二宮和也『ブラックペアン』の強さは“ワンパターン”&“脱ワンパターン”にあり!

二宮和也主演の『ブラックペアン』がいよいよ最終回を迎える。

視聴率と満足度という量と質の評価を積算して割り出す満足度指数でみると、同ドラマは終盤で爆発的な伸びを見せている。

医療をテーマにしたドラマは、この1年を振り返っても毎クール放送されているが、その中で比較しても同ドラマの上げ方は際立っている。

何が凄いのか、考えてみた。

視聴率比較

医療はドラマの定番だ。

過去1年でも、毎クール放送されている。

『コードブルー』(17年夏・山下智久&新垣結衣)14.6%

『コウノドリ』(17年秋・綾野剛)11.9%

『ドクターX』(17年秋・米倉涼子)20.9%

『アンナチュラル』(18年冬・石原さとみ)11.1%

『ブラックペアン』(18年春)13.8%(9話まで)

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これら医療ドラマを視聴率でみると、ちょっとした法則性が見えてくる。

『ドクターX』『コードブルー』『コウノドリ』はシリーズ・ドラマで、それぞれ続編の放送だった。その結果、初回放送は前回シリーズ最終回の数字に近い数字でスタートしている。認知度と評判が定まっており、比較的楽なスタートだったと言えよう。

例えば『コウノドリ』は、前回最ラストが12.3%で新シリーズ初回が12.9%。『コードブルー』は、16.6%から16.3%のバトンリレー。そして『ドクターX』は、22.8%から20.9%につながっている。

これに対して新作は、序盤で苦労しがちだ。

認知度の問題と、ドラマの世界観への馴染みが乏しいため、初回の数字も低めに出ることが多い。また2話以降で一旦数字を落とすことも多い。

『ブラックペアン』は13.7%で始まり、3話までに1.6%失った。『アンナチュラル』に至っては、初回12.7%から5話までに3.7%も落としている。

ところが終盤では、明暗が逆転することが多い。シリーズものは、初回と比べ終盤の上がりが弱い。マンネリ化で視聴意欲が薄れる傾向にあるようだ。

例えば『コードブルー』は、初回15.3%に対して、最終回は16.4%と1%ほどしか上がっていない。『コウノドリ』に至っては、初回が12.9%、ラス前11.1%・ラスト10.8%と下がっている。

逆に新作は、終盤で数字が上がる傾向にある。物語の決着がどうなるか、多くの人が興味を持つからだ。例えば『ブラックペアン』は、初回より終盤が3%ほども高くなっている。

満足度比較

これが満足度となると、シリーズものと新作ものの差はより大きくなる。

データニュース社「テレビウォッチャー」は、関東2400人のモニターに、実際に視聴した番組の満足度・次回見たい度・自由な感想などを記述してもらっている。

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5段階で投票してもらっている満足度で見ると、シリーズ化の続編は初回から数値が高い。『ドクターX』が3.92、『コードブルー』4.01、『コウノドリ』4.05だ。ドラマの平均は3.6~3.7なので、極端に高い成績だ。

いっぽう新作ドラマは、視聴率と同様に序盤に苦戦する傾向にある。『アンナチュラル』は3.87で始まった。『ブラックペアン』は3.82のスタートだ。一般的に新作ドラマの初回は、ドラマの平均3.6~3.7を下回ることがザラにある。これと比較すると、2本とも高い評価と言える。それでもシリーズものには及んでいない。

ところが終盤は立場が逆転する。視聴率と同じように、新作がシリーズものを上回る傾向にある。

例えば『コードブルー』の最終回は、初回より0.03ポイント上回っただけだ。『ドクターX』で0.13、『コウノドリ』で0.09ポイントだ。

いっぽう『アンナチュラル』は、0.36ポイント上げていた。『ブラックペアン』の場合、第8話は0.2ポイント、第9話は0.33ポイントと、終盤にどんどん数値を高めている。最終回がどこまで行くのか見ものである。

満足度指数

以上から、視聴率と満足度を積算した満足度指数を算出してみた。

初回を100として、その後に各回の指数はどう変化したかを見るためだ。冒頭の図がその詳細だが、単純化して序盤(初回と2話)と終盤(最後の2話)だけを比較すると、差が明確になる。

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シリーズ・ドラマの『コードブルー』と『コウノドリ』は、序盤より終盤の方が数値は低い。『ドクターX』に限っては、これでシリーズも最後と思った視聴者が少なくなかったようで、最終回の視聴率が極端に上昇した。そのため満足度指数も上がっていた。

新作の『アンナチュラル』は5ポイントほど数値を上げていた。そして『ブラックペアン』は、直近2話が32ポイントも序盤より高い。医療ドラマの中で、断トツの成績をおさめているのである。

急伸の理由はパターン化!?

では『ブラックペアン』の指数は、なぜ終盤でかくも大幅にアップしたのか。

筆者は制作陣の腕力をまず挙げたい。もう少し丁寧にいうと、パターン化と非パターン化の姿勢だ。

パターン化の最たるものは、毎回の展開が「最新医療機器でトラブル→患者がひん死→天才外科医・渡海(二宮)登場」を基本としている点だ。これにドキドキしながら見ている視聴者は少なくない。

「リアルな医療シーンが本格的で、医療従事者でも引き込まれます」女42歳(初回・満足度5・次回絶対見る)

「毎回緊迫感があって目が離せません」男51歳(4話・満足度5・絶対見る)

「話はワンパターンで、最後は二宮が手術を引き受けて成功というパターンだが、二宮の迫力に惹きつけられる」女73歳(5話・満足度5・なるべく見る)

ただしワンパターンは、知恵や工夫のないワンパターンではない。見ていてワクワクするような変化は、予想を裏切るどんでん返しなどで練られている。

「先が読めない展開が面白い」男44歳(4話・満足度5・絶対見る)

「毎回裏切られる。水面下での騙しあいが面白い」女46歳(5話・満足度5・絶対見る)

「毎回、違うパターンの話がでてきて面白い」男46歳(5話・満足度3・なるべく見る)

「ストーリーが文句なく面白い」男56歳(5話・満足度5・絶対見る)

非ワンパターン1

設定や毎回の展開は、一見『ドクターX』と似ている。

「成功率100%」は「わたし、失敗しないので」に通ずる。手術に際して、高額のお金を要求する点も同じだ。組織や権威に媚びず、孤高を行く姿もダブる。要は手塚治虫の『ブラックジャック』が源流と言えよう。

それでも『ブラックペアン』には、決定的な違いがある。

アイドルの二宮和也を、ヒール的な存在にしている意外性だ。この1点を以てドラマに吸い寄せられた人は少なくない。

「二宮くんのヒール役が、意外性があって良い」男40歳(初回・満足度5・絶対見る)

「ニノの冷たい雰囲気面白い」女46歳(初回・満足度5・絶対見る)

「ニノの得体のしれない感じ。悪魔かそれとも違うのか。展開が楽しみ」女52歳(初回・満足度5・絶対見る)

非ワンパターン2

展開にも工夫が随所にある。

神の手を称されるほどの手術技術に、序盤は手術用最新医療器具「スナイプ」が挑む。“AI”対“人知”のような対決が第4話までで一通り決着すると、第5話からは内視鏡下手術支援ロボット「ダーウィン」の登場だ。ステージが1ランク上がったようなものだ。そして第6話では、「ダーウィン」から日本版手術支援ロボット「カエサル」へとバトンタッチされる。手を替え品を替えといった感じだ。

しかもその「カエサル」も簡単には成功しない。

渡海(二宮)の母(倍賞千恵子)の緊急手術を行ったが、体内を傷つけてしまった。「近親者の手術は出来ない」という東城大病院の規定を超えて、最後は渡海が執刀し事なきを得る。しかも規定破りは、事前に母が同意書に、「危険になったら、最後は息子が担当する」と記していたためにお咎めなしとなる。

知らない間に、「母の愛・母の偉大さ」がテーマとして入れられている。

その後も、第7話で渡海がライバルの帝華大へ移ってしまう。この回では平行して、治験コーディネーターの木下(加藤綾子)の過去が明かされる。そしてストーリー全体としては、東城大病院の院長・守屋(志垣太郎)が情報漏洩を行っていた事実も判明する。ピンチを最後に渡海が救うというワンパターンは、この回では大きく替えられていた。

そして視聴率も満足度も急伸した第8話。

日本外科学会で帝華大が「カエサル」手術を披露することになったが、やはりトラブルが発生。ここで渡海(二宮)の出番かと思いきや、佐伯教授(内野聖陽)がオペ室に入ってきて、「渡海、代われと言ってるんだ。邪魔」と、ニノの決め台詞を奪って、手術も成功させてしまう。

第9話ではその佐伯が倒れた。やはり渡海の出番かと思いきや、佐伯は渡海を拒否して「カエサル」を使うこととなった。しかも短時間で終わらせる難手術だ。

東城大の医師たちは佐伯の命を救うために、それまでの確執やプライドを捨て一致団結する。

研修医の世良(竹内涼真)も日本外科ジャーナルの池永編集長(加藤浩次)を訪ね、涙ながらに佐伯を救うための論文を教えて欲しいと土下座する。そしてその論文から、光明が見えてくる。

いっぽう手術室に入れない渡海は、結局「カエサル」を遠隔操作し、無事手術を完成させてしまった。

8~9話も、完全にワンパターンを裏切る新たな手法で描き切っている。

最終回が見もの

如何だろうか。

単純なワンパターンではなく、徐々にステージを上げる、ワンパターンを崩す、主な登場人物の経緯を入れ込み共感を増やすなどの手法が駆使され、結果としてファンを魅了し続けている。

しかも主人公の二宮だけでなく、多くの役者が見せ場を演じ、それで評価を上げる演出も忘れていない。

「佐伯教授の曲者さ加減を内野さんがよく演じていますね」女61歳(3話・満足度5・次回絶対見る)

「内野聖陽の、裏のある演技が良い」男36歳(3話・満足度3・絶対見る)

「研修医の竹内涼真のひたむきさもいい」女72歳(5話・満足度5・なるべく見る)

「小泉さんが好演している」女65歳(5話・満足度5・絶対見る)

「小泉孝太郎が渡海先生に少女を助けてくれとお願いするシーンは感動しました」女61歳(4話・満足度5・絶対見る)

「志垣太郎の小物演技が良かった」女36歳(7話・満足度3・絶対見る)

かくして評価が急伸した8~9話。

この2回で、渡海の父と佐伯との間の秘密もかなり示された。最終回は17年前の医療ミスの真相が明かされるのだろう。ここに登場人物たちの、どんな人間性を塗りこめていくのか。演出として完成度はどうなり、その思いは視聴者にどこまで届くのか。

最終回を存分に楽しみたい方は、『ブラックペアン』特集などでもう一度、布石の意味合いや効果を確認して頂ければ物語のラストを楽しめるはずだ。

いずれにしても、最終回の出来に期待したい。