不祥事で沈没するテレビ局~日テレは『イッテQ』による“負の連鎖”を断ち切れるか?~

日本テレビ本社ビル(筆者撮影)

日本テレビ『世界の果てまでイッテQ! 』でのデッチ上げ騒動が続いている。

今月7日に文春砲が火を噴いた直後、日テレは文書公表という形ですばやく対応した。ところが騒動はおさまるどころか、逆に大きくなってしまった。そして文春砲第2弾に見舞われ、遂に同社は大筋で報道を認めるに至った。またトップの大久保社長は、民放連の定例会見で謝罪する事態に追い込まれた。

さらに本日の放送では、司会の内村光良が謝罪するとの報道がある。ただし、これで収束するか否かはあやしい。

実は過去20年ほど、不祥事で沈没したテレビ局はたくさんあった。

それらのテレビ局に共通するのは、絶頂期に不祥事が起こり、対応が不十分なために事態を悪化させ、そして局全体が委縮して行くプロセスだ。

負のスパイラルを断ち切り、迅速に問題を克服する条件を考えてみた。

花に嵐

今回の『イッテQ』問題が起こる少し前まで、日テレは絶頂期にあった。

今年9月まで、同局の月間三冠王は58か月連続だった。足掛け5年に及びトップを疾走していた。

地上波テレビ局の本業は放送で、広告収入を柱とする。日テレはこの広告収入でも、長年の念願だったキー局トップを2014年度に達成した。その後2位との差は開き続け、独走態勢は盤石に思われた。

民放における位置づけも、圧倒的な存在になっていた。

今年6月には、同社の大久保好男社長が民放連会長に就任。これにより民放全体の舵取りには、日テレの意向が大きく反映されると目されていた。

テレビ界は今、放送と通信の融合に向け、大きく変わり始めている。

総務省の検討会では、NHKの同時配信問題が熱く議論されているが、ここでの鍵も日テレの動向となっている。民放系のSVOD事業として最大規模のhulu、動画配信のバックヤードを担うCDN事業、そしてネットサービスのテクノロジーを担う企業などを、全て同社が主導しているからだ。

花に嵐のたとえではないが、いわば絶頂期に『イッテQ』問題は起こったのである。

歴史は繰り返す

実はこうした事例は、過去に幾つもあった。

「楽しくなければテレビじゃない」をキャッチフレーズに、12年連続三冠王に輝いたフジテレビ。

94年に三冠の座を日テレに奪われる前年、『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』で番組収録中に出演者が死亡する事故が起きた。直後からマスコミによってバッシングが行われ、結局番組は打ち切りとなった。

この直後にトップの座についた日テレでは、2003年に視聴率不正操作事件が発覚した。

番組プロデューサーがビデオリサーチのモニター世帯を割り出し、金銭を渡して視聴を依頼したという不祥事である。この影響で、かつて“ミスター視聴率”と呼ばれた同社初の生え抜き社長は降格、そして日テレは三冠の座から陥落してしまった。

日テレから首位の座を奪い返したフジにも、またしても不祥事が待ち受けていた。

2007年に系列の関西テレビの『発掘!あるある大事典』で、納豆のダイエット効果についてのデータねつ造が発覚し、番組は終了に追い込まれた。

この頃からフジの視聴率は下がり始め、やはり系列の東海テレビの「セシウムさん騒動」や、フジテレビへの抗議デモが起こった2011年に、トップを明け渡した。

不祥事でテレビ局が沈没する例は、民放だけではない。

NHKでも04年に芸能番組での不正が発覚した後、職員による不祥事が続発した。そして国会に海老沢勝二会長が参考人招致されたが、通常行っている生放送をこの時に限ってしなかった。さらに年末に、不祥事検証番組に出演した会長が陳謝をした。ところが視聴者の不信は解消せず,受信料の支払い拒否・留保が増えつづけた。

実は海老沢会長は、この前年にNHK会長としては異例の三選を果たし、週刊誌などで「エビジョンイル」と呼ばれるほどの独裁体制が批判されていた。

この絶頂期に不祥事は起こった。国会中継でのミスや検証番組の失敗は、いわばトップや体制を守ろうとした判断ミスで、結局会長は年明けに辞任に追い込まれた。

ボタンのかけ違え

以上のように、絶頂期の不祥事を機に転落するテレビ局には、類似点が多々ある。

今回の日テレ『イッテQ』問題も、同局のピークで起こった。そして初動では、「今回の企画は、現地からの提案を受けて成立」と、日テレ本体を守り、“現地コーディネート会社”に責任を押し付けてしまった。

ところが文春砲第2弾を受けると、最初に問題となったラオス橋祭り以外にも、不適切な祭りがあったことを追認した。また現地コーディネート会社や出演者ではなく、本体の責任を認めるように論調を変えた。

そして「祭り」企画を当面休止し、「これまで以上にみなさまのご支持を得られるような番組を目指して参ります」と締めくくった。最初のボタンのかけ違え以降、苦しい説明に終始している。

14年前のNHK不祥事の時も、最初に国会中継の対応を間違え、その後の検証番組で「信頼回復と改革に尽力する」旨を訴えたが、最終的には辞任を回避できなかった。

要因は2つ。会長の謝罪と挽回表明は、視聴者には上から目線で相変わらず自らと組織の保身に汲々としていると映った点が1つ。そしてもう1つは、第三者による公正な検証を行うと明言しなかった点だ。

テレビの恐ろしさは、映像を介して実存そのものが視聴者に伝わってしまうこと。それでも信頼回復の前提として、その関門は避けて通れない。

大久保社長は民放連の定例会見で、謝罪すると共に日テレ本体の責任を認める旨を明言した。ただし他局が社長の肉声を放送したのに対し、日テレのみ映像しか使用せず、会見の様子にコメントをかぶせるに留めた。

しかも検証番組の制作や第三者による調査を明言しないまま、「企画の当面休止」と被害最小で終わらせたいという姿勢を露呈してしまった。14年前のNHKを彷彿とさせる対応だ。

得手に鼻つく

人は得意分野こそ失敗のリスクが高い。

今回の問題の震源地『イッテQ』は、同社がフジを逆転して初めて三冠王になった時の原動力の1つ“ドキュメントバラエティ”の流れをくみ、今や最高視聴率の番組となっていた。

源流は80年代の『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』だ。『電波少年』で花開き、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!』『ザ!鉄腕!DASH!!』『イッテQ』に連なる。さらにここで培われた熱量やリアリティは、『しゃべくり007』『人生が変わる1分間の深イイ話』『嵐にしやがれ』などにDNAとして受け継がれている。

今年正月に放送されたNHKの『新春テレビ放談』で、日テレのプロデューサーはこんなことを語っていた。「社内で自分は2番目に編集がうまい」と称する者が10人以上いるというのだ。

では、トップは誰か。

『イッテQ』を立ち上げ、演出の総指揮をとる古立プロデューサーだ。“ドキュメントバラエティ”のパイオニア『電波少年』で育ち、今や『イッテQ』の他に『嵐にしやがれ』『月曜から夜ふかし』など大ヒット番組を連打している。近年の日テレ独走を支える最右翼と言っても過言ではない。

ただし、ここに問題が潜む可能性がある。

つまり同局には、古立『イッテQ』をひな型とするバラエティがたくさんあるということだ。『新春テレビ放談』に出演したカンニング竹山は、「だから日テレの番組はみな似たテイストになっている」と喝破した。

確かに同局には、番組が用意した過激で過酷な企画に、出演者が体を張って挑戦するタイプの番組が多い。トーク番組でも、過激な内容や体を張ったコーナーが多い。そして、だからこそ面白く、視聴率をとっている。

しかし他局が真似できない得意分野に、落とし穴はなかったのか。

03年の同社視聴率不正操作事件の際には、「視聴率至上主義の社風が行き着くところまで行った結果起きた」と語った社員がいた。同局の中に、似た状況が蔓延していた可能性は否定できない。

だからこそ、きちんとした検証と真摯な反省が必要だ。

「これまで以上にみなさまのご支持を得られるような番組を目指して参ります」宣言は早すぎる。トップを守る・トップ番組を守るの意図が見えた瞬間、本心では反省していないと思われる。

まずは第三者の手に委ね、原因は何だったのかを明らかに、再発防止策を披露しなければならない。

それだけが同社が現在の苦境を克服する道だ。

これまで繰り返してきたテレビ局の“負の連鎖”を、ここで是非断ち切れってもらいたい。