ラグビーが視聴率30%を超えた瞬間~歴史を変えたのは“にわかラグビーファン”~

ラグビーW杯(RWC)で、サモアを破り3戦3勝で勝ち点14とした日本。

関東2000世帯5000人のテレビ視聴動向を測定するスイッチ・メディア・ラボによれば、前半の平均視聴率は26.4%、そして後半が31.9%。

日本でのラグビー中継が、初めて30%を突破した歴史的な一戦だった。

ラグビーW杯の海外での位置づけは、夏季オリンピックやサッカーW杯とともに、世界3大スポーツ大会となっている。

ところが日本では、長年盛り上がりを欠いていた。

今大会で初めて他2大会に肩を並べ始めたRWC。誰が状況を動かしたのかを考えてみた。

”にわかラグビーファン”は中高年

5日(土)夜7時32分、日本のキックオフで前半が始まった。

その直前の10分間、両軍選手が入場し、サモアのウォークライ“シヴァタウ”を踊る間に、視聴率は5%以上急伸した。

そして日本の田村優が、ペナルティキックを立て続けに2本決め、6対0とした前半7分までに、視聴率は10%も上昇していた。

試合開始20分以内に視聴率は7割も増えた格好だが、いかに多くの視聴者が対サモア戦の重要性を理解し、注目していたかがわかる。

ちなみに開幕試合だった対ロシア戦では、ほぼ同じ時間に始まったが、キックオフ前後の20分間で4%ほどしか上昇しなかった。比率にして3割程度。

初戦の段階では、日本代表がどれだけ活躍するのか未知数で、あまり注目していなかった人が少なくなかったようだ。

ではどんな人々が変わったのか。

試合開始で急に集まって来た人々、あるいは初戦は見なかったが対サモア戦を見た人と、初めから日本代表戦を見ようと思っていた人々に分かれる。

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実は前者は、中高年に多い。

特に顕著なのが3-層(男女50~64歳)とF3+層(女65歳以上)。今回の対サモア戦試合開始前後で7~9%も急伸している。比率にしても1.5倍以上も視聴者数が膨れ上がっている層だ。

さらに開幕戦と比較しても、対サモア戦では1.5~2倍ほど視聴者が増えている。

逆に後者はC層(男女4~12歳)・T層(男女13~19歳)・1層(男女20~34歳)に多い。

前半のキックオフ前後で数字は1~2%しか動いていない。しかも対ロシア戦と対サモア戦でも、差は2~3%しかない。

大会前からラグビーファンが出来上がっており、“桜の戦士”の活躍を見てから、生で視聴するようになった人は多くないようだ。

好ゲームで視聴率は上昇の一途

前半の25分ぐらいまでは、ペナルティキックによる3点の取り合いとなった。

まず日本の田村優が2本決めて6対0。ところがサモアも2本で挽回し6対6に追いつき、さらに日本がペナルティキックで9対6とリードした。

そして前半30分までに、ラファエレのトライと田村のコンバージョンキックで、遂に日本が16対6とリードを広げた。視聴率は27%を超えて来た。

それでもサモアはもう1本ペナルティキックを決め、1トライ1キックで追いつく差と食い下がり、前半は終了。

視聴率は右肩上りで上昇したものの、30%には届かなかった。

後半もしばらくは、ペナルティキックやトライの取り合いとなった。

まず後半4分に、サモアがペナルティキックを決めて16対12。

3分後に日本が、ペナルティキックで取り返して19対12。接戦が続いた。

遂に視聴率30%突破

そして歴史的な瞬間がやって来た。

日本のラグビー中継史上初となる、視聴率30%突破の瞬間だ。

後半13分、ドライビングモールで押し込んで、姫野がトライを決めて24対12。さらにコンバージョンキックも決まり26対12となった時だった。

ところがサモアにトライとキックを許して、26対19と再び1ゴール1キック差に詰め寄られる。

ここで視聴率的には、面白い現象が起こった。

基本的には右肩上りで推移していたが、食い下がるサモアにイライラしたのか、中高年の一部が離脱したのだ。若年層はゆっくりだが右肩上りを続けていた。ところが中高年がモタモタしたために、世帯視聴率はしばらく横ばいとなってしまった。

再び数字が動き出したのは、福岡が3本目のトライを決めて31対19とした終盤35分。

ここで日本の勝利を確信した人は多かったが、日本が決勝トーナメント進出を濃厚にするためには、ボーナスポントが欲しいところ。

状況をよく理解している視聴者は、最後にもう1トライを切望して、テレビ画面に集中した。

そして視聴者が切望した4本目のトライは、松島により決められた。後半40分を経過し、最後の1プレイの中で快挙は達成された。

視聴率はこの日最高の35.9%をマークしていた。

かくて快挙が達成された

これで“桜の戦士”たちは、3戦3勝・勝ち点14と1次リーグA組首位に躍り出た。悲願の決勝トーナメント進出に大きく前進した。

この試合は、日本のラグビー中継が視聴率30%を上回るというテレビ業界にとっても快挙だった。拙稿「高視聴率は“パス回し”と“スクラム”から~ラグビーW杯は次世代のテレビ界の第一歩~」で詳述した通り、日本テレビが大きな賭けを英断し、TBSや日テレ内の番組が協力したという前提も大きかった。

そして1次リーグ最終戦となる対スコットランド戦。

初の決勝トーナメント進出を懸けた大一番となる可能性が高い。また対サモア戦の視聴率動向から見ると、次は視聴率40%の壁を越え、ラグビーW杯中継が夏季オリンピックやサッカーW杯と初めて肩を並べるかも知れない。

日本代表の奮闘に期待したい。