先月末、突然発表された嵐の活動休止。

国民的アイドルグループとしての活躍は、2020年末まで残り2年足らず。そこでにわかに注目され始めたのが、嵐の5人がそろって出演する最後のテレビ番組は何かだった。

2020年いっぱいの活動なので、12月31日のNHK紅白歌合戦が考えられる。ただし番組の性質上、嵐の5人を主語にして制作するわけにはいかない。

いっぽう“嵐”の名前がついたレギュラー番組は、フジテレビ『VS嵐』と日本テレビ『嵐にしやがれ』の2つ。このどちらも5人の一人一人をフィーチャーしつつ、グループも盛り上げる番組が可能だ。彼らの最後の番組として相応しいと言えよう。

そこで当稿では、最後の番組がいずれかになるとしたら、どちらがベターなのかを勝手に検証してみた。

量的評価

番組として歴史があるのは『VS嵐』。

2008年4月に土曜お昼の31分番組として始まり、翌年10月に木曜よる7時の57分番組に昇格した。つまり11年目に突入している嵐の最も長寿となる冠番組だ。

いっぽう『嵐にしやがれ』のスタートは2010年4月。

土曜10時からの54分番組で始まったが、17年4月からは同じ土曜の9時からと、1時間繰り上がっての放送となった。まもなく10年目に突入する。

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去年10月から今年2月までの15回分の放送を比べると、スイッチ・メディア・ラボが関東2121世帯5537人を対象とした世帯視聴率では、『VS嵐』8.8%に対して『嵐にしやがれ』は10.8%と2%上回っている。後者は12月以降で右肩上りとなり、活動休止が発表されて以降は13%台と急伸している。どうやらグループの事情や状況に数字として敏感に反応するのは、『嵐にしやがれ』の方らしい。

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男女年層別の個人視聴率でみると、男女とも4~12歳は両番組互角だが、『VS嵐』は65歳以上で上回った。いっぽう『嵐にしやがれ』はハイティーン(14~19歳)および20~64歳で上。特に男女ハイティーンとF1(女20~34歳)、さらに男35~64歳で大差となった。スポンサーから見ると、『嵐にしやがれ』の方が好ましい視聴者層を抱えており、CMを出稿したい枠といえそうだ。

さらにスイッチ・メディア・ラボは、両番組の視聴者にどんな特徴があるのか、プロフィールも調べている。

それによると、『VS嵐』は有職者が少なめで、専業主婦が多い。さらに健康意識が高く、特に食生活に気を配っている人が多いという。

いっぽう『嵐にしやがれ』は、二世代世帯が多いので、親子の随伴視聴も一定数あると考えられる。また一度はまるとのめり込みやすい性格の方、ストレスを感じている方、SNSやゲームアプリを使っている人が多いという。

同じ嵐の5人が主演していても、見る人の傾向は大きく異なることがわかる。

質的評価

次に番組の満足度など、質的な評価をみてみよう。

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エイト社は「テレビ視聴しつ」という調査で、関東地区960人を10~70歳代までを対象に、5段階の満足度調査を実施している。この調査によると、去年9月から今年1月まで4か月間の平均満足度は3.98対4.05。共に高い評価を得ているが、平均で0.07ポイント高い『嵐にしやがれ』は、『世界の果てまでイッテQ!』には及ばないものの、バラエティ番組の中では毎月ベスト10に入るほど支持されている。

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男女年層別の満足度でみると、『VS嵐』が上となったのはF2(女35~49歳)とF3およびM3(男女50歳以上)。いっぽう『嵐にしやがれ』は、男女10代とF1およびM1、さらにM2(男35~49歳)で上回った。視聴率の時と同様、若年層の支持がより高い。.

視聴者の声

エイト社「テレビ視聴しつ」では、満足度を評価してもらうと同時に、自由記述を集めている。

まず両番組に目立つのは、とにかく嵐のファンという声。

『VS嵐』

「嵐のメンバーが、好きなので見る」女57歳・満足度5

「嵐が好きなので毎週観ている」女27歳・満足度5

『嵐にしやがれ』

「嵐大好き」女17歳・満足度5

「メンバーが仲良くて見ていて楽しい」女19歳・満足度5

ただし『VS嵐』の内容については、ゲームが好きという声もあるが、厳しい声も散見される。

「やってみたいなー!ってワクワクしながら見る」女30歳・満足度5

「本気で対戦していて面白い」女45歳・満足度5

「企画が毎週同じすぎて…嵐だからもってるような」女27歳・満足度3

「ゲームが大体同じなので、マンネリ化している」女34歳・満足度3

いっぽう『嵐にしやがれ』では、各コーナーへの評価の声が目立つ。

「各コーナーが面白い」男19歳・満足度5

「櫻井翔の朝活好き」女33歳・満足度5

「大野くんの海企画は面白い」女33歳・満足度4

「嵐が体当たりでバラエティやってるのが好き」女37歳・満足度4

「MJとかニノの子供あやす企画とかロケ系が好き」女23歳・満足度5

「嵐の魅力全てが出てて最高」女17歳・満足度5

1月下旬の“嵐の活動休止”への受け止め方も、両番組で温度差があった。

『VS嵐』に対して、「来年終わるのが残念」(女66歳・満足度3)という声もある。ただし「最近ずっと見ていませんでしたが、先日休止発表直後に見ました。でもやっぱりつまらなかったです」(女44歳・満足度2)と発言した視聴者もいた。番組を惜しむ声はさほど多くはなかった。

いっぽう『嵐にしやがれ』には惜しむ声や、嵐が活動を休止しても番組の存続を望む声が多く寄せられた。

「見られなくなる日が来るのが残念」女46歳・満足度4

「活動休止になってしまったので、見逃さずに見ていきたい」女30歳・満足度4

「休止しても4人で続けてほしい」女51歳・満足度3

「嵐が活動休止しても続けてほしい」女12歳・満足度5

テレビ局のDNAを象徴する両番組

以上のように、両番組への量的質的評価には違いがある。

スタジオに大掛かりなセットを設け1日で全番組を撮り終える『VS嵐』は、いわば出演者の魅力やゲストとの即興の掛け合いを楽しむ番組だ。いっぽう『嵐にしやがれ』は、嵐5人全員が出るスタジオ収録もあるが、メンバーが個別にロケや収録をし、それぞれが活躍する場を設けている。いわば企画ありきの制作スタイルなのである。

筆者は両番組の違いは、実はフジと日テレが長年培ってきたDNAの差とみている。

82年から「楽しくなければテレビじゃない」をキャッチコピーに12年連続三冠王を続けたフジは、さんま・たけし・タモリなど、数字のとれるタレントの力で80年代に勃興したテレビ局だ。

いっぽう日テレは、そのフジを横目に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『マジカル頭脳パワー!! 』『電波少年』などで力をつけ、94年にフジを抜き三冠王の座についた。

その原動力は、タレントの魅力だけに依存しない企画力だった。そして出演者が体当たりで挑戦する熱量を売りにするドキュメント・バラエティで伸びて行った。

その延長線上には、2007年に始まり、今やバラエティ番組で最も高い視聴率をとり、満足度でも高い『世界の果てまでイッテQ!』がある。

実は『嵐にしやがれ』は、その考え方を取り入れて始まっている。番組1本を制作するのに、人気アイドル嵐の総拘束時間は明らかに長くなっている。メンバー全員で撮るスタジオ部分の他に、一人一人が何かに挑戦する企画が幾つもあるからだ。

ただし結果として、メンバー個別の人となりが表現でき、視聴者に魅力が伝わるようになっている。これが量的質的調査の結果に反映されていると見るべきだろう。

如何だろうか。

嵐の最後の番組として5人のメンバーそれぞれを際立たせ、グループとしての存在価値を前面に出せる企画は、どちらの番組からより上手く出てくるだろうか。

両番組の違いから考えると、それぞれの最終回は容易に想像できる。

一視聴者としては、長年トップアイドルとして頑張ってきた同グループの最後に相応しい番組をぜひ見たい。