ラグビーW杯 決勝戦20%超の意味~視聴データで読むドラマチックな物語~

(写真:ロイター/アフロ)

ベスト4をかけた「日本vs南アフリカ」戦が視聴率40%を超え、決勝戦「イングランドvs南ア」が恐らく20%を超えたラグビーW杯日本大会。

サッカーW杯に見劣りしないほど、日本戦も他国同士の試合もよく見られた大会だった。

しかも視聴率は“にわかファン”に支えられ、日本代表が敗退した後も、後半でうなぎ登りとなった。

好成績の背景には、全期間を通じてドラマチックな物語となった点がある。

その見事な展開を、視聴データと共に振り返っておきたい。

外国同士の試合でも20%超!?

大会が始まるまで、多くのテレビ関係者は“外国同士の中継”が多く予定されていることを危惧していた。

これまでは「日本人は他国同士の試合を見ることはほぼない」と信じられてきたからだ。

サッカーW杯でも、日本代表戦以外は3分の1以下の視聴率に留まることが多い。

この夏のW杯バレーボールやW杯バスケットボールでは、生中継されることすらなかった。テニス・柔道・卓球などでも、中継があっても全て日本人の試合しか登場しない。

ところが今大会の決勝戦「イングランドvs南アフリカ」は、恐らく20%を上回った。

ビデオリサーチ(VR)の結果は5日(火)にならないとわからないが、関東地区で2000世帯5000人の視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボ(SML)のデータでは、同試合の世帯占有率(テレビ視聴全体の中で該当番組が見られている比率)は43.5%。

画像

夜帯に放送された“外国同士の中継”6試合を振り返っても、SMLの占有率の約半分がVRの世帯視聴率に相当している。

しかもVRのデータでは、毎週土曜のその時間帯のHUT(総世帯視聴率)は50%を超えている。つまりSMLが43.5%なので、明後日に発表されるVRの視聴率は20%超となっている可能性が高いのである。

ここで注目すべきは、他国同士の視聴率が徐々に高くなっている点だ。

9月26日「イングランドvsアメリカ」と10月4日「南アフリカvsイタリア」は、少し数字が下がっている。これはアメリカとイタリアのランキングがともに二桁で、今一つ人気がなかったためだろう。

それでも“外国同士の中継”は、視聴率が上がりにくい昼間の試合も含めて平均で10.3%。

しかも日本が敗退して以降も右肩上り。プロ野球日本シリーズの平均が一桁で終わったことを考えると、大方のテレビ関係者の予想を裏切る画期的な数字だったと言えよう。

日本代表の開幕戦

日本代表は全部で5試合戦った。

VRの視聴率は、ベスト4をかけた「対南アフリカ」戦が41.6%と、去年のNHK『紅白歌合戦』を上回った。また5試合平均30.2%は、去年のサッカーW杯ロシア大会に迫った。

長年マイナー競技に甘んじていたが、ラグビーは今回、にわかに大ブレークした格好だ。

画像

開幕戦のロシア戦は、思わぬ苦戦で始まった。

格下のロシアにトライを先取されるわ、田村優がキックを外すわで、多くの人がハラハラした。しかし松島幸太朗がハットトリックを見せるなど、終わってみれば日本代表が底力を見せ、30対10の快勝だった。

世帯視聴率は18.3%。

及第点の数字に、中継した日本テレビの経営陣は「ほっとした」と告白していた。

“意外”続きの2~3戦

予選第2戦の相手は、世界ランキング5位(当時)のアイルランド。

「ここでは善戦しておいて、最後のスコットランド戦に決勝トーナメント進出をかける」と多くのファンが思っていた。

予想通り前半は2トライを取られ、後半は9対12と3点を追う展開となった。ところが福岡堅樹が逆転のトライを決めるなどで、19対12と勝利してしまった。

世帯視聴率は19.3%。

午後3時台の開始と、数字をとりにくい時間帯にも関わらず、好記録となった。

時間帯の影響でC層から1層(男女4~34歳)が大きく落ち込んだ割に、中高年で世帯視聴率を支えた格好だった。

続く第3戦はサモア戦。

ここまで2連勝で予選突破が濃厚になったように見えたが、実は壁が立ちはだかった。2015年のロンドン大会では3勝をしながら、決勝トーナメント進出を果たせなかったのが「ボーナスポイント問題」。サモア戦では単なる勝利ではなく、4トライを決められるか否かが勝負の分かれ目と目された。

序盤は両チームともペナルティキックの応酬で、トライは1つに終わった。

16対9と7点リードで迎えた後半。31対19と勝利を決めるところまでいったが、ボーナスポイントには1トライ足りなかった。

ところが試合終了のホーンがなった後に奇跡が待っていた。ラストプレイで劇的なトライを決めて、38対19で勝利すると共に、ボーナスポイント1点を獲得したのである。

夜7時台の試合開始と好条件もそろい、世帯視聴率は32.8%と跳ね上がった。

1層~3-層(男女20~64歳)が世帯視聴率をけん引した格好だった。“にわかファン”は、ここまでで急増していた。

大健闘の日本代表

勝つか引き分け以上で決勝トーナメント進出となる第4戦のスコットランド戦。

後半2分で4トライ目を奪い、ボーナス点も含め19点差で快勝かと思われたが、ここから意外な展開が待っていた。

伝統のある強豪チームの必死の反撃にあい、日本代表は自陣での守りを強いられた。ところが耐えに耐え続け、最後は相手ボールを奪って試合を終わらせた。

これまでの3戦とは異なる展開に、視聴者は新たな感動を覚えた。

苦労の末に決勝トーナメント進出を決めた際の瞬間視聴率は53.7%、平均視聴率39.2%。

日本代表が新たなステージへと進化を遂げた試合だった。

次のただし史上初の決勝トーナメントは甘くはなかった。

前回大会で34対32の劇的勝利をおさめたこともあり、「予選の勢いに乗って、このまま勝ち進むのでは・・」という希望的観測を抱いた人は少なくなかっただろう。

ところが結果は、3対26と1トライも奪えずに完敗した。

それでも視聴率は、41.6%と40%の壁を突破した。

負けた試合とはいえ、視聴者の期待の大きさだろう。10代個人視聴率の伸びが突出しているが、子供から老人まで多くの日本人を釘付けにした試合だった。

決勝戦20%突破の意味

こうして前回大会で日本代表を活気づかせ、そして今大会で実力差を見せつけた南アフリカ。

その強豪が11月2日の決勝戦でイングランドを下した。

イングランドを率いていたのは、前回大会で日本代表を3勝させた名将エディ・ジョーンズ。これまた日本人にとってストーリーに満ちた最終戦となった。

しかも今大会は、台風19号の影響で、予選3試合が中止になるハプニングがあった。その無念の選手たちは、被災地でボランティアをしたり、地域住民との交流を行うなどの美談を作った。

ニュージーランド代表が火付け役となった試合後のお辞儀も、感動を呼んだ。日本の観客も、相手チームの国家を一緒に歌う“おもてなし”の姿勢をみせ、海外から賞賛を浴びた。

こうした様々なストーリーが集約したラグビーW杯日本大会決勝戦。

ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は、「(日本大会は)ラグビーの印象を劇的に変えた」と述べたが、イングランド対南アのような他国同士の試合が20%を超えるのは、まさに今大会を象徴する結果だったのではないだろうか。