“一挙放送”の時代~逆風にさらされたTVドラマに復権の兆し~

この年末年始は、総集編を含め、一挙放送のドラマが13本もあった。

中でもTBSは最多の6本を編成し、“ドラマのTBS”復権を目論んでいるようだ。

ネットフリックスやHuluなどの定額制VODサービスが普及し、ビンジウォッチング(シリーズドラマの一気見)が定着してきたこともある。

働き方改革の影響で、この時期の番組制作を減らしたい局の事情もあるようだ。

13本の見られ方から、ドラマの新たな可能性を考える。

『逃げ恥』が断トツ

関東地区2000世帯5000人の視聴動向を調べるスイッチ・メディア・ラボのデータによれば、世帯視聴率・個人視聴率・世帯占有率のいずれもトップだったのは、新垣結衣主演『逃げるは恥だが役に立つ』。

12月28日(土)午前9時半から7話、29日(日)午後1時から4話を一挙に放送した。個人視聴率は3.8%・世帯6.9%・占有率25.5%。それぞれ2位のドラマに大差をつけた。

このドラマは3年前の放送で、今回の一挙放送の中では一番古い。にもかかわらず断トツ首位とは、同作の人気ぶりがよくわかる。

放送当時、初回は10.2%と平凡な数字だった。

ところが2話以降、一度も数字を下げることなく右肩上りを続け、最終回が初回の倍の20.8%。全話平均も14.6%と、14年春に設けられたTBS火曜ドラマ枠の中では空前絶後の記録となっている。

3年を経ても圧倒的に強いのは、世界観が強烈で斬新だからだろう。

派遣切りなど現実がままならない高学歴女子が主人公。

その相手は「プロの独身」を自認する中年童貞。そんな二人が、夫=雇用主・妻=従業員という契約結婚をするが、実際には徐々に互いを意識しだす“妄想女子とウブ男”という展開だった。

結婚は「好きの搾取」という鋭い批評が飛び出すなど、コメディなのに考えさせられる名作だった。

TBSの独壇場

19年の話題作『3年A組』(主演・菅田将暉)と、現在進行形の朝ドラ『スカーレット』(ヒロイン・戸田恵梨香)を除くと、上位はTBSの6本が独占した。

やはり19年に評判になった『きのう何食べた?』(主演・西島秀俊と内野聖陽)、『これは経費でおちません』(主演・多部未華子)、そして大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(主演・中村勘九郎と阿部サダヲ)などを抑えて、圧倒的にTBSドラマが見られた格好だ。

2位の『義母と娘のブルース』(主演・綾瀬はるか)、3位の『ノーサイド・ゲーム』(主演・大泉洋)は、午前や午後の良い時間の放送だったために、高視聴率だったのは理解できる。

ところが『アンナチュラル』(主演・石原さとみ)、『99.9-刑事専門弁護士-』(主演・松本潤)、『大恋愛~僕を忘れる君と』(主演・戸田恵梨香)は、早朝深夜の放送にもかかわらず、午前・午後の見られやすい時間帯に放送した『きのう何食べた?』『いだてん』『ひよっこ2』(主演・有村架純)を大きく引き離した。

TBSドラマが、如何に一気見に向く、吸引力の強い作品なのかがわかる。

TBSの戦略

実は年末年始のドラマ一挙放送は、日本テレビの『箱根駅伝』対策から始まった。

毎年視聴率30%前後をとってしまい、その裏に新作のバラエティをぶつけても、制作費に見合うセールスにならなくなったのがきっかけだった。

各局ともバラエティの再放送か演芸中継でお茶を濁すようになったのである。

確かに今年2日と3日の午前も、テレビ朝日『ポツンと一軒家 新春傑作選スペシャル』のように、傑作選・スペシャルなどを体裁とした再放送が並んでいる。

その中でTBSは、“ドラマのTBS”という局のカラー・個性を打ち出す意味で、10時間超の一挙放送に挑戦した。

結果は視聴者やスポンサーに好評だった。

再放送という消極策でなく、TBS前年の“No.1ドラマのアンコール放送”という付加価値をつけて、広告営業で成果を上げられるようになったのである。

そして年始から年末にも波及して、一挙放送は年末年始の二本立てがTBSの定番となった。

もう一つ、働き方改革という意味もある。

年末年始はカレンダーの関係で、ワイドショーなどを放送しなければならないことがある。ところがドラマの一挙放送を編成することで休日を確保できる。スタッフの休養も、重要な経営課題となった時代ならではの対応である。

一挙放送にも表れる各局の特徴

TBSのやり方は、日テレにも波及し始めた。

年末の3日間、『3年A組』の一挙放送を試みた。

結果は全13本中4位と、まずまずの成績だった。原作ものが多い民放の連続ドラマの中で、オリジナル作品で内容的にも視聴率的にも“2019年No.1ドラマ”の評価がある同作品の面目躍如だろう。

バラエティが強い日本テレビにあって、局内でやや肩身の狭いドラマ班にとっても、他局ドラマ関係者にとっても、さらに言えばオリジナルドラマの復権にとっても、朗報という意見が関係者の中にはある。

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実は同作品、放送の時にもC層・T層とその親世代によく見られていた。

一挙放送の視聴者を、各層の含有率を算出し13ドラマを序列化すると、やはり同局が掲げるコアターゲット(49歳以下)に見事に刺さっていることがわかる。

このデータで見ると、『3年A組』の他に、『99.9』『アンナチュラル』『逃げ恥』『大恋愛』が似た傾向にある。

若年層の注目を集めるドラマは、一挙放送でも強いと言えそうだ。

逆のパターンがNHKのドラマ。

いずれも49歳以下の比率が低く、3-層(50~64歳)や3+層(65歳以上)が極端に高い。こうした年齢構成では、残念ながら一挙放送も視聴者には届かないようだ。

ドラマが多様な価値を持つ時代

ここ数年テレビドラマは、冬の時代に入ったと言われていた。

HUT(総世帯視聴率)が下がり、録画再生や見逃しサービスなどタイムシフト視聴で見る人が増え、視聴率が厳しくなっていたからである。

しかし見方を変えると、新たな可能性の時代とも言えそうだ。

リアルタイム視聴率だけを追うと、視聴者の最大公約数を意識するため、”どこかで聞いたような物語”になりがちだ。ところが数字が下がってくると、特定層に刺さる、これまでにないユニークなドラマ作りへと舵を切れる。

しかもこうしたドラマは、ネット展開や海外番販、あるいは映画化や一挙放送など、収入の多様化を図ることが可能だ。

例えば99年冬に放送された『ケイゾク』(主演・中谷美紀)は、平均視聴率13.9%と当時としては芳しくなかった。ところが熱狂的なファンに支えられて、映画化の他、年末や夏休みの深夜に一挙放送をするようになった。

局としては、トータルで十分リクープしたのである。

作り手が本当に「作りたい」「面白い」と思っている作品を、たとえ視聴率が期待できなくとも、採算がとれるようになって来た時代。

ドラマ好きから見ても、面白い物語が登場する状況が生まれていると言えないだろうか。