今クールのドラマの中で、最も視聴率が上昇したのは『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』だ。

筆者は初回放送直後、「『今日から俺は!!』を超える大成功となる予感に満ちた初回」と評した(「菅田将暉に同居する悪と善~『3年A組』は日テレドラマの新たな勝利の方程式!?~」)。実際に視聴率は右肩上り基調となり、最終回1回前で12.9%と、『今日から俺は!!』最終回の12.6%を超えてきた。

初回が10~13%で始まったドラマは6本あった。

ところが『3年A組』を除く5本は、すべて後半から中盤にかけて視聴率を下げている。ただし同ドラマだけは、初回から3%近く上げている。タイムシフト視聴率でも、初回からずっと10%前後でほぼトップを保ち続けた。

では、誰が同ドラマのブレークを支えたのか。各種データから、ここまでの盛り上がりぶりを確認しておきたい。

久々の右肩上り

『3年A組』は、初回の視聴率が10.2%の後、4話で9.3%と一桁があったが、基本的には右肩上りとなり、5話以降10.4%→11.7%→11.9%→12.0%→12.9%と快進撃を続けて来た。

凄いのはリアルタイム視聴率だけではない。

録画再生などのタイムシフト視聴率も、2月に入って5話以降10.0%→10.0%→10.1%→10.4%と、全番組の中で1位を獲り続けている。

数字的には少し届いていないが、放送中に一度も視聴率を下げなかった『逃げるは恥だが役に立つ』(16年秋)に似ている。

同ドラマは最終回に3%ほど上昇しているので、『3年A組』の最終回も15%を超える可能性が十分あると言えよう。

今クールは、主人公がイケメンのドラマが3本あった。

全国約90万台のネット接続テレビの実数調査を行っているインテージ社「Media Gauge」のデータでみると、錦戸亮主演の『トレース~科捜研の男~』を見ていたテレビ台数は7千弱で始まり、5千強に減っていた(関東地区の分母は約10万台)。

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坂口健太郎『イノセンス 冤罪弁護士』は、6千台弱で始まり、多少の上下があったが、6千台前後で推移した。ほぼ横ばいだった。

ところが菅田将暉『3年A組』だけは、約8500台で始まり、ほぼ数字を上げ続けて9話では10571台となった。

熱心なファン

『3年A組』の見られ方の特徴としては、視聴者数が尻上がりに増えただけではない。視聴継続率が回を追うごとに上昇していった点も特徴的だ。

イケメンの3ドラマの視聴者を、前回視聴した人と前回は視聴しなかった人にわけて分析すると、『トレース』の1話あたりの視聴数は約5300(関東地区)。そのうち前回も視聴したのは2250人ほどで、42%ほどだった。

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いっぽう『イノセンス』は、視聴数こそ約5800と上回ったが、前回も視聴したのは2200足らずで、比率38%ほどと低い。

これら両ドラマと比べると、『3年A組』は、視聴数9700ほどと大きく上回り、かつ前回視聴も4841と5割を超えた。絶対数としても、両ドラマの倍以上あり、如何に『3年A組』の継続視聴者が多いかがわかる。

しかも1話平均ではなく話毎の継続視聴率では、3ドラマとも2話目は4割弱と大差ない。

ところが『3年A組』だけ徐々に上昇し、『トレース』と『イノセンス』は共に4割台止まりだったが、『3年A組』は6割ほどまで上がっていた。視聴習慣の定着という意味でも抜群だったのである。

次に『トレース』と『3年A組』で、過去3話の継続視聴ぶりを比較してみよう。

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過去3話を全て見たケースでは、ほぼ毎話『3年A組』が『トレース』の2~3倍で推移した。例えば9話では、『3年A組』が3137人に対して、『トレース』は1177人に留まった。100対38ほどの差だ。

さらに3話中2話を見た視聴数で比べても、ほぼ毎話2倍前後の差となった。9話では、『3年A組』2486人に対して、『トレース』は1138人だった。

如何に多くの人が『3年A組』にハマっていたのかがわかる。

実はこの統計では、もう一つ面白い側面が見える。初めて見た人の数だ。

ここでも『3年A組』は、他2ドラマの1.5倍ほどで推移し続けた。口コミで多くの視聴者を巻き込んで行った様子がわかる。

つまり『3年A組』は新たな視聴者を加え、しかも一度見始めた人はハマって行くという理想的な展開をしていたことがわかる。

F1F2がハマった『3年A組』

では『3年A組』にハマった視聴者は、どんな人たちだったのか。

関東地区5500人ほどの視聴率をリアルタイムに測定し、かつ視聴者の属性も分析するスイッチ・メディア・ラボのデータで視聴者増を浮かび上がらせてみよう。

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まず男女年層別の視聴率推移を追うと、世帯視聴率が右肩上りだったのに対して、男性はどの層も有意に上昇したとは言えない。学園ドラマではあるものの、MT層(男性13~19歳)やM1(男性20~34歳)もほとんど上昇していない。

強いて上げればM3-(男性50~64歳)が微増している程度だった。

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いっぽう女性では、FT層(女性13~19歳)は反応していないが、F1(女性20~34歳)とF2(女性35~49歳)が明らかに上昇していた。

主役の菅田将暉は言うに及ばず、GENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄亮太を初め、萩原利久・佐久本宝・鈴木仁・古川毅など、旬な男性陣が牽引力になったのだろうか。

もちろん、朝ドラ『半分、青い。』の主役を演じた永野芽郁を初め、川栄李奈・上白石萌歌・今田美桜・福原遥が注目を集めたことも大きかったのだろう。

そして何より、衝撃的なストーリーに加え、菅田将暉演ずる柊一颯(ひいらぎ・いぶき)が発する言葉が、まるで道徳の授業のように心に刺さり、多くの視聴者を深く考えさせた点が大きかったのだろう。

しかもその言葉は、10代というより、20~40代の大人に響いたようだ。SNSでのつぶやきにも、そんな声がたくさん見られた。

「今の日本人に必要なものが詰まってるドラマだなぁ(中略)グッと踏みとどまって考えて行動!これが出来ない。当たり前の事がわからない日本人が増えたもんなぁ」

「今日をどう生きるか、明日をどう生きるか、よく考えるべきだって気づかせてくれた」

「充分過ぎるほど大人の私にも響く言葉でした」

「とても考えさせられる。 色々、いまの人が考えなきゃいけない内容」

SNSの影響は限定的

ここまで書くと、SNSによる口コミがF1F2中心に多くの視聴者を集めたように思える。ところがスイッチ・メディア・ラボのデータでは、想定外の結果が出ていた。

回が進むにつれ増えていた視聴者は、SNSを1日30分以上やる層ではなく、むしろ1日30分未満の非SNS層が大半だったのである。

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特にSNSの利用は少なく、普段の主な情報源はテレビというテレビ派が最も視聴率上昇に貢献していた。もちろん普段の主な情報源がネットという人も、一部視聴率上昇に貢献していた。ところがその層も、SNSはあまり利用しない人々だったのである。

実は1月にスタートしたドラマの中で、最もツイート数が多かったのは大河ドラマ『いだてん』だった。初回放送日の66000件超は他を圧倒していたし、2話以降も3万件前後が続き、ほとんどトップをはしり続けた。

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ところが視聴率は、周知の通り、6話で9.9%と史上最速の一桁転落となり、以降も7~8話と右肩下がりが続いている。ツイート数の多さと視聴率は、ほとんど関係ないように見える。

ツイート数2位は、実は『3年A組』だ。

初回5万弱と好調だったが、一時は2万前後まで減っていた。ところが視聴率はそこまで低迷することなく、基本的には右肩上りで推移してきた。

その後ツイート数はジワジワ増え、8話で約2万5千、9話3万4千超と、ついに『いだてん』を抜いて全ドラマの中でトップまで来た。

これと軌を一にして視聴率も上昇したので、SNSの口コミ力が寄与したと見えた。ところが実態は、SNSをあまり利用しないテレビ派が主流という。テレビドラマの視聴率動向は、簡単には説明できない、奥の深い世界のようだ。

ラストに向けて

3年A組担任の柊一颯(菅田将暉)は、卒業式10日前に自らの教え子たちをクラス丸ごと人質にとって学校に立てこもった。クラスメイトの景山澪奈(上白石萌歌)の死の真相をめぐる謎解きが展開されてきた。

そして9話までで、一連の事件には生徒の黒幕が存在していることが判明した。

その9話では、茅野さくら(永野芽郁さん)の口から「私が澪奈を殺したの」という一言が放たれた。しかも刑事・郡司(椎名桔平)を人質に屋上に上がった一颯が何者かに撃たれた映像がラストに流れた。

この展開、もうSNS上では視聴者を白熱させている。

「どーなっとるん。めいちゃんが黒幕説みたいなのはネットでもあったけど、撃ったのは誰よ。本当に茅野が黒幕か?」

「ずーーーっと、茅野はなにかあるなーとは思ってたけど、、んーーーーーーー 信じたくない」

「あのモノクロの無音部分めっちゃ気になるやんけーーーーー!!! あーーーー、ひっぱるなーーwwてか。最後の最後だけはクリアにして終わってくれ!!」

「最後鳥肌やばかった」

ここまで派手にドラマ内の周囲と同様に視聴者を振り回した『3年A組』。

新垣結衣主演の『逃げるは恥だが役に立つ』は、全話を通じて一度も視聴率を落とすことなく、最終回では20%を超えてきた。

タイプもストーリーの展開も全くことなるが、『3年A組』も似た軌跡を描いてきた。最終回は15%を超え、どこまで伸ばしてくるのか。物語の着地が楽しみでならない。