残念ながら綾瀬はるか『ぎぼむす』は新垣結衣『逃げ恥』を超えられない!

キャリアウーマン亜希子(綾瀬はるか)が、結婚相手・宮本良一(竹野内豊)の連れ子との母娘関係を構築して行く物語『義母と娘のブルース』。

TBS火曜10時枠としては、新垣結衣『逃げるは恥だが役に立つ』以来の大ヒットを驀進中。今クールでは、全ドラマの中で目下トップを行っている。

この調子なら、最終回で20.8%の大ヒットとなった『逃げ恥』を超えるかもと期待がかかるが、前半を冷静に分析すると、残何ながら『逃げ恥』ほどの伸びは期待できないようだ。

両ドラマで何が違うのか、考えてみた。

リアルタイム視聴率は伯仲

開始2分で良一が息を引き取る急展開となった第6話が放送されると、「綾瀬はるか主演「ぎぼむす」絶好調 “逃げ恥”と視聴率で伯仲」という記事が出るなど、16年10月クールで大ヒットした『逃げるは恥』と視聴率が大接戦となっている点に注目が集まった。

そもそも筆者は、第3話が放送された時点で、「綾瀬はるか『ギボムス』は新垣結衣『逃げ恥』を超える!?」を執筆していた。視聴率の好調ぶりもさることながら、「ビジネスの世界を家庭に持ち込む」斬新さ、「約束ごとから入りながら、生活を通じて感情が変質していく」ドラマチックな展開、そして随所にまぶした社会派ラブコメディの上質さが共通していたからだ。

予想に違わず、4~6話でも『ぎぼむす』は大健闘を続けている。

『逃げ恥』が13.0→13.3→13.6%とジワジワ数字を上げたのに対して、『ぎぼむす』は12.2→13.1→13.9%と上昇率で上回った。筆者の期待「綾瀬はるか『ぎぼむす』は新垣結衣『逃げ恥』を超える!?」は、いよいよ現実のものとなるような勢いに見えた。

総合視聴率が語る事実

しかしここまでの展開で、筆者は予想を少し下方修正せざるを得ない。

拙稿のタイトル「残念ながら綾瀬はるか『ぎぼむす』は新垣結衣『逃げ恥』を超えられない!」だ。リアルタイム視聴率だけを眺めると、確かに『ぎぼむす』は『逃げ恥』と伯仲している。

ところが他のデータをつぶさに見ると、両ドラマの勢いには明らかな差があるからだ。

例えば、録画再生視聴を含めた総合視聴視聴率。

『逃げ恥』では、第6話まで録画再生視聴率も、一度も下がることなく右肩上がりの軌跡を描いた。結果として総合視聴率も、初回19.5%から第6話25.8%と右肩上がりを続けた。

ところが『ぎぼむす』の録画再生は、順風満帆とはなっていない。

初回11.0%は『逃げ恥』より高い。ところが第2話で2.1%下がり、現時点で判明している第4話まで、ずっと初回を下回り続けている。

リアルタイム視聴は、“食事をしながら”“家族で会話しながら”など、“ながら視聴”をある程度含んでいる。ところが録画再生視聴は、落ち着ける時間にじっくり“専念視聴”している場合が多い。つまり録画再生視聴が伸びていないというのは、「集中して見る人が増えていない」状況であり、物語の訴求力で『逃げ恥』に及んでいない可能性がある。

結果として、リアルタイムと録画再生を勘案した総合視聴率では、第4話で2.3%の差をつけられている。依然大健闘ではあるものの、“伯仲”という言葉が適切か怪しくなっている。

ドラマのコンバージョン

ドラマを見た後、家族や友人・知人と会話したり、SNSで発信したり、ドラマの関係情報を検索したりすることがある。内容に触発されて、何らかの行動が喚起されるのである。

このコンバージョンの状況も、番組の潜在能力を測る一つの物差しとなる。

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例えば検索活動。

Google Trendsのデータによれば、『逃げ恥』最終回を100とした場合の各話の指数は、両ドラマで大差となっている。

初回は7対15と『ぎぼむす』が上回った。綾瀬はるかのサイボーグのようなビジネスウーマンぶりが、強烈なインパクトだったことが大きかったようだ。

ところが2話以降、この数字も伸び悩む。

第4までずっと初回を下回ったまま推移する。この間『逃げ恥』は数字を上げ続け、第4話では21対12とダブルスコア近くまで引き離されている。

5~6話もこの傾向は同じで、第6話でも48対27と大差のままである。

『ぎぼむす』しかデータを検証できないが、Yahoo! JAPANのツイート数も気になる。

2~4話はすべて初回を下回っており、録画再生・検索数と同じ結果となっている。やはり初回のインパクトを超えるものが、2~4話には欠けていたと思わせる。

ただし第5話で1万超となり、ようやく初回に追いついた。そして神回という評価も出た6話は、1万7700と数字は一挙に跳ねた。

神回比較

実は第6話は、両ドラマとも神回の評判が立った。

『逃げ恥』では、平匡(星野源)とみくり(新垣結衣)が、せっかく温泉旅行に行きながら何もなく終わり、帰りの電車の終点でキスをするという展開が大ブレークした。以後、二人の関係性は大きく変わるという物語のターニングポイントだった。

『ぎぼむす』も、夫・良一の死、亜希子が人間的な表情を出せるようになる、みゆきが子役の横溝菜帆から上白石萌歌にバトンタッチ、亜希子の娘の呼び方が「みゆきさん」から「みゆき」と呼び捨てになる、そしてみゆきと大樹(井之脇海)の関係が変わるなど、明らかに第6話はターニングポイントだった。

ところが『ぎぼむす』では変化が幾つもありながら、メイン二人の関係が変質した『逃げ恥』に、インパクトという意味で及んでいない。後者は第5話の25から倍近い48に跳ね上がった。ところが『ぎぼむす』は、22から27と1.2倍ほどに留まった。

シンプルに多くの人の心を動かすのか、知的な度合いは高いが広がりを持ち難いのかの違いなのだろう。

それでも『ぎぼむす』は面白い

以上のように視聴者の反応全体で見ると、『ぎぼむす』は『逃げ恥』ほど波紋を広げていない。

この調子でいけば、『逃げ恥』は最終回でリアルタイム視聴率20.8%・総合視聴率33.1%の大記録を打ち立てたが、『ぎぼむす』はその8~9掛け程度に留まる公算が強い。

それでも視聴率は、あくまで量的評価に過ぎない。

満足度や感動を与える度合いでは、『ぎぼむす』は『逃げ恥』に引けを取らないとみている。

例えば初回でのビジネス用語のオンパレード。

自分が母になる“メリット”を示そうとする亜希子の一生懸命さ。家族になりたいために亜希子が送った“履歴書”に対する、みゆきの「選考の結果、採用」というビジネスライクな返事のもたらす味のある感動。傑出したドラマであることを十分示していた。

第3話では、学校やPTAの方針に徹底抗戦した亜希子の姿勢が秀逸だった。

“親の背中を見て、長いものに巻かれる処世術を子供が獲得していくのは許せない”とした亜希子の主張に、自らをしみじみ省みてしまった視聴者は多かったことだろう。

第6話でも、良一の葬式でテキパキ段取りをこなす亜希子に対して、不動産屋(麻生祐未)は一喝した。

「バカなのかい?あんたの役目はそんなことじゃないだろう」

「悲しむことだよ、みゆきちゃんと一緒に」

この後亜希子は号泣し、人間的な表情を取り戻していく。初回以降で大きなインパクトを持ち続けたビジネスライクな振る舞いは、この瞬間のためにあったのかと納得した人は多かっただろう。

以上のように、『逃げ恥』と『ぎぼむす』を比較分析すると、いろいろなことが見えてくる。

要はドラマの奥深さに驚くばかりという一語に尽きるが、一視聴者としては複数のドラマをイチイチ比較しながら楽しむわけではない。

ビジネスから入った『ぎぼむす』が、どんな母娘関係に繋がっていくのか、着地点を夢想しながら後半を楽しみたい。