「片っ端から、救ってやるよ」の『ブラックペアン』 脇役たちもみな最後に救われた!

TBS本社前の番組ポスター群

二宮和也主演『ブラックペアン』が終わった。

近年の医療ドラマのどれより終盤で盛り上がり、高い評価を得ているが、理由は幾つかある。まずは二宮和也がヒール的な存在のスーパードクターを好演したこと。その主人公の復讐劇が、ブラックペアンにまつわる想定外のどんでん返しで、感動的に結末するというストーリーテリングの秀逸さ。

筆者はもう1点、個性的な登場人物の多くが、途中から意外な一面を見せ視聴者の好感度を上げ、最終回で役者としての見せ場をそれぞれ好演した点も見逃せないと考えている。

「患者を生かし、医者を殺す」ヒールの医者の物語だったはずなのに、最後にみんな生かしてしまうとは、何とも心憎いドラマだった。

終盤&最終回の盛り上がり

最終回の視聴率は18.6%。ラスト3回で急上昇したが、その上げ方はこの1年の医療ドラマ(『コードブルー』(17年夏)・『コウノドリ』(17年秋)・『ドクターX』(17年秋)・『アンナチュラル』(18年冬)のどれより大きかった。12~13%台で7話まで推移し、8~9話16%台・最終回18.6%は4割近い上昇率。ラスト4話で5割ほど上げた『逃げるは恥だが役に立つ』(16年秋)以来の快挙だ。

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前提には、内容に対する視聴者の高い評価があった。

データニュース社「テレビウォッチャー」によれば、満足度は初回から3.82とドラマの平均よりかなり高く始まった。それが8話4.02・9話4.15と滅多に出ない数値にまで上がっており、最終回がどこまで上がっているか、見ものである(現時点ではまだ出ていない)。

次回見たい指数も同様に高い。初回130は春クールのGP帯(夜7~11)放送の民放全ドラマの中でトップクラス。それが右肩上がりに上昇し、4話で150突破、8話で160を突破していた。次回を見たいと思わせる展開と演出でも、最も優れたドラマだったのである。

興味深いのはSNS上での、放送前後24時間のツィート数。

初回の5万8000は、春クールGP帯ドラマのトップだったが、2話以降急速に減り、3話以降は『花のち晴れ』にも抜かれていた。深夜ドラマの『おっさんずラブ』にも完全に水をあけられていた。

ところがラス前3万台、最終回が約7万と、やはり最後は大盛り上がりとなった。

あらゆる局面から見て、終盤および最終回は傑出していたと言えよう。

主人公とエンディング

同ドラマの魅力は、まず二宮和也がスーパードクターなのにヒールという意外性が耳目を集めた。しかもセリフが少なく、表情や目だけで演技するという難しい役どころを好演し、多くの視聴者が吸い寄せられた。

「二宮くんのヒール役が、意外性があって良い」男40歳(初回・満足度5・次回絶対見る)

「ニノの冷たい雰囲気面白い」女46歳(初回・満足度5・絶対見る)

「ニノの得体のしれない感じ。悪魔かそれとも違うのか。展開が楽しみ」女52歳(初回・満足度5・絶対見る)

番組を担当した伊與田英徳プロデューサーも、スポーツ紙のインタビューで、「二宮君に悪役というイメージが全くない中、もちろんできると思ってオファーしたんですが、これほどとは」と舌を巻き、「スーパーアイドルですが、役者になるために生まれてきた人と思えるぐらいの才能」と絶賛している。

その二宮演ずる主人公・渡海は、父の復讐のターゲットを佐伯教授(内野聖陽)としていた。ところがブラックペアンにまつわる物語は、渡海が想定していたものと全く違っていた。その大どんでん返しぶりは、単に予想外なだけではなく、“医者とはどうあるべきか”医療の本質に関わる感動的なお話しだった。こんな大どんでん返しをやられては、「参った!」としか言いようがない。

脇役たちの存在感

以上の事実だけでも同ドラマは名作中の名作と言えるが、筆者はもう1点、主人公以外の役者の描き方が秀逸で、満足度をさらに高める要因になっていたと考える。

個性的な登場人物の多くが、途中から以外な一面を見せ視聴者の好感度を上げ、しかも最終回で役者としての見せ場をそれぞれ好演していたからだ。

例えば帝華大から東城大に刺客として差し向けられた高階(小泉孝太郎)。医者のオペ技術に頼らない最新医療用機器「スナイプ」の推進派として初回から渡海と対峙した。ところがオペ中にことごとく渡海にやられてしまうのだが、視聴者の好感度は次第に上がっていく。

「小泉孝太郎が渡海先生に少女を助けてくれとお願いするシーンは感動した」女61歳(4話・満足度5・絶対見る)

「小泉孝太郎がいい」女43歳(4話・満足度5・絶対見る)

最終回では、渡海は父が辞職するきっかけとなった飯沼という患者の真相を暴こうとする。佐伯教授の留守中を任された高階は、一旦は制止しようとするが、「俺を信じろ」という発言で渡海に従うこととなる。

ディズニー映画『アラジン』みたいだが、信念を重んじ、「必要ならルールを変える」柔軟な高階の存在感を見せつけた名場面だった。

渡海を的確にサポートする有能な看護師“猫ちゃん”(趣里)も少ない出番ながら存在感を出していた。

「趣里ちゃんがいい女優になった」女52歳(初回・満足度5・絶対見る)

「目立っているわけではないが存在感半端ない。すごい目つきをすることが有りゾッとする」女66歳(7話・満足度4・絶対見る)

その猫ちゃんの本領発揮は第8話。世良(竹内涼真)と組んで調査を始めた花房(葵わかな)を捕まえ、「何を調べているのか知らないけど、もし渡海先生の邪魔をするなら、あなたを潰すことになるわ」と恫喝する。その表情の恐ろしさはバツグンだ。

そして最終回。

渡海が探し続けていた患者の手術を始める際、それまで手伝ってきた花房を猫ちゃんは手術室から追い出そうとする。「出てって。必要ないの。邪魔」と横眼で睨みつけながら言う。教授命令に背いての手術のため、若くて未来のある花房に責任を取らせないようにする配慮を見せたのだった。実は良い人だったのだ。

アナウンサーの仕事から、初めての女優業に挑戦した加藤綾子。治験コーディネーター・木下役での参戦だ。第7話では、もともと看護師だったが、医療過誤問題で責任をとらされていた過去が明らかになる。

「謎多き女性なイメージだったけど、好感度が上がった」女29歳(7話・満足度4・なるべく見る)

「演技も上手くなってきたように感じます」女44歳(7話・満足度3・絶対見る)

そして最終回での圧巻のシーン。

佐伯教授に内緒の手術を止めようとする看護師長・藤原(神野三鈴)。それを阻止する木下。「出ていきなさい。人を呼びますよ」の命令に、「どうぞ。呼んだら、佐伯先生の起こしたペアンのことが公になりますね」と藤原を黙らせる。女同士の対決は、迫力満点だった。

迫力と存在感なら、「日本外科ジャーナル」編集長・池永(加藤浩次)も十分魅せた。

「加藤浩次が良い味を出している」男44歳(9話・満足度4・絶対見る)

視聴者にこう言わせた第9話では、世良(竹内涼真)が土下座して涙ながらに、佐伯教授の手術に参考となる論文を紹介して欲しいと懇願する。その熱意に応えて、池永は自ら論文で命を助けられた過去を話し、「論文は誰かの出世のためではない、命のためです。その橋渡しをするのが私の仕事です」と答え、該当する論文を取り寄せる。

さらに最終回では、出世しか念頭にない帝華大の西崎教授が、日本外科学会の理事長選で優勢なのを見て、佐伯の代わりに池永が檀上にあがる。“最新テクノロジーと医者の最高の腕の両方が必要”という佐伯の考えを紹介し、「反目する二つの志、それを共存させることこそ、これからの医療には必要なのです」と演説を締めくくる。その姿には、もはやお笑いタレントの片りんはどこにも見られない。

その池永を、そこまで動かしたきっかけは研修医の世良(竹内涼真)が作った。真っすぐな性格で、真摯に医療と向き合う姿が多くの視聴者の好感を集めていた。

「竹内涼真も人間らしくて良い」女44歳(3話・満足度5・絶対見る)

「研修医の竹内涼真のひたむきさもいい」女72歳(5話・満足度5・なるべく見る)

「世良先生が編集長に佐伯先生を助ける方法を教えてくれとやりとりするシーンは、うるうるしてしまいました」女61歳(9話・満足度5・絶対見る)

最終回では、「渡海先生に1億借りがあります。でも、まだ何も返せてないですよ」と、病院を離れようとする渡海を止めようとする。ただし「わかったよ」「腹減った。コメ炊いて来いよ」のセリフにあっさり騙されてしまう。最後まで真っすぐな性格のままだが、エンディングとして想定外の名シーンだった。

紙幅の関係で書ききれないが、同ドラマには心にとめておきたい名シーン・名セリフがたくさんあった。各登場人物の最終回での名演技も、1~9話までの布石を知ってみると、味わいは一段と増す。感動を反芻したいという方は、『ブラックペアン』特集などで是非見直してみて頂きたい。