進む視聴者のTVニュース離れ~報ステ・ニュース7×、NEWS23△、newszero〇という現実~

テレビのニュース番組は、過去5年で1割以上視聴率を落としている。

ビデオリサーチ社・関東地区のデータによれば、12年度からの5年間で、全日(朝6時~24時)のHUT(総世帯視聴率)は3%ほど減少した。プライムタイム(夜7時~夜11時)では6%ほどに留まる。

視聴者のTVニュース離れが、放送全体より早く進んでいることがわかる。

2018年は大雨・台風・地震などが多かった。

ふつう天変地異が頻発する年は、ニュースがよく見られる。ところが18年はTVニュース離れの傾向が続いたままだった。

主なニュースで、何が起こっているのかを考えてみた。

重大ニュースが頻発した2018年

今年2月の平昌五輪では、日本が冬季で最高となる13個のメダルを獲得した。

羽生結弦が負傷を乗り越えて連覇。小平奈緒が500mで金・1000mで銀の偉業を達成した。アイスホッケーでは、五輪史上初となる韓国・北朝鮮合同チームが結成され話題となった。

7月の西日本豪雨では、死者が220人を超え、豪雨災害としては平成最悪の人的被害となった。

台風の被害も目立った。

日本へ接近したのは15個、そのうち上陸したのは12号・15号・20号・21号・24号の5個。「猛烈な強さ」(最大風速54m/s以上)まで発達したのは7個で、記録が残る1977年以降で最悪となった。

地震もあった。

6月には、最大震度6弱の大阪府北部地震が発生。

9月には、最大震度7の北海道胆振東部地震があった。広範囲の土砂崩れと、道内ほぼ全域が停電に見舞われた。人的にも経済的にも、被害は甚大となった。

スポーツ界では日大アメフト部の危険タックルを初め、レスリング・ボクシング・体操など、アマチュアスポーツ界で不祥事が相次いだ。

ただし明るいニュースもあった。テニスの大坂なおみが、四大大会で日本人初となる全米オープン優勝を果たした。プロ野球では大谷翔平が、メジャーで新人王に輝いた。サッカーW杯ロシア大会では、日本が16強入りを果たす奮闘ぶりをみせた。

他にも、日産・ゴーン会長の逮捕、本庶佑のノーベル生理学・医学賞受賞、安室奈美恵の引退、森友文書改ざんで国会紛糾など、重大ニュースが目白押しの1年だった。

NHKニュース7の場合

天変地異や大きなスポーツ大会がある場合、通常なら最も強いのはNHKのニュースだ。

例えば2016年度上半期、NHKのゴールデンタイム(夜7時~10時)は、前年同期比で1.6%上昇した。3時間中1時間45分を占めるニュースの活躍が大きかった。

震度7が2度の熊本地震(4月)、米国オバマ大統領の広島訪問(5月)、英国のEU離脱(6月)、参院選と都知事選(7月)、リオ五輪(8月)など、重大な出来事が続いた。

この結果16年度上半期のニュース7は、前年同期比で1.7%視聴率が上昇した。

ところが世の中が比較的落ち着いた17年、ニュース7は後退する。

続く18年も、平昌五輪が開催された2月と、北海道地震が発生し、台風21号と24号が日本列島を縦断した9月こそ好調だった。

ところが他の月は、明らかに右肩下がり。

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全国80万台のネット接続テレビのログを収集してデータ分析をしているインテージ社の「Media Gauge」によれば、この3年のニュース7の接触率は、全国47都道府県の大半で右肩下がりとなった。

特に沖縄県と東北地方での下落ぶりは顕著だった。

辺野古報道が象徴的!?

底値となったのは今年12月。米軍普天間飛行場の移設計画で、14日から政府により名護市辺野古沿岸部へ土砂投入が始まったタイミングだ。

例えばこの報道で、ニュース7は土砂投入までの経緯を淡々と伝えた。沖縄県と日本政府のこれまでの対応、双方の考え方、今後の対応が紹介され、「沖縄県と政府の対立、さらに激化は避けられない情勢」が締めのコメントとなった。

 

こうしたニュースの伝え方について、沖縄の政治学者は甚だ疑問という。

「客観・公正・中立は、ニュースの伝え方として一見正しいように見えます。ところが報道には、権力の監視機能も求められます。それなのに国と地方と双方の言い分を列挙するだけでは、事実上より大きな権力の側に迎合するに等しい。当事者であり民意を無視され続けた沖縄の人々が見なくなるのは当たり前です」

ニュース7の接触率は、宮城県でも3年で3分の1を失っていた。

東北各県は他の地域と比べ、NHKニュースをよく見る傾向があった。ところが今や、他との差はかなり縮まっている。

「この問題には、日本の民主主義を問う本質的な意味がある。安倍政権の今後を考える上でも大切です。ところが政権への忖度が見え隠れし、核心に踏み込まないニュースでは、沖縄に限らず他の地方でも失望する人が出ていることでしょう。当たり障りのないニュースばかりでは、自分の都合にあわせて概要を把握できるネットニュースで十分と思われてしまいます」(同政治学者)

視聴者の声

有識者の分析は、視聴者の声からも一定程度裏付けられる。

「テレビ視聴しつ」(eight社)は、放送番組の視聴者満足度を5段階で評価している。

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この9~11月調査によれば、満足度は他のニュースより高いが、視聴者層は3層(男女50歳以上)が4割を占める。長年ニュース7を見てきた人々が多く、そのために満足度が高い傾向にある。ただし権力の監視機能を疑う声が少なくなく、この3年で接触率が低下した理由が垣間見られる。

「政府広報番組という感じ」(女61歳・満足度2)

「安倍についての話が多い」(男18歳・満足度3)

「政権ネタで忖度しすぎ」(男58歳・満足度3)

「政治に関するニュースは不透明で、何処まで信じていいのか分からない」(男71歳・満足度3)

報道ステーションの場合

ニュース7と並んで視聴者離れが目立つのは、テレビ朝日の報道ステーション。

多くの地域で接触率が2%ほど落ち、沖縄県に至っては3%超に及んだ。

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14日の辺野古への土砂投入では、事実経過の報道に加えて軟弱地盤問題をとりあげ、「“するかしないか”ではなく、“できるのかできないのか”きちんと議論すべき」とまとめていた。

これに対しても先の学者は、逃げの姿勢が見られると指摘する。

「事実をおさえることは重要だが、今回の問題の本質は“できるのかできないのか”ではなく、“するかしないか”の方にある。3年前の古館キャスター時代なら、スタジオに政治家や官僚を招いて激論を交わしていたが、当時の在野性はどこに行ったのか。沖縄から見ると、肩透かしというか、裏切られた感が拭えない」

日本のテレビ史上、初めて民放が平日のプライムタイムに、帯で1時間のニュース番組を置いたのが同番組の前身・ニュースステーションだった。久米宏をキャスターに1985年にスタート。普段着の親しみやすい口調と分かりやすいコメント、そして鋭い突っ込みでポジションを確立していた。2004年に終了するまでの平均視聴率は14.4%、民放としてニュースの商品化に初めて成功した番組だった。

後を継いだのが古舘伊知郎の報道ステーション。

90年代の勢いには及ばなかったが、それでも視聴率は二桁を誇るテレ朝の看板番組であり続けた。そして16年3月に古館キャスターが降板し、4月からの富川悠太・小川彩佳時代を経て、今年10月からは富川悠太・徳永有美体制となった。ところがこの3年、47都道府県の大半で右肩下がりとなり、特に沖縄での下落ぶりが顕著だった。

「古館時代の突破力がなくなった。沖縄問題も淡々としている。それまで踏み込んでいたのに、体制が替わって踏み込まなくなったので、報道姿勢の変節を感ずる残念な状況です」(同学者)

「テレビ視聴しつ」に寄せられた視聴者の声も、同様のものが散見される。

「古舘さんの頃が懐かしい。今はなんの特色も価値もないニュースに成り下がりつつある」(男63歳・満足度2)

「政治批判しなくなった」(男30歳・満足度3)

「権力に逆らわないありきたりでつまらない内容」(女69歳・満足度3)

「政治家をゲストに呼んでも、なぁなぁで済んでいるようで残念」(男47歳・満足度3)

かつてと比べ舌鋒が鈍くなったことを批判する声は、思いのほか多い。

NEWS23の場合

こうした中にあって、比較的下落幅が小さく、特に沖縄で良い位置を保っているのがNEWS23だ。

沖縄で報道ステーションが3割強、ニュース7が4割弱の接触率を失ったのに対して、NEWS23は1割ほどで済んでいる。

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その理由は、14日の辺野古報道にも表れている。

VTRの後、キャスターは「県民投票になると反対派を勢いづけるので、危機意識から強引なやり方」「既成事実を積み上げれば沖縄の人が諦めるかというと、それは甘い。むしろ辺野古やむなしと思っている人も、いくら何でも強引と思わせてしまった」「もし安倍総理も菅官房長官も沖縄の人と寄り添うのなら、県民投票を機会に沖縄に赴いて膝詰めの議論が必要」と論評した。

同番組への視聴者の感想も、キャスターのこうした発言に期待するものが多い。

「政権の幇間のようなニュース番組が多い中、そこそこ頑張っている」(男59歳・満足度4)

「ニュースの立ち位置が厳密で、鋭く掘り下げるのが、他のニュースと違う」(女70歳・満足度4)

「古館報ステなき後、一番とがっている」(男59歳・満足度5)

「もっと政権の問題点を深掘りしてほしい」(男71歳・満足度3)

ただし権力の監視を厳しく行い、下落率も少ないものの、同番組の満足度は他と比べて低い。

また沖縄を除くと接触率も一番低い。社会全体が変化する状況の中で、こうした番組の置かれた状況の厳しさを示すものと言わざるを得ない。

news zeroの場合

NEWS23と対照的なのが、日テレのnews zero。

この3年で下落率が最も少なかったが、より長いスパンでみると逆に視聴率は上昇している。

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06年にスタートした同番組は、経済学者の村尾信尚をキャスターに迎え、周囲に若者に人気のある有名人を配した。昨年亡くなった小林麻央や櫻井翔を初め、ホラン千秋・山岸舞彩・桐谷美玲などが、曜日キャスターやカルチャー担当キャスターを務めてきた。

視聴者の年齢構成でも、他の3番組と比べ圧倒的に若年層が多い。日テレの戦略が当たっていると言えよう。

「櫻井翔君が好きで見てる」(女19歳・満足度5)

「嵐の櫻井くんが好印象で見ています」(女27歳・満足度5)

「ジャニーズの人が出ているので見ちゃいます」(女49歳・満足度4)

「有働さん出てから見るようになりました」(女25歳・満足度5)

「他のニュースに比べスポーツが多いのが特に好き」(男21歳・満足度4)

分かりやすさとキャスティングで、ニュースの新たな視聴者獲得に成功した同番組。

かつて権力の監視や切り口の斬新さで成功したニュースステーションとは、また一味違ったニュースの商品化で、一定の視聴者を獲得しているようだ。

メディア間競争

米国では2000年代前半までに、テレビの主なニュースはネットの存在を強く意識し、解説・分析などニュースの深掘りに力を入れていた。

放送までに多くの視聴者が、ネットでニュースの概要を知ってしまうことへの対策だった。

ところが日本では、ニュース7・報道ステーション・news zeroなどは、米国TVニュースとは逆に深掘りや鋭い解説を避けているように見える。その中にありnews zeroだけが、キャスター陣に人気者を集めることで、若年層を取り込み視聴者確保に成功している。

辺野古問題については、新聞の社説・論説は明確に割れた。

「民意は埋め立てられない」「民意も海に埋めるのか」の見出しを付けた毎日と朝日は、政府のやり方を厳しく批判した。

一方「基地被害軽減へ歩み止めるな」(読売)「沖縄に理解求める努力を」(日経)「普天間返還に欠かせない」(産経)の3紙は、政府のやり方を容認する論調だった。

こうした様々な意見は、ネット上の記事に反映され、人々は様々な考え方に容易に触れることが出来る。

ところがTVニュースでは、解説や意見の差が少なく、現象をどう読み解いたら良いのかの参考にあまりなっていない。

視聴者のTVニュース離れは、こうした状況を背景に進んでいるのではないだろうか。

天変地異や大事件が多かったにも関わらず、TVニュース離れが進んだ2018年。

報道関係者はニュースのあり方を再考しては如何だろうか。