土屋太鳳『チアダン』の低視聴率は“やっぱり”でも“さすが”~青春学園ドラマにこだわるTBSの矜持~

(写真:Motoo Naka/アフロ)

2018年夏クールのドラマが終了した。

各ドラマを視聴率で見ると、ベスト5は『義母と娘のブルース』『刑事7人』『遺留捜査』『グッドドクター』『絶対零度』の順。

そしてワースト5は『ラストチャンス』『健康で文化的な最低限度の生活』『ゼロ 一攫千金ゲーム』『チア☆ダン』『警視庁ゼロ係』が並んだ。

画像

以上を見渡すと、今後が期待される若手女優を大量に投入し、長期間ダンスの特訓を施して臨んだ『チア☆ダン』の低迷に目が行く。

今クール唯一の青春学園ドラマだったが、「やっぱり」という思いと「でも、さすが」という納得感が交錯する。ドラマのTBSの矜持を感じるからだ。

『チア☆ダン』の実績

人気女優が主人公のドラマという視点で今クールを見渡すと、石原さとみ『高嶺の花』・綾瀬はるか『義母と娘のブルース』・土屋太鳳『チア☆ダン』などが挙がる。ところが『チア☆ダン』だけは、視聴率下位グループに沈んでしまった。

そもそも番宣の“量”という意味では、3ドラマとも互角だった。

近年はドラマの主人公が番宣を兼ねて、バラエティなどに出演することが多い。今回の3ドラマでは、各主人公が初回直前の3日間で出演した番組は、4本・7本・5本。うち視聴率の高いGP帯(夜7~11時)では、1本・3本・3本だった。つまり『チア☆ダン』は、決して他の2本に引けを取っていなかった。

それでも初回視聴率は、11.5%・11.1%・8.5%。『チア☆ダン』だけ一桁と振るわなかった。タイムシフト視聴率でみても、11.0%・11.3%・7.5%とひとり一桁だ。ドラマとして、最初からあまり期待されてなかったことがわかる。

画像

しかも2話以降の動向でも、『ぎぼむす』はライブ視聴率が右肩上りだった。

『高嶺の花』は2話以降で少し下がったが、最終回は初回を上回った。ところが『チア☆ダン』は、3話以降で低迷し、最後まで1~2回を上回ることはなかった。

タイムシフト視聴でも、『チア☆ダン』だけがパッとしなかった。じっくり見るという人も多くなかったのだ。やはり青春学園ドラマは、現代では苦戦を強いられる運命にあるようだ。

低迷する青春学園ドラマ

学校が舞台で学生が主な登場人物となる青春学園ドラマは、近年数が減っている。

そもそもは60~80年代が黄金期だった。

60年代では『青春とはなんだ』『これが青春だ』『でっかい青春』(いずれも日本テレビ)などがあった。

70年代には『おれは男だ!』『飛び出せ!青春』『ゆうひが丘の総理大臣』などの日テレ路線の他、『若い!先生』(TBS)『愛と誠』(テレビ東京)など、他局も参戦し始めた。

そして80年代以降、『3年B組金八先生』(TBS・79~2011年)『スケバン刑事』(フジテレビ・85~87年)『白線流し』(フジ・96~05年)『キッズ・ウォー』(TBS・99~03年)など、シリーズ化される話題作が増えた。

ところが2010年代になると、流れが変わり始める。

ひとつは『マジすか学園』(テレ東・10~12年/日テレ15年~)など、深夜帯での放送が増えた点。もうひとつGP帯では、視聴率が一桁に終わるものが増え、放送本数が減った点だ。

テレビの視聴者は、10代や1層(20~35歳)の数が減り、3層(50歳以上)が増えて今や全視聴者の半分ほどを占めている。そのためGP帯では、世帯視聴率を保つためにターゲットの年齢が上がる傾向にある。その結果、青春学園ドラマは深夜帯に追いやられるようになったのである。

画像

そんな状況にあってTBSだけは、今もGP帯で放送している。しかも『表参道高校合唱部!』や今回の『チア☆ダン』のように、熱血感動モノに拘り続けている。

ドラマの多様性を担保し、素直な感動物語を伝えようという意志があるからだろう。

「やっぱり」と「さすが」の間

『チア☆ダン』は、広瀬すず主演の同名映画で描かれた「JETS」打倒を目指す、土屋太鳳たちチアダンス部「ROCKETS」20人の物語だ。

毎回の基本パターンは、何か困難が起きては最後に克服していき、途中ダンスシーンが披露される構成だ。

そんなストレートな物語に、放送初期の段階から好意的な感想もネット上では結構みられた。

「高校生が夢を追いかける話は好き」

「夏はこれぐらいスカッとベタな青春ドラマもいいね」

「多少古臭くても暑苦しくても、若者が夢に向かって頑張るこういう青春ストーリーは嫌いじゃない」

それでも視聴率は5話までで5%台までに落ちてしまった。

「主役土屋太鳳では年齢的に高校生役はきつすぎる」

「ありきたりな熱血ドラマ」

「ホントにベタな青春ドラマで先も読める」

こんな批判的な声が率下落を象徴した。

「やっぱり」という感じだ。

深夜の青春学園ドラマなら、アイドルグループ中心のキャスティングで、10~20代の受けを狙う。ところが最大公約数狙いのGP帯では、それでは数字がとれない。今春の『花のち晴れ』がそのパターンだろう。

さりとて人気女優たちの配役だと、若年層から不満が噴出する。しかも熱血ドラマは序盤で、「既視感がある」など2~3層からの批判にも晒されがちだ。

ここ数年の青春学園ドラマと同様、『チア☆ダン』もそんなパターンに陥っていた。

それでも視聴者の感想は、終盤でトーンが明らかに変わった。

「毎回涙なしでは見られませんでした」

「40代女ですが、シンプルに感動して涙が止まりませんでした。こういうドラマ少なくなってきてるからかな。いいドラマでした!」

「夢をもつ事すらあきらめていたわかばだったのに…できっこないに挑戦して夢ノート、ついに全国大会にこぎつくまで、ひとりじゃできない事だったから、 仲間や先生、お父さんたち、大切な人たちとのやりとりには、こちらも一緒に泣かされました・・・」

視聴率も5%台から7%台まで挽回した。

Yahoo!JAPANリアルタイム検索で見ると、ツイート数も初回6000ほどから途中2000ほどまで落ちたが、最終回は4000まで挽回している。話題ドラマとして盛り上がり、感動を集めたことは間違いない。

「さすが」という納得感である。

ハリウッド映画の関係者は、「米国のモラルバックボーンを我々が担っている」という矜持を持つと聞いたことがある。これに倣って言えばTBSドラマには、少々視聴率が悪かろうが、ベタで先が読める青春ドラマと批判されようが、しっかりと感動でき視聴者を前向きにさせるドラマへのこだわりがあるように見える。

テレビドラマの多様性を担保するためにも、今後も青春学園ドラマの灯を燃やし続けてもらいたい。