし同局は、『NHKニュース7』では全く触れず、『ニュースウオッチ9』でも40秒ほど触れただけ。新型コロナウィルス問題が深刻となる中、芸能ネタを厚く放送する余裕はないというニュース判断なのだろう。

誰が中居会見に注目したのか?

では、中居正広のジャニーズ事務所退所会見は、誰が注目したのか。

最も反応したのはFT層(女性13~19歳)。会見が始まるとみるみる個人視聴率が上昇し、最終的にはふだんより6割以上も高くなった。

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中居はすでに47歳なので、FT層は熱狂的なファンというわけではないだろう。それでも会見で数字が急伸するとは、やはりジャニーズのネタは若い女性に強いということだろう。

ちなみにMT層(男性13~19歳)も、FT層と似た軌跡を描いた。SNSでの話題で、10代は男女ともに同じように反応したようだ。

F1層(女性20~34歳)は、会見が始まると同時に、FT層と同じペースで上昇を始めた。

ただし上がり方は2割強まで。この時間の在宅者は、FT層ほど多くはないということだろう。

一方F2層(女性35~49歳)は、最終的にはF1層と同じだけ上昇した。

ただし会見が始まって十数分を経てようやくF1層に追いつく。SNSの伝播力が、両世代で差があるということだろうか。

女性50歳以上の反応は、若年層より鈍い。

芸能ネタには若年層ほど敏感ではないようだ。F3-層(女性50~64歳)で1割強の上昇。しかも20分ほどでNHKに切り替える人が少なくなかった。

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F3+層(女性65歳以上)も1割弱上がったが、17~18分以降NHKに移った人がたくさんいた。年齢が上がると共に、芸能ネタへの関心が薄くなり、NHKファンが多いようだ。

7時からの『NHKニュース7』へなだれ込むF3+層の多さは驚異的と言えよう。

局の明暗はどこから?

では中居会見を分厚く放送した民放4局の明暗は、どこから来ているのか。

まず大前提となるのは、ふだんの夕方ニュースの見られ方。

当日成功した日テレは、実はふだんから若年層によく見られている。FT層で比べると、TBSやフジの5倍以上の個人視聴率となる。中高年に強いテレ朝に至っては、この層にはほとんど見られていない。

こうした平時の視聴習慣は、特番やビッグニュースに対して大きく影響する。

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次に放送の仕方。

同じ会見ネタゆえ、編集の仕方で大きく成否がわかれたとは言い切れない。ただし尺の長さは、全体の数字に影響したといえる。

テレ朝は会見の場を提供したことで大きく数字を上げたが、芸能ネタに関心の薄い高齢者に配慮したのか、最も短い尺だった。結局これが、後半での低迷につながった。

日テレは、この種のネタの扱いが決まっているようだ。

去年7月にジャニー喜多川氏が亡くなった際も、情報解禁の夜11時30分以降をほぼ同ネタで構成した『news zero』も高い視聴率をとった。今回はそれとほぼ同じ方式で、安定した数字をおさめている。

実は同局は90年代から、大きく注目される芸能ニュースを分厚く放送する勝利の方程式を確立している。こうした定評のある同局ニュースは、今回のようなビッグニュースがあると、自然に視聴者が集まってくる。

これも編集方針が多くの視聴者に認知され、結果として有事の際に威力を発揮するようだ。

今回でいえば、一番長く放送したフジが、最後の5分で大きな効果をあげた。

49分でやめたTBSとの明暗は、ここで明確にわかれた。

逆にこうしたネタへの方針が視聴者に伝わっていないTBSは、せっかく会見ネタを特別に編集しても、ふだんより数字を下げてしまっている。

報道の使命優先か、広告収入重視か、姿勢がはっきりしていない分、有事の際に結果が出ないようだ。

以上が中居会見の夕方ニュースの見られ方の概要だ。

局による明暗に対して、各局が今度どう対応するのか注目したい。