甲子園決勝の接触率 秋田44.3%vs大阪16.3%~エリア別データが示す“感動の伝播”~

(写真:アフロ)

盛り上がった秋田県

第100回全国高校野球選手権の決勝は、北大阪代表の大阪桐蔭と秋田県代表の金足農業の対決だった。

大阪桐蔭が勝つと、史上初となる2度目の春夏連覇。金足農が勝つと、東北勢として春夏を通じて初の優勝。

どちらが勝っても史上初という好カードだったが、結果は13対2。大阪桐蔭が圧倒的な強さを見せた。

ところが両校の試合が、地元でどのくらい見られたかを見ると、勢いは全く逆転する。

インテージ社Media Gaugeが調べる接触率では、金足農の秋田県は44.3%、対する大阪桐蔭の大阪は16.3%。比率にすると14対5と、スコアとは真逆になる。

金足農の地元秋田が如何に盛り上がっていたかがわかる。

秋田県での視聴率

秋田県での視聴率については、メディアを見る限り第3回戦と準々決勝しか発表されていない。実は秋田県でのビデオリサーチ社の調査は、1か月の半分の2週間しか行われていない。よって準決勝と決勝の数字が出てこないのである。

優勝候補の横浜(南神奈川)に逆転勝ちした3回戦は、テレビ中継が細切れとなった。その中でも、17日午前11時2分からの52分間は、38.3%と関東地区10.1%の4倍になった。

また9回裏に2ランスクイズで近江(滋賀)に逆転勝ちした準々決勝は、53.8%とサッカーW杯日本代表戦やNHK紅白並みに高視聴率になった。

関東地区は11.8%だったので、5倍近い数字となる。

このように秋田は金足農で大フィーバーだったが、これら2試合をインテージの接触率でみると、3回戦27.5%・準々決勝46.2%。東京地区が3.4%・6.5%だったので、秋田は東京の7~8倍もよく見られていたことがわかる。

視聴率と接触率

ちなみに視聴率と接触率は同じ数字にならない。調査方法が異なるからである。

ビデオリサーチが調べる視聴率は、100世帯中何世帯が見ていたのかの平均値。ただし一家に複数台のテレビがある場合は、1台でも該当番組を見ていれば視聴率に加算される。

例えば、調査対象の家庭すべてに3台のテレビがあり、全家庭のすべてのテレビが異なる番組を映し出していたとすると、視聴率の合計は理論上300%になる。つまり視聴率は大きな数字が出やすい。

一方インテージの接触率は、インターネットにつながっているテレビ端末ごとに調査をしている。

仮に、1家に複数台のテレビが対象となり、それぞれが異なる番組を見ていても、分母がテレビ台数なので、数字は100%を超えず低めとなる。

また調査対象の規模も全く異なる。

ビデオリサーチの秋田県での調査は、ランダムサンプリングで県内200世帯を抽出し、その視聴実態を調べている。

視聴率が40%の場合、標本誤差は±7%ほどとなる。

一方インテージの調査は、秋田県で約4000台である。調査規模が大きく、標本誤差が非常に小さくなる。

東北各県も次第に熱狂

秋田の大フィーバーに話を戻そう。東北各県を見渡すと、実は秋田以外でも次第に盛り上がっていたことがわかる。

1~3回戦では東京や他の地域と同様、さして注目されていない。甲子園前半では、東北各県にも代表校があり、当然そちらの応援が中心だからだ。

ところが1回戦で、花巻東(岩手)と羽黒(山形)が敗退した。 

2回戦で、聖光学院(福島)・仙台育英(宮城)・八戸学院光星(青森)が負け、秋田県以外は全県姿を消した。

そして3回戦で、金足農が優勝候補の一角・横浜(南神奈川)を劇的な逆転で破ると、俄然東北地方での注目が集まり始める。

画像

どこの県も3回戦までの接触率は一桁だったが、準々決勝と準決勝で二桁に乗り、決勝では20%前後。東北勢として春夏を通じて初の優勝という大記録が見え始めて、東北全体が一体化して行った様子がわかる。

ちなみに秋田は、その中にあって別格だった。

103年ぶりの甲子園決勝進出が見え始めた準々決勝と準決勝は40%前後。他の東北各県と比べても2~3倍、東京とでは7倍ほどとなっていた。

全国にもジワジワ波及

金足農フィーバーは、東北だけに留まらなかった。次第に全国の人々を巻き込んで行ったことが、各地の接触率の変化をトレースするとわかる。

例えば1~3回戦。

順当に勝ち上がって行った大阪桐蔭と金足農の東京での接触率は、ずっと大阪桐蔭の方が高い。優勝候補筆頭の戦いを見たいという人は、序盤から確実にいた。ところが金足農の知名度はさほど高くなく、ずっと4%未満に留まっていた。

画像

ところが強豪・横浜を破って、評価は一転した。

接触率はほぼ倍増し、しかも大阪桐蔭の試合を上回るようになった。

そして決勝戦では、どちらが勝っても史上初という好カードになったこともあり、東京でも接触率は二桁に乗せた。

好対照の2チーム

盛り上がりは、もちろん両チームが好対照だったことも大きい。

SNS上では、興味深い表現が幾つも見られた。

スーパーエリートの大阪桐蔭とダークホース(?)の金足農

【大阪桐蔭】・決勝勝率100%・ほぼ全員が元日本代表・全国から集められた精鋭中の精鋭・事前調査では最高ランク「S」・圧倒的ラスボス感

【金足農業 】 ・決勝初進出・全員が地元の軟式上がり・エース吉田が甲子園に連れて行くと…

【金足農業高校の校則】・りんごを盗んだ奴は停学・梨を盗んだ奴は退学・ブタをいじめてはいけない

【大阪桐蔭の校則】・男女交際禁止・勉強遅れてる人は夜8時まで強制居残り・入学式の2週間後1週間の勉強合宿・2年前まで携帯電話の所持禁止だった…

極めつけは、こんな写真まで両校の象徴としてSNSに投稿されたことだった。

実は大阪桐蔭のような“野球のための高校”は、今に始まったことではない。

エリート選手を各地から集め、英才教育を施す学校は、昭和の時代からあった。この合理主義に抗うような金足農の粗削りな存在が多くの人々に心に響き、全国各地の接触率の動向となって表れていたと総括できよう。

いずれにしても、100回大会に相応しい好対照2チームの対決だった。そして人々の感動の伝播が、データでトレースできた初めての大会でもあった。

イベントはまだまだ面白くなるし、メディアはもっと深く伝えられると確信した記念の大会だった。