3女優ドラマ対決の行方 菜々緒『Missデビル』×吉高『正義のセ』×長澤『コンフィデンスマンJP』

2018年春クールの序盤戦が終わった。

GP帯(夜7~11時)の民放ドラマ14本では、菜々緒・吉高由里子・長澤まさみの3人が、同世代の人気女優として、それぞれ主役を担っている。

“クールビューティ”菜々緒・“カワイイけど天然”吉高・“今一番面白い女優”長澤の3人は、持ち味が違うし、出演するドラマのテイストも異なる。そして視聴者の反応も様々だ。

どう見られているのかを各種データから分析し、今後を展望してみたい。

3ドラマ対決の総論

視聴率・満足度・(次回)見たい指数・ツイート数・集中度の5指標で、3ドラマを概観すると次のようになる。

視聴率トップは吉高ドラマ主演『正義のセ』。

ただしツイート数や視聴者の集中度は最下位で、話題性に欠けるようだ。また満足度や見たい指数は中位で、視聴者にはあまり面白いと思われていない。

話題性で抜群だったのは、菜々緒主演『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』。初回のツイート数は断トツで、画面に人を釘付けにした度合い(集中度)も、初回から第2話では他2作を圧倒した。ただし満足度・見たい指数に現れる質的評価はさほど高くなかった。極端な設定で、初回に拒否感を示した人が多かったのが痛かった。

業界的に最も注目されたのは、長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP』。

『リーガルハイ』『デート~恋とはどんなものかしら~』などの人気ドラマ、『ALWAYS 三丁目の夕日』などのヒット映画などを書いた古沢良太が脚本担当ということで、“フジ月9の復権”が期待された。

実際に序盤3話を見る限り、視聴者の満足度・見たい指数でトップ、ツイート数と集中度は1位『Missデビル』に肉薄する2位と各指標は上々の出来だ。ところが視聴率だけは、3話とも二桁に届かず今一つ。

ドラマの見られ方の奥の深さを示す結果となっている。

視聴率

各ドラマを指標別に分析してみよう。 

まずビデオリサーチ社が調べる視聴率では、『正義のセ』だけが辛うじて二桁。他2ドラマは8%台にとどまった。

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『正義のセ』は初回11%→2話9.9%→3話10.3%。

『Missデビル』は9.6%→8.1%→8.8%。

そして『コンフィデンスマンJP』は9.4%→7.7→9.1。

吉高ドラマは何とか及第点、他二つは“可もなく不可もなく”と言ったところだ。

3作に共通するのは、いずれも2話で数字を落とし、3話で一部を取り戻している点。その2話での落ち方は長澤ドラマが最も大きく、逆に3話で初回近くまで戻した。ところが他2ドラマは、2話での落ち方こそ大きくなかったが、3話ではあまり戻せていない。

初回を100とすると、

吉高ドラマは100→90→94。

菜々緒ドラマ100→84→92。

そして長澤ドラマは100→82→97。

最も振幅が激しくなったが、4話以降の数字がどう振れるか、微妙な展開になっている。

満足度と見たい指数

視聴率は量的評価だが、質的評価としては満足度や(次回)見たい指数がある。データニュース社「テレビウォッチャー」が関東2400人のモニターを対象に、ライブ・録画再生を問わず、自発的に見た番組について聞いている。

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これによると、

満足度では長澤ドラマが3.42→3.72→3.97。

吉高ドラマが3.47→3.56→3.65。

菜々緒ドラマ3.23→3.56→3.71。

5段階評価で投票する満足度では、ドラマの平均が3.6~3.7。『コンフィデンスマンJP』は初回こそ平均未満だったが、第2話で平均を上回り、第3話はかなり高い成績になった。

一方『Missデビル』の初回3.23は、民放GP帯ドラマの中で最低だった。ところが『正義のセ』より早いペースで伸び、第3話で平均を上回るようになった。

3本の中では初回でトップだったが、最も伸びが鈍い『正義のセ』とは対照的な動きとなっている。

(次回)見たい指数も同様の推移を示している。

各回の5段階評価データを指数化すると、

長澤ドラマが1.01→1.31→1.47。

吉高ドラマが1.05→1.19→1.28。

菜々緒ドラマ0.79→1.25→1.32。

やはり初回は『正義のセ』が一番高いが、2話以降で伸び悩む。一方『コンフィデンスマンJP』の伸びが最も高く、第3話では他2作とかなり差をつけた。そして『Missデビル』は、初回の評判が極端に悪い。それでも2~3話でかなり挽回し、『正義のセ』を上回るようになっている。

集中度と話題性

これら質的評価は、視聴者がどの程度集中して見ていたかと比べると、興味深い点が浮かび上がる。

集中度はTVision Insights社が、関東800世帯をモニターとして調べている。テレビにセンサーを設置し、テレビの前に何人いて(VI=ビューアビリティ・インデックス)、どの程度テレビを見ているか(AI=アテンション・インデックス)を測定している。VIとAIを掛け合わせた数字が、実際にどのくらい集中して見られていたかを示す指数で、“猫が見てても視聴率”と言われる既存の量的評価の欠点を補うものと言えよう。

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これで見ると『Missデビル』の集中度が、3話平均1.47で最も高い。ただし3話の推移は、1.55→1.62→1.23と第3話で伸び悩んでいる。VIが1.46→1.47→1.27、AIが1.06→1.10→0.97。1台のテレビの前に最も多くの人を集めていたが、彼らの視線は必ずしもテレビに向かっていなかったようだ。

菜々緒が悪女に徹すること、人事コンサルとして過激な施策を繰り出すことなどで、当初は相当に注目された。ところが設定が極端過ぎて、満足度も見たい指数も低く始まった。強い刺激も見慣れるに従い、注目度は次第に下がる。VI×AIで示す集中度は、第3話でトップから2位に後退している。

実はこれを裏付けるデータがある。ヤフージャパンが「リアルタイム検索」で提供しているツイート数だ。

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同ドラマが放送された3日を比べると、24407件→7687件→6850件と推移した。初回では強烈に注目されていたが、その注目度は急速に衰えていった。集中度の失速と同様の展開となっている。

代わりにトップに躍り出たのは『コンフィデンスマンJP』。

VIが1.18→1.15→1.42、AIが1.14→1.22→1.02。VI×AIで示す集中度は1.35→1.40→1.45と、堅調に伸び、第3話で『Missデビル』を交わした。実はツイート数も同様で、14960件→10571件→9742件と話題性があまり衰えず、2話と3話でトップとなっている。

同ドラマでは、満足度も(次回)見たい指数も同様に伸びた。内容的に最も高く評価されたと言えそうだ。

ただし視聴率は、初回で二桁に届かず、第2話で大きく後退した点が痛い。ドラマとしては、今一つ届いていない部分がありそうだ。

視聴率は及第点だが、実は『正義のセ』にも課題を感ずる。

集中度が1.08→1.13→1.05と最も低い。テレビの前の人数は1.05→1.25→1.27とまずまずの伸びを示したが、どの程度テレビ画面を見ているかでは、1.03→0.90→0.83と逆に悪くなっている。質的評価も3作の中で最低だ。「あまり面白くない」から「あまり集中して見ない」へという悪循環に陥っている可能性がある。下手をすると、今後は脱落者が続出する可能性もある。懸念を残したと言えよう。

視聴者の声:菜々緒ドラマ篇

以上のように三者三様の見られ方だったが、なぜそうなのかは視聴者の声に耳を傾けてみないと、本当の理由はわからない。「テレビウォッチャー」では、満足度と見たい指数という質的評価を集めながら、自由記述も併せて拾っている。各ドラマの見られ方を説明するような意見を抽出してみよう。

当初話題性が高く大いに注目されたが、質的評価が低かった『Missデビル』。

話題性と注目度は3話で下がったが、逆に満足度や見たい指数は高くなった。視聴率は二桁に届いていないが、今後はどんな展開となるだろうか。

「菜々緒の演技力がいまひとつで、ストーリーもそれほどよくなかった」女47歳(初回・満足度3・次回なるべく見る)

「社会人の大人が小学生並みの集団いじめを行っているのがとても嫌だった」女37歳(初回・満足度1・見るかも知れない)

「実際にはありえない話」男46歳(第2話・満足度2・見るかも知れない)

初回は極端な設定や過激な内容に拒否感を示した視聴者が少なくなかった。質的評価が低かった所以である。ところが2~3話とストーリーが展開するに従って、視聴者の反応に変化が見られる。

「椿さん、本当は良い人かも知れないと思った」女46歳(第2話・満足度5・次回絶対見る)

「見ごたえがあった」男43歳(第3話・満足度5・絶対見る)

「だんだん面白くなってきた」女43歳(第3話・満足度5・絶対見る)

「会社を辞めても次の人生がよければ・・」男48歳(第3話・満足度5・絶対見る)

「女王の教室の再来かと感じた」女60歳・「菜々緒さんのファッションにくぎつけ」男48歳・「同情だけではいけない人事の世界を描いた納得感のあるシナリオ」男29歳と、内容に深くコミットするコメントも増えている。エンタテインメント性と内容の深さを評価する人が増えており、今後の伸びしろを感じさせる。

ただしライブあるいは録画再生で見た人の数では、初回164人が第2話136人、そして第3話103人と総視聴者数は6割ほどに減っている。

内容的にも1~2層(男女20~49歳)を狙った作りで、その分録画再生視聴の比率も高い。残念ながら視聴率を画期的に上げるのは、簡単ではなさそうだ。

視聴者の声:長澤ドラマ篇

満足度・見たい指数でトップ、話題性や集中度でも好成績、ただし視聴率が想定通りなっていない『コンフィデンスマンJP』。

それでも主演の長澤まさみへの評価はかなり高い。

「長澤まさみの演技が上手で面白かった」女28歳(第1話・満足度5・絶対見る)

「長澤まさみがますますいい女になっていた」男46歳(第2話・満足度3・見るかも知れない)

「長澤まさみ新境地だ」女52歳(第3話・満足度5・絶対見る)

話題性、質的評価、そして主演女優への評価が高いのに、ではなぜ同ドラマの視聴率は今一つなのか。視聴者の声と人々の動向をつぶさに見ると、ちょっと気になる点がある。

「ドタバタでついていけない」女63歳(初回・満足度3・なるべく見る)

「設定が突拍子すぎてあまりよく分からなかった」女46歳(初回・満足度3・見るかも知れない)

「滑稽だが内容が薄い感じがする」男69歳(初回・満足度3・見るかも知れない)

「何が面白いのか分からないし、世界というのか雰囲気というのか、苦手」女38歳(初回・満足度1・たぶん見ない)

 

こうした初回でネガティブだった視聴者は、第2話あるいは第3話を視聴していない。

「テレビウォッチャー」2400人のモニターの中では、初回を見た人は207人。第2話で69人が新たに見始めたが73人が見なくなり、総視聴者数は203人に減った。そして第3話で32人が新たに見始めたが46人が脱落し、人数はさらに189人に減ってしまった。

拙稿『データが示すフジ月9と民意とのズレ~長澤まさみ『コンフィデンスマンJP』初回で抱いた不安~』で、「“楽しいばかりのから騒ぎ”に対して、人々は一瞬面白いと思っても、それだけでは好感が長続きしないのではないのか」と同ドラマへの危惧を示していたが、どうやら予想はある程度当たっているようだ。

視聴者の多様性がドラマでは無視できないことが、このドラマで確認されることになりそうだ。

視聴者の声:吉高ドラマ篇

今のところ視聴率でトップだが、他の指標が今一つの『正義のセ』。

視聴率は第2話で下がったが、一応第3話では半分ほど戻している。それでも第4話以降への不安材料が散見される。視聴者の声と動向からは、何が見えてくるだろうか。

「緊張感もなくて途中で飽きた」女29歳(初回・満足度1・次回絶対見ない)

「ありきたりな検事ドラマになってるなあ」男26歳(初回・満足度3・見るかも知れない)

「少し面白みにかける」女54歳(第2話・満足度3・なるべく見る)

「ストーリーがありきたりで、イマイチ」女48歳(第3話・満足度3・なるべく見る)

やはり声を拾うと、視聴者を引き付ける力という意味では、強力とは言えそうにない。ただしライブと録画再生を合わせた視聴者数を追うと、面白い現象に気づく。

菜々緒ドラマも長澤まさみも、2~3話で脱落者がかなり出たために総数を減らしていたが、吉高ドラマだけは210人→210人→211人と数を全く落としていない。

内容に厳しい評価を下しつつも、脱落しない視聴者が多いのだ。

「すごく面白い訳でもないし、斬新なストーリーな訳でもないが、家族で見れる感じ」女46歳(第2話・満足度3・見るかも知れない)

「話はつまらないけど吉高さんの服はかわいい」女30歳(第3話・満足度3・なるべく見る)

「なんとなく単純で盛り上がりに欠けるが、吉高由里子が可愛いので見ている」女43歳(第3話・満足度3・なるべく見る)

「ストーリーも結末も単純だと思いますが、キャストの演技が魅力的なので最後まで引きこまれてしまいます」女65歳(第3話・満足度3・なるべく見る)

なるほどドラマを見続けるか、途中で止めるかの理由は単純ではないようだ。

刺激的だが途中で飽きて脱落する人、それほど面白いわけではないが何となく見続ける人。出演者・設定・ストーリー展開、そして見る側の環境や心理状態で千差万別となっている。

強い刺激と内容の面白さで、序盤で減ってしまった視聴者を『Missデビル』は挽回できるのか。

コンゲームによる話題性と質的評価を一定程度獲得しながら、視聴率で苦戦している『コンフィデンスマンJP』。多様な視聴者にリーチするという課題を、今後どこまで克服できるのか。

そして序盤3話では視聴率を保つが、内容への評価が今一つの『正義のセ』。視聴者の興味関心をどこまで引っ張れるのか。もしくは新たな新機軸で新規視聴者を獲得できるのか。

三者三様の3女優ドラマ。大枠がだいたい見えたが、視聴者の評価はどう変わって行くの、ドラマの奥の深さを示す3本になっており、今後に期待したい。