ニノはMJ・キムタクを超えるか?~二宮和也『ブラックペアン』vs松本潤『99.9』木村拓哉『BG』~

今クールGP帯(夜7~11時)放送の民放14ドラマの中で、満足度トップを行く二宮和也主演『ブラックペアン』。ダークヒーローという新境地を切り拓く怪演ぶりに、多くの視聴者が見入っている。

今年に入ってジャニーズのアイドルが主演を務めたヒットドラマは3つ。『ブラックペアン』の他に、松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士-』SEASON2と、木村拓哉主演『BG-身辺警護人-』。

それぞれの第5話までを比較し、『ブラックペアン』とニノの可能性を考えてみた。

6視聴指数比較

まず3ドラマを6つの指標で比較してみよう。

視聴率・視聴者数・展開指数・満足度・見たい指数・はまり指数だ。視聴率はビデオリサーチ社関東900世帯のライブ視聴率から、5話までの平均が16.6%だった松潤『99.9』を100として、他2ドラマの5話平均を出した。キムタク『BG』86、ニノ『ブラックペアン』78で、ニノが一番遅れを取っている。

展開指数は、その視聴率から割り出す。

初回を100として2~5話の平均値を算出した。ここでもトップ松潤を100とすると、キムタクが79でニノは83。キムタクはかわしたが、2話以降で視聴率が上がった松潤には差をつけられた。

ところが質的評価では、ニノは松潤に肉薄する。

満足度では100対96、見たい指数が100対95、そしてはまり指数は100対99。

データニュース社「テレビウォッチャー」のモニター関東2400人の投票によるデータだが、満足度は5段階評価。見たい指数は「(次回)絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」の5評価を点数化したもの。はまり指数は、初回から第5話までをライブあるいは録画再生で見た人の数で算出した。

これら3指数では松潤にかなり迫ったが、いずれも勝ることはできなかった。

一つには『99.9』がSEASON2で、どの指標も上がりやすくなっていた点がある。実際16年春の『99.9』SEASON1と比較すると、満足度や見たい指数ではほぼ肩を並べる。

そして最後の視聴者数では、分母2400人のうち1話平均303人を注目させたニノが、240人のキムタクや282人の松潤をおさえてトップに立った。最も話題性があったドラマということだろう。

視聴率分析

では各指標を、個別に精査してみよう。

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まず視聴率では、連続ドラマの主役を21作演じたキムタクの栄光が凄い。『HERO』(01年)や『GOOD LUCK!!』(03年)など、平均視聴率30%超の作品が4作もある。ドラマ全体の数字が下がる中、04~09年に5作連続20%超の数字をとっている。そして今でも15%前後とクールのトップ争いを展開する。主役として最も累積視聴率の高い俳優の座は揺るがない。

そのキムタクを過去2作連続で上回ったのが松本潤だ。『99.9』のSEASON1と2で、10%台後半を連打した。社会派に親父ギャグなどお笑いの要素をまぶした同ドラマで、松潤は新たな視聴率男の地位を確立しつつある。

ただし二宮和也も黙っていない。

緊張感あふれる手術の現場をリアルに描き、しかも主人公像が“オペ室の悪魔”の異名をとるダークヒーローのため、敬遠する視聴者が少なからずいた。それでも5話平均で13.0%は大健闘だ。

しかも録画再生視聴率も勘案した総合視聴率が凄い。

現時点で数字が出ている第4話までの平均は22.1%。ライブ視聴率と比べると、総合視聴率では松潤ドラマとの差を縮めている。じっくり見る人ではより多くを集めている。往年のキムタクドラマと比べると、2000年代半ばの頃の数字に届いている。

満足度分析

3人のドラマを満足度で精査すると、風景がやや異なる。

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『HERO』2や『アイムホーム』の頃のキムタクは、満足度がドラマの平均3.6~3.7を上回っていた。ところが17~18年と徐々に下がり、今年の『BG』は平均を下回った。キムタクは期待値を上回り続けられなくなっている。

ところが14年に主演した際には平均値あたりだった松潤とニノは、右肩上がりとなっている。

松潤は『99.9』SEASON1が3.90、SEASON2が4.03と極端に高い値を獲得した。質量ともに、高い評価を得た名作をけん引した役者に成長している。

ニノの『ブラックペアン』も、3.88は松潤には及ばなかったもののかなり高い。キムタク『HERO』第2シリーズを上回っており、負の側面を敢えて描くダークヒーローにも関わらず、極めて高い評価を得ている。冒険をしながら結果をきっちり出す、良い仕事ぶりと言えよう。

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初回から5話の満足度を見ても、『ブラックペアン』は右肩上がり傾向で、良い流れに乗っている。中盤から6話連続で4.0を超えた『99.9』2を超えるのは難しそうだが、後半失速した『HERO』第2は逆転しそうだ。

見たい指数分析

後半への期待は、見たい指数にも表れている。

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第5話までの平均が147だった松潤『99.9』1と、142のニノはほぼ互角に推移している。

同じ医療モノとして、平均126だったキムタク主演『A LIFE~愛しき人~』は圧倒している。さらに言えば、米倉涼子『ドクターX』の第4~5期も、138と144だったのでほぼ互角だ。

医療ドラマの中で比較すると、3ドラマともスーパードクターの物語という点が共通する。

その中で入念な準備を前提とし、毎回外科手術をバンバンやらなかった『A LIFE』だけが、満足度でやや数字を落とした。

女医でフリーランス、かつ「私失敗しないので・・・」と最も単純明快で劇画調だった『ドクターX』が、視聴率も満足度も一番高くなった。ただし見たい指数では『ブラックペアン』と大差ない。シリーズ5作と“まんねり”や“ワンパターン”の印象が拭えなかったための結果だろう。

逆に大学病院の権力闘争を嫌らしく描き、手術現場もリアルに描写し、かつ主人公像に露悪的に迫った『ブラックペアン』は、新境地を開拓しつつ水準以上の結果を出している。特に見たい指数の健闘ぶりは、後半の展開に期待を持たせる。

視聴者数分析

最後に視聴者数の動向を精査しておきたい。

「テレビウォッチャー」2400人のモニターを分母とすると、ライブあるいは録画再生で初回を見た人は、『ブラックペアン』が332人。『99.9』2は245人、『BG』231人だった。初回での話題性では、ニノドラマが圧倒した。

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その後『BG』は、第3話で100人が新たに見始めた。『99.9』2も、第4話で95人も新規視聴者がいた。『ブラックペアン』は第2話も78人が新たに見始めるなど序盤に爆発力を持ったが、次第に新たな視聴者は減り、全体としても少しずつ視聴者数を減らしている。

一方『99.9』2や『BG』は、途中で見始めた人が多かったために、視聴者数は3~5話で増えた。特に『99.9』2の展開指数が高くなったのは、こうした事情によるものだ。

同ドラマはSEASON2に入り、第2話で主人公の生い立ちの秘密を全部晒すなど、最終回のような作りを見せた。また第3話以降は、主人公たちが戦う相手が検察だけでなく、裁判官も対象と物語のステージが上がった。こうした構成が高い評価につながっていた。

今後への期待

この意味では『ブラックペアン』も、第6話以降に期待が持てる。

2大学2教授の権力闘争に対して、距離をとる主人公・渡海(二宮和也)。そしてペアンの影が映るレントゲン写真に暗示される主人公の秘密。そして上昇志向が目立っていた高階(小泉孝太郎)が、医師の本分に目覚めるという変化。さらに様々な対立を目の当たりにしながら、確実に成長し始めた研修医・世良(竹内涼真)。

明らかに物語のステージが上がり始めている。

視聴者の声と評価にも、そうした変化が反映している。

「渡海はほんとは良い奴なんだと思えてきた」男46歳(満足度4・次回なるべく見る)

「今回も色んな対立軸が絡んで面白い回だった」男43歳(満足度5・絶対見る)

「今回は渡海先生が悪者側ではなかったので、大変すっきり出来た」女44歳(満足度5・絶対見る)

「話の道筋がだんだん見えてきた。人を直す前に権威と権力そして金力が三つどもえになって暗闘が繰り返される医学界に慄然とする」女68歳(満足度4・絶対見る)

「文句なく面白かった。展開力にも奥行きがあってこれからも楽しみ」男49歳(満足度5・絶対見る)

さらに一番の魅力は主人公・渡海を演ずる二宮の魅力がある。

もともと『少しは、恩返しができたかな』(06年TBS)・『マラソン』(TBS07年)・『DOOR TO DOOR~僕は脳性まひのトップセールスマン~』(09年TBS)などで演技力を見せつけた二宮だ。『少しは、恩返しができたかな』で第15回橋田賞の個人賞、『マラソン』で文化庁芸術祭テレビ部門放送個人賞を受賞している。

吉永小百合と共演した映画『母と暮らせば』(15年)では、第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞している。

そんな二宮が、これまでとは全く異なる演技を見せているのが今回のドラマだ。視聴者の評価も当然うなぎ登りだ。

「二宮君のワルぶりが良い」女61歳(満足度5・次回絶対見る)

「二宮さんの一つ一つの表情が微妙に全部違くて凄いと思う」女42歳(満足度5・絶対見る)

「二宮のいやらしい演技、すごい」男64歳(満足度4・絶対見る)

「二宮和也の迫力に惹きつけられる」女73歳(満足度5・なるべく見る)

「二宮は演技がうまいな」女52歳(満足度5・絶対見る)

あまたある医療ドラマの中で、さらに新たな地平に挑戦している同ドラマ。ニノの演技にも、そのチャレンジ精神は表れている。しかも単純で分かりやすい世界に安易に走らず、“善悪はあざなえる縄の如し”と言うリアリティに迫る志も持ち合わせている。

視聴率という量を測る数字では爆発的な結果を残さないだろうが、質的評価で高い数値を獲得し、視聴者の記憶に残る名作になりそうだ。