データが示すドラマの3潮流~『リーガルV』の瞬発力、『今日から俺は』の話題力、そしてTBSの総合力~

ビデオリサーチ・アクトビラ・Google各社のデータから筆者作成

TVドラマは今、視聴率だけでなく様々な指標で測定できる時代になっている。

従来からある世帯視聴率に加え、録画再生などのタイムシフト視聴率も登場した。またネット上での検索量は、ドラマの話題喚起力を示す。さらに放送後に有料で見られた量は、ドラマの息の長さと訴求力を示すと言えよう。

2018年に放送されたもので、同じ条件で測定できる民放ドラマを測定すると、図のような結果となった。

そこから浮かび上がったのは、放送時に高い視聴率をとる瞬発力型、ネットなどで取り上げられる話題力型、そして瞬発力も話題力も兼ね備えたオールラウンド型の3タイプ。

どんなドラマがどのタイプだったのか、2018年のドラマ界を振り返っておきたい。

視聴率から見えること

2018年の1クールドラマを視聴率で振り返ると、ベスト10は以下の通り。

1位:『99.9』(主演・松本潤)17.6%

2位:『リーガルV』(米倉涼子)15.7%

3位:『BG』(木村拓哉)15.2%

4位:『ブラックペアン』(二宮和也)14.3%

5位:『義母と娘のブルース』(綾瀬はるか)14.2%

6位:『下町ロケット』(阿部寛)13.6%

7位:『未解決の女』(波留×鈴木京香)13.0%

8位:『科捜研の女』(沢口靖子)12.5%

9位:『グッド・ドクター』(山崎賢人)11.2%

10位:『アンナチュラル』(石原さとみ)11.1%

実は民放ドラマでみた場合、この10本の他に『相棒』(水谷豊)があるが、2クールドラマのために除外しいる。これら『相棒』を含めた高視聴率ドラマの多くには、幾つかの共通項がある。

一つはシリーズ化だ。

『99.9』『下町ロケット』『科捜研の女』『相棒』がそう。また『リーガルV』は、シーズン5まで続いた『ドクターX』とパターンが酷似しているので準シリーズと位置付けられる。

シリーズ化することで、あらかじめ認知度が高くなり、放送初回の視聴率を維持しやすくなる。結果として、クール平均視聴率も取りやすい。テレビ朝日が多用する戦略だ。

二つ目は事件モノ・医療モノというヒットドラマの定番ジャンル。

『99.9』『リーガルV』『BG』『ブラックペアン』『未解決の女』『科捜研の女』『グッド・ドクター』『アンナチュラル』と、ベスト10のうち8本が該当した。特にテレ朝の十八番となっている。

三つ目は中高年狙い。

『相棒』を含め『下町ロケット』『科捜研の女』『未解決の女』は、主人公を演ずる役者が50歳以上。『リーガルV』は40代。いずれもテレビ視聴者の6割超を占める3層(男女50歳以上)を意識した配役となっている。ここでも筆頭はテレ朝となる。

これら3要素のうちの2つ以上を満たすのは、『下町ロケット』『科捜研の女』『未解決の女』『リーガルV』。いずれもタイムシフト視聴率・有料VOD・検索数では、下位あるいはベスト10外に落ちている。明らかに放送時の視聴率に強い、瞬発力勝負のドラマという範疇ができている。

『相棒』もこのタイプだが、テレ朝が圧倒的にこのタイプになっている。

口コミなどの話題力

ところがそのテレ朝は、今年新たなタイプのドラマ開発に成功した。『おっさんずラブ』(主演・田中圭)だ。

23時台の放送ということもあり、視聴率こそ4.0%と凡庸だった。1週間以内のタイムシフト視聴率も、ベスト10入りには程遠かった。

ところがその後の二次利用で爆発した。

NHKから民放5局の主なドラマをテレビ向けに配信するアクトビラの売上で見ると、同ドラマは年間2位。

同サイトは、年末年始の休み期間に“イッキ見”キャンペーンを実施しているが、30~50代女性向けに『おっさんずラブ』をイチオシしているほどだ。

アクトビラ画面を筆者撮影
アクトビラ画面を筆者撮影

他にもDVD・Blu-ray・オフィシャルブック・番組公式グッズが飛ぶように売れている。さらにコミカライズや映画化も決まり、経営陣もご満悦のようだ。

同ドラマの新たなタイプの大ヒットは、口コミなどの話題力による。

Twitterのトレンドでは、関連ワードが上位を占め、放送終盤では2週連続で世界トレンド1位となった。Google Trendsの検索数でも、全ドラマ中2位にとなった。

制作陣は「少女漫画的な表現におっさんが真摯に取り組む」ことの面白さを指摘しているが、これまでにない切り口が爆発的な影響力を及ぼしたと言えよう。

時間をかけたヒット

口コミなどの話題性を翼に込め、時間をかけて高く飛翔したタイプのドラマは他にもある。

『今日から俺は!!』(主演・賀来賢人)・『大恋愛』(戸田恵梨香×ムロツヨシ)・『モンテクリスト伯』(ディーン・フジオカ)などだ。

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『今日から俺は!!』では、80年代のツッパリやヤンキーを「懐かしい」と思った40~50代が見た。さらに「新しい」「面白い」と見た10~20代もいた。バラエティのドラマ化に長けた日本テレビが、大ヒットに結実させた作品と言えよう。

視聴率こそ中盤まで一桁に留まったが、最後は12.6%まで届かせた。

タイムシフト視聴率も最終回が二桁の大金星。海外販売を含め、二次利用での成果が期待できるので、日テレとしては日曜10時枠の大成功例と位置付けるだろう。

『大恋愛』も同様だ。

10%前後とほどほどを行っていた視聴率は、口コミなどの話題力で最終回が大爆発。視聴率は13.2%、タイムシフト視聴率も二桁でベスト10入りさせた。やはり恋愛モノの新たな境地を切り拓いた力作だった。

もう1つ、見逃せないのが『モンテクリスト伯』。

視聴率こそ5~7%台と低迷。従来のモノサシでは失敗作と言われるような成績だ。ところが検索数ではドラマ全体の6位。有料VODの売上も7位と好成績を残した。

実は同ドラマは、番組の視聴者満足度を5段階で評価している「テレビ視聴しつ」(eight社)によれば、2018年上半期に全ドラマの中で5位にランクインされていた。内容に高い評価が下されていたのである。

近年低迷していたフジテレビのドラマが、「面白くなってきた」と評価されるきっかけの1作だ。『隣の家族は青く見える』『コンフィデンスマンJP』『シグナル』などで徐々に評価が高まり、夏クールの『絶対零度』と秋クールの『SUITS/スーツ』の視聴率二桁につながった。

フジのドラマの復活を予感させる動きだ。

ちなみに『今日から俺は!!』と『大恋愛』も、「テレビ視聴しつ」の11月満足度で1位と2位。話題作の前提には、視聴者の高い評価があることは間違いない。

瞬発力&持続力の総合力

最後に瞬発力と話題性があり持続的にヒットする総合力のあるドラマを挙げておきたい。

2018年では、『アンナチュラル』(主演・石原さとみ)と『ブラックペアン』(二宮和也)が筆頭だ。『99.9』(松本潤)も、瞬発力と持続力は抜群だったが、検索数など話題性ではシリーズドラマだったためか、傑出はしていなかった。『義母と娘のブルース』は瞬発力と持続力で秀でていたが、前提には夏クールでの満足度トップクラスという実力があった。いずれもTBSの作品で、総合力ではやはり同局が抜きん出ているようだ。

これらは年末年始のビンジウォッチング(イッキ見)に活用されている。

TBSは年末から年始にかけて、『アンナチュラル』の一挙放送を行っている。『義母と娘のブルース』も2~3日に放送される。

先に紹介したアクトビラも、『アンナチュラル』『義母と娘のブルース』は、30~60代男女と全世代へイッキ見対象ドラマとして推奨している。

他に『おっさんずラブ』が30~40代男女および50代女性への推薦、『モンテクリスト伯』が40~50代男女および30代女性へのレコメンドとなっている点が興味深い。

人々の心を動かし、放送時あるいは放送後に多くの人に見られたドラマは、以上の作品たちだ。

そしてドラマに3潮流があると述べたが、実は新たな動きとして指摘しておきたいのは、視聴率という瞬発力だけではなく、持続力・総合力へと各局が傾斜し始めている点だ。

テレビの視聴率は漸減傾向にあり、それに伴い広告収入も減少傾向が顕著となっている。

これに合わせて各局は、放送時の広告収入以外の収入増を迫られている。ドラマにおいてはの解答は、二次利用以降での収入確保だ。

録画再生での指標は今年から動き始めた。

見逃し配信での広告収入増の試みも始まっている。有料VODや海外番販もにわかに注目を集めている。さらにグッズ販売や映画化などもある。

これら全てを合わせて1本という勝負の仕方が求められている。

つまり視聴者の満足度が高いドラマが求められている。

望ましいのは瞬発力も持続力もある作品。ただし理想的なパターンが難しくても、次第に話題となり放送後半や放送後にヒットする作戦もある。

さらに言えば、あえて深夜に放送して、放送時の広告収入よりは二次利用以降に稼ぐドラマの模索も始まっている。

以上のようにドラマの評価指標が増え、収入の道も複線化し始めている。

結果としてTVドラマは、より多様な作品が生まれる環境が整いつつある。

2019年以降を展望すると、面白いドラマがこれまで以上に登場する可能性が出てきた。各局制作現場の活躍に期待したい。