視聴データからみる『ワイドナショー』のインパクト!!~そして吉本・社長会見は失敗した~

吉本興業の岡本明彦社長が22日、5時間半におよぶ会見を開いたが、業界関係者や視聴者の大半が“失敗”という印象を持った。

最大の敗因は、所属する芸人たちの“ホンモノ”感に対して、岡本社長の“ニセモノ”感だ。

吉本社内のこうした構図は、宮迫博之と田村亮が20日に行った謝罪会見を受けて、翌日に『ワイドナショー』が急遽生放送となり、松本人志が岡本社長をVTR出演させ、さらに会見につなげたことで炙り出されたと見える。

『ワイドナショー』のインパクトを、視聴データから振り返ってみた。

流出入データから見えるもの

21日(日)の午前10時スタートの『ワイドナショー』。

まず驚くべきは、番組開始10分前から視聴者が殺到し、インテージ『Media Gauge』が測定する関東43万台のテレビを分母とすると、接触率が6%から12%に急伸した点だ。

筆者の知る限り、番組開始前10分でここまで視聴率が急伸した例は、2016年1月18日放送『SMAP×SMAP』の謝罪会見以来だ。

如何に多くの人が、同番組に注目し、漏らさず見届けようと事前に準備していたかがわかる。

次に驚くべきは、途中のCMで一旦ザッピングした人々の量の多さと、直ぐに同番組に戻って来る様。

実は裏のTBS『サンデージャポン』も、同問題を同時並行で扱っていた。つまり『ワイドナショー』の視聴者の1割強は、CM中に『サンジャポ』がどう扱っているかを、寸暇を惜しんで確認していた。そして2分前後で『ワイドナショー』にきっちり戻っていたのである。

ただし『サンジャポ』は、太田光やテリー伊藤など意見を聞いてみたい人選で進行しているものの、やはり部外者では弱い。

吉本の直接関係者、しかもキーマンとなる松本人志が何を語るかに最も注目が集まっていた。だからザッピングで逃げた視聴者のほぼ全てが、『ワイドナショー』に出戻っていたのである。

誰が見たのか?

吉本問題への関心の大きさは、過去10週の同番組の見られ方からも浮き彫りになる。

21日の放送のうち、過去10週の放送を全く見ていなかった人は41%。つまり普段は『ワイドナショー』に全く興味がないが、吉本問題には強い関心のあった人々だ。

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過去10週のうち、一回しか放送を見ていなかった人は16%。二回だった人が10%。

ここまでを合計すると67%。3分の2強の視聴者は、同番組の視聴習慣はないが、吉本問題だけは見届けたいと思っていたようだ。

21日の放送は、今年4月以降の平均視聴率より2倍以上高かった。このデータも、普段の番組視聴習慣のなさと符合する。

では、どんな属性の視聴者が注目したのか。

関東地区で2000世帯5000人以上の視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボによれば、当日の個人視聴率全体は、普段の2.3倍ほどあった。

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中でも最も高かったのは、大学生・大学院生で、普段の3.5倍ほど。また会社経営層・自営業者も2.5倍を超えた。

単なる芸能人のスキャンダルではなく、組織で管理する側とされる側の関係のあり方という捉え方をしていた人も少なくなかったようだ。

ちなみにパート・アルバイトの人たちも高い。

吉本興業という会社組織と芸人たちの関係が、企業とパート・アルバイトとの関係にダブらせて見ていた人も多かったようだ。

次に目立つのは女性。

やはり普段見ているバラエティの主役たちの問題に、FT(女14~19歳)・F2(女35~49歳)・未婚女性・主婦が注目したようだ。

逆に相対的に男たちの関心が低い。

MC(男4~13歳)・MT(男14~19歳)・M3(男50歳以上)は、普段より多いものの、個人全体の平均を下回った。

大きなネタの緊急番組でも、やはりテレビの視聴者層は女性が過半を占める。

SNS上の声

21日の放送に対して、Yahoo! Japanのリアルタイム検索では、普段の10倍から20倍のツイートが記録された。視聴中に黙っていられなくなった視聴者が、如何に多かったのかがわかる。

多くのつぶやきから、集中してみていた様が浮き上がる。

「真剣にワイドナショー見ちゃった」

「今日のワイドナショーは神回だった。 松本さんと東野さんの芸人に対する、お笑いに対する愛と真摯な姿勢が前面に出てた」

「さすが!! 松ちゃんも東野も正直に赤裸々に話してくれるな!!」

「熱い回やった。また、松本に惚れたし、今まで以上に尊敬出来る」

フジは事前に収録した番組をお蔵入りと決め、急遽生に切り替えて放送に臨んだ。

そこで踏み込んだ話をし、かつ芸人らしく随所で笑いに変えた松本人志と東野幸治が、改めて評価された様がうかがえる。

構成の妙

予定を変更した生放送は、松本人志が大きく貢献したと思われる。

しかも吉本の岡本社長をVTR出演させ、22日の記者会見を実現させていた。松本の説得によるところと聞く。ところがそのVTR出演が、事態の行方を決定付けた印象がある。

「まだ今後どうなるかわからないが、松っちゃんがよくここまで持って行ってくれたもんだと感心した」

「吉本には自浄作用が働きそうだな、と思いました」

「社長のVでさらに印象が悪くなった。ふてぶてしさ極まれりだなあ。渋々棒読みしてる感じ。あれはダメだ」

SNSのつぶやきを見る限り、展開を敏感に感じ取った人も少なくない。

生放送の構成が絶妙だったことによると筆者はみる。

番組序盤で宮迫・田村の謝罪会見を振り返る。

ここで重大なミスを犯したものの、真摯に謝罪しようとした彼らの思いが、経営陣の判断で踏みにじられたことがわかる。しかも感情が伴う、正直な謝罪だったと伝わる(松本は宮迫の演技と言って笑いに変えていたが・・・)。

その後に出て来た岡本社長の発言VTRが素っ気ない。

この瞬間が接触率のピークだったが、「真相を見た」「見えた」と感じた視聴者が少なくなかったがゆえに、その後はゆっくりだが数字が下がって行く。

このVTRが予見させた通り、22日の会見は5時間半も費やしたのに、会見で社長が何を伝えようとしたのかが明確にならなかった。志や感情の伴わない歯切れの悪い口調は、視聴者の疑問を増幅させてしまった。

しかも続投を明言したために、大きな失望を呼んでしまった。

20日の芸人二人の謝罪会見。

21日の『ワイドナショー』では、そのダイジェストと翌日の社長会見の事前ダイジェスト。

そして22日に、長時間の社長会見。

実際の出来事の並びも番組の構成も、芸人たちの“ホンモノ”感と社長の“ニセモノ”感を際立たせてしまった。見事な構成という他ない。

現実に絶大なインパクトを与えた番組。21日放送『ワイドナショー』は、後世にそう記憶される気がしてならない。