月9・大河・朝ドラの明暗~平成の30年間で多様化したドラマの内容とビジネスモデル~

平成の30年間は、ドラマが多様性にむかうと同時に、各枠で明暗が生じた。

時代の幕開けは、フジテレビの華やかなトレンディドラマ。

続いて強烈なキャラクターで攻める日本テレビ、長寿シリーズを開拓したテレビ朝日などが新たな路線を確立した。

一方NHKは、朝ドラと大河ドラマが共に二度の変革を試みたが、明暗を分けるような結果となった。

そしてドラマ全体としては、デジタル録画機の普及などで、ドラマのリアルタイム視聴率は激減し、タイムシフト視聴が目立つようになった。

平成30年のドラマの変化を振り返る。

トレンディドラマの栄枯盛衰

平成はトレンディドラマの勃興で始まった。

先鞭をつけたのはTBS。『男女7人夏物語』(1986年)、『男女7人秋物語』(87年)が、平成の夜明け前にひときわ明るい光を放った。

ところがフジは、業界ドラマや学園ドラマを量産することで巻き返していく。

平成3年(91年)にはフジ月9枠で『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』が大ヒット。

その後『ひとつ屋根の下』『あすなろ白書』などのヒットが続き、『ひとつ屋根の下2』『ラブジェネレーション』の平成9年(97年)に、トレンディドラマが全盛期を迎えた。

しかし勢いは、次第に衰え始める。

2000年代に入ると、月9の平均が15%を切るようになった。そして16~18年は一桁という不名誉な記録を出してしまった。

トレンディという路線は、30年間で完全に時代と合わなくなっていた。

極端なキャラクター

フジのトレンディに対抗して、日テレは極端なキャラクターと企画力で勝負に出た。

その第一歩は、94年の『家なき子』。

「同情するなら金をくれ!」という主人公のセリフが、流行語大賞に選ばれるほど強烈なインパクトを持った。

その後も『ごくせん』『女王の教室』『ハケンの品格』『花咲舞が黙ってない』など、あり得ないキャラクターの女性主人公が活躍を続ける。

そして到達点は『家政婦のミタ』。最終回の40.0%は高視聴率ドラマの歴代4位となった。

近年でも『家売るオンナ』『地味にスゴイ!』『奥様は、取り扱い注意』などに、DNAは受け継がれている。しかもバラエティ色を強めるなど演出も進化させている。

男女の恋愛を夢見る女から、戦う女へとシフトチェンジすることで、日テレはトレンディドラマとの差別化を果たしたと言えよう。

ヒットのシリーズ化

テレビ朝日が確立したヒット作のシリーズ化も、特筆すべきパターンだ。

刑事モノ・ミステリーモノなどのシリーズ化で固定客を囲い込み、視聴率を安定的にとる作戦だ。

今回19シリーズ目となる『科捜研の女』やseason17まで来た『相棒』が代表作。

他にも『ドクターX』『警視庁捜査一課9係』『特捜9』『緊急取調室』などが続いている。

同局は平日午後に3時間のドラマ再放枠を持つ。

新シリーズ放送前に、過去作を大量に再放送することで番宣とし、初回の視聴率で成功している。

さらにシリーズ化は、今やテレビ視聴者の過半を占める中高年を取り込む作戦として定着している。

馴染みや分かりやすさがあり、中高年が安心して見られる設計だからだ。今や同局の勝利の方程式になっている。

TBSも日曜劇場でシリーズ的手法を使い始めている。

『半沢直樹』を初め、『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』『陸王』など、池井戸潤原作でヒットを続けている。“小が大を倒す”“役者の熱い演技”などで、視聴率獲得に成功している。

明の朝ドラ

今回の『なつぞら』は、1961年に始まって以来100作目。朝ドラは平成の30年間で2度の改革を試み、視聴率的には明らかに成功している。

平成が始まる頃、朝ドラには逆風が吹き始めていた。

男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が進んだのである。結果として、テレビ前の専業主婦が減り始め、視聴率が下がり始めた。

そして13.8%の『つばさ』、13.5%の『ウェルかめ』(共に平成21年)がどん底となった。

ところが平成22年、大改革が断行された。

放送時間を15分繰り上げ、8時開始としたのである。

すると1作目『ゲゲゲの女房』が18.6%と、前作より5%以上も上昇した。

その後も『カーネーション』『梅ちゃん先生』など、20%前後の作品が続いた。

2番目のターニングポイントは、平成25年放送の『あまちゃん』。

宮藤官九郎が脚本を手掛け、軽妙なトーンでギャグもたくさん出てくるドラマとなった。結果として、これまで朝ドラを見てなかった人々に、新たに視聴習慣をつけさせたのである。

続く『ごちそうさん』『花子とアン』で、異変が起こった。

『あまちゃん』では、一部の高齢者が離れていたが、伝統的な朝ドラの作りに戻り、一時離れていた高齢層が戻ってきた。つまり新規の視聴者層が加わった分、以前より格段に視聴率が高まったのである。

かくして『あまちゃん』以降は、平均視聴率が21%台と極めて高い水準で推移する、超人気枠となったのである。

暗の大河ドラマ

朝ドラと比べると、大河ドラマは右肩下がりが続いた。

平成元年の初期こそ30%を誇っていた。ところが以後は急落が続く。

5年ごとの平均視聴率では、平成最初の10年は23.7%と23.1%。ところが10年代は19.2%と20.2%。

この時期に大河も改革に着手する。

“女の子大河”と呼ばれる、主人公が女性の歴史ドラマを始め、女性視聴者の開拓に乗り出したのである。

効果は直ぐに出始めた。『利家とまつ』『功名が辻』『篤姫』で反転攻勢に成功した。

ところが平成20年以降は、厳しい10年となった。

隔年で放送される“女の子大河”の神通力も失われ、5年平均も16.9%、13.6%と急落した。

今回の『いだてん』は、そんな状況を打開することを期待されて始まった。

朝ドラで転機をもたらした宮藤官九郎が再び大河で起用され、“新たな視聴者層の開拓”と二匹目のドジョウ狙いが始まった。

ところが始まってみると、思惑は見事に外れた。

初回こそ15.5%あったが、6話目で10%を切り、15話までの平均が10.3%となった。このペースで行くと、夏の間に全体平均一桁という不名誉な記録となってしまう可能性もある。

明の朝ドラマに対して、二度の改革にも関わらず大河は暗となっている。

令和は多様性の時代

以上のように平成の30年間で、各ドラマは明暗があるものの、それぞれの路線を走ってきた。

これらの前提には、デジタル録画機の普及がある。

ドラマ・映画・アニメなどの番組は、自分の都合の良い時間に、じっくり見たいというニーズが高く、タイムシフト視聴が当たり前になってきた点が大きい。

時代状況の変化も大きい。

バブルが崩壊し、経済は“失われた10年”から、“失われた30年”と言われるほど低迷した。少子高齢化も加わる。若年層が将来にバラ色の夢を抱くことが難しくなり、トレンディドラマのような世界観や恋愛観が受け入れられなくなった。

フジ月9が沈み、テレ朝やTBSの新路線が興ってきた理由だ。

またIT・デジタルが進み、オンデマンドかつピンポイントに情報を消費する風潮も高まった。結果として、1年続く大河ドラマが受け入れられなくなってきた。

逆に時計代わりで、身近な女性の生活に焦点を当てた朝ドラが安定するようになった。

ドラマのビジネスモデルにも、変化が生じ始めている。

録画再生視聴率の加算、ネットでの利用、海外販売などだ。

放送界は視聴率測定方法を見直し、ドラマの媒体価値を再評価できるようにした。

ネットでの利用では、ネット広告費を獲る方向に向かい始めた。

さらにSVODや海外販売など、ライツビジネスを重視し始めている。

平成の初めは、20~30%以上獲るような、最大公約数的なドラマが肩で風を切って闊歩していた。リアルタイム視聴率に象徴されるテレビ広告収入が全てといっても過言でない時代だった。

ところが生活者の多様化が進み、価値観も様々となった。

ドラマの世界でも、LGBTなどマイノリティにスポットを当てるものなども増えている。従来のような高視聴率を前提にせず、多様な層を着実に取り込む路線が増えてきたのである。

それと共に、ビジネスモデルも変化している。

放送後の二次利用がらみで、利益最大化させることが重要となって来ている。

平成30年間のドラマ史は、正に内容・テイストと、ビジネスモデルの多様化が進んだ時代だったのである。

※ なお民放ドラマの平成30年史については、「民放ドラマの栄枯盛衰 トレンディ~極端キャラなど多様性の30年」を、NHKドラマについては、「朝ドラと大河ドラマ「平成2大改革」が明暗を分けたNHK二枚看板」を参照して頂きたい。