新元号「令和」が発表された。

NHKから民放キー5局は、歴史的瞬間を特別態勢で生中継した。これまでなら重大事件でも通常編成を変えなかったテレビ東京も、今回は参戦し、ネット上では「これもまた歴史的瞬間」などと話題になった。

ただし視聴率を分析すると、順調な局もあったが、そうでない局もあった。同じ事象を中継しても、なぜ明暗が生まれるのか考えてみた。

各局の態勢

 

11時41分に菅官房長官は、平成に代わる新元号が書かれた額を掲げた。その後12時5分から、安倍首相が談話を発表した。

NHKは朝8時15分から、菅官房長官の発表までを特番態勢で放送した。さらにお昼のニュースを、12時45分まで延長して安倍談話を放送した。4時間半と全局の中で最も多くの時間を費やしていた。

日本テレビは10時25分から12時55分までを、『News every.特別版』として対応した。2時間半の特番だ。

テレビ朝日は10時25分から13時40分まで、『大下容子ワイド!スクランブル』として扱った。3時間15分を投じている。

TBSは9時55分から12時55分までの3時間が、『JNN報道特別番組』となった。

フジテレビは9時50分から11時55分までが『FNN特番』、11時55分から13時までは『バイキング』の枠内で新元号の発表を扱った。3時間10分の対応だ。

中でも注目すべきはテレビ東京だ。

他局がすべて報道特番となっても、同局は通常編成を続けることが多かった。例えば16年4月の熊本地震、17年8月の北朝鮮によるミサイル発射、去年4月の韓国と北朝鮮の首脳会談などでも、アニメなどの通常放送を続け、“テレ東伝説”と呼ばれるほどの存在になっていた。

ところが今回は、11時13分からの報道番組『昼サテ』を『昼サテスペシャル』として、新元号発表に対応した。

ただし11時50分からは通常編成に戻し、安倍談話を放送しなかった。これにより「さすがはテレ東」など、称賛の声がSNSで散見された。

視聴率の成否

スイッチ・メディア・ラボは、関東地区2000世帯・5500人ほどの視聴率をリアルタイムに測定している。同調査によれば、菅官房長官の発表および安倍首相の談話があった11時からの2時間、世帯視聴率トップは日テレの9.0%だった。2位はNHKで8.4%。3位フジが4.9%。3.9%でテレ朝とTBSが続き、テレ東は1.0%に留まった。

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これを3月に4回あった月曜平均と比べると、特番の効果が浮かび上がる。

最も数字が上がったのがNHKで、3倍近くまで伸びている。さすがに大事件や天変地異に強い公共放送と言ったところか。

次に上がったのは日テレ。2.1%の上昇だ。

ただし特番の2時間の絶対値では、同局は公共放送NHKを上回った。実は去年9月6日に発生した北海道胆振地方東部地震の際にも、人々が最も多くテレビの前にいた朝6時からの2時間、日テレはNHKを上回っていた。

有事の際に強いはずのNHKは、このところ日テレに負け続けている。

3位4位のフジとテレ朝は、横ばいあるいは微増に留まった。

この2時間を3月の月曜平均と比べると、HUT(延べ視聴率)は7%ほど上がっている。つまり普段より多くの人がテレビを見ていた。その状況の中での数字横ばいは、相対的な地位の低下を意味する。フジとテレ朝は、負け組と言えよう。

そして5位6位のTBSとテレ東は、微減に終わった。

折角特番態勢にしたのに普段より数字が悪いのでは、わざわざ特番にした意味が問われてしまう。特に従来の方針を変えたテレ東は、やはり“テレ東伝説”を続けていた方が得策だったと見えてしまう。

やはり両局とも失敗局と言えよう。

毎分視聴率から見えること

以上は時間枠別の視聴率だが、1分毎の視聴率動向を見ると、さらに興味深い事実が浮かび上がる。

まず人々の関心は、元号が平成から何になるかに最も集中していた。

「令和」の文字を菅官房長官が掲げた瞬間、NHKの11.7%が最高視聴率となった。そして安倍首相の談話時には、既に多くの人が興味を失っており、NHKで2%、日テレでも1%ほど数字を落としていた。

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局別の動向で見ると、NHKは朝8時15分から早々と特番態勢でその日を伝えていた。

ところが8~10時台を3月平均と比べると、極端に大きく数字が上がったわけではない。ところが菅官房長官の発表に向け、11時台は5%から11.7%まで短時間に急伸した。他局は上がっても2%程度に留まった。NHKの一人勝ちだ。人々は歴史的な瞬間に際して、やはりNHKにチャンネルを合わせるようだ。

ただし菅官房長官の発表が終わり、岩田明子記者などによるスタジオ解説となった途端に失速した。

同様の現象は12時台の、安倍談話の後にも見られる。ところが日テレやフジは、菅官房長官の発表直後に毎分の視聴率を上げた。安倍談話の後も、数字を落とすことなく番組最後まで見られていた。

どうやら中継する事実が重大な場合に強いのはNHKのようだ。

ところが、そのイベントが終わり、記者やゲストの解説などになった瞬間、NHKから離れ民放にチャンネルを替える人が一定程度いるらしい。

実はもう1点、今回の中継ではCM時に民放があまり数字を落としてないという特徴があった。

例えば2001年9月11日の米国同時多発テロでは、民放はCM時に多くの視聴者に逃げられていた。現在進行形で事態が劇的に展開する報道特番ではCMは致命的で、大量のザッピングを発生させていた。

去年9月6日の北海道地震でも、傾向は似ていた。CM時にチャンネルを替える視聴者が一定数いたのである。

ところが今回は、CMになっても0.1~0.2%程度の下落で済んでいた。イベントのタイムスケジュールが予め分かっていたせいか、その局で見ると決めた視聴者はあまり動いていなかった。

ところがNHKだけはイベント前後での上下動が激しかった。

要はNHKには伝え方に課題が残り、人々に見てもらう演出では民放が上というのが、視聴者の評価と言えそうだ。

各局の明暗

以上のように、新元号発表の特番を視聴率で分析すると、NHK・日テレが明、他が暗と位置付けられる。

ただしNHKは、事実のインパクトで視聴者を集めたのが実態で、伝え方や演出には課題を残している。

逆に日テレやフジなどの民放は、ファクト以外の部分で視聴者を惹き付ける対照的な存在になっているようだ。

そして重大事件でも通常編成を変えない方針を貫いてきたテレ東は、今回は特番に変えてきた。

ところが菅官房長官の発表時には、数字を上げるどころか、やや落としてしまっていた。そして皮肉なことに、特番を辞めた以降、通常編成でじわじわ数字を伸ばしていた。やはり同局は、他局の“逆張り”をした方が存在感を示せるようだ。“テレ東伝説”は、今も意味を持ちそうだ。

以上は世帯視聴率だけで、速報的に各局の動向を分析した結果である。

性年齢別の動向や、毎分の流入・流出をチェックすると、もっと詳しい状況が見えるので、その作業は後日に委ねたい。

ただし以上の作業でも、浮かび上がる事実はある。

歴史的瞬間ではあるものの、NHKと民放の合わせて6チャンネルが同じ対応をしても、どうやら視聴者をいつも以上に集められるのは上位2~3局程度に留まる。

であるなら、下位局は右にならえで同じような放送をしても意味があるのだろうか。

最大公約数を追うテレビの性として、これまでは全局あるいは大半の局が同じ事象を特番態勢で放送することが繰り返されてきたが、ぼちぼち最大公約数以外のニーズを拾い上げる道を模索すべき時なのではないだろうか。

テレビがより多様性を持ち、豊かに発展する未来に期待したい。