2018冬ドラマの中間決算~上位ドラマはなぜ評価されたのか?~

2017年冬ドラマが後半戦に入った。

GP帯(夜7~11時)放送の民放11ドラマでは、少ないものでも5話、多いものでは7話までの放送が済み、視聴者の評価が量的・質的調査でいろいろなデータが出そろった。

リアルタイム視聴率・タイムシフト視聴率・総接触者数が量的評価、満足度と次回見たい率が質的評価とすると、今のところ5指標の総合評価で1位『99.9-刑事専門弁護士-』、2位『アンナチュラル』、3位『BG~身辺警護人~』、4位『もみ消して冬』、5位『FINAL CUT』となる。

これら5指標を基に、上位ドラマはなぜ評価されたのかを考えてみた。

量的評価

ドラマをどれだけの人が見たのか、量的実績を図るには、ビデオリサーチ社のリアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率がある。さらにデータニュース社「テレビウォッチャー」が、ドラマに接触したユニークユーザー(UU)数を計測している。

まず2月23日時点で判明しているリアルタイム視聴率で見ると、1位は5話までの平均が16.6%の『99.9』、2位は6話平均14.5%の『BG』、そして3位は6話平均11.2%の『アンナチュラル』となった。平昌オリンピックの影響を除外すると、いずれも3%以内の範囲で推移しており、安定した強さを発揮していると言える。

タイムシフト視聴率では、2月11日までのデータをビデオリサーチ社が発表している。

それによると、5話平均で13%を超える『99.9』が1位、5話平均が約13%の『アンナチュラル』が2位、そして10%台の『BG』が3位となった。リアルタイムとタイムシフトでは2位と3位が入れ替わった。しかも『アンナチュラル』は『99.9』に肉薄している。もし仮に同ドラマが金曜夜10時でなく、『99.9』と同じ様に日曜夜9時放送だったら、リアルタイム視聴率は『99.9』と同様あるいはそれ以上になったかも知れない。ともに“じっくり見たい”というニーズも高いドラマといえよう。

データニュース社「テレビウォッチャー」は、関東2400人のモニターのテレビ視聴実態を発表している。2月22日までのデータによれば、各ドラマに1回でも接触したUU数は、『99.9』が485人で1位。接触率20%超となる。2位は『BG』の421人(17.5%)、3位は『アンナチュラル』で389人(16.2%)。4位以下はすべて200人台で、3強が他より群を抜いていたことがわかる。

質的評価

質的評価には、満足度と次回見たい率がある。共にデータニュース社が測定している。

まず満足度。自発的に見た番組について、5段階で評価してもらっている。ドラマの場合、平均値は3.6~3.7となっている。1位は5話平均で4.03の『99.9』、2位は6話平均3.99の『アンナチュラル』、そして3位は6話平均3.66の『もみ消して冬』となった。つまり今クール、満足度で平均以上をとっているのは2ドラマだけとなっている。

ここで気になるのが、量的評価では3強の一角を成した『BG』が、満足度では5話平均で3.50と大きく後退したこと。満足度調査で面白いのは、主役の俳優に対する好悪が、評価に大きく影響する点だ。『BG』の主演・木村拓哉の場合は毀誉褒貶が激しく、結果として一定割合の視聴者が低い満足度をつけたために、平均点が大きく下振れしていた。

90年代からトレンディドラマで主役を何度も演じて来たキムタクに対しては、「キムタクはどの役も同じ演技」「キムタクありきのドラマ作り」などの批判があり、何をどう演じても低い評価を与える人が一定数いた。加えて「SMAP解散騒動でイメージダウン」と見る人が加わり、厳しい声が大きくなっていた。

「主演がキムタクだったので見るのを止めた」男68歳(満足度1)

「キムタク以外のキャスティングは良い」女39歳(満足度2)

「またもまたもキムタクアゲアゲか」男55歳(満足度3)

ただし実際には、キムタクを高く評価している人の方が多数派という点が要注意だ。5話まででは、最高点の5や次点の4をつけた人が全体の半数ほどを占めていた。

「キムタクが格好いい」女67歳(満足度5)

「キムタクがちょっとダサいのが良い」女30歳(満足度5)

「キムタクのアクションが良かった」女40歳(満足度5)

「やっぱり木村拓哉のドラマは締まる」女62歳(満足度5)

つまり45歳となったキムタクの、中年の領域に入った新しい演技を賞賛する人が多数派だったのである。

こうした評価は、次回見たい率で確認できる。「絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」の5段階で評価してもらったものだ。

これでランキングすると、1話平均297点の『99.9』が1位、205点の『アンナチュラル』が2位、『BG』が195点で3位に返り咲いている。

つまりキムタクにはネガティブだった人の、ドラマ自体は評価していることがわかる。

一話完結型か?連続物語型か?

以上5指標から見ると、11ドラマは二極分化していることがわかる。

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質量評価のうち両方とも、あるいはどちらかで高く評価されているグループと、両方ともいま一つのグループだ。特に5指標すべてで1位の『99.9』と、すべて2~3位となった『アンナチュラル』は、質量ともに高評価の成功ドラマといえよう。

実は最近、一話完結型ドラマが増えており、大ヒット狙いの連続物語型が減っているのは問題とする意見が散見される。今クールでは、『99.9』『アンナチュラル』『BG』『もみ消して冬』など平均視聴率が二桁のドラマは、全て一話完結型で、かつ事件・問題解決型でもあり、これが問題だというのである。

これらは「予定調和を楽しむためのドラマ」「リアルタイムで気軽に見るのにちょうどいい」「1~2話見逃しても気にならず、また次週見られる」から、視聴率につながりやすいとされている。そして「“毎回ゼロからのスタート”のため、記憶に残りにくく、カタルシスも一定のラインにとどまる」と、マイナス面が批判されている。

つまり一話完結の事件・問題解決ドラマは、「人々の心を揺さぶる大ヒット狙い」ではなく、「失敗のリスクが少ない小ヒット狙い」で、これにより“こぢんまりとした作品”が増え、似たようなドラマばかりと思われやすい状況が生まれているというのである。

ドラマの良し悪しは表現形式では決まらない

しかし筆者は、こうした批判に必ずしも同意しない。ドラマの良し悪しは表現形式で決まるのではなく、内容そのもので評価されるべきと考えるからである。

そもそも小説の世界でも、長編小説が短編小説より上などと決まってはいない。“小説の神様”と呼ばれた志賀直哉には、珠玉の短編が幾つもある。純文学の新人賞・芥川賞のもととなった芥川龍之介も、作品の多くは短編である。さらに言えば、近代推理小説の開祖と言われるエドガー・アラン・ポーは、一度座って机に向かう2時間程度で読める短編小説が良いとしていた。

確かに今クール視聴率1~3位のドラマは、一話完結型で事件・問題解決ドラマである。小説で言えば、短編のオムニバスだ。しかし「予定調和」で「記憶に残りにくく、カタルシスも一定のラインにとどまる」“こぢんまりとした作品”かと言えば、決してそんなレッテルを張ることはできない。

例えば『99.9』は、満足度でも次回見たい率でも、堂々の1位をとっている。

『99.9』の強さの秘訣

TBS日曜劇場でのヒット作品は、“小による大の逆転”や“不屈の正義”というコンセプトを持つことが多いが、『99.9』も間違いなくその要素を満たしている。

メガヒットの『半沢直樹』を初め、『下町ロケット』『ルーズヴェルトゲーム』、そして去年の『小さな巨人』や『陸王』も同様だ。大ピンチに立たされた主人公が、“逆境を跳ね返し、誠実さと信念をどう貫くか”がストーリーの軸で、“誠実さと信念”ゆえに視聴者は手に汗握り応援して来た。

今回の『99.9』も、圧倒的な逆境は刑事裁判の有罪判決率99.9%という現実だ。警察組織を動員して作り上げた検察のストーリーを、法廷内を中心に世界を見る判事は追随しがちだ。いわば国家権力を相手に、逆転が極めて困難な中、残された0.1%の可能性にこだわって、地道に事実を追求する物語が多くの視聴者の耳目を集め、かつ感動を呼んでいる。

しかも同ドラマはサービス精神旺盛だ。

まず主演・松本潤を初めとして、出演者が魅力的だ。刑事専門ルーム室長の香川照之や所長の岸部一徳。パラリーガルの片桐仁とマギー。そして主人公が住む小料理屋「いとこんち」のアフロ頭の店主・池田貴史と客の岸井ゆきのも見逃せない。さらにSEASON2から参加している木村文乃も注目されている。

もう一つ特筆すべきは、細かい小ネタ・ダジャレなどのセリフ・小道具などに、面白い遊びが散りばめられている点だ。その小細工をいくつ集められるか、楽しみにしている松潤ファン・日曜劇場愛好家・ドラマ通が少なくない。

例えば主人公(松潤)のお寒い限りの駄洒落。緊迫する法廷闘争の中でも、突然出て来る。剛速球としょんべんカーブがどう繰り出されるかわからない演出で、一つの見どころとなっている。

班目法律事務所にも遊びがある。契約書の名前に、“所譲二”が出て来たり、壁の賞状に“愛川賞”や“咲雷賞”と、芸能人の名前を引っ掛けたものが登場する。

ちょい悪ノリなジョーク・小道具・セリフなどが、画面の端っこで小さくパフォーマンスしている。エンターテイメントに徹するこうした演出は、決して“小ヒット狙い”の姑息なやり口と批判されるべきものではない。

『アンナチュラル』の魅力

『アンナチュラル』もそうだ。

「きつい」「汚い」「危険」の“3K”に加えて、「規則が厳しい」「休暇がとれない」「化粧がのらない」「結婚できない」の“7K”職場の専門職に石原さとみが主演として挑戦している。

彼女が法医学者として務めるUDIラボは、従来なら見落とされがちな事件の真相を、地道な努力で解明していく民間組織だ。

日本における不自然死の8割以上は、解剖されないまま適当な死因をつけられているのが実態とドラマは言う。先進国の中で最低の水準だ。

しかし「死と向き合うことは、生と向き合うこと」と同ドラマは謳い、「その死の原因を正しく認識することが、今を生きる人々の命を救うことがあり、未来の危機を回避することにもつながる」と言う。つまり少しでもより良い世界に変えたいという“志”が前提で、圧倒的に不利な状況を逆転して事実に肉薄する物語なのである。

例えばこの金曜放送の第7話。

ミコト(石原)が「殺人者S」と対決し、衝撃の事実を解明していく話だった。結論としては、「法医学上は自殺だが、実態はいじめ問題に起因する殺人」とミコトは毅然と主張した。この悲しすぎる事件の真相に、“記憶に残る”ドラマと感じた人、“カタルシスが一定のラインを超えた”視聴者が少なくなかったはずだ。

さらに第7話では、ミコトから「あなたの人生はあなたのものだよ」、中堂(井浦新)からは「許されるように生きろ」というセリフも発せられていた。同ドラマは一話完結がではあるものの、これらの言葉は連続物語として見て来た人に深く刺さる言葉だった。

以上のように、一話完結型という形式の中にも、新たな工夫やオリジナリティを込め、視聴者にこれまでにない感動を与えることは可能だ。

ここ数年、「リアルタイム視聴率だけでドラマを評価するのは如何なものか」という声が大きくなっている。筆者も全く同感である。しかし時代は既に多くの評価指標が登場している。

視聴率の多寡、しかも所詮誤差の範囲に過ぎない些末の数字の上下を問題にするマスコミや、商取引の慣習こそが問題であり、ドラマというジャンルを正しく評価していく術はたくさん出来ている。

これらを動員すると、批評家の単なる主観ではなく、データに裏打ちされた評価が可能となる。業界はもう少し、こうした努力を払ってもらいたいものである。