TVワイドショー“嵐&大坂なおみ”戦争~各局の明暗はこうして分かれた!~

1月26日(土)、大坂なおみが全豪女子シングルスで優勝を決めた。

これで週明け28日(月)朝のワイドショーはこのニュース一色と思いきや、27日(日)に超特大のビッグニュースがもう一つ飛び込んできた。ジャニーズの人気アイドルグループ嵐が2020年12月31日をもってグループとしての活動を休止すると発表したのである。

これらを受けて週明け28日(月)朝のワイドショーでは、壮絶な競争が展開された。

8時台に至っては、ほぼ全時間が嵐で埋められた。最も熾烈な闘いとなる7時台も、各局は両テーマで過半の時間を埋めてきた。

結果として東京地区で横並び1位となったのは日本テレビの『ZIP!』と『スッキリ』。

ネット接続テレビの視聴動向を調べるインテージ社の「Media Gauge」は、東京地区で約10万8千台のテレビ視聴ログを収集している。これによると、トップ日テレは、両番組とも見られ方は占有率31~33%と断トツだった。テレビをつけていた家庭のほぼ3分の1が日テレに集中したのである。

フジが続き27%前後、3位以下のNHK・テレ朝・TBSに大差をつけていた。特筆すべきは、NHK朝ドラ『まんぷく』ですら、日テレに及ばなかった点である。

各局の明暗を分けたもの

テレビの視聴動向は、朝6時から7時にかけて上昇し、7時半前後がピークとなる。そして8時台から9時台にかけて徐々に視聴者が減って行く。

この中で7時半頃にかけてトップを疾走したのは日テレだった。

日頃の視聴習慣が一番大きいだろうが、この日は6時台も7時台も他局より大量の「嵐関連」と「大坂なおみ関連」を放送した。視聴者の最大関心事だった2大トピックスを最も多く扱った日テレが、視聴者を着実に増やしていたのである。

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ただしTBSとフジテレビを比べると、TBSの方が2大トピックスをたくさん扱いながら、フジテレビに遠く及ばなかった。日頃の視聴習慣の他に、扱い方にも課題があった可能性がある。

朝6~10時については、去年後半にビデオリサーチ社が調べる世帯視聴率で、テレ朝が日テレを上回るようになっていた。その結果10月には、テレ朝が全日(6~24時)視聴率でトップとなり、58か月連続と足掛け5年に及んだ日テレの月間三冠王を阻止していた。

ところがこれは関東900世帯のサンプル調査での結果。東京地区のネット接続テレビ約10万8千台の実数調査だと、日テレのこの時間帯はテレ朝より遥かに強い。

ネット接続テレビでは高齢世帯の比率が低いことも関係しているだろうが、若年層に訴求したい多くの広告主から見ると、こちらの数字こそターゲット層の視聴実態とみることもできる。

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しかも「嵐の活動休止」と「大坂なおみの全豪優勝」というホットニュースを扱ったこの日は、前3週の月曜と比べると、他3局はあまり数字を伸ばしていなかったが、日テレだけは明らかに高くなっていた(1月14日は三連休となったために例外)。

日テレは大事件・大災害などの時に高い数字を獲ることで定評がある。今回は芸能とスポーツという柔らかいネタだったが、それでも日テレの強さは揺るがなかったようだ。

日テレの強さの秘訣

テレビ番組をより多くの人に見てもらうコツは、番組途中から見始める“流入”が、途中で逃げていく“流出”より多くなること。朝6~7時台の番組は、時間と共に起きてテレビをつける人が増えるので、流入が起こりやすい。通勤や通学前の時間帯ゆえ、見たいもの・知りたい情報を手際よく伝えてくれる番組に視聴習慣がつき、7時半頃にかけての流入が多くなりやすい。

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日テレ『ZIP!』6時台では、4回あったCMタイムの3回で流出が流入を上回ったが、他の時間帯はコンスタントに流入が上だった。

6時台60分間ののべ流出テレビ台数は1万1252台。いっぽう流入は1万6701台。日テレのこの朝のピークとなった7時18分までの7時台18分間では、流出テレビが4117台・流入6706台。この18分間は「嵐関連」で押しまくり、一度もCMを入れなかったことが奏功した。

実は他局もこの時間帯にはCMを入れていない。

全局が“天下分け目の天王山”と位置付けていた時間帯のようだ。ところがこの間に日テレは一度も流出が流入を上回っていないが、他3局はそうはならなかった。

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例えばフジは、15~16分で流出が大幅超過となった。「嵐関連」が終わり、「大坂なおみ関連」に話題を替えた直後だった。

テレ朝も13~14分に流出大幅超過となっていた。

フジと同様「嵐」から「大坂なおみ」に話題を替えた直後だ。

TBSも11分に流出超過となった。

同じく「嵐」から「大坂なおみ」に替わった直後だった。つまりこの時間帯に最も長く「嵐関連」を放送し続けた日テレが、他局からの流入を吸収し、最も多くの視聴者を集めたのである。

今回の攻防戦で思い出すのは、「生まれ変わったら一緒になろうね」のフレーズが有名となった1997年の松田聖子・神田正輝の離婚会見だ。

この様子を生中継していた日テレのニュース編責は、副調整室で他局のニュースを見ながら、全局がCMで会見を中断するまで、生中継を最も長く続けたという。結果として視聴率1位となったが、要は多くの視聴者の関心が集中し、各局同じネタが衝突した際には、より長く放送し続けた局が勝利する。

その時の経験が、正に生きていたのである。

放送体制の問題

日テレの強さには、もう他の側面も関係していることを忘れてはならない。

物理的に長く放送するだけでなく、視聴者の興味が離れるような演出はしない点だ。

例えばテレ朝は「嵐」コーナーでも、7時5~6分に流出超過となった。都内カラオケ店でファンが嵐の歌を歌ったり、歌を一曲も歌わずに嵐の活動休止を悲しんで泣いたりしているリポートだった。取材側が想定した“ありがち”で“不自然”なりポートは、敏感に違和感を抱いた視聴者が流出していく。

TBSも7時4分に同じようなリポートで数字を失っていた。

さらにスタジオのコメンテーター。

TBSは7時6~7分で流出超過となったが、スポーツ紙の芸能担当記者と大学教授が絡んだ部分だった。おっさんの偉そうな論評を、嵐ファンは拒否したようだ。

同様にテレ朝の7時13~14分。同局の元アメリカ総局長で元経済部長でもあった方がコメントしたが、ここでも大幅に流出超過となっていた。

いっぽう日テレは、スタジオのコメントをジャニーズの後輩・風間俊介が担当した。

視聴者は“関係がない”“関係が薄い”人の話より、嵐により身近な人の話を聞きたいと思っている。日テレのスタジオ部分が大きく流出超過とならなかった要因だろう。

かくして日テレ・フジ・テレ朝・TBS4局のワイドショー戦争は、7時半頃までにほぼ勝負がついた。

この時点での視聴者数の比は、12:9:5:4。大きすぎる差は、8時台や9時台になっても逆転することはなかった。

去年後半頃から、日テレの失速をいう声がいろいろ出ている。

しかし一旦緩急ある際には、やはり30年ほどかけて作り上げてきた日テレの勝利の方程式は盤石なようだ。この日テレの強さに学び、他局が日テレに戦いを挑み、各局の切磋琢磨の中でテレビがより面白くなることを願うばかりだ。