“保守的ドラマ”の時代~『相棒』『リーガルV』『SUITS』などに見る“初回”高視聴率の条件~

ビデオリサーチ社関東地区視聴率から作成

今年10月クールのドラマの序盤を振り返ると、“初回”高視聴率ドラマはすべて同じような要件を備えている。

筆者は拙稿「“保険を掛けたドラマ”全盛時代の冒険!?~唐沢寿明『ハラスメントゲーム』の挑戦~」で、“保険を掛けたドラマ”が増えていることを詳述した。その傾向が今期は、“シリーズもの”や、初回放送前に前シリーズなどの“再放送”が増えた点に表れている。

“リアルタイムの視聴率”が高いということと“ドラマのあり方”との関係を考えてみた。

初回に強いドラマの条件

今期GP帯(夜7~11時)で放送されている民放ドラマ14本をみると、初回視聴率ベスト5は以下の通り。

1位:『相棒』(水谷豊主演・テレ朝)17.1%

2位:『リーガルV』(米倉涼子主演・テレ朝)15.0%

3位:『SUITS』(織田裕二主演・フジ)14.2%

4位:『下町ロケット』(阿部寛主演・TBS)13.9%

5位:『科捜研の女』(沢口靖子主演・テレ朝)13.1%

「ドラマ・映画・テレビ.com」が実施した『【2018秋ドラマ】期待度ランキング』では、1位となった『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』こそ、初回視聴率でも2位と期待通りのスタートを切った。

ところが2位『大恋愛~僕を忘れる君と』・3位『獣になれない私たち』・4位『中学聖日記』は、初回視聴率では8位・7位・13位と、期待通りの滑り出しとはならなかった。

実は1~5位のドラマには共通する要件がある。

筆頭は“シリーズもの”という点だ。

1位の『相棒』と5位の『科捜研の女』は、既に20年近く放送を続けている長寿シリーズドラマだ。『相棒』は、「pre season」と「season16」までで、合わせて337回も放送されている。『科捜研の女』も、スペシャル10回と「SEASON17」までで、合計201回も放送されている。

2位の『リーガルV』は一見新作だが、米倉涼子主演『ドクターX~外科医・大門未知子~』の姉妹のようなシリーズだ。『ドクターX』は、第5期までとスペシャルなどで54回放送された。そして特筆すべきは視聴率。本編第5期までの平均が21%を超える超お化け番組だ。舞台が医療界から法曹界に代わったが、実態はほとんど継続シリーズと言えるようなテイストだ。

3位の『SUITS』は、日本では初登場だが、米国ではシーズン7まで放送された人気シリーズ。韓国で今春からリメイク版が放送され、日本ではこれらに続いている。シリーズものに準ずる存在と言えよう。

そして4位の『下町ロケット』は11年にWOWOWで放送され、さらに15年秋にTBSがリメイクしている。そのTBS版は平均18.5%をとる人気ドラマとなったが、今回はその第2シリーズだ。しかも原作の池井戸潤ドラマは、TBSでは『半沢直樹』(堺雅人主演・13年夏)以来、『ルーズヴェルト・ゲーム』(唐沢寿明主演・14年春)・『陸王』(役所広司主演・17年秋)がある。池井戸ドラマ以外にも、『小さな巨人』『ブラックペアン』など、TBSには“小が大を倒す”ドラマの系譜がある。やはりシリーズものとして、かなり定着した路線と言えよう。

再放送の活用

連続ドラマの初回視聴率は、番組宣伝の巧拙が数字の多寡に影響する。

3~4年前までは、日本テレビのドラマ初回が強かった。ドラマの主人公を演ずる役者が、初回放送直前に視聴率の高い夜帯のバラエティ番組などに多く出演し、ドラマの宣伝に努めていたからだった。

当時の各局のGP帯ドラマの平均視聴率は、日テレ・テレ朝・フジ・TBSの順だった。実は初回視聴率の順位もそのままで、主演俳優の番宣活動と比例していた。(詳細は拙稿「日テレドラマの初回はなぜ強い?」)。

ところが近年、各局のドラマの視聴率は、テレ朝・TBS・日テレ・フジと順位が入れ替わっている。要因はいろいろあるだろうが、初回視聴率ではテレ朝が上昇し、日テレが苦戦している。

実は主演俳優の番宣活動は、2~3年前から各局が盛んに行うようになり、局やドラマによる差があまりなくなっていた。それとは別に、新シリーズの直前で再放送があるかないかが、初回に影響するように見え始めている。

例えば今期では、『相棒』は初回直前一週間で、以前のシリーズの再放送が7枠もあった。『科捜研の女』も5枠あり、特に初回4日前に2時間スペシャルがプライム帯で放送されたのが大きかった。

『リーガルV』も、米倉涼子主演の『ドクターX』が、直前一週間で11枠も放送された。テレ朝は平日午後にドラマの再放送枠を3時間も持っている。この物量にモノを言わせる作戦だった。

テレ朝以外にフジも、類似の作戦をとり始めている。

今期の『SUITS』では、織田裕二と鈴木保奈美が『東京ラブストーリー』以来27年ぶりに競演した。フジはこの話題を最大限利用すべく、先月中旬から同作を全話再放送していた。同作のプロデューサーを務めた大多亮常務は、「(『SUITS』の)少しでも助けになったとしたら、うれしい」と会見で話している。(「フジ・大多亮常務、『SUITS』好調の要因は“東京ラブストーリーを再放送した編成の勝利”」参照)

“シリーズもの”&“再放送の意味”

結局、今期初回視聴率のベスト5は、“シリーズもの”か“直前再放送”、あるいはその両方を兼ね備えたドラマで独占された。

5年前の秋(13年)の初回ベスト5では、いずれかの条件を満たしたドラマは『相棒』の1本だけだった。14年秋と15年秋は2本ずつ。16年秋3本、17年秋4本、そして今期5本と5年で急増していた。

ただし以上はあくまでリアルタイム視聴率の世界の話だ。

データが判明している放送後一週間の録画再生視聴率で見ると、1~3位はリアルタイム1~5位と同様だ。ところが事前の期待度で上位を占めた『大恋愛』『獣になれない私たち』『中学聖日記』などは、リアルタイム上位と大差はない。特に『大恋愛』初回は、インターネット上の見逃しサービスで150万回以上視聴され、史上最高記録を作っていた。ところが新作ドラマは、視聴習慣があり、漫然と見ていた人が多く含まれていたかも知れないリアルタイムでは苦戦しがちだ。

つまり自分の都合のつく時間にじっくり見た人の間では、事前の期待度上位ドラマはかなり見られていた。ところが視聴率だけがクローズアップされがちだ。そして各局の編成・制作現場は、その数字に影響され、事前に番宣しやすいシリーズものに流される傾向がある。

しかし残念ながら、これではドラマの多様性は担保されにくい。

さまざまなニーズを持つ多彩な層の人々にとって、パターン化され最大公約数をとりやすいドラマが重視されるようでは、見たい番組が良い時間に放送されないことになる。結果として櫛の歯が次第に抜けるように、少数派の視聴者がテレビから離れて行き、全体としてテレビの視聴者が減って行ってしまう。

やはり作り手は、マーケティングデータだけに影響されず、自分が面白いと思うテーマ、作りたいと思う作品性で積極的に勝負してもらいたい。それが結果的に、テレドドラマのラインナップを豊かにし、ファンを増やして行く道と信じたい。

現場の奮起に期待したい。