“学園ドラマ”復権!?~古田新太『俺のスカート、どこ行った?』の可能性~

(写真:AFLO)

この10年、GP帯(夜7~11時)では学園ドラマが不調だった。

視聴率一桁が増え、放送本数も減っていた。ところが日本テレビは、去年秋から3クール連続で学園ドラマを編成している。しかも視聴率の世界で意味のある“勝利の方程式”を編み出しつつあるように見える。

その意味を分析してみた。

3クール連続の学園ドラマ

日テレは去年秋クールに賀来賢人・伊藤健太郎主演『今日から俺は!!』、今年1月クールに菅田将暉主演『3年A組-今から皆さんは、人質です-』を放送した。そして今春は古田新太主演『俺のスカート、どこ行った?』と、3クール連続で“学園ドラマ”を並べた。

実はこれら3本は、視聴率でも満足度でも好成績を収めている。

世帯視聴率の平均では、『今日俺』が9.9%、『3年A組』11.5%、『俺スカ』8.8%。前2作はまずまずの数字だが、シリーズ後半に行くほど数字が上がっていたのが素晴らしかった。6話までの『俺スカ』8.8%は一見平凡だが、若年層の個人視聴率では前2作に劣らず優れた成績となっている。

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関東地区で2000世帯5000人以上の視聴率を測定しているスイッチ・メディア・ラボによれば、T層(男女13~19歳)から1層(男女20~34歳)を平均すると、『3年A組』が7.8%で断トツ。『今日俺』は4.8%だったので、5.1%だった『俺スカ』が上回っている。

ちなみに今クール世帯視聴率トップの『緊急取調室』は、T&1層の平均は2.3%。

これと比べると『今日俺』と『俺スカ』は倍以上、『3年A組』は3倍以上となる。日テレ学園ドラマが如何に若年層から高い支持を得ているかがわかる。

高い満足度

「テレビ視聴しつ」(eight社)の満足度調査によれば、各クールのドラマの中で、3ドラマは共に上位に入っている。

この10年学園ドラマの満足度は、テレビ視聴者の過半を占める中高年の受けが今一つだった。ところが日テレが並べた3作は、そうした壁を越え、質量ともに充実し始めている。

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去年秋の『今日俺』は、満足度が4.26(5段階評価、1クール平均)。TBS『大恋愛』『下町ロケット』やテレビ朝日『リーガルV』を抑えて堂々のトップだった。

今年1月期の『3年A組』も、4.22で首位。同期2位のTBS『グッドワイフ』3.98を大きく上回る成績だった。

そして今期『俺スカ』も、序盤の評価となる4月調査では3.89。トップはテレビ朝日『緊急取調室』の3.96だが、それに次ぐ2位を記録した。

しかも日テレ“学園ドラマ”の過去2作は、序盤より中終盤の満足度が上がっている。その意味では、『俺スカ』も今後数字を上げ、全ドラマの中で首位となる可能性がある。

視聴率という量だけでなく、満足度という質においても“学園ドラマ”は3期連続で好調なのである。

若年層が押し上げる満足度

高い満足度の要因は、若年層の支持にある。

『今日俺』では、10代男性が4.41、10代女性で4.69と驚異的な記録となった。『3年A組』も10代男性4.24、10代女性4.44と、どの視聴層よりも高く、全ドラマの中でトップだった(クール平均)。

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『俺スカ』の初月での満足度も、10代男性4.38・10代女性4.14で断トツ。ここまで10代に支持を集め続けるのは、近年のドラマでは珍しい。

主な10代視聴者の感想は、以下の通り。

〇『今日俺』

「喧嘩だけど見てて飽きないし、嫌な気持ちにならない」女性18歳・満足度5

「これを見ると月曜日も頑張ろうと思えました!」女性18歳・満足度5

「ヤンキー感や友情を重んじるようなシーンが好感を持てる」男性18歳・満足度5

「クラスで話題になっていた」女性13歳・満足度5

〇『3年A組』

「回を重ねるごとに暴かれる謎が面白い」女性19歳・満足度4

「柊先生の言葉が毎回心に沁みる」女性18歳・満足度5

「SNSについて考えさせられた良いドラマだった」女性14歳・満足度5

「見ないと学校での話題にはついていけない」男性18歳・満足度5

〇『俺スカ』

「現代のLGBTの問題を取り上げててとてもいいドラマ」男性13歳・満足度5

「生徒一人一人変わってくるのが楽しみ」男性16歳・満足度4

「教師らしく無い感じで今の教育の世界では無いような世界観が好き」男性19歳・満足度5

「ドラマから伝わるものがあった」男性17歳・満足度4

“バカバカしい”が“感動できる”、そして“月曜からのやる気”をもらえ“学校で話題”となるなどが人気の秘密のようだ。

もちろんキャスティングの力、ストーリーの魅力やメッセージの斬新さもある。

しかし敷居を低くしつつも、次第に視聴者を惹き込み、大切なメッセージを視聴者に届けるなどの姿勢が、満足度を押し上げているのは間違いない。

しかもテレビが翌日の話題になっている様子は、頼もしい。

3ドラマの並びも絶妙

『今日俺』は若年層の他、実はM3の満足度も高かった。

「ある意味、郷愁も誘い、ついつい視てしまう」男性54歳・満足度4

「爽快オバカで楽しめた」男性53歳・満足度5

「とてもいい暇つぶし」男性60歳・満足度5

30年ほど前のヤンキー文化を懐かしみつつ、当時の心情を回顧する視聴者が少なくなかったようだ。いわば3層(男女50歳以上)で保険をかけつつ、若年層の反応を試し、ヒットの手応えを得たようだ。

『3年A組』は、菅田将暉・永野芽郁・片寄涼太・川栄李奈・上白石萌歌・萩原利久・今田美桜・福原遥など、若年層に人気の俳優を並べた。さらに教師が生徒を人質にとるという奇想天外な設定で攻めた。

そしてメッセージ性が秀逸。自殺した生徒がなぜ死に至ったのかに向き合う中で、生徒たちに負の側面を直視させ、そこから明日への力を引き出させようとした。

これらが相まって、大ブレークしたのである。

3番目の学園ドラマは、思い切って変化球で来た。

『3年A組』の大きなテーマに対して、『俺スカ』はより身近で小さいけど大切な課題を取り上げている。「人として知っておかなければならないことを教えにきた」と、主人公も言っている。

“勇気を出してちょっと前進する”

“自分の本当の想いに向き合う”

“相手の気持ちを思いやる”

大上段に構えてはいないが、身近な切り口が明らかに若い世代に刺さった。それを成立させたのが、LGBTの教師と常識の逆を行く展開だろう。

『3年A組』ほど派手ではないため、『俺スカ』が世帯視聴率的にどこまで伸びるかは疑問だが、こんな知恵で学園ドラマが定着するとは驚きだ。

若年層狙いに思いっ切り舵を切った日テレが、また一つ、ドラマの多様性を切り拓きつつあるようだ。