連ドラ初回視聴率戦線異状あり!~“盤石”テレ朝・“後退”日テレ・“独歩”TBS・“低迷”フジ~

2017年秋ドラマが出そろった。

昨日のフジ『民衆の敵』初回が9.0%。これで秋クールドラマの初回視聴率上位が確定した。1~2位はテレビ朝日で、『ドクターX』20.9%・『相棒』15.9%。3~4位はTBSで、『陸王』14.7%・『コウノドリ』12.9%。そして5位はテレ朝『科捜研の女』の12.3%となった。なんとテレ朝のGP帯ドラマ3枠は、全てベスト5入りしたのである。

そして従来は連ドラ初回の視聴率に定評のあった日本テレビが、今期は3本の平均が9.8%と二桁に届かなかった。2015年春に日曜枠ができ、ドラマ週3本体制となって初めてのことである。しかもトップのテレ朝(3本平均が16.4%)とは、6.6%も開いてしまった。

今期の連続ドラマ“初回視聴率戦線”には、明らかに変調がみられる。何が起こっているか分析してみた。

“盤石”テレ朝

テレ朝のGP帯でのドラマは週3枠。

水曜夜9時は「刑事ドラマ」枠。古くは『はぐれ刑事純情派』が1988年に始まり、18シリーズ444回放送された。今世紀では、2002年から『相棒』がスタートし、今期でSeason16となっている。

木曜夜8時は「木曜ミステリー」枠。1999年にスタートしたが、『科捜研の女』はその年から放送され、今期はSEASON17になっている。

3枠目は木曜夜9時の「木曜ドラマ」。ドラマのジャンルは特に決まっていない。2000年代では、『菊次郎ととき』『TRICK』『黒革の手帖』『熟年離婚』『交渉人~THE NEGOTIATOR~』などのヒット作もあったが、不発ドラマとのバラつきが大きかった。2010年代も『DOCTORS~最強の名医~』『ドクターX』など医療シリーズでヒット作を出しているが、相変わらずバラつきは大きい。

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それでも他局と比べると、シリーズものが多い分初回視聴率が安定している。

まず水曜9時と木曜8時はジャンルを固定しているため、ターゲットとなる視聴層が明確だ。ジャンルフリーの木曜9時でも、今期の『ドクターX』のように長寿シリーズとなると、時代の変化に合わせ内容の微調整をすれば新鮮さを保ち易い。

これら3作は、幾つも共通点がある。

まず大枠がかっちり決まっているので、新たなシナリオライターや監督に挑戦させる余地がある。ドラマの質を保ちつつ、制作者・スタッフの育成・新陳代謝の促進が容易で、結果としてシリーズを長く続けられる。

次に視聴率対策。シリーズではあるが、1話完結に徹している点がミソ。都合がつかず途中の回を見そびれた人も、その後の回から戻って見続けやすくしてある。

そして3番目が、第2シーズン以降の初回の視聴率が高くなる傾向にある点。既にドラマ自体の認知度は高いので、再び立ち上げる際の宣伝がしやすい点が大きい。特にテレ朝の場合は、平日午後にドラマの再放送枠が3時間もある。新シリーズの放送開始直前に旧シリーズを流せば、そのまま新シリーズの宣伝になるというメリットがある。

かくして近年シリーズドラマの多いテレ朝は、2015年秋クール以降、ドラマ初回の視聴率で首位を保ち続けている。しかも今期は、3枠すべてが長寿シリーズだ。初回平均が16%を超え、2位TBSに4%も差をつける強さとなった。

実は3枠の放送スタート1週間で、合計25時間も旧シリーズの再放送を平日午後帯に行っている。露出という意味では圧倒的な物量作戦を行っていたのである。

“後退”日テレ

初回直前に新ドラマを多く露出するという手法は、もともと日テレが得意としていた。例えば2014~15年では、同局のドラマ初回はほとんどが12~14%台に入る安定ぶりを見せ、キー局の中でトップを走っていた。

前提には番組宣伝の充実があった。

どの局も新ドラマが始まる直前に宣伝に力を入れている。スポット・ミニ番組・情報番組のコーナーなどで、新ドラマを紹介したり、主役を務める俳優を登場させたりしている。

ところが日テレだけは、他局と同様のドラマ宣伝に加え、主な俳優をGP帯のバラエティに頻繁に出演させ、新ドラマの認知度を上げる努力を行ってきた。特に同局のバラエティは高視聴率のものが多く、GRP(述べ視聴率)で試算すると、露出の総量が他局を大きく引き離していたのである。

これが効いて、同局のドラマ初回は安定した数字を獲り続けていた。

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ところが2016年以降、勝利の方程式がじゅうぶん機能しなくなり始めた。

ドラマ週3枠の初回平均が下がり始めたのである。17年冬クールだけ一旦持ち直すが、それ以降ふたたび右肩下がりの軌道を描く。そして今秋、初めて平均が一桁となった。2010年代で初めての低迷である。

背景には、他局も同じ手法を多用し始め、夜帯のバラエティでドラマ宣伝がらみのキャスティングが多くなり過ぎた面もある。

20~50代女性の録画再生視聴が増えている点も見逃せない。今クール初回のベスト5のうち『コウノドリ』を除く4本は、高齢者と40~50代男性の視聴者が多い。こうした層をターゲットとするドラマでは、録画再生視聴の影響が比較的少ない。ところがF1F2(女20~49歳)は多くのドラマ初回を録画し、2話以降を見るか否かを決める傾向にある。このために女性向けの作品を多く並べる「水曜ドラマ」や、この春に放送時間を1時間遅くし、10代からF1F2へとターゲットを変更した「土曜ドラマ」は、録画されることが増え、結果として初回の視聴率が上がらなくなっているようだ。

日テレの後退には、こんなメカニズムが働いているようである。

“独歩”TBSと“低迷”フジ

クール毎の初回平均では、4局の中でTBSの連ドラ初回が最も安定しているように見える。

ところがそれは、週3枠がそれぞれ安定したスタートを切っているというわけではない。例えば今クールでは、『陸王』が14.7%と好成績だった。『コウノドリ』も12.9%で4位に入った。ところが『監獄のお姫さま』は一桁スタートだった。

今年夏クールも、2本が二桁、1本が一桁。春は3本とも二桁だったが、冬はやはり1本が一桁だった。2016年では初回二桁が年間5本、一桁が7本だった。2015年でも二桁7本に対して一桁は8本あった。

つまりTBSドラマは当たり外れの振れ幅が、比較的コンスタントに大きいと言える。

これについて同局のドラマ担当の幹部は、「才能のある作り手がたくさんおり、皆ホームランを狙って制作している。しかし実際には、当たりはずれが出るのがドラマというもの」と総括している。つまり制作者がこれと思った球を思いっきり振り抜いているが、実際にはヒットと凡打が一定の割合で出ている。ただし総体としてはある程度のところで安定している。この意味で同局は、ドラマ制作全体の戦略が一定の方向にあるテレ朝や日テレとは異なり、独自の道を歩んでいるようだ。

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一方フジは、残念ながらドラマ初回で最も苦戦している。

実は初回に限らず、ドラマ全体が低迷しているというべき事態に陥っている。例えばフジのドラマといえば月9が代名詞だ。その月9は、90年代から2000年代初めに、30%台を記録する回が何度もあった。過去40年ほどの間に放送された一般ドラマ“ベスト20”の中で、5本を月9が占めていたのである。

その後視聴率はじわじわ下がり始めた。月9の年間平均視聴率で見れば、20%を超えたのは01年が最後。木村拓哉主演の『HERO』が放送された年である。その後13年からは、年間平均は15%も切るようなった。そして16年は、ついに10%を切ってしまった。

今年は夏クールで『コード・ブルー』が14.8%と久々に月9枠でヒットとなったために、3クール平均は辛うじて二桁となっている。ところが今期『民衆の敵』が平均で9.8%を獲らないと、2年連続の一桁となる。初回9.0%は、かなり心配な出足といえよう。

しかもフジは、月9以上に他の枠が心配だ。木曜10時枠は、2014年春クール以降二桁になったことがない。日曜9時枠は、低迷のため今クールから廃止に追い込まれている。

同局の場合は初回と言わず、まずドラマ全体でどう活気を取り戻すかが課題といえよう。低迷を脱する道は、まだ見えてないと言わざるを得ない。

以上が民放キー4局の、GP帯ドラマ初回戦線の状況とその背景である。

こうして全体を俯瞰すると、局によって差が大きくなっていることが分かる。ここにフジがかつてのような活気を取り戻すと、TVドラマ界全体の多様性が増し、業界がいっそう元気になって行くと思われる。

今後の各局の奮起に期待したい。