序盤で大ピンチの岩田剛典×戸田恵梨香『崖っぷちホテル!』に大逆転はあるか?

初回視聴率を100とした場合の各回の推移

ヤル気・実力共にゼロのスタッフが集う、破産寸前のド底辺ホテル。

若すぎる新米女性総支配人・戸田恵梨香と、自由過ぎる謎の訪問客から突如副総支配人になった岩田剛典が、負債総額3億円の崖っぷちから、ホテルを立て直そうというのが『崖っぷちホテル!』だ。

ただしスタッフは、空気の読めない新人パティシエ・競艇狂いの総料理長・アメニティ泥棒の清掃員・常時酩酊中のバー責任者・横領疑惑の元副支配人などクセ者揃い。ホテル名“グランデ・インヴルサ”にあるような大逆転は容易ではない。

序盤でいきなり“崖っぷち”

同ドラマ初回の視聴率は10.8%。民放GP帯(夜7~11時)ドラマ全14本の中では4位と順調なスタートを切った。日本テレビの他2本も、『正義のセ』11.0%、『Missデビル』9.6%と、初回に強い同局の伝統を守っていた。主役級の俳優が、初回放送の直近でバラエティ番組に出演するなど、巧妙な番宣の成果といえよう(詳細は拙文『TVドラマ再考(下) 日テレドラマの初回はなぜ強い?』参照)。

ところが『崖っぷちホテル!』は、第2話で6.1%へと急降下。

一般的にも初回から第2話で視聴率を落とすドラマは多い。今クールも14本中11本が数字を下げた。ところが大半の下げ幅は2割未満だ。同ドラマの42%は断トツで、ドラマのタイトル通り、いきなり“崖っぷち”に立たされた格好だ。

ちなみに日テレ日曜10時枠ドラマ自体も、けっこう“崖っぷち”だ。

2015年4月に新設されて以来、同年夏クール『デスノート』で二桁を記録した以外、視聴率はずっと一桁に低迷したまま。特にこの1年は、7.7%→8.6%→6.2%→7.0%と、存続を問われても不思議でない“崖っぷち”状況が続いている。同ドラマも第5話までの平均は7.5%だが、初回を除くと6.7%。大ピンチと言わざるを得ない。

敗因は序盤

敗因は何といっても序盤にある。

ヤフージャパンによれば、初回放送日のリアルタイム検索数は1万3223件。他ドラマと比べても上位に入るほどで、こうした話題性も初回視聴率二桁の一翼を担った。

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ところが放送が始まってみると、データニュース社「テレビウォッチャー」のモニター2400人の評価は厳しかった。5段階評価で投票する満足度の初回は3.33。GP帯ドラマ14本の中ではワースト3位だった。ドラマの平均は3.6~3.7なので、極端に低い。しかも第2話も3.36とほとんど上がらず、こちらは最下位に後退してしまった。

「テレビウォッチャー」では、次回の視聴意欲も聞いている。「絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」の5段階評価だが、こちらの評価も芳しくない。初回を見た人の次回視聴意欲はワースト3位にとどまった。

2400人のモニターで、ライブ・録画再生を問わず同ドラマに接触した人の数は、初回136人が第2話で101人に減少した。4人に1人が視聴しなくなった計算だ。視聴率が42%も下落したのと同じ傾向にある。

実際に第2~3話で見るのをやめた人々の声・満足度・視聴意欲はかなり厳しい。

「途中で寝てしまった」女34歳(初回・満足度1・次回たぶん見ない)

「これからの展開も期待できなさそう」男46歳(初回・満足度1・絶対見ない)

「期待はずれ感ハンパなかった」女55歳(初回・満足度1・たぶん見ない)

「ありがちな展開で、あまり面白くなかった」女37歳(第2話・満足度2・たぶん見ない)

「今後見るかわからない」女47歳(第2話・満足度1・見るかも知れない)

「展開も登場人物もいまいちリアル感がない」女57歳(第2話・満足度3・たぶん見ない)

大逆転の兆し

低い満足度と視聴意欲は、こうした人々の結果だった。

ところが大逆転に向けたポジティブな要素も散見される。例えば満足度も視聴意欲も、第3話以降かなり高くなっている。

満足度:3.33→3.36→3.75→3.65→3.78。

見たい指数:91→118→134→141→139。

満足度は平均を上回るようになり、見たい指数も140前後と、質的に高く評価する人々が多くなった。制作陣が標榜する“笑って笑って、いつの間にやら感動する”痛快シチュエーションコメディが、徐々に視聴者に浸透し始めたようだ。しかも第3話以降、敵・クセ者・ダメ人間が、岩田剛典の突拍子もないやり方に影響され、共感できる人間性を見せるようになっていく。

多くの視聴者が、こうした側面をポジティブにとらえ始めたようだ。

「軽いドラマと期待してなかったが、なんだかんだ見入ってしまう」男51歳(第3話・満足度5・絶対見る)

「元料理長と副支配人の心が通うシーンが感動した」男31歳(第3話・満足度4・なるべく見る)

「すごく感動鈴木浩介さんが演じる役柄も適任」女57歳(第4話・満足度5・絶対見る)

「え!?となる展開で面白かった」男20歳(第4話・満足度4・絶対見る)

「ちょっと身につまされた」女52歳(第4話・満足度5・絶対見る)

「りょうがかっこいいしお洒落で癖があっていい役」女43歳(第5話・満足度5・絶対見る)

「副支配人の頭脳と優しさに感動」女57歳(第5話・満足度5・絶対見る)

オリジナルドラマの難しさと可能性

同ドラマの主役・岩田剛典は、人気ダンサーであり俳優としても幅広く活躍し始め、10~30代の女性ファンを虜にしている。今ドラマでも「笑顔が良い」など評価する人が多い。

ヒロイン・戸田恵梨香も、近年の活躍が目覚ましい。感情の葛藤がある難しい役を演じられる女優で、演技を評価する声が幾つか届いている。

そして脇役も、渡辺いっけい、りょう、浜辺美波、中村倫也、西尾まり、鈴木浩介、宮川大輔、くっきー(野生爆弾)、チャド・マレーンと個性派が揃っている。

それでもヤル気・実力共にゼロのスタッフが集う“崖っぷち”という極端な状況と、そこに型破りだが超一流ホテルのスターホテルマンが突然降臨するという展開が、視聴者の中に違和感を産んだようだ。しかも彼の処遇に納得しないスタッフたちは、元料理長(中村倫也)が心変わりする第3話まで、誰も共感できる部分を見せていない。この初回と2話への低い評価で視聴率は致命的なダメージを受けてしまった。

視聴者の注目を集めようとする極端な設定を用意しがちなオリジナルドラマの難しさだろうか。面白さを感じるまでの許容時間が、視聴者側もどんどん短くなっているのも一因だ。結果として安全策をとる局の思惑で、『相棒』『ドクターX』『99.9』『ドクターヘリ』のようなシリーズものが増えている。

それでもオリジナルドラマには、強みもある。物語の行方は容易にネタバレしない楽しみである。

例えば岩田が演ずる主役は、一流ホテルの副総支配人という地位を捨ててまで、なぜ沈みかけのホテルに転職したのか。徹底的に腐ったように見える元総支配人(渡辺いっけい)は、まっとうになるのか。その変身に納得性はあるのか。そして“崖っぷち”ホテルの大逆転はどう成し遂げられるか、などである。

同ドラマには、データの上でも明るい兆しが見えている。満足度や視聴意欲という質的評価が上がっている他に、タイムシフト視聴率の高さである。序盤3話までの結果がビデオリサーチ社から発表されているが、8.0%→7.1%→7.2%は、全番組の中で3位→4位→4位。落ち着いて見られる時間にじっくり見ている人が如何に多いかわかる。

こうした視聴者の口コミ効果が残っている。録画再生からライブ視聴へ回る人も出るだろう。そして何より、一度歯車が狂いダメになった組織がどう再生していくのか、現代人の多くの関心事にドラマは向き合っている。その問題解決の手法と実現のプロセス次第で、同ドラマの評価には大逆転の余地がある。

同ドラマ初回、台風で行方知れずとなっていたガロと呼ばれる鳥の置物が、プールの底から発見され元の位置に戻された。ガロとはポルトガルで幸運や奇跡を呼ぶ伝説の鳥だ。

戸田恵梨香がプールの水を入れ替えたために再発見された置物だった。この後、ボルドソン(黄昏)の光が反射して、“グランデ・インヴルサ”のスイートルームは、揺らめく光で満たされた。奇跡の一瞬である。

ドラマ全体を暗示する初回のエピソードが、具体的にどう物語として展開し、視聴者の心に届くのか。制作陣の魔法に期待したい。