『トットちゃん』はシニア向けドラマなのに『あまちゃん』『ひよっこ』路線!?

テレビ朝日が今春からシニア向けに新設した「帯ドラマ劇場」。

第2弾『トットちゃん!』が今月から始まり、2週間が経過した。はっきり言って今回は、視聴者の評判がかなり良い。

視聴率で比べると、第1弾『やすらぎの郷』の期間平均が5.8%で、『トットちゃん!』初回も同じ数字だった(ビデオリサーチ調べ・関東地区)。ただし第1弾の初回と比べると2.9%も下がっており、ネガティブに評価する向きもある。しかし同ドラマは今後じわじわと数字を上げ、『あまちゃん』『ひよっこ』のような道を辿る可能性があると筆者はみる。

帯ドラマ第1週の法則

『トットちゃん!』序盤の数字(初回5.8%、第1週平均5.6%)は、実は前作が作り上げた視聴習慣の影響が大きい。

例えばNHK朝ドラでは、シリーズ平均が17.1%と低迷した『純と愛』(2012年度下期)を受けた『あまちゃん』(13年度上期)の第1週が、19.1%と振るわなかった。

ところが『あまちゃん』は後半に数字を上げ、続く『ごちそうさん』(13年度下期)の第1週は、21.1%と好調だった。その『ごちそうさん』のシリーズ平均は22.3%。これを受け『花子とアン』(14年度上期)の第1週も、21.6%と高かった。

つまり前作が好調だと視聴習慣ができ、そのお陰で次作の第1週は高くなる。逆に前作が不調だと、次作序盤は苦労する傾向にあるのだ。

同様の現象はその後も続いた。

平均が19.4%と5作ぶりに20%を切った『まれ』(15年度上期)。その次の『あさが来た』(同年度下期)の第1週は、20.2%と振るわなかった。ところが同作は平均を23.5%まで上げ、後の『とと姉ちゃん』(16年度上期)第1週は21.7%と快調だった。

ただし次の『べっぴんさん』(16年度下期)が、期間平均20.3%と前作より2.5%落とすと、次の『ひよっこ』(17年度上期)第1週は19.4%と低迷した。この時は第1週が19.8%だった12年度下期の『純と愛』以来、“9作ぶりに20%の大台に届かず”と騒がれた。ところが実際には、『べっぴんさん』ラスト4週が20%を切っていたことが大きく響いた。帯ドラマの序盤は、それほど視聴習慣の影響を受けるものである。

ちなみにこの辺りのメカニズムは、拙稿「朝ドラ『べっぴんさん』は『あまちゃん』の貯金を食いつぶす!?」「有村架純『ひよっこ』は『あまちゃん』同様“借金返済型”~安定した満足度の背景に多様性と重層性~」に詳述したので、お時間のある方は参照して頂きたい。

2ドラマ第1週の満足度比較

では始まったばかりの『トットちゃん』の今後を占うべく、視聴率以外のデータを見てみよう。

首都圏に住む2400人のモニターの日々のテレビ視聴動向を追うデータニュース社「テレビウォッチャー」では、まず満足度が大きく異なった。

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『トットちゃん』第1週の平均は3.84。ドラマの平均は、5段階評価で3.6~3.7なので、この値はかなり高い。夏クールの連ドラと比べると、『コード・ブルー』の3.98には及ばないものの、3.83だった『過保護のカホコ』といい勝負だ。

一方『やすらぎの郷』第1週は3.65と、0.2ポイントほど低い。しかも第1週の後半が低調で、それを受けた第2週は3.62とさらに下がってしまった。『トットちゃん』が2~5回で3.9前後を出したのと比べると、勢いはかなり違う。

視聴動向の比較

実は連続ドラマでは、連続して毎回見ている人は多くなく、見たり見なかったりの出入りが激しい。

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例えば『やすらぎの郷』では、「テレビウォッチャー」2400人のうち、33人が初回を視聴した。ところが、その内の15人が第2話を見なかった。代わりに6人が2話から見始め、視聴者数は24人だった。その後も第3話で6人が離れ、12人が加わった。第4話も離脱10人、新規3人。第5話でも7人が離れ、4人が新参だった。

結局第1話と第5話を比べると、見た人の数は33人と同じだ。ところが途中で38人が逃げ、25人が新たに加わった。そして2話以降で離れた38人も、17人は5話までに再び戻っている。このように出入りは、かなり激しかったのである。

ところが『トットちゃん』は、様子がちょっと異なる。

初回を見た人は28人とやや少ない。ただしこれは『やすらぎの郷』終盤での視聴習慣の反映である可能性が高い。そして第5話の視聴者数は26人、こちらも大きな変動はない。

ただし途中で離れた人は25人と、前作の3分の2。また途中で見始めた人も17人と、やはり3分の2程度。そして2話以降で離脱したが5話までに戻った人は10人。どうやら一旦見るのを辞めても、完全に離脱する人は必ずしも多くはないようだ。

継続視聴者の比較

では両ドラマの視聴動向で、大きな違いは何だろうか。実はハマった視聴者の数が違う。

初回を見た人で、第1週の5話全てを見た人は、『やすらぎの郷』12人に対して『トットちゃん』は15人だった。これだけを見ると大差がないように見える。ただし継続視聴発生率にすると大差となる。

『やすらぎの郷』の初回視聴者数は33人なので発生率は36%。一方『トットちゃん』は分母が28人ゆえ、発生率は54%。1.5倍も高率となった。

もう一つ気になるのは、継続視聴者の年齢構成だ。

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『やすらぎの郷』の12人は、70代6人、60代4人、50代2人で、30~40代は皆無だった。高齢者に極端に偏っている。一方『トットちゃん』は70代が2人、60代と50代が5人ずつ、40代2人、30代も1人いた。つまり世代的な広がりがあった。

帯ドラマでのこの広がりは、NHK朝ドラの『あまちゃん』『ひよっこ』に近い。両ドラマとも視聴率は20%未満で始まり、最終週は23%まで押し上げた。その最大の要因は、30~50代視聴者の増加だった。

以上の状況から予測すると、『トットちゃん』は5%台のスタートだったが、今後数字を上げていく可能性があると言えよう。

視聴者の声

視聴者の声からも期待は膨らむ。

『やすらぎの郷』の継続視聴者でも、序盤でポジティブな声は確かにある。

「久しぶりに見ごたえのある昼ドラ」女60歳

「大ベテランのオンパレード」男68歳

「だんだん面白くなる予感」女73歳

ただし第1週の5話すべてを視聴した12人のうち、第2週の10話までを全話見た人は4人と3分の1に減ってしまった。倉本聰の脚本、石坂浩二など蒼々たる大俳優の登場で引き寄せられた視聴者は、必ずしも長くお付き合いをしてくれてはいなかったようだ。

例えば「まだ面白くならないです。画面がくらいですね」としていた女76歳は、第2週の途中で完全に離脱し、その後戻らなかった。

「倉本聰さんの久しぶりのドラマが楽しみ」と答えた女76歳は、6月以降熱心な視聴者ではなくなっていた。その少し前には、「ちょっとつまらない。でも時間があれば観ようと思う」とコメントのトーンが変わっていた。

より極端な例は、初回を視聴したが第2話を辞めた15人のうち、8人がその後戻らなかった点だ。

「つまらなかった」男23歳

「次回が楽しみで、気楽にみられる」女71歳

「番宣がすごい力が入っている」女63歳

「豪華キャストで注目の作品」男61歳

SNS上の番組評では強い言葉が飛び交うことが多いが、モニターに選ばれた人の番組評は穏やかなものが多いようだ。“つまらない”とストレートに表現する若者もいるが、年配者の中には一見ポジティブに褒めておいて、静かに離脱する人が目立つ。言葉ではなく、行動で本当の評価を示していると言えよう。

新規開拓の可能性

ところが『トットちゃん』序盤での自由記述は、トーンがかなり違う。

「展開が早い」「あの時代にしては凄い」女68歳

「ご両親のなれそめが面白い」女74歳

「松下さん、あまり好きで無かったが今回は良い感じ」女67歳

『やすらぎの郷』では「見ごたえのある」「面白くなる予感」「豪華キャスト」など、全体を漠然と評する声が多かったが、『トットちゃん』では「展開が早い」「なれそめが面白い」「今回は良い」など、具体的な指摘が目立つ。

「おもしろそうなら、継続的に観るかもしれない」と初回で答えた女48歳は、結局5話全てを視聴し、具体的な中身に引き込まれていた。

「ドキドキした」「早く次が見たい」という女46歳や、「毎日わくわくして見ています」女54歳の回答は、まるで夜の若者向けドラマの感想のようだ。

いずれにしても、『トットちゃん』第1週の5話全てを見た15人のうち、5人が『やすらぎの郷』を一度も見たことのない人だった。若年層に広がっているだけではなく、年齢以外にも新たな層を掘り起こしている可能性がある。

ドラマの作り自体は、シーンの少なさ、コストのかけ方など、両ドラマには共通する部分が少なくない。それでもテンポの速さ、事実の突拍子なさ、若い俳優が重要な役を演じている点、そしてダイナミックな動きなど、『トットちゃん』には夜のドラマのような活力がみなぎっている。

「シニアたちが楽しむ“シルバータイムドラマ”」と謳い上げて始まったテレ朝の帯ドラマだが、第2作で早くも大きくトーンを変えてきた。このダイナミズムが、『あまちゃん』『ひよっこ』のように、徐々にブレークしていく予感につながる。今後の展開に期待したい。