ラグビーW杯中継は新たな大金脈!?~日本代表以外の試合も見られる時代へ~

(写真:アフロ)

「ラグビーワールドカップ(RWC)2019」が始まった。

世界で約40億人が視聴し、夏季五輪・サッカーW杯と並ぶ“世界3大スポーツイベント”と言われている。ただしアジア初の開催となる日本では、これまであまり注目されて来なかった。

今大会も、直前まで盛り上がりはいま一つだった。成否を不安視する人すらいた。

ところが開幕戦の日本対ロシア戦(20日)も、21日(土)から22日(日)の日本代表以外の3試合も、放送は想定以上に多くの視聴者を集めた。

これまで夜帯(19~23時)で生中継されたことのなかったラグビーW杯中継は、今大会で大金脈に大化けする可能性が出て来たと言えそうだ。

サッカーW杯に次ぐが他スポーツより上

関東で2000世帯5000人の視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボ(SML)によれば、20日の開幕戦(19時30分~21時54分)の世帯視聴率は16.5%、個人視聴率だと10.0%ちょうど。

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この数字を過去2年の主な単一種目の国際大会で比較すると、かなりの好成績となる。

2017ワールドベースボールクラシック(WBC)で最も高い数字を獲った試合は、日本がイスラエルに8対3で勝利した2次ラウンド戦(3月15日18時30分~21時54分)で、SMLの世帯視聴率で13.1%・個人視聴率で7.4%だった。

翌年のサッカーW杯ロシア大会の日本対コロンビア戦(20時45分~23時30分)では、世帯視聴率は30.6%。さすがに差を付けられたが、世界水泳・世界柔道・W杯バレーボール女子などと比較すると、倍近い数字を獲っている。

ちなみにビデオリサーチ(VR)と比較すると、SMLのデータは2~5割ずれることがある。

WBCのVRは25.8%に対してSMLは13.1%。

サッカーW杯48.5%対30.6%。

世界水泳11.9%対6.3%。

世界柔道10.0%対6.3%。

W杯バレーボール女子8.8%対6.6%。

サンプルの集め方や測定方法が異なることから、差が生じているようだ。こうした点を考慮すると、RWC開幕戦の16.5%は、VRでは20%を超え30%に迫るかも知れない。(※訂正 24日に発表されたVR関東地区の世帯視聴率は18.3%で、今回は大きなズレは生じなかった)

水泳と野球は高齢者コンテンツ

世帯視聴率の多寡だけでなく、どんな人が見ているのかを分析すると、そのスポーツの人気の実態が見えてくる。

SMLのデータは、詳細な視聴層別個人視聴率を出せるようになっている。これで各スポーツ中継を見ると、まず気になるのが今年7月の世界水泳だ。

個人全体を100として各視聴率を指数で表現すると、世界水泳の世帯視聴率は231と他の1.3~1.4倍となる。

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個人の割に世帯が高いというのは、一人で見ている割合が高いことを意味する。逆に個人の割に世帯が低いと、家族みんなで見ている割合が高い。

それを裏付けるデータが、M3+やF3+(男女65歳以上)の個人視聴率が突出していて、かつ無職の割合が高い点だ。つまり年金暮らしの高齢者が、一人もしくは夫婦だけで見ている割合が高いことを意味する。

似た状況なのが、17年3月のワールドベースボールクラシック(WBC)。やはり3層(65歳以上)と無職の割合が高い。

実は巨人・中日・阪神などのプロ野球中継でも、70~80歳代の個人視聴率が極端に高く、若年層が壊滅的となっている。

広島のカープ女子は例外だが、今や野球は高齢者コンテンツとなっている。

ラグビーの位置づけ

水泳や野球に対して、バレーボール・サッカー・ラグビーは一味違う。65歳以上は低く、若年層が高い。

その中でもラグビーは、65歳以上の比率が最も低い。そしてM2・M3-(男性35~64歳)とC層(男女4~12歳)、さらに小学生が他より抜きんでている。逆に無職の割合は、一番少ない。

お父さんと子供が一緒に、ラグビー界最高峰の美技と肉弾戦に見入っていた可能性が高い。

ちなみにサッカーW杯については、さすがに各層のバランスが最も良い。

世帯視聴率が高く、すべての人々が満遍なく多く見ている。人気が安定していることを意味しよう。

一方バレーボールは、FT・F1(女性13~34歳)や未婚女性でトップと、若年女性層で圧倒的な人気を誇っていることがわかる。

ただしサッカーやラグビーと比べ、65歳以上と無職で高いのが気になる。MT・M1(男性13~34歳)や小学生・大学生で低く、人気が偏っている辺りが、世帯や個人が今一つ伸びない原因のようだ。

日本代表以外の試合は見られるか?

日本のテレビ界では、「日本人は他国同士の試合を見ることはほぼない」と信じられてきた。

サッカーW杯の時も、日本代表戦以外はどんな好カードでも、3分の1以下の視聴率に留まった。

この夏のW杯バレーボールやW杯バスケットボールでは、生中継されることすらない。

ところが日本テレビは今回、夜帯(夜7~11時)で10試合、夕方なども含めると19試合を生中継する。日本代表戦は数試合に留まるので、大半は“他国同士の試合”となる。

つまり日ごろ高視聴率を稼いでいるレギュラー番組を休止しての放送だけに、“他国同士の試合”が見られないと大きな痛手となる。

ところが21日(土)と22日(日)の二日間で放送された“他国同士”3試合では、その不安はかなり払拭された。

フランス対アルゼンチン戦とニュージーランド対南アフリカ戦(21日)と、世界ランク1位のアイルランド対スコットランド戦(22日)の3試合だ。

 

SMLのデータによれば、21日2試合(午後4時~8時54分)の平均視聴率は8.9%、22日1試合(午後4時30分~6時55分)は8.8%だった。

17年3月のWBC決勝戦では、米国がプエリトリコを8対0で破って優勝した。平日の昼間(午前9時55分~午後2時)だったこともあるが、SMLの世帯視聴率は2.4%に留まった。

また去年6月のサッカーW杯のラウンド16では、接戦の末フランスがアルゼンチンを4対3で下し、ベスト8に進出した。この試合は日本時間の夜10時からと、良い時間に放送された。この時のSMLの視聴率は13.0%とまずまずだった。

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これら3試合を、同じように各視聴率を指数で表現すると、やはりWBCは高齢者と無職の人々で突出し、一人で見ている割合が高い。

一方サッカーとラグビーは、各層のバランスがかなり近い。

少し違うのは、サッカーがMTからM2(男性13~49歳)で高く、ラグビーはM3-・F3-(男女50~64歳)と小学生男子で高い。

世帯視聴率でサッカーに及ばなかったのは、放送時間によるところも大きそうだ。しかもサッカーW杯は1次リーグを勝ち上がった両チームによる屈指の好カードだが、21日のラグビーW杯は1次リーグの初戦だった。盛り上がり方には大きな違いがあった。

いずれにしても、日本代表戦以外の“他国同士”の試合でも、展開次第で大いに見られる可能性があると言えそうだ。

9月22日(日)のスポーツ3中継

最後に大相撲秋場所千秋楽・W杯バレーボール・ラグビーW杯と、スポーツのビッグイベントがほぼ同じ時間で生中継された9月22日(日)を振り返っておきたい。

12勝3敗となった御嶽海が、優勝決定戦で貴景勝を破って2度目の優勝を果たした千秋楽。

生中継(午後3時10分~6時5分)のSML視聴率は4.6%だった。かなり放送が重なったラグビーのアイルランド対スコットランド戦中継(午後4時30分~6時55分)は8.8%。そして最も良い時間に放送されたバレーの日本対アメリカ戦(夜7時~10時10分)は、フルセットまでもつれる好ゲームだったが、視聴率は6.6%に留まった。

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この3中継を視聴者層別で分析すると、相撲は男女65歳以上・無職で突出し、C・T層(男女4~19歳)や小中高大生がほぼゼロだった。極端に高齢者コンテンツになってしまっている。

一方バレーボールはMC・MT(男性4~19歳)、FC(女性4~12歳)・F2(女性34~49歳)と小学生でトップだが、他の層ではラグビーに及んでいない。

ラグビーは3-(男女50~64歳)で他を圧倒している他、全体的にバランスが良い。前回のW杯イギリス大会まで生中継されることはなかったものの、今大会は大いに可能性があると言えそうだ。

鍵を握る28日(土)の対アイルランド戦

前回の2015年大会では、日本代表は史上最大のアップセット(番狂わせ)と言われる、南アフリカ戦での大逆転を演じた。その時の熱狂は尋常ではなかったが、今大会では次の土曜に世界ランク1位のアイルランドとぶつかる。

ここで撃破すれば、大会中のフィーバーはとんでもないことになろう。

ただし希望的観測が過ぎるのはよくない。勝利に届かなくとも、“4トライをあげる”か、“7点差以内での負け”でボーナスポイントを獲得すれば、日本代表初の決勝トーナメント進出の可能性は高まる。そしてW杯でのラグビー中継はより多くの人に注目され、サッカーW杯のレベルに近づけるだろう。

テレビに新たな大金脈が成立するか否かの正念場だ。“桜の戦士”たちの奮闘に期待したい。