ドラマの成否は第2話にあり!?~松潤『99.9』&石原さとみ『アンナチュラル』に見るヒットの法則~

2018年冬ドラマがすべて終了した。

GP帯(夜7~11時)放送のドラマ11本のうち、視聴率ベスト3は『99.9-刑事専門弁護士-』『BG~身辺警護人~』『アンナチュラル』、満足度ベスト3は『アンナチュラル』『99.9』『トドメの接吻』。量と質の両評価を勘案すると、松本潤主演『99.9』と石原さとみ主演『アンナチュラル』の2本が、今クールでは断トツで高く評価された格好だ。

両ドラマにあり他になかったのは、第2話の力だった。

視聴率の『99.9』

視聴率で他を圧倒したのは『99.9』。

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初回こそ木村拓哉主演『BG』が先行したが、『99.9』の第2話は初回より2.9%上げて18.0%。第3話で16.2%まで下げたものの、その後は右肩上がり基調となり、最終回は21.0%と20%超の大台に乗せた。

『99.9』視聴率の軌跡で特筆すべきは第2話。

一般的にドラマの第2話は、初回より1~2割ほど視聴率を落とすことが多い。今クールでは『海月姫』『anone』『隣の家族は青く見える』『もみ消して冬』の4本がそのパターン。そして1割未満の下落が、『FINAL CUT』『きみが心に棲みついた』『BG』『カクホの女』『トドメの接吻』の5本。11本中9本が、第2話で数字を落としていたのである。

逆に第2話で数字を上げたのは、『アンナチュラル』『99.9』の2本だけ。特に『99.9』は、2割弱も数字をかさ上げする大躍進を見せた。

実はこの第2話「26年越しの事実!! 犯人は透明人間!?水晶が導く父の冤罪の謎」は、普通のドラマなら最終回に持ってくるようなシリーズの核心に触れる話だった。松潤演ずる主人公・深山が法曹界を志したルーツで、深山と斑目法律事務所長(岸部一徳)をつなげた、父親・大介(首藤康之)の冤罪事件の真相を扱ったのである。

データニュース社の接触者数では、初回と第2話に大きな差はなかった。ところがビデオリサーチ社の視聴率では2割弱も数字が上がっていた。途中脱落することなく、最初から最後まで見入っていた人が多かったと推察される。

さらにデータニュース社の満足度で見ると、初回3.97とスタート当初から好成績だったが、第2話は4.03と早々に4.0超の大台に乗せてきた。過去に例を見ない、力の入った第2話だったのである。

満足度の『アンナチュラル』

『アンナチュラル』の強さは満足度にある。

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視聴率では、『99.9』や『BG』にやや水をあけられた。金曜夜の放送は花金とぶつかり、関東地区では在宅起床率が低いことが大きい。またシリーズ序盤では、法医学という知的レベルの高さや、遺体や臓器の映像が出てくる気味悪さで、肌に合わないと途中で脱落した人が出ていたのが痛かった。

それでも第2話「死にたがりの手紙」の健闘は目立つ。

一家心中したと思われる少女の不自然な死。他の3名が一酸化炭素中毒で亡くなっていたが、少女だけ死因は凍死だった。少女の胃からダイイングメッセージと思われるメモも出てきた。真相は自殺に見せかけた殺人。座間で起こった連続殺人事件を想起させるような内容だったが、実は主人公・ミコト(石原さとみ)も無理心中の生き残りで、法医学者になったきっかけとなる事件だったことが第2話で明かされた。

視聴率は初回より0.4%上がって13.1%。満足度は0.05ポイント上がって3.92。初回に続く面白さで、ハマった視聴者が続出したようだ。

「久しぶりに見応えの有る番組」女65歳(満足度4)

「初回よりずっとおもしろかった」女52歳(満足度5)

「2話目でいきなりミコトの過去に切り込む展開が面白かった」男50歳(満足度4)

新規視聴者続出

第2話を含む序盤の健闘は、途中から新たにドラマを見始める人の数に反映する。

第4話以降で初めてそのドラマを見始めた人の累積数をカウントすると、『99.9』と『アンナチュラル』の勢いは、他ドラマと大きく異なる。

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第4話あるいは第5話から初めて見始めた人は、『99.9』『アンナチュラル』共に100人を突破した。そして最終回までに200人を超えた『99.9』は、『BG』『もみ消して冬』『FINAL CUT』などの倍、175人の『アンナチュラル』も1.6~1.7倍の新規視聴者を集めていた。

「松潤に興味がなくて見ていなかったが、最初から見たかったなと思った」女40歳(満足度4)

「初めて見たけど、これから見たい」女42歳(満足度4)

「これは面白い」男31歳(満足度5)

「初めて見たが面白かった」女65歳(満足度5)

「初めて視ましたが、石原さとみさんがイイ」男60歳(満足度4)

序盤での高い評価が話題となり、途中から見始めた人が多かったが、そんな視聴者の評価もかなり高いものとなった。しかも、それ以降も見続ける人が少なくなかったのである。

神回も続出

両ドラマの強さは、中後半にも神回がたくさんあり、高い満足度を保ち続けた点にもある。

例えば『アンナチュラル』の第5話「死の報復」。満足度が4.16と滅多に出ない数値となった。

一緒に暮らしていた恋人を殺され、「不自然死究明研究所」(UDI)の協力を得て執念で犯人を探り当てた青年が、恋人の葬儀の場で悲しみから犯人をメッタ刺しにしてしまうというラストだった。

主人公・ミコト(石原さとみ)は、「まだ間に合う」と止めようとした。解剖医の同僚・中堂(井浦新)は、「思いを遂げられて本望だろう」と青年の行為を肯定する。異なる見解と衝撃のラストが、視聴者に重い問題提起をしていた。

F1(女20~34歳)の満足度4.21、F2(女35~49歳)4.20、M2(男35~49歳)4.36、そしてM1(男20~34歳)4.67。いずれもあり得ない高ポイントだったが、犯人に共感したのか、若い男性の満足度が突出していた。

他にも、両親にも見放された“ろくでなしの息子”が、実はビル火災で多くの人を救助しようとしていた事実を、UDIが解明する第8話「遥かなる我が家」は、満足度4.15でやはり神回と言えよう。

“ろくでなしの息子”は、故郷に帰れない代わりに、火災に見舞われたビルと仲間たちを実家のような存在と大切にしていたが、男性視聴者は年齢を問わず極端に高いポイントを投じていた。

常識を覆す本の力

恋人を殺した犯人を捜し続けていた中堂(井浦新)。ついにその犯人が判明した第9回「敵の姿」と、事件が決着した最終回「旅の終わり」は、満足度4.15と4.23。以上のラスト3話は、2016年秋の新垣結衣主演『逃げるは恥だが役に立つ』に次ぐ高い数値となった。

事実を地道に掘り起こし事件を解決に導く醍醐味が大前提だ。加えてミコトのセリフ・認識が常識をひっくり返す強靭さを持ち合わせている。しかも日常に戻った瞬間に、温かく微笑ましいナチュラルさを備えている点が、破格の高ポイントにつながったと思われる。

中堂が探し続けた連続殺人犯は、実は幼少期に母親の虐待を受けていた。ありがちな“心の闇”だが、ミコトは「あなたのことを理解する必要なんてない。不幸な生い立ちなんが興味はないし、動機だってどうだっていい」とバッサリ斬り捨てた。その上で「ただ同情はします。あなたの孤独に心から同情します」と煽り、犯人の「母親は関係ない。26人、俺はやり遂げたんだ」という自白を引き出す。

エンディングは再出発となったUDI。週刊誌に情報を横流しして辞めた六郎(窪田正孝)を、あうんの呼吸で仲間に迎え入れるシーンが最後だが、明確な言葉にせずに含意に満ちたやりとりで、何もなかったように元の日常に戻っていく展開は、余韻の残し方としてあっぱれとしか言いようがない。

ことごとく視聴者の予想を裏切る展開が、満足度を上げ続けたと言えよう。

理不尽との闘い

一方『99.9』の特徴は、SEASON1と比べSEASON2で理不尽の度合いが高まった点にある。

第2話で父の冤罪に区切りを付けたSEASON2は、“99.9%”に対抗する“0.1%”が検察ではなく、裁判官や司法制度に向かい始める。理不尽の度合いが1ステージ高まったのである。

第3話「前代未聞の出張法廷 裁判官の思惑」では、裁判官の世界にいろいろ大人の事情があることが出始める。

そして第5話「歪められた少年裁判 嘘つきは誰!?」。過去に実際に起こった「御殿場事件」をモデルにしたストーリー展開で、一度疑いをかけられた少年のアリバイが成立したにもかかわらず、被害者が事件は別の日だったと言い出し、訴因変更されてしまう。裁判官が司法上層部に「少年犯罪の厳罰化」の動きがあるのを“忖度“しての暴挙だった。最終的には被疑者の無罪は証明されるが、裁判官の側にも理不尽な側面があることが浮かび上がった回だった。

この回の満足度は4.15と『99.9』SEASON1と2を通じて最高を記録する。男女三層のすべてが4.0超。裁判のやり方に憤りを感じ、それに屈せずに最後は大逆転を勝ち取った弁護側に拍手喝采をしていたのである。

視聴率が21.0%と、2016年秋の『逃げ恥』最終回をも上回った最終回「深山、最後の闘い!!絶対不可能の再審請求無実を信じる息子の涙最強の敵・・・手負いの裁判官の秘策!!0.1%の逆転なるか」は、満足度も4.07と高い評価となった。

『開かずの扉』と呼ばれる再審請求を扱っている。最も困難な“99.9%”である。再審請求を審理する裁判長は川上(笑福亭鶴瓶)。彼の「ええ判決せえよ」には、司法制度の裏と表が凝縮しているようにそれまで描かれてきた。

被告人の無実を立証すべく奮闘する深山(松本潤)たちに、辛酸をなめさせられ裁判所内で後がない川上は、建前では公平に審議するためと言いつつ、深山たちに無理難題を押しつける。それでも最後は、被告人の無罪を勝ち取ることになる。

この回に出てくる三人の会話が重い。

深山の同僚弁護士・尾崎(木村文乃)「裁判官と検察が、冤罪を作り出しているんです」

川上(鶴瓶)「俺が一番大事にしているのは、司法への信頼や」

深山(松潤)「司法への信頼ってなんですか?司法とは、一体だれのためにあるんだと思っているんですか。あなたの大事な人が、誤った判決によって罪をかぶることになって、同じことをできますか。たった一つしかない事実を追い求め、法廷にたち続けますよ。あなたはなんのために法廷に立つんですか」

最終回は深山たちが再審請求の重い扉を開けて、被告人の無罪を勝ち取った。それでも司法の過ちを認めたことで、司法の信頼を守ったと論理をすり替える川上は、最高裁事務総長への出世も勝ち取る。単純な“大どんでん返し物語”になっていない点は、見事としか言いようがない。

ドラマの中で深山(松潤)は、小料理屋「いとこんち」で調理をした際、「やっぱり丁寧に作ると美味しいなあ」とつぶやく。刑事事件にあたる際の、現場や証言と丁寧に向き合う姿勢と符合したセリフだ。同時に、第2話で渾身の力作を置き、後半に神回を並べる『99.9』や『アンナチュラル』のスタッフの、制作姿勢を象徴していた言葉のようにも聞こえる。

両ドラマが傑出していた理由が、こんなところにあったと感ずる。