改元特番は日テレの圧勝!~明暗を分けたのは編成力と番組力~

(写真:長田洋平/アフロ)

平成最後の日に、全テレビ局が改元特番を編成した。

各局の見られ方を比べると、それぞれの編成方針と見てもらうための努力の巧拙・明暗が見えてくる。

平成から令和をまたぐ各局の改元特番を、視聴データを基に評価してみた。

テレ東までが特番編成

4月30日は平成最後の日。

NHKおよび民放キー5局は、全局が改元特番を編成し歴史的な瞬間を伝えた。

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まずNHKが編成したのは『ゆく時代 くる時代』。

この日は朝8時15分から午後2時までを第1部「平成まるごと大年表」、その後の4時までを第2部「平成最後の“きょうの料理”」とした。

そして深夜の第3部「ついに“時代越”!」を、23時25分から24時30分まで放送した。

日本テレビは夜7時から、『ザ!世界仰天ニュース生放送』を4時間編成した。

そして23時から24時59分までは、『news zero』の特番とした。NHKは改元の瞬間をバラエティ風に演出したが、日テレはニュースの中で迎えた。

テレビ朝日は夕方6時半から、『羽鳥慎一モーニングショー夜の特大版』を夜9時54分まで編成した。

続いて『報道ステーション拡大スペシャル』が、24時20分まで続いた。やはり歴史的瞬間はニュースで迎えた。

TBSは夜7時から、『生放送!平成最後の日』を8時57分まで編成した後、23時までは通常編成に戻した。

そして改元の瞬間は、24時25分までを『NEWS23拡大SP』とした。やはりニュースの担当だった。

フジテレビは唯一、長時間特番で対応した。

夕方6時30分から6時間半にわたる『平成の“大晦日”令和につなぐテレビ』だ。総合司会はタモリだが、一応「報道スペシャル」の位置づけ。皇室づくしの構成を含めて、フジらしい特番となった。

そしてテレビ東京。

同局は重大事件・事故が起こっても、番組編成を変えない姿勢が強く、“テレ東伝説”と呼ばれているほどだ。

ところが4月1日の元号発表では、珍しく特番を編成した。そして今回も、夜10時から3時間にわたり、『池上彰の改元ライブ』を編成した。

以上の通り、全局が特番態勢をとった。

ただし興味深いのは、日テレ・テレ朝・TBSは、普段のニュースの拡大版で対応した。

一方、社長が「他局さんとはちょっと違う味付け」と話したように、テレ東は得意の池上ショー。そしてフジもタモリが伝える報道スペシャルとややソフト路線で来た。

そしてNHKだけが、司会をお笑い芸人とアイドルに委ねる軟派な路線をとった。何やら公共放送と民放の位置づけが、逆転した印象も残った。

接触率の推移でみる明暗

では各局の特番は、どのように見られたのか。

インテージ「Media Gauge」が視聴データを収集する全国約90万台のネット接続テレビをサンプルに評価してみよう。

最も力を発揮したのは日テレだった。

次に健闘したのは、NHK・テレ東・フジ。そして普段と比べ、特番が視聴者にあまり届かなかったのが、テレ朝とTBSと言えそうだ。

まずは夜7時以降の流れで概観してみよう。

文句なしで良く見られたのは日テレ。

まず『ザ!世界仰天ニュース』特番で、約4時間にわたり多くの視聴者を集めた。その勢いのまま、『news zero』特番も普段以上の初速で始まった。さらに改元の瞬間にむけ、接触率で4%弱急伸させる強さを見せつけた。

編成も個別の演出力も、十分に機能したと言えよう。

次に二番手グループの一つ、NHK。

『ニュース7』1時間のあと、Nスペ「日本人と天皇」および『ニュースウオッチ9』までは健闘した。ところが10時からのNスペ「平成 最後の晩餐」で失速。改元特番『ゆく時代 くる時代』で、そこそこ挽回したが、歴史的瞬間の特番としては物足りないと言わざるを得ない。

テレ東は夜10時からの改元特番で、普段以上に見られていた。

“テレ東伝説”通りの、通常編成で行く以上の意味があったと評価できよう。

フジは接触率4~6%台で推移と、やや微妙な展開だった。

ただし6時間半ほどを大きく下げなかった点は評価できよう。やはり通常編成と比べ、意味があったと言える。

問題はTBSとテレ朝。

特番が始まった7~8時台が普段より悪い。TBSは夜9~10時台を通常編成としたが、こちらの方が数字が高かった。テレ朝も22時に『報道ステーション』が始まったところで、数字は急伸した。

両局とも特番の第一弾が失敗だったと言わざるを得ない。

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また両局とも、改元の瞬間をまたぐ特番は、日テレに大きく水をあけられ、フジにも及ばなかった。

歴史的瞬間をどう伝えるか、残念ながら成功したとは言えないようだ。

流入・流出データが浮かび上がらせる日テレの強さ

時代が替わる瞬間の前10分を、流入・流出データで評価してみよう。サンプルは「Media Gauge」関東地区37万台強のネット接続テレビとした。

番組の演出力が明確にデータに出たのは日テレだった。

「平成最後の夜を生中継」する演出だったが、1回のCMを除くと、歴史的瞬間までは基本的に流出より流入が上回った。接触率が10分で4%弱上昇した所以である。

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成功の秘訣は、テンポにある。

接触率が急上昇した56分からの3分間、7か所の中継現場を入れて来た。1か所30秒足らずのスピードだ。

そして午前0時に向け、15秒あたり1500台ほどのテレビが流入を続けた。他局にダメ出しをしたのか、日テレが一番期待できると思ったのか、視聴者は日テレに最も集中した。

視聴者のその直観を証明するように、“その時”までの最後の1分は圧巻だった。

60秒間で6か所の中継リレー。1か所平均10秒だ。有働キャスターが最初の10秒、櫻井翔が次の20秒、そして再び有働キャスターが20秒間コメントした。

そして“その時”に向けた渋谷の映像には、群衆のカウントダウンの合唱と、“その時”の歓声が重なった。最も劇的な生中継だったのである。

15秒あたりの流入数も、最後の1分は2000を超え、2500に迫った。

他局の演出とデータの関係

NHKはまず「平成最後の日 何していた?」をテーマに、視聴者からの投稿文を30分割画面で紹介した。そして次の5分を、「平成最後の日 15秒動画」紹介とした。

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この間の流出は、流入を上回ることが多かった。視聴者にとっては、時代が大きく動く瞬間に、個別の視聴者が“どうしたこうした”は、あまり興味を呼ばなかったようだ。

若年層を集めようという意図だろうが、機能したようには見えない。

それでも大事件・大事故など、一旦緩急ある際のNHKは健在だ。

“その時”までの最後の2分強は流入が急増し、接触率も急伸した。演出を超えたNHKブランドのなせる業のようだった。

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フジは他局とは異なる演出を選択した。

VTR中継9か所と、プロジェクションマッピングを絡めた結果、CMで大きく流出した他は、基本的に流入が流出を上回った。接触率はじわじわ上げていた。

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社長が「他局さんとはちょっと違う味付け」と話したテレビ東京は、ユニークな演出を選んだ。

「令和で生まれる仕事」など、経済に絡めた取り上げ方をした。そして“その時”までの最後の1分は、池上彰のカウントダウン生解説だった。

特にこの10分で接触率が上昇したわけではないが、ここまでの2時間で数字を落とすことはなかった。普段を上回る実績を築いた点は大健闘と言えよう。

課題が見えたのは、テレ朝とTBS。

データの上では両局とも、特番があまり機能していない。通常編成を超える成果が出てるとは言い切れないからだ。

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テレ朝は、改元までの10分間で、7か所の中継を入れた。

日テレとの違いは、平均で1か所1分以上というテンポ。さらに“その時”を伝える皇居前中継では、リポーターの声中心で、集まった群衆のカウントダウンの合唱や、改元の瞬間の歓声が拾えてない。

流入と流出がほぼ拮抗し、接触率が上昇しなかったが、見やすさと感動の演出に欠けていたと言えよう。

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TBSは中継と令和年表を使ったスタジオ解説から入った。その後は各地の中継などを経て、“その時”は渋谷スクランブル交差点からの中継だった。

この10分では、流入より流出がやや上回ったために、接触率はじりじり下げてしまった。

東日本大震災の被災地から敢えて長めの中継を入れるなど、TBSらしく“何を伝えるべきか”を優先したのだろうが、残念ながら流出者は増えていた。

以上が平成最後の特番での、各局の実績だ。

見てもらうことに重きを置いた演出をする局、その中で成功した局とそうでなかった局に分かれた。

また局の個性にこだわり、一定の成果を上げた局と、そうでない局があった。

時代の節目に放送された特番だけに、どうすべきだったとは軽々に言えない。ただし、平成の30年間で培ってきた各局の特徴や姿勢が凝縮された改元特番だったことは間違いない。

令和の時代、各局の方針は変わらないのか、変わって行くのか。変わるとしたら、どこに向かうのか。

それぞれの編集方針を注視していきたい。