最終回で跳ねるドラマの法則~『マルモ』『ミタ』『半沢直樹』『逃げ恥』・・・そして『過保護のカホコ』~

ビデオリサーチ社関東地区の視聴率から作成

夏クールが終了した。

今期GP帯(夜7~11時)で放送されたドラマの中では、平均視聴率1位は『コードブルー3』2位『過保護のカホコ』3位『黒革の手帖』の順となった。

ただし最終回の視聴率の突出ぶりを、平均視聴率が二桁にのったドラマの中で見ると、1位は『過保護のカホコ』、2位『黒革の手帖』、3位『コードブルー3』に入れ替わる。そして渡辺直美が連続ドラマ初主演となった『カンナさーん』は、大方の予想以上の数字をとったものの、途中から失速し最終回は伸び悩んだ。

“終わり良ければ総て良し”という言葉があるが、連続ドラマの最終回にも明暗があった。ラストで跳ねるか否かはどんな要因で決まるのか、データと視聴者の声から分析してみた。

傑出した『過保護のカホコ』

最終回の視聴率が最も傑出したのは『過保護のカホコ』

平均視聴率も全体の2位と健闘したが、特に最終回はよく見られ、1位『コードブルー3』に肉薄した。直前の9話から41%も数字を上げている。平均視聴率や初回との比較でも、2割以上高くなった。

本作は、異常なまでに過保護な環境で育った“奇跡の純粋培養人間”・加穂子(高畑充希)が、性格が正反対な青年・麦野初(竹内涼真)との出逢い成長していく物語だった。

序盤戦は苦戦した。データニュース社「テレビウォッチャー」に寄せられた声を見ると、1層(男女20~34歳)の評価は初めから高かったが、2層(35~49歳)は“違和感”、3層(50歳以上)は“イライラ感”を指摘する人が多かった。

序盤3回で満足度4超と、高く評価した1層の声。

「過保護すぎだが、面白いので続きも早く見たい」女22歳(満足度5)

「カホコかわいいい」男31歳(満足度5)

「なぜか共感できる部分もある」女34歳(満足度5)

かたや満足度はドラマの平均以下の3.5台と、厳しく評価した2層の声。

「話の内容が自分には想像つかなすぎる」男46歳(満足度1)

「設定がちょっと無理」女48歳(満足度3

「現実離れしている内容」男49歳(満足度2)

極め付きは“イライラ感”から途中脱落者も続出した3層の声。

「魅力的な人物がおらず、ややイライラ感がつのった」女52歳(満足度2)

「このドラマのどこがおもしろいのだろう?」女61歳(満足度2)

「毎週チェックはヤメだな」男69歳(満足度1)

このように序盤は評価が世代によって分かれた。しかし“毀誉褒貶の激しい作品・評価が分かれる番組は良い作品”という見方もある。一部に“イライラ”され、共感できない層が流出するデメリットはあるものの、評価は高いが誰が見ても同じような感想を持つドラマと比べ、考えさせられ深みのある内容となり、結果として視聴者が増えることもありそうだ。

“毀誉褒貶”のさじ加減

評価が分かれたドラマは、夏クールの4本が典型的だった。

『過保護のカホコ』は例えば「共感」対「イライラ」。『黒革の手帖』は、主人公・原口元子を演じた武井咲が未熟なのか健闘していたのか。『コードブルー3』は、医療ドラマに付加された恋愛要素など人間ドラマをどう見るか。そして『カンナさーん』では、渡辺直美と役の前向きなキャラクターに違和感を感ずるか否かだった。

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最終回を含め連続3話以上見なかった人を“途中完全脱落者”と仮定しよう。

『過保護のカホコ』では、初回を見た人のうち、2話以降をライブでも録画再生でも見なかった人が12.4%、途中完全脱落組は24.1%に達した。20.4%の『黒革の手帖』『コードブルー3』より多い。

それでも第9回を録画再生でみていたが、最終回はライブで見た人が4.1%、9回を見ていなかったが最終回はライブで見た人8.3%。最終回復帰組が12.4%と、『黒革の手帖』『コードブルー3』よりかなり多くなった。

『黒革の手帖』はテレビドラマ化が5回目。『コードブルー3』はシリーズ3作目。内容がよく知られているだけに、“途中脱落者”が少なかった。その代わりに、最終回で復帰者がたくさん出るほどの求心力にも欠けたようだ。

これに対して『過保護のカホコ』は、序盤イライラする部分もあったが、これまでにない設定や展開で着地への関心を呼び、最終回復帰組が大量に出た。

ラスト直前の回の評価には、「次回絶対見る」の声が並んだ

「家族の関係がカホコによって変わって行く所が良かった」女48歳(満足度5・絶対見る)

「家族のために全力で頑張るカホコに感動した」女22歳(満足度5・絶対見る)

「バアバの死をきっかけにバラバラだった家族や親族の絆が一つになるストーリーに感動した」男40歳(満足度5・絶対見る)

「泣きました。すごく家族のあり方を考えされられます」女32歳(満足度5・絶対見る)

過保護に育てられ、イライラする部分の少なくなかったカホコが、次第に成長し、大人になって行く姿に多くの人が共感を覚えたようだ。評判が評判を呼び、最終回にリアルタイムで番組を見た人が急増した所以である。

一方『カンナさーん』は、インスタグラムのフォロワー600万超の渡辺直美の人気もあり、序盤の視聴率は順調だった。ところが彼女の体形を含め、役の設定やキャラクターに違和感を感ずる人もかなりいた。結果として初回を見た人のうち、最終回復帰組がそれなりにいたにも関わらず、途中完全脱落者が3分の1にも及び、最終回の視聴率にはつながらなかった。

“毀誉褒貶”のさじ加減で言えば、プラスよりマイナスに振れ過ぎたのが敗因だったと言わざるを得ない。

最終回大ブレークドラマ

この3年のドラマで振り返っても、『過保護のカホコ』最終回の傑出ぶりは際立っていた。シリーズ平均視聴率が2桁ドラマの中で比べても3本の指に入る。

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ここで少し面白い現象に気が付いた。

最終回が際立つドラマには、どうやら共通する要因がある。『過保護のカホコ』を初め、今年春の『あなたのことはそれほど』も、昨秋の『逃げるは恥だが役に立つ』も、1話完結型でない。オリジナリティに拘って制作されている。そして新規性ゆえに視聴者の反発もなくはないが、それを補ってあまりある “好奇心” “共感”など、吸引力を持つ設定と展開が勝因となっている。

これに対して、今期の『黒革の手帖』を初め、前期の『小さな巨人』、昨秋『ドクターX』、14年夏『HERO』は、最終回の突出ぶりがやや小ぶりだ。いずれもシリーズ何作目かの放送だったり、似たテイストのドラマが過去にあったりしている。数字を着実にとっているが、物語の後半、特にラストで跳ねるような現象は起きていない。

ここでもう1点、気になることがある。

『過保護のカホコ』『あなそれ』と比べ、『逃げ恥』最終回は初回と比べ倍以上の視聴率となった。過去10年まで遡ると、『逃げ恥』ほど最終回が跳ねた連続ドラマは他に3本しかない。

13年夏の『半沢直樹』は、最終回が42.2%で歴代2位の高視聴率だ。初回より約2.4倍は、過去10年でトップだ。

11年秋『家政婦のミタ』は最終回が40.0%。シリーズ平均25.2%の1.8倍は、過去10年で最も高い。

そして11年春の『マルモのおきて』最終回は23.9%。数字自体は必ずしも突出していないが、同ドラマは平均視聴率21.3%の『JIN-仁-』の裏だった。初回はダブルスコアと引き離されたが、最終回は肉薄するまでに数字を上げている。ラス前より1.7倍以上に数字を上げたのは過去10年で最高で、最終回で26.1%もとった『JIN-仁-』の裏での偉業と考えると画期的だった。

これらもやはり、1話完結でない連続ものだ。そして設定や展開は、従来にないユニークさだった。

さらに最終回大ブレークドラマが2011年以降に集中しているのは、デジタル録画機の普及と、ソーシャルメディアを含めた口コミ文化の定着が関係していよう。多忙な生活の中、途中までは録画再生視聴していた人が、最終回はリアルタイムで見る人が増えている。あるいは、評判を聞いて途中から見る人も増えている。そこにドラマの条件が合致し、最終回の大ブレークが起こっているようだ。

テレビは流行を惹起し、同じテーマを大勢が共有する装置でもある。やはりテレビ局には、こうした記録と記憶に残る桁違いの話題作に挑戦をしてもらいたい。

『過保護のカホコ』は、『マルモ』『ミタ』『半沢直樹』『逃げ恥』には及ばなかったが、挑戦と健闘ぶりは高く評価すべきだろう。次に何が飛び出してくるのか、楽しみにしたい。