データが語る失敗ドラマの法則~オダギリジョー『家族のうた』から真木よう子『セシルのもくろみ』まで~

今クール視聴率最低となった『セシルのもくろみ』が7日の放送で最終回を迎えた。

平均視聴率は4.5%。過去5年では8本目の“5%未満ドラマ”となった。

ビデオリサーチ社の視聴率を見ると、平均が“5%未満”の低視聴率ドラマには法則性がある。さらに昨年から、データニュース社が同じ生活者のテレビ視聴状況を追うシングルソース・パネル調査「テレビウォッチャー」を行っているが、ここでの満足度や自由記述を分析すると、視聴者の心はどこで離れているかが見えてくる。

失敗ドラマの法則性を分析してみる。

低視聴率ドラマは増えている!? 

テレビ東京を除く民放キー4局がGP帯(夜7~11時)で放送したドラマは、多少の増減があるものの、11年以降では毎クールほぼ十数本となっている。そのうち、平均視聴率が5%を切ったドラマは以下の8本だった。

『家族のうた』(12年春・フジテレビ・オダギリジョー主演)

『家族の裏事情』(13年秋・フジテレビ・財前直見と沢村一樹のダブル主演)

『夫のカノジョ』(13年秋・TBS・川口春奈主演)

『戦う!書店ガール』(15年春・フジテレビ・渡辺麻友と稲盛いずみのダブル主演)

『HEAT』(15年夏・フジテレビ・AKIRA主演)

『OUR HOUSE』(16年春・フジテレビ・芦田愛菜とシャーロット・ケイト・フォックスのダブル主演)

『大貧乏』(17年冬・フジテレビ・小雪主演)

『セシルのもくろみ』(17年夏・フジテレビ・真木よう子主演)

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図にある通り、視聴率5%未満ドラマは12~14年の3年間では3本しかなかったが、15~17年の3年では5本。17年は3クールで2本と、発生頻度が高まっている。

視聴率6.5%未満のドラマでカウントしても、12~14年の3年間で8本だったが、15~17年の3年では18本に急増している。

ただしこれらの統計には、要注意な部分もある。

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低視聴率ドラマは13年秋クール頃から急増しているが、主にTBSとフジテレビのドラマで占められていた。視聴率6.5%未満で数えると、14年はTBS11本、フジ7本。15年は8本と6本だ。ところが16年以降、TBSのドラマは改善する。結果として16年は2本と11本。17年は1本と8本というようにフジが低視聴率ドラマの大半を占めるようになる。

つまりここ2~3年は、低視聴率ドラマ問題はフジのドラマ問題となりつつあるようだ。

低視聴率ドラマに2つの法則

平均視聴率が5%を切ったドラマ8本は、大別すると2つのパターンに分かれる。

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初回あるいは2話は6~8%ほどあり、その後の展開次第では平均で7%前後をとれたかも知れないドラマ。8本中5本がそれに該当したが、残念ながらいずれも2話あるいは3話で5%未満に急落し、回復できないまま平均が5%を切ってしまっていた。

例えば今年冬クールの『大貧乏』。初回は7.7%あった。これは決して良い数字ではないが、去年春クールの『僕のヤバイ妻』も同じレベルだった。ところが『僕のヤバイ妻』はその後横ばいと踏ん張り、しかも最終回は10.2%と健闘した。結局平均視聴率は、8%台を死守した。

ところが『大貧乏』は、2話で4.4%と6掛け以下に急落した。そのまま浮上することなく、全話の平均は4.99%に終わっている。

実は両者の違いは、データニュース社「テレビウォッチャー」の質的調査に如実に表れている。まず初回を実際に見た人の満足度は、3.48対3.90。ドラマの平均満足度は3.6~3.7なので、『大貧乏』初回の評価はかなり低く、逆に『僕のヤバイ妻』は極端に高かった。

さらに次回見たい率で比べても、実際に見た人の72%が「次回見たい」と答えた『大貧乏』に対して、『僕のヤバイ妻』では88%に達している。しかも「次回は見ない」が12%対3%とここでも大きな開きがある。

つまり『僕のヤバイ妻』は、設定や配役あるいは番宣など何等かの問題で初回の視聴率が低かったが、内容が良かったために最後まで健闘した。一方『大貧乏』は、視聴者の関心を集めるのに失敗した上に、初回の内容に問題があり、元々少ない視聴者の一定部分を逃がしてしまったのである。

このパターンは、『HEAT』『戦う!書店ガール』『家族の裏事情』『家族のうた』に共通する。

いずれも初回視聴率は6%台。それが2話あるいは3話で5%未満に急落している。実はいずれも急落直前回の満足度が低い。

例えば『家族のうた』は、初回の満足度が3.14で、視聴率は6.1%から第2話3.6%と、4割以上の視聴率を失った。『家族の裏事情』は初回満足度3.12・第2話3.19で、初回視聴率6.5%は第3話4.2%に落ちてしまった。『HEAT』は初回満足度3.03で、初回視聴率6.6%は第2話で3.9%に急落している。そして『戦う!書店ガール』は、初回満足度2.83・第2話3.22で、初回視聴率6.2%は第3話4.6%となった。

もう1つは、初回から視聴率が5%前後しかないパターン。今期の『セシルのもくろみ』を初め、『夫のカノジョ』『OUR HOUSE』が相当する。

初回がこれだけ低いと、相当なことがない限り挽回は難しい。実際に3本とも、一度も視聴率は6%を超えることなく、平均が5%未満で終わっている。

例えば『OUR HOUSE』。初回満足度が3.10しかない。「次回見たい率」も48%と低く、「次回見ない」が24%もいた。これらの結果、初回をリアルタイムあるいは録画再生で見た人の内、48%が第2話で脱落してしまった。

初回から満足度3.90をとり、視聴率を落とさずに推移した『僕のヤバイ妻』と大きく異なることが分かる。

今期の『セシルのもくろみ』も状況は似ている。

初回視聴率は5.1%。以後2話4.5%、3話4.8%と低迷したままとなった。初回から3話までの満足度が2.96→2.77→3.19と極端に低いのと呼応している。

特に同ドラマの場合、初回に接触した人々の2話・3話での接触状況が興味深い。データニュース社「テレビウォッチャー」によると、初回接触者は2400人のモニターの内123人いた。70人がリアルタイムに視聴しており、残り53人は録画した人だ。

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初回でリアルタイムに視聴した人の内、2話もリアルタイムで見た人は29人しかいなかった。4割ほどだ。残り41人のうち、14人は一応録画したが、27人は録画もしなかった。完全脱落率約4割だ。

また初回を録画した53人のうち、2話をリアルタイムで見た人2名、録画を続けた人29人。残り22人は録画を辞めている。完全脱落率はやはり4割ほどだ。

同じように追跡していくと、3話もリアルタイムに見た人は23人(19%)、録画した人32人(26%)、そして完全に脱落した人68人(55%)。これでは初回の低視聴率を挽回するのはとても無理と言わざるを得ない。

3話までに脱落した人の、脱落直前の声。

「ストーリーにリアリティがなく、がさつな印象しか残らなかった」女52歳

「イマイチ面白味にかける内容だった」男49歳

「原作がよいのでひどすぎる」女47歳

「ドロドロするなら見ない」男47歳

「どうかな?面白いのとくだらないのとのはざまだ」女56歳

「今後の展開が何となく想像できてしまう点が微妙」女45歳

「真木よう子細すぎ」女32歳

「痩せすぎる!」女31歳

「わけわからない。真木よう子さん、下品です」女55歳

「真木よう子の役が酷くうるさい感じがしてとても気になった」女50歳

私見を挟まず、データと実際に途中で視聴を辞めたモニターの声だけで分析すると、失敗ドラマの法則は放送前の段階と初回・2話などの序盤で躓いている点だ。

逆にいうと、初回で二桁の数字をとったドラマが平均視聴率で6.5%未満にまで低迷したことはない。

また、2話以降で数字を上げたドラマも極端に悪くなっていない。

突き詰めると、放送前にどう認知度を上げるかと、台本や演出で頑張り放送後に如何に支持を集めるかに尽きる。

TBSは14~15年に苦戦したが、16年以降に改善している。ところがデータで見る限りフジは、14年以降どんどん悪くなっている。視聴率が悪いのに加え、満足度や次回みたい率が低い以上、番宣・ネタの選定・キャスティング・台本・演出に課題があることは否定できない。

日本テレビやテレビ朝日のドラマは、極端に低迷するドラマは多くない。TBSは一時の低迷を改善した。80年代後半から2000年代前半にトレンディドラマなどでドラマの黄金期を築いたフジには、今期の『コード・ブルー3』のような魅力的なドラマを量産してもらいたい。今後の奮起に期待する。