石原さとみはピークを過ぎた!?~『5→9』から『Heaven?』までに見る視聴者の評価~

(写真:つのだよしお/アフロ)

評価が分かれる石原さとみ

初回で世帯視聴率二桁をとりながら、2話以降が右肩下がり基調となり、5話までに約3割の視聴者を失った石原さとみ主演『Heaven?~ご苦楽レストラン~』。

「自分が心ゆくままにお酒や食事を楽しみたい」という己の欲求を叶えるためだけにレストランを始めた風変わりなオーナーと、ユニークな従業員たちが繰り広げるコメディーだ。

SNS上では、「とにかく可愛い」「きれいすぎて死んだ」「さとみちゃんに悶絶」「さとみ様を拝めるドラマをありがとう!」など、絶賛のコメントが流れた。

同時に、「(石原の)傍若無人キャラに飽きた」「高飛車イイ女の振る舞いに違和感」という批判も出ている。

この5年で5本を数える石原さとみ主演ドラマは、「可愛い」「ひたむき」「自然な笑顔」「クールな集中力」と評価を上げて来たが、ここ2本「女王様キャラ」が続き「既にピークを過ぎたのでは?」という声も聞こえ始めている。

では実際はどうなのか。視聴データから石原さとみの真価を考えてみた。

世帯と個人で視聴率に差

ビデオリサーチの世帯視聴率でみると、『5→9~私に恋したお坊さん~』(15年秋)が11.7%、『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(16年秋)と『アンナチュラル』(18年冬)が12.4%・11.1%と3作連続で二桁だった。ところが『高嶺の花』(18年夏)は9.5%、今期『Heaven?~ご苦楽レストラン~』5話までが9.3%と失速気味だ。

世帯視聴率も高く、専門職の世界観を広げたと評判の『地味にスゴイ!』『アンナチュラル』あたりが、石原さとみの絶頂期という見方も出ている。

ただし性・年齢や属性別の個人視聴率を測定するスイッチ・メディア・ラボのデータで見ると、別の風景が見える。

『5→9』の4.4%から始まり、以後4.5%→4.8%→5.0%と来て、『Heaven?』が5.1%。同社の個人視聴率全体は右肩上がりとなっている。つまり直近2作は、世帯は低いが個人は悪くない。

調査方法が別なので単純な比較はできないが、番組を“一人で見ているか”“家族みんなで見ているか”など、見られ方に違いがある可能性がある。

年齢別の評価は真逆

年齢層で分析すると、石原さとみ主役ドラマの数字は、若年層と中高年で対照的となっている。

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C層(4~12歳)とT層(13~19歳)を併せたU19では、『5→9』が後の4作を1.4倍ほど上回った。1層(20~34歳)では、『高嶺の花』に抜かれたが、他の3本よりは上回った。やはり胸キュンな恋愛路線は、若者に刺さる物語で、「可愛い」「ひたむき」キャラの石原さとみに多くの支持が集まっていたと言えよう。

ところが3-層(50~64歳)は、恋愛ドラマより、石原が専門職に挑戦した『地味にスゴイ!』『アンナチュラル』の方をよく見ていた。特に法医学ドラマの新境地を切り拓いた『アンナチュラル』は、3-層に最も見られた作品だった。

「自然な笑顔」や「クールな集中力」が魅力で、同ドラマの石原が最高だったと見る人が少なくない。

そして世帯視聴率が一桁に低迷した『高嶺の花』と今クールの『Heaven?』。

“傍若無人キャラ”“高飛車イイ女”路線に違和感が生じたのか、脱落する人が出たようだ。特に気が強く下品な一面が際立った『高嶺の花』では、「これじゃない」「こんな役やって欲しくなかった」などのツイートが目立った。3-層と3+層(65歳以上)の個人視聴率は、共に『アンナチュラル』より下がってしまった。

ただし個人視聴率全体では、『高嶺の花』『Heaven?』は数字を上げている。

特に1層と2層(35~49歳)は、『高嶺の花』が最も高い。そして『Heaven?』も、3-層が5ドラマの中で2位、3+層はトップとなった。20歳以上では幅広い層に、直近2作は見られている。

脱落者がいても多くの人が見た、つまり毀誉褒貶が相半ばするドラマだった。

興味深い属性別評価

年齢別だけでなく属性別でも、おもしろい事実が浮かび上がる。

まず小中高生は、恋愛ドラマの『5→9』を最も見ていた。U19と同じ結果だ。

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ところが大学生(大学院生を含む)では、『アンナチュラル』がトップ。『高嶺の花』『Heaven?』では脱落者が増え、個人視聴率は右肩下がりとなった。

特に『高嶺の花』では、初回3.3%が3話までで1.7%と半減してしまった。ドラマや登場人物のキャラ設定などで、嫌悪感・失望感を抱かせてしまったようだ。

続く『Heaven?』の初回は2.2%で始まり、その後上昇しない。『アンナチュラル』も2.2%で始まりながら、最後は倍増したのと対照的だ。

大学生の間では、石原さとみ離れが起こっている可能性がある。

それほどの変化はないものの、主婦も似た傾向がある。

『5→9』以降、次第に個人視聴率が高まり、『アンナチュラル』で最高潮となり、そして『高嶺の花』『Heaven?』と数字を下げている。恋愛路線より専門職の世界に興味を抱き、そして強烈キャラで脱落者がある程度出ている。

大学生や主婦と対照的なのが経営・自営・会社員の層。個人視聴率は右肩上がりが続いている。

恋愛から専門職路線で、数字は急伸した。そして『高嶺の花』『Heaven?』で、視聴者数は緩やかだが増え続けている。30代で芸風を広げる石原さとみに、この層で多くの人が注目しているようだ。

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以上、属性によっては下降を始めたと思われる層もある。ただし広く見ると、個人全体も男性も女性も個人視聴率は今も伸び続けており、石原さとみピークアウト説は早計と言わざるを得ない。

俳優が20代から30代にむけ、イメージが変化するのは自然なこと。年齢を重ねるうちに様々な知識や表現力を身に着け、新たな役に挑戦していく。

“可愛い”“きれい”に反応した若年層が違和感を抱き始めるのも当然かも知れない。その代わり、大人の事情など分別をわきまえる中高年や社会人が、強烈なオーラを出しつつ高飛車なキャラもこなす石原さとみを見てしまうのも、その年代ならではの興味・関心として納得できる。

どうやら世帯視聴率という大雑把な尺度だけで評価をすると、複雑な現実を単純化し過ぎてしまうようだ。

どんな人がどう見ているかまで踏み込むと、経年変化の実相が少しずつ見えてくる。石原さとみの場合、俳優としての成長と共に、視聴者層も変化している。年齢層を上げ、大人が見るドラマの主役として、視聴者数も増やしているのが実際のようだ。

その意味では、決して「既にピークアウト」の評価は当たらず、まだまだ進化・成長の途上と言えそうだ。

『高嶺の花』『Heaven?』路線を経て、『地味にスゴイ!』『アンナチュラル』的世界を一段と前進させた“石原さとみならでは”の新世界を期待したい。