巨人戦はオワコンか?~日本シリーズ視聴率一桁から見える現実~

(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「巨人軍は永久に不滅です!」

45年前、10連覇を中日ドラゴンズに阻止された巨人の最終戦は、背番号3・長嶋茂雄の引退試合となった。

試合後のあいさつで、長嶋は声を張り上げ、こう言った。

ところが巨人戦のテレビ中継は、1990年代から視聴率を落とし始め、2006年以降は一桁に低迷した。

そして今シーズン、6年ぶりに日本シリーズに進出した巨人は、ソフトバンクに4連敗と散った。しかも関東地区の4試合平均視聴率は9.5%。日本シリーズの平均視聴率が初めて一桁に終わったのである。

もはや関東の地上波テレビでは、巨人戦中継はオワコンなのか。

現実を検証してみた。

日本シリーズでもお荷物

10月19日から始まった今年の日本シリーズは、ソフトバンクの4連勝で幕を閉じた。

ビデオリサーチが計測する関東地区の世帯視聴率は、8.4%・7.3%・9.7%・11.8%。全試合の平均は9.4%と一桁だった。

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フジテレビが中継した初戦は、前四週平均と比べ2%弱上昇した。TBSの第2戦も、前四週より0.2%上がっていた。

両局のレギュラーと比べると、巨人戦はまだ相対的に優位だった。

ところが日本テレビが中継した第3戦は、前四週より1.3%低い。これでは日テレにとって、『火曜サプライズ』『踊る!さんま御殿!!』『ザ!世界仰天ニュース』などのレギュラーを放送していた方がマシとなる。

そして第4戦こそ前四週を1.2%上回ったが、これは65歳以上のおじいちゃんが第3戦より倍増したお陰。64歳以下の個人視聴率は概ね下がっていた。

問題はそれだけじゃない。

巨人戦の低迷で、日テレからみるとライバル局の視聴率を上げる結果となっていた。

例えば22日は、TBSがその恩恵にあずかった。裏番組となった『この差って何ですか?』『教えてもらう前と後』『マツコの知らない世界』が、いずれも前四週平均を上回ったのである。

日テレにとって、日本シリーズであっても巨人戦は明らかにお荷物となっている。

他のスポーツ中継にも連戦連敗

裏のバラエティ番組をアシストしているだけじゃない。

他のスポーツ中継とぶつかった際にも、ことごとく敗れている。例えばセリーグのクライマックスシリーズで阪神と対戦したカードでは、フジのW杯バレーボールと2度放送が重なった。ところが1.4%ほど負けてしまった。

日本シリーズでは、ラグビーW杯と2度重なった。

多くの国民が注目した「日本対南アフリカ戦」は、41.6%対7.3%と6分の1しか数字をとれなかった。また外国同士の「ニュージーランド対アイルランド戦」でも、16.5%対8.4%とダブルスコアだ。

もはやラグビーとは、比較できないほど巨人戦は凋落している。

中高年にも見限られた!?

今年7月31日の巨人対広島戦(夜7時~)は、実は5.1%と歴史的な惨敗だった。

その時に業界で話題になったのは、個人視聴率の中身。49歳以下は男女どの層も一桁の前半。男50代で何とか一桁の半ば、60代から74歳で一桁後半。そして二桁に乗るのは後期高齢者以上で、ピークは男85~89歳となった。

巨人戦は明らかに“おじいちゃんのコンテンツ”なのである。

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この状況は、今回の日本シリーズでも一緒だった。

スイッチ・メディア・ラボの詳細な層別個人視聴率で見ると、ラグビー日本代表戦は足元にも及ばないものの、「ニュージーランド対アイルランド戦」で互角な数字を出せたのは、会社経営・自営の人たちだけだった。

小中高生や大学生は比較的善戦したが、20~64歳では男女どの層も外国同士のラグビー中継に大差をつけられてしまっていた。

おじいちゃんを除き、中高年にも今や巨人戦は見限られているようだ。

バレーボールにも劣後

ラグビーW杯に太刀打ちできないだけじゃない。

10月9日と11日には、セリーグのクライマックスシリーズがW杯バレーボール日本男子代表戦と重なった。そこでも巨人戦は及ばなかったが、層別個人視聴率でみると、今後を悲観せざるを得ない結果となっていた。

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巨人戦が明らかに上回ったのは、男50歳以上。

ところが女35~64歳では大きく水をあけられ、小中高生の間でもバレーボールに軍配が上がっていた。テレビ視聴者の過半を占める女性で劣勢で、かつ子供たちにも見られない。

今後に不安を残す結果と言わざるを得ない。

巨人戦だけが失敗!?

以上が関東における今年の巨人戦中継の状況だ。

危機的な状況がお分かりいただけたと思うが、実はプロ野球全体が落ちぶれたわけではない。あくまで関東における巨人戦が壊滅的なのである。

例えば今回の日本シリーズ第4戦。

3連覇を決めたソフトバンクの地元福岡では平均38.5%、日本一に輝いた際には瞬間最高で50.3%をマークしている。ラグビーW杯の日本代表戦に引けを取らない成績だ。

去年の日本シリーズは、ソフトバンクが広島を4勝2敗で破った。この時の平均視聴率は、福岡で30%台、広島に至っては40%超だった。

また16年は、日本ハムが広島を4勝2敗で破った。この時も広島は50%ほど、北海道も40%近くに達していた。

明らかに地方では、地元球団の試合がよく見られている。関東における巨人戦だけが、失敗しているように見える。

“球界の盟主”という落とし穴

長嶋が「巨人軍は永久に不滅」と発言した45年前は、日本シリーズでV10を狙うほど、巨人が圧倒的に強かった。

その後も20年ほど巨人の強さと巨人戦中継の高視聴率は続き、自他ともに「巨人は球界の盟主」と認めるような状況だった。

ところがここに落とし穴があったと筆者は考える。

91年に発足したJリーグは、各球団と地域との交流を進め、地元の球団という意識を醸成した。2016年発足のBリーグも地元との結びつきを重視している。

他にもアイスホッケー・アメフト・フットサルなど、郷土愛と結びつくスポーツ振興は増えている。

その中にあり、いつまでも“球界の盟主”然としたあり方は、今の時代に合わない。

気が付いたら、テレビの前は“過去の栄光”を懐かしむおじいちゃんばかりとなってしまった所以である。

また“球界の盟主”の条件には、圧倒的な強さもある。

ところが巨人は、去年まで5年連続で日本シリーズに進出できなかった。しかも今年6年ぶりに出てみたら、ソフトバンクに歯が立たない。

お金にモノを言わせて優秀な選手を集めながら、チームとして“それほどでもない”というイメージが定着しはじめてしまっている。

若年層から見れば、古いストーリーが展開しているように見えてしまうのである。

時代の変化を直視し、その流れに従って進化しなければ、「永久に不滅」など保証されない。平均視聴率一桁という民意を、関係者は正しく認識すべき時なのである。