年賀状はアナログ時代の遺物!?~発行枚数減少でもCM増が示す時代状況~

日本郵便ほHP「年賀状.jp」から

明けましておめでとうございます。

こんな挨拶をハガキでやりとりする年賀状。洋の東西を問わず、1年の始まりを祝うこうした習慣が、20世紀になって盛んになったそうだ。

ところが近年、年賀状の発行枚数が日本では激減している。日本郵便では、元旦に届けるための投函期限を一応設けているが、人々の準備も遅くなる傾向にある。本来の目的である「日頃の感謝」を示すためという人も少数派になり、「本当は辞めたい」人が4人に1人を占めている。

特に若い人ほどその傾向は強く、20代では3人に1人が年賀状を送っていない。

実は筆者も、会社勤めを辞めて以降、年賀状を出さなくなった。「来年から年賀状のやりとりを辞退します」と終了宣言することもなく、フェイドアウトというモノグサを決め込んでしまった。

年賀状の印刷やあて名書きが面倒で、しかも直筆でひと言書き添える作業に耐えられなくなったのである。「虚礼は辞めちまえ」という心の囁きに、易々と同調してしまった次第だ。

かくして5回目の元旦を迎えたが、“終活年賀状”をさぼったためか、毎年心に引っかかるものがあった。そこで今年は、年賀状についての全体状況を確認し、自分の怠慢を合理化することで、この問題に決着をつけたいと考えた。

これは自己を肯定するための雑文なので、そのつもりでお付き合い頂けると幸いだ。

形骸化の側面

ウェザーニュースが昨年末に実施した調査では、年賀状を送るかどうかに対して、調査対象の10,059人のうち5人に1人が「送らない」と回答した。

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若年層ほどその比率は上がり、20代では3人に1人が年賀状を出していない(ただし10代は学生が多いためか、出さない人は5人に1人に減る)。逆にメールやSNSで済ませる人は若年層ほど多くなっている。「時間と手間をかけたくない」などが背景にあると同社は分析している。

しかも年賀状を続けている人の中にも、惰性や義務感という人が約6割を占めている。

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「なんとなくの習慣」が34%、「義務感(本当はやめたい)」が24%。メールやSNSでつながっている人には年賀状は意味がないと思いつつ、「辞めると言い出せない」「どう言ったら角が立たないか」など悩みつつ、「やっぱり出さなきゃダメか」と仕方なく出し続けている人も少なくないようだ。

なし崩し的に辞めてしまった筆者としては、“同じ穴の狢”が結構いると、ちょっと安心するデータだ。

“嫌々”はデータにも表れる

ちょっと前のデータだが、フラー社はApp Ape Analyticsを使って、こんな面白いデータを発表している。

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2015年12月の「はがきデザインキット」アプリを使った人の数は、12月8日から増え始め、26日にピークを迎えた。元旦に年賀状を届けるために、日本郵政は12月25日を目安としているが、ピークは26日と期限に間に合っていない。

そしてコスト削減のため1月2日の年賀状配達が廃止された翌年、早く届けるためには準備はより急がなければならなくなった。ところがアプリの利用者は、28日がピークと逆に遅くなっている。

筆者は年賀状を辞める数年前から、年賀状の投函が徐々に遅くなっていた。特に最後の2~3年は、賀状を頂いた後に出すことが常態化してしまった。

年賀状文化から落ちこぼれた自らの経験に照らすと、こうした中止予備軍の増加は“さもありなん”と納得できる。

発行枚数は減少の一途

日本の年賀状発行は、1950年用が最初。

当時の発行枚数は1億8000万枚。その後の人口増加と経済成長で、枚数は右肩上りとなった。10億枚突破が64年、20億枚は73年、30億枚82年、40億枚96年と来て、ピークは03年の44億5936万枚だった。高度経済成長とバブル崩壊の歴史と歩を一にしている。

そして04年から減少基調となった。

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年平均では1億万枚以上減っており、今年は24億枚とほぼ半減した計算だ。国民一人当たりに換算すると、ピークが35枚で、今年は19枚まで減っている。

デジタル時代の進展、人口減少や高齢化、そして人々の考え方の変化を前提にすると、恐らく今後は反転して増加することはない。

ゼロにはならないものの、アナログ時代の遺物と言い切っては失礼だが、一部の律儀な人々の豊かな文化となっていくと思われる。筆者のような無粋な合理主義者には、年賀状を出し続ける人は尊敬に値する。

日本郵便の抵抗

にも関わらず日本郵便は今回、減少一途の年賀状に関して、反転攻勢に出た。テレビCMの出稿量を急増させたのである。

前提には、年賀はがきの値上げがある。

郵便はがきは17年6月、52円から62円に値上げされていた。ところが年賀はがきだけは、販売枚数減に歯止めをかけるべく、18年用年賀はがきの値上げを見送った。ところが「わかりにくい」などの批判が噴出し、今回から62円に統一されることになった。

この措置により、年賀はがき売上に異変が起こった。

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発行枚数の減少は5億枚近く。減少率17%は史上最高だ。それでも売上高は140億円以上伸びた。増収率は約1割に及ぶ。

この増収を当て込んだのか、日本郵政は今回、大量のCMを出稿した。

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PTP社のMadisonは、テレビCMの出稿状況をエリア毎に測定している。このシステムによれば、全国で放送されたCMは16,913 本に及んだ。前年の1.7倍で統計のある過去3年では最多となった。

しかもエリア別のCM出稿量に、ある種の意図を感ずる。

地方ほどCMを大量に投下し、都市部での動きは鈍いのだ。例えば静岡県では前年比で2.4倍、北海道2.1倍、福岡県1.8倍に対して、東京は8%増に留まった。大阪でも1.3倍程度だ。

これを1昨年と比べると、東京は19%減、大阪も15%減となる。都市部での年賀状需要は厳しいので、CM出稿量を抑えたようだ。そして今も年賀状文化が健在な地方でより需要喚起すべく、売上高増の一部をCM大量投入に仕向けたようだ。

次世代の年賀状

日本郵政の今回の措置は、年賀状というこれまでの市場においては正しい判断かも知れない。

資源の集中投下だからだ。ただし短期的戦略としての正しさであり、中長期的に年賀状の減少は覆らない。年賀状を一つのメディアとして捉えた場合、イノベーションを視野に入れた戦略もあって良かったのではないだろうか。

「年賀状の送り方」の統計で、50歳以上では「年賀状」派が51%に対して、「メールやSNS」派は7%に過ぎなかった。ただし若年層になるほど両者の位置づけは逆転して行き、20代では後者が多数派になっている。この「メールやSNS」の領域に進出する方策を考えなくても良いのだろうか。

デジタルのリテラシーが高い人々は、自分で次々とデジタル年賀状のやり方を開発していくだろう。ただし筆者のようなモノグサでリテラシーの低い中高年は、アドレス帳の管理や異動に伴う入れ替え、受発信などの煩雑な業務から解放されたい。伝えたい人への伝えたい言葉選びに専念したい。

それ以外の作業を納得できる価格で引き受けてもらえるのなら、そんな市場は成立するのではないだろうか。

ここまで書いていて気が付いた。

加齢と共に気力体力が衰えた筆者は、年賀状という作業に耐え兼ね脱落した。時代はアナログからデジタルへと変化しており、年賀状というシステムが時代遅れのままだったことも、苦痛を倍加したようだ。

IT・デジタルの時代にテクノロジーはどんどん進化している。ところがサービスが十分追いついていない側面もある。年賀状を紙でやりとりするのは、その典型なのではないだろうか。

日頃の感謝を込めた年頭のご挨拶そのものには意味がある。

ところが年を経るに従って、対象となる人は増えるが、作業をする側の能力は低下する。そのギャップを埋めるサービスを、どなたか創り出して頂けないだろうか。

そうすれば家族が嬉々としてやっている年賀状のやりとりを見る度に、ちょっぴり走る心の痛みから解放されるかも知れない。

そんなことを願って已まない2019年の年頭、本来なら旧年中の感謝と御礼を、真心を込めて表すべき人々に改めてこの場を借りて御礼申し上げたい。

明けましておめでとうございます。

旧年中は大変お世話になりました。

今年もよろしくお願いします。