チコちゃんに神風が吹きまくった1年~視聴率上昇をアシストした災害続発の2018年~

2018年のテレビ界で、最も話題となった番組は『チコちゃんに叱られる!』だろう。

4月にレギュラー番組として始まったが、本放送(金曜よる7時57分~)より、再放送(土曜あさ8時15分~)の視聴率が高いことが話題になった。

しかも当初はさほどでもなかったが、5月には12%台をとるようになり、バラエティ番組のベスト10にランクインし始めた。そして7月に13%台、9月に14%台をコンスタントにとるようになり、今や15~16%台が当たり前。ベスト10の上位に位置するようになっている。

しかし同番組の急伸ぶりには、番組の面白さに加え、大雨・台風・地震などの災害が多発したことも影響している。その意味でチコちゃんには、神風が吹きまくった1年だったと言えよう。

 

快進撃の始まり

主人公は5歳の少女キャラクター「チコちゃん」(声は木村祐一)。

ナインティナインの岡村隆史ら大人の解答者に素朴な疑問をぶつけ、答えられないと「ボーッと生きてんじゃねーよ!」と叱りつける。しかもCG合成で顔を真っ赤にして頭から煙を噴き出したり、目を飛び出させたりするのが人気となった。

面白さという番組の地力は誰もが認めるところだろう。

ただし同番組の見られ方を振り返ると、急伸するポイントには大雨・台風・地震などが関わっている。災害が多発した2018年を象徴する番組となっていたのだ。

まずは東京で視聴率が12.4%となり、ベスト10に初めてランクインした5月19日。

低気圧や前線の影響で、九州から北海道まで広い範囲にわたり雨が降った。特に未明に非常に激しい雨となった地域があり、秋田県では雄物川が氾濫した。

「チコちゃん」の快進撃スタートは、災害続発の始まりでもあった。

多発する台風

インテージ社の「Media Gauge」は、80万台を超えるインターネット接続テレビのリモコン操作ログを分析できるシステムだ。47都道府県の全てで、地上波テレビからBS・CSなど、全番組の接触率を15秒単位で測定できる。

この「Media Gauge」で、『チコちゃんに叱られる!』の接触率ベスト3を、9都道府県で比べてみた。

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すると東京都での1位は7月28日。ビデオリサーチ社が調べる関東の視聴率も16.4%と急伸した日だった。実はこの日は、台風12号が関東に接近した日で、直前の朝ドラ『半分、青い。』も急上昇していた。

東京都での2位は9月29日。この日も台風24号が沖縄を通過し、本州への上陸必至という状況だった。『半分、青い。』は最終回と重なり、23.5%と極めて高い数字となった。続く『チコちゃんに叱られる!』も、15.1%と前週を1%超上回った。

では9地区の接触率ベスト3を見渡してみよう。

27枠のうち半分以上が台風の影響によるものだった。台風以外でも、災害がらみが多い。大雨や局地的豪雨だったのが9枠、地震の影響が1枠あった。そして災害もなく晴天だったのは3枠のみ。非常時に強いNHKらしく、好記録の9割ほどは天変地異がらみだったのである。

神風で上昇する「チコちゃん」

神風で接触率を上げる『チコちゃんに叱られる!』が、その後どんな軌跡を描いているかも追ってみよう。

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番組の接触率が全国で一番高いのは山形県。

県内の大半が大雨となった5月19日、番組の接触率は前回より2.5%ほど高くなった。この日を境にそれまで7%前後だった接触率は、8%前後となる。

その後も大雨や局地的豪雨と放送が重なる度に、接触率は急伸し、平均接触率もジワジワ上昇を続け、今や10~11%台に達している。災害情報が気になった人が偶然チコちゃんに出会い、「意外と面白い」とその後も見続けた人が一定程度いたと考えられる。

千葉県や広島県でも傾向は同じだ。

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九州から北海道まで大雨となった5月19日を境に、接触率は共に1%ほど上昇している。そして台風12号が関東に接近した7月28日、千葉県の接触率は2%も跳ねた。その後の数字は1%ほど上昇して推移している。

また広島県でも、台風20号が四国~瀬戸内海~兵庫県を縦断した8月25日、接触率が1%ほど上った。さらに後の放送も、0.5%ほど押し上げられている。

沖縄県では、台風による変化は全国の中で最も顕著となった。

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6月15日から16日にかけて沖縄に50年に一度の記録的な大雨をもたらした台風6号が、沖縄本島を直撃した。その16日に放送された番組の接触率は3%近く急騰している。

7月21日に沖縄本島を通過した台風10号では、チコちゃんは4%弱上昇した。さらに「猛烈な勢力」に発展した台風24号は、9月29日には南西諸島に最接近した。番組接触率の上昇は4%強と猛烈な勢いとなった。

ただし3回の神風を受けても、平時の番組接触率は2%ほどの上昇に留まった。その幅は、他の地域ほど大きくはならなかった。

いずれにしても、「神風→接触率急騰→その後の平時でも数字上昇」という勝利の方程式が、全国いたるところで起こっていたのである。

各地で神風が吹きまくり

2018年の台風発生数は、今のところ29だ。そして5つが上陸し、14が接近した。

そのうち6つが『チコちゃんに叱られる!』の放送日と重なった。また大雨・局地的豪雨・地震なども放送時間に近いところでたびたび発生していた。

土曜朝にニュース・朝ドラに続く同番組は、これら数多くの神風を見事に上昇力に変えていた。運が良いとも言えるが、ブリッジ効果を最大限に活かした同番組の実力を称えるべきだろう。

個人的にも「なんでおやじは“おやじギャグ”を言う?」→「脳のブレーキが効かなくなっているから」、「おじいちゃんの眉毛が長いのはなぜ?」→「抜けるのを忘れちゃうから」など、思わず「なるほどっ」と感心してしまう回答も少なくない。

番組の構造は、2003年からフジテレビで放送されていた『トリビアの泉』に酷似している。それでもNHKらしく、問題の解答VTRは分厚く、しっかり作られたものが多い。

5歳の女の子の目線・木村祐一のアドリブ力・ナレーションの妙などと相まって、幅広い世代に支持されてきたのは頷ける。

年末には『紅白歌合戦』に登場すると報道されている。生でどんなやりとりをするのか、チコちゃんの合成CGはどうするのか、興味は高まるばかりだ。

今年と違い、2019年は災害の少ない年になってもらいたい。

ただし神風が吹かなくなったとしても、「ボーッと生きてんじゃねーよ!」という叱責が中毒になっている視聴者が増えている気がする。

番組の命は、日ごろよく目にするが本当の理由を知らない些細な現象と、その理由を突き詰める解答VTRの出来。ネタが続かないなどということがないよう、スタッフが番組をボーッと作り続けないことを願うばかりだ。

健闘を祈りたい。