『ラジハ』『白衣の戦士』『科捜研』『インハンド』に見るキー4局の経営戦略

今クールのドラマが次々と最終回を迎えている。

その中で今期は医療・科学系ドラマが4本あったが、見られ方を振り返ると各局の戦略が透けて見える。

世帯視聴率にこだわらず、若年層をターゲットに定めた日本テレビ。

世帯を上げるために、今まで以上に中高年を取り込み始めたフジテレビ。

とにかく高齢層狙いに徹し、世帯トップを疾走するテレビ朝日。

そして数字は意識するものの、作品性は譲れないTBS。

各ドラマの視聴データから、各局の戦略とパフォーマンスを分析してみた。

世帯視聴率の序列

今年4月クールのGP帯(夜7~11時)民放ドラマ14本では、医療・科学系ドラマが4本あった。

窪田正孝主演『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジ)、中条あやみと水川あさみW主演の『白衣の戦士!』(日テレ)、1年間の放送となった沢口靖子主演『科捜研の女』(テレ朝)、そして山下智久主演『インハンド』(TBS)だ。

ビデオリサーチによる世帯視聴率では、4~6月平均のトップは12.5%の『科捜研の女』。そして12.2%の『ラジハ』、9.2%の『インハンド』、8.7%の『白衣の戦士』の順となった。

2018年度の視聴率争いでは、日テレは三冠王を死守したものの、全日(6~24時)は前年度比0.3%減、G帯(夜7~10時)とP帯(夜7~11時)はともに0.5%減と失速感が否めない。

一方テレ朝は、全日0.3%増・GP帯はともに0.6%増と急伸した。

今回のドラマでも、12.5%対8.7%という結果は、両局の勢いの差を見せつけた格好となった。

テレ朝と日テレの違い

ただし男女年層別の個人視聴率では、異なる風景が見えてくる。

画像

『科捜研の女』の世帯トップは、圧倒的に男女65歳以上に支えられている。しかし他の世代では、男女50~64歳も含めて全層で最下位。極端な高齢者シフトが、好成績の真相だった。

真逆なのが『白衣の戦士』。

男女65歳以上で最下位、男女50~64歳でブービーが、世帯の最下位につながった。ただしFT(女13~19歳)・F1M1(男女20~34歳)・M2(男35~49歳)ではトップ。他の若年層でもトップグループに入っていた。

実は今のテレビの視聴者は、50歳以上が6割超を占め、若年層の割合は低い。よって若年層で個人が高くても、高齢層で低いと世帯は高くならない。

日テレはこの原理が分かった上で、あえて高齢層を狙わずに、若年層をターゲットにしている。広告効果を求める広告主が、若年層が良く見る番組にCMをより出稿する状況に対応しているからだ。

つまり日テレは、もはや世帯視聴率は考えず、広告収入を優先させたドラマ作りになっているのである。

フジとTBSの戦略

テレ朝と日テレの両極端な戦略の間で、微妙な路線を行くのがフジとTBSだ。

『科捜研の女』に世帯で肉薄した『ラジハ』は、男女49歳以下では『白衣の戦士』とトップ争いを演じた。しかも男女3-層(50~64歳)でも『インハンド』と高いレベルで競った。

つまり65歳以上の高齢層を除けば、全世代でトップグループというバランスの良さを見せたのである。

恋愛ものを得意としてきたフジの月9は、2010年代にじりじり視聴率を下げ、16~18年は一桁に低迷する作品が続出した。

そこで去年から、刑事モノ・弁護士モノ・医療モノなど、数字を獲る鉄板ネタを選ぶようになった。世帯視聴率も『絶対零度』10.6%、『SUITS/スーツ』10.8%、『トレース』10.8%と二桁を連打し、遂に今期は12.2%と4年ぶりに12%台に乗せた。

医療×恋愛という切り口が、幅広い年齢層を集め、数字を一段と押し上げた格好だ。とにかく世帯も上げるという作戦が、功を奏したと言えよう。

一方TBS『インハンド』は、女35~64歳と男50~64歳でよく見られたものの、それ以下の若年層ではあまり伸びなかった。

医療・科学モノでも、寄生虫や細菌が登場する最先端の学問が前提になっている分、難しさや取っつき難さがネックとなったようだ。

それでも科学の前提に人間や社会のあり方が問われるなど、強いメッセージ性が込められ、大人の視聴者に支持された。

もう少し分かりやすい内容で、単純明快な展開なら若年層をより取り込めたはずだが、ドラマの作品性にこだわるあまり、若者にはあまり受け入れられなかったようだ。

若年層と高齢層の反応の差

6月で最終回を迎えた3ドラマの個人視聴率推移で、若年層と高齢層の反応の違いをみてみよう。

画像

そもそも初回の世帯が10.3%とまずまずのスタートを切った『白衣の戦士』は、F1が6.7%と3作の中で最高を記録した。自由奔放な“元ヤン”の新米看護師(中条あやみ)と、しっかり者で婚活中の先輩(水川あさみ)によるドタバタ劇は、パート4まで制作され映画にもなったヒット・コメディ『ナースのお仕事』を思わせ、若年層には取っ付きやすい物語だった。

ところが中盤から終盤にかけて、若年層の数字は伸びるどころか、失速気味となった。「内容も演出も本当にヒドイ」など厳しい論評も出ていたが、少なくとも感動やラストへの期待で数字が上がることはなかった。

特にF3(女50歳以上)では、当初10%近くあった視聴率がジリジリ下がり、最終回はシリーズ最低の7.6%になった。若年層狙いが裏目に出た部分が無きにしも非ずだ。

画像

ところが初回で『白衣の戦士』同様に若年層に見られた『ラジハ』は、数字の推移がちょっと違う。

F1はやはり徐々に数字を下げてしまった。初恋の相手(本田翼)を支えようと、医師免許を持ちながら検査技師として献身的にサポートし続ける主人公(窪田正孝)。その仕事の仕方や二人の関係性が、若年層にはやや違和感があったのかも知れない。

ところがF3の反応は真逆だ。

11.1%と高く始まり、途中も大きく下げることなく推移した。そしてラストは12.7%とシリーズ最高を記録した。20~30年前にF1として、トレンディドラマなどで恋愛物語を楽しんだ今のF3には、成就することなく“新たな約束”に向けて、それぞれの成長物語へ向かう展開が眩しかったようだ。

大人の鑑賞に堪える新たな恋愛物語になっていたと言えそうだ。

そして最後が、中高年はまずまずでも、若年層で伸び悩んだ『インハンド』。

初回から中盤にかけて、F1を初め若年層で苦戦を強いられた。ところが最終回は、F1で4.6%と他2ドラマに肉薄した。

感染症の急拡大というスケールの大きさ、次々と事態が悪化するテンポの良さ、そして変人だが天才の科学者(山下智久)が、助手(濱田岳)の人間性に感染して変化していく様は、若年層の心も動かしたようだ。

さらに同作は、F2やF3、さらにはM3をも最終回で急伸させた。

医療ドラマとしての新しい切り口、菜々緒が属した官僚の組織論、そして衛生仮説が致命的な感染症克服の決め手など、ちょっと上の世代には“懐かしい”し“知的好奇心をくすぐる”展開が、上質のドラマと映ったようだ。

以上が今期の医療・科学系ドラマから見る各局の姿勢の違いだ。

結果として今のドラマ界は、少なくともオール・トレンディドラマ化した1990年代よりは、はるかに多様性に富んでいるように見える。

各局の経営方針に従い、それぞれの道にまい進することで、ドラマ界はまだまだ新しい企画が登場し、若年層の開拓も進みそうだ。夏クール以降の展開に期待したい。