恋愛要素を否定するネット記事は正しい?<反批判のドラマ批評4 山下智久×新垣結衣『コード・ブルー』>

ビデオリサーチ社の視聴率調査から(関東地区)

この夏、視聴率で首位を行く『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-THE THIRD SEASON』

筆者はこのヒットの背景に、ハリウッドのヒット映画にあるような“3つの波”が同ドラマにもバランスよく散りばめられていることを指摘した(『コード・ブルー』人気を支える“3つの波”~緊急救命物語・山ピーやガッキーらの人間ドラマ・医療問題~)。1つ目の大波が“緊急救命物語”、2つ目の中波が“山ピーやガッキーらの人間ドラマ”、そして3つ目の小波が“医療問題”だった。

ところが同ドラマに対しては、放送前から今日に至るまで、2つ目の中波にあたる人間ドラマの1つ、“恋愛要素”への批判が沢山みられる。果たしてこれらの批判は、どの程度妥当性を持っているのか考えてみたい。

『コード・ブルー3』の実績

まずは『コード・ブルー3』の客観的な評価を確認しておきたい。

同ドラマのシーズン1(2008年夏)と2(10年冬)は、シーズン平均視聴率が15.9%と16.6%。共に好成績を残していた。

今夏のシーズン3と比較するため7話までの平均で比較すると、シーズン1は15.5%、シーズン2が16.7%。対するシーズン3は14.4%。一見1~2%ほど数字は下がっているように見える。

ところがビデオリサーチ社が7月から公表している“総合視聴率”で見ると、シーズン3の5話までの平均は23.8%。シーズン1や2の“リアルタイム視聴率”より7~8%ほど高い。

もちろん08~10年時点でもデジタル録画機(DVR)は存在し、録画再生視聴をする人は一定程度いた。しかしDVRの普及率は当時50%前後で、現状の85%前後には遠く及ばない。つまりシーズン3の“タイムシフト視聴率”の6掛けほどが当時もあったと仮定しても、“総合視聴率”ではシーズン3に及んでいない。

今のところ『コード・ブルー3』は、前2作と比べ遜色なく見られていることになる。

データニュース社「テレビウォッチャー」が調べるドラマの質的調査でも、『コード・ブルー3』は決して悪くない。実際に見たモニターの満足度では、5段階評価で3.98。シーン1や2の放送当時にはなかった調査なので、前2作との比較はできない。

それでも調査が始まった2012年春以降では、『半沢直樹』4.34・『下町ロケット』4.23・『逃げるは恥だが役に立つ』4.11には及ばないものの、『ドクターX』3.93・『小さな巨人』3.92・『HERO』3.89よりは上を行っている。多くの人の記憶に残る名ドラマに位置付けられる実績と言えよう。

「テレビウォッチャー」では、去年から“次回見たい率”も調べている。「絶対見る」「たぶん見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」の5段階で意向を聞いた設問だ。

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これで見ると、満足度4.11の『逃げ恥』は、「絶対見る」63.8%・「たぶん見る」29.1%で“次回見たい率”は92.9%に及んだ。これにはわずかに届かないものの、『コード・ブルー3』も「絶対見る」61.9%・「たぶん見る」29.2%・“次回見たい率”91.1%とかなり高い。

“見たい率”90.4%の『小さな巨人』より上を行っているし、月9前作の『貴族探偵』には20%以上の大差をつけている。ハマっている視聴者がかなりいることが分かる。

“恋愛要素”にうんざり!

ところがネット記事には、同ドラマの“恋愛要素”に対する批判が、放送前から今日に至るまでたくさん掲載されている。例えばこんな記事のタイトルがある。

山下智久が主演『コード・ブルー3』 脚本家変更で視聴率大コケの可能性?新月9ドラマに期待も爆死の心配も・・・(7月7日  1

コードブルーに恋愛要素いらない?賛否両論の声!関係性はどうなる?(7月20日  2

コードブルーは恋愛要素はいらないと不評?藍沢と白石の意味深シーンが話題(7月21日  3

コードブルー 恋愛要素いらない批判殺到の理由は?!(8月9日  4

『コード・ブルー』が恋愛ドラマ化し、「脚本家、絶対前シーズン見てない」と不満の声(8月9日  5

『コード・ブルー』戸田恵梨香の「不倫愛」「キャラ崩壊」に視聴者が「もうやめて」と悲鳴!!(8月14日  6

コードブルーに恋愛要素はいらない?人間模様や恋の行方はどうなる?(8月24日  7

『コード・ブルー』戸田恵梨香の“不倫愛”進展の予感!? 視聴者から大ブーイング必至(8月28日  8

論点は医療ドラマが恋愛ドラマ化している点に集中している。 

まずは脚本家が変わったことで恋愛要素が増えたことへの批判だ。シーズン1と2の脚本担当は医療ドラマのスペシャリスト・林宏司だった。『救命救急24時』第2シリーズ(01年夏)、『医龍-Team Medical Dragon-』第1~3期(06年春・07年秋・10年秋)などを手掛けている。ところがシーズン3は安達奈緒子が担当することになった。『大切なことはすべて君が教えてくれた』(11年冬)、『リッチマン、プアウーマン』(12年夏)、『失恋ショコラティエ』(14年冬)、『君に捧げるエンブレム』(17年1月3日)など、恋愛ものを得意とする脚本家である。

その“恋愛要素”。

『コード・ブルー3』の中核を成すのは5人。フライトドクターの藍沢耕作(山下智久)・白石恵(新垣結衣)・緋山美帆子(戸田恵梨香)・藤川一男(浅利陽介)とフライトナースの冴島はるか(比嘉愛未)。

このうち藤川一男(浅利陽介)と冴島はるか(比嘉愛未)は、前作からの9年間に同棲を始め、冴島は妊娠していたことになっている。

主人公・藍沢耕作(山下智久)とヒロイン・白石恵(新垣結衣)は、シーズン2までは医師仲間で、共に救命で戦い助け合う関係だった。ところがシーズン3では意味深なシーンが多く、恋愛関係に発展する雰囲気を匂わせている。

最後の緋山美帆子(戸田恵梨香)は、患者の緒方博嗣(丸山智己)と近い関係になり、医師と患者の関係を超えた会話を交わすようになる。

これらの“恋愛要素”に対して、上記の記事群は手厳しい。

そもそも放送前から、「『コード・ブルー』はあくまでも医療ドラマで、恋愛要素はほとんどなかったため、シーズン3では恋愛要素が多く含まれ魅力が失われてしまうのではないかと懸念」(・・・以上から)と書かれていた。

ネット上での視聴者の声を紹介する記事では、こんな声を拾っていた。

「医療ドラマなんだから恋愛要素要らない...」

「レスキューの現場をやらないコードブルーって意味あるの」

「脚本家かえて。バリバリヘリにのるバリバリ手術するコードブルーが観たい」

「コードブルーやのに全然ヘリ乗らないし、恋愛要素多すぎてつまんない」・・・以上から

「恋愛要素これ以上入ったらもう見ないから」

「突然の藍沢先生と白石先生の恋愛フラグっぽいもの出て来てポカーンとしてしまった」・・・以上から

記事執筆者の意見としても、痛烈な批判が少なくない。

白石役の新垣結衣さんといえば「逃げるは恥だが役に立つ」で人気を博したので、恋愛要素をいれたいと思ったのでしょうか?それがフジの悪いところ。『逃げ恥』のみくりさんと『コードブルー』の白石はまったくの別人なんですよね。恋愛要素はこのくらいにして、しっかり医療ドラマを探求してほしいなと感じています。このままではシリーズが最悪の形で終わってしまうかも。・・・以上から

この二人(藍沢と白石)には男女の清らかな、美しい友情をキープしてもらいたい・・恋愛なんかで汚さないでくれ!!

この先どのような展開になるのか、分かりませんが、今までのコードブルーの硬派な感じを保ってもらいたと思っている方はたくさんいるようです。私もそうなることを願っています。・・・以上から

ドラマ評論家や芸能ライターの声紹介では、もっと激しい表現が出てくる。

「仕事熱心でお堅いキャラであるはずの冴島が、結婚前に避妊をしていなかったことには批判が集中。『脚本家、絶対前シーズン見てないでしょ』と不満の声が上がっているんです」

「前シーズンに、まったく恋愛要素がないわけではなかったんですが、あくまでオマケ程度で、微か

に挟まれる恋愛描写に、ファンは胸キュンしていました。そのため、それを前面に押し出されるのは『なんか違う』と評価されているようです」・・・以上から

「まだまだ緋山と緒方の恋愛を引っ張るようですが、視聴者は『妻がいたならもう終了でしょ。これ以上は勘弁して』などとうんざりしています」・・・以上から

サイレントマジョリティの声

以上ネット記事だけを見ると、『コード・ブルー3』は“恋愛要素”が多すぎ、視聴者・記者・評論家からは非難轟々という印象となる。しかし筆者は、これらはインターネットの増幅現象に過ぎず、大多数の視聴者は必ずしもそうは受け取っていないとみる。

では、その大多数の視聴者の声はどんなものだろうか。同じ2400人をサンプルとし、毎日のテレビ視聴実態を調べている「テレビウォッチャー」に寄せられた声で確認してみよう。

『コード・ブルー3』の7話までをリアルタイムあるいはタイムシフトで見た人は404人いた。個人ベースの接触率16.8%。やはりかなり高い。

そのうち、ドラマの“恋愛要素”に一度でも言及したのは11人だった。出現率2.7%である。しかも同調査では、感想を述べた回に対してのその視聴者の満足度などが確認できる。さらにその後の回で、意見や評価はどう変化しているかも追跡できる。

この観点で11人をフォローすると、3つのタイプがあると分かる。

まずはネット記事と同じ“恋愛要素”否定派。実は11人中2人に過ぎない。

56歳女性は、ネット記事同様、一貫して手厳しい。

「ちょっと期待外れだった。恋愛はいらないかな」(初回・満足度2・次回たぶん見る)

「脚本家が変わったので、ドラマの雰囲気まで変わってしまった」(2話・満足度3・絶対見る)

「このシリーズになって面白さが激減した」(5話・満足度1・たぶん見る)

興味深いのは、批判しつつも7話中5話を視聴している点だ。文句を述べ続けているが、同ドラマへの愛着も感ずる。

もう一人は47歳女性。7話中6話を視聴し、一度だけ“恋愛要素”に触れている。

「コードブルーに恋愛はいらんなぁ」(5話・満足度3・たぶん見る)

この方は2話を録画視聴、3話以降をリアルタイムで見続けている。満足度は2か3と低いが、次回視聴意向では、ずっと「たぶん見る」を付け、実際に視聴している。“恋愛要素”否定派ではあるものの、ネット記事が扱うような全否定の雰囲気はない。

次は“恋愛要素”に触れつつも、評価が高い人々。6人いた。

51歳女性は4話の時に「恋愛要素はいらないですね」と述べている。その回では「満足度4・次回絶対見る」と評価。実は7話すべてを録画再生で見ており、評価では「満足度4・絶対見る」ばかりとなっている。明らかにドラマにはハマっている。

49歳女性は“恋愛要素”に触れているが、表現は「あまり男女の恋愛のどろどろを挟まない感じが気に入っている」(4話)と、“恋愛要素”のバランスを評価している。さらに「あまり評判が良くないという話も聞くが、私は結構楽しんでいる」(6話)とも書いている。やはり7話中6話をリアルタイムで視聴し、視聴した回の全てが「満足度4・絶対見る」。やはりハマっている感じだ。

他に、41歳男性は「やっぱり、このドラマに恋愛はいりません。1人1人の葛藤が充実しています」と5話で述べているが、全話をリアルタイムで視聴しており、満足度は4か5ばかり、次回視聴意向は全て「絶対見る」だった。

29歳女性は録画再生あるいはリアルタイムで全話を視聴している。5話で「白石と緋山の優しさがジーンときた。恋愛要素を入れすぎる」と述べているものの、「満足度5・絶対見る」だった。他の回も評価は高い。

3~6話を見た29歳男性は、5話で「恋愛ものになってしまったのか?」と書いたものの、評価は「満足度4・絶対見る」。7話では「最後はどんな感じになるのか読めなくて楽しい」(満足度5・絶対見る)と最高の評価を下している。

3つ目は、“恋愛要素”に触れた回では厳しい評価でも、その後に評価が上がっている人々。3人だった。

例えば全話を見ている37歳男性は、3話で「恋愛要素が入り込んで少しつまらなそうな展開になりそう」(満足度2・次回見るかも知れない)と述べつつも、次第に評価が高くなり、7話では「シリアスなシーンが多くて楽しむことができて良かった」(満足度4・次回たぶん見る)となっていた。

全話をリアルタイムで見ている30歳女性は、4話で「恋愛描写は控えめにしてほしい」(満足度3・絶対見る)としつつも、その後の回では「赤ちゃんが助からないのに驚いた」「冷蔵庫のシーンにハラハラした」などと書き、(満足度4・絶対見る)と評価している。

増幅されたネット表現の危うさ

以上で明らかなように、同ドラマでの“恋愛要素”は、そもそも意識している人が少ない。

また“恋愛要素”ゆえに低い評価となっている人はごく一部で、それが原因で視聴を辞めた人は確認できなかった。逆に“恋愛要素”を意識した人の中では、ドラマに高い評価をつけている人が多数派となっている。また“恋愛要素”で厳しい見方を示したが、見続けた結果評価が高くなった人もいる。

つまりサンプリング調査で見る限り、『コード・ブルー3』の“恋愛要素”を過剰と受け取ったり、否定的に見ている人はごく一部に過ぎない。

ではネット上では、何故かくも“恋愛要素”全否定の大合唱になってしまうのか。

考えられる原因の1つは、ネット記事がページビュー数により広告収入の多寡が決まる点。極端な意見の記事が好まれるというメカニズムが働き、SNSで発信する人々も極端な意見ほど「いいね」が付いたり、ネット記事に取り上げられるために、一層突出した意見へと筆が走って行くのではないだろうか。

かくしてネットの増幅メカニズムが、本当はごく一部の極端な主観に過ぎないのに、あたかも多数派の世論のように跳梁跋扈を始める。これをミスリードと言わずに何と呼ぶのだろうか。

なぜ“恋愛要素”が加味されたのか?

改めて整理すると、『コード・ブルー3』は量的にもシーズン1・2と遜色なく見られているし、質的にも近年の名作ドラマと同等に高い評価を得ている。

ここで一つ疑問が残るのは、なぜ脚本家が変更され“恋愛要素”など人間ドラマ(2つ目の中波)が増え、さらに“医療問題”など3つ目の小波が加味されたのか。

増本淳プロデューサーはホームページの中で、

「『コード・ブルー』は数ある医療ドラマの中で少し特殊なドラマ」「スーパードクターの登場しない、リアルな医師たちの葛藤や成長を描いた物語」とシーズン1・2を振り返っている。

その上でシーズン3を「新しい局面として皆様にお見せしたいと思っていたテーマが、『一人前になった彼らが人を教える立場になる』というもの」「ドクターヘリ専門研修を終え一人前に成長した彼らはかつての自分たちのような未熟な医師たちを教える立場になります。そして、教えるという行為は結局、自分の至らなさを再確認する行為であり、その行為を通じて彼らはさらに成長していきます。そんな姿を視聴者の皆さんにお届けしたい」「タフな医療者に成長した彼らの活躍、責任が大きくなることに比例して大きくなった葛藤、30代を迎え結婚やキャリアなど人生の岐路に立つことで生じる迷い、など、より深みを増した物語」を届けたいとしている。

つまり強いシーンのオンパレードとなる医療ドラマから、9年の時を経た登場人物の人間性にもスポットライトを当てようとしている。それに相応しい脚本家を選択したのかも知れない。

実はフジテレビはシーズン1・2と3との7~9年の間に、G帯の平均視聴率は5%以上も下落させていた。4割近い下落率だ。月9の年間平均視聴率で見ると、14~15%から一桁に沈んでいた。同局の広告収入も、シーズン1が放送された08年度と比べると年間600億円以上を失なっている。4分の1もパイが収縮した格好だ。

同局幹部によると、シーズン1・2と比べシーズン3は予算を大幅に削っているとのことだ。具体的な金額までは教えられていないが、当然費用がかさむドクターヘリのシーンや、大災害・大事故シーンは減らさざるを得ない。

登場人物5人の成長を描くという必然性と同時に、同局や同ドラマの置かれた経済環境の変化が、“恋愛要素”を含む“人間ドラマ”(中波)や“医療問題”(小波)を膨らませる方向になったと推測する。

しかもその解は、決してネットの増幅メカニズムの結果大合唱となっているような“恋愛要素”の否定論が正しくはなく、サイレントマジョリティに受け入れられるバランスの良いドラマとなったのである。

第4話までで認めた(『コード・ブルー』人気を支える“3つの波”~緊急救命物語・山ピーやガッキーらの人間ドラマ・医療問題~)の拙稿。7話までを終えた今もなお相変わらず3つの波がバランス良く絡み、奥行きの深いドラマとして、筆者の見解は変わらないが如何だろうか。

全体状況を見た上で、ぜひ否定論者の意見を賜りたいものである。