『コード・ブルー』人気を支える“3つの波”~緊急救命物語・山ピーやガッキーらの人間ドラマ・医療問題~

今クール視聴率でトップを行くフジテレビの『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-THE THIRD SEASON』。

シーズン1(2008年夏)と2(09年冬)では、序盤4話の平均視聴率が17%前後だった。ところがシーズン3は15%ほど。一見2%ほど下がったように見える。

ところがこの8~9年の間に、録画再生視聴は激増している。

ビデオリサーチ社の調査によれば、リアルタイムとタイムシフトの両視聴率を測定した総合視聴率では、シーズン3は初回も第2話も24%を超えた。つまり同ドラマは、前2作より多くの人に見られている。

高い満足度

『コード・ブルー3』が凄いのは、視聴率だけではない。

データニュース社「テレビウォッチャー」が調べる満足度でも、ここ数年の高視聴率ドラマの中で5本の指に入りそうだ。

断トツだったのは、ご存知『半沢直樹』(TBS・13年夏)。

平均視聴率28.7%に加えて、全10話の平均満足度は4.34と、他の追随を許さない金字塔を打ち立てていた。視聴率と満足度の兼ね合いでは、記録が残る12年春以降で最高記録となっている。

次に『下町ロケット』(TBS・15年秋)。視聴率18.5%に加えて、満足度4.23も際立った。

満足度では『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS・16年秋)も気を吐いた。視聴率は14.9%だったが、総合視聴率では20%を優に超えている。満足度も4.11とかなり高い。多くの人の記憶に残るドラマだったと言えよう。

他に『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ・15年夏)が、視聴率14.5%・満足度は4.00。

『ドクターX』(テレビ朝日・16年秋)、視聴率21.5%・満足度は3.93。

『小さな巨人』(TBS・17年春)、視聴率13.6%・満足度3.92。

『HERO』(フジテレビ・14年夏)、視聴率21.3%・満足度3.89と続く。

視聴率も満足度も高いドラマは、いずれも名作・話題作の誉れが高いものばかりだ。

ちなみに『コード・ブルー3』は、まだ4話までしか放送されていない。

平均視聴率は15.1%で、満足度は暫定値で4.02となっている。この値は『下町ロケット』には及ばないものの、『逃げ恥』には視聴率でも満足度でも勝っている。フジとしてはここ数年で最高のドラマとなりそうな勢いだ。

1つ目の波:緊急救命物語

「テレビウォッチャー」では、満足度の他に“次回見たい率”も測定している。実際に見た人々に、「絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対みない」の5段階評価をしてもらう調査だ。そのうち、「絶対見る」率は6割前後、「なるべく見る」も加えた“次回見たい率”は9割前後と、継続視聴意向も極めて高くなっている。

満足度も次回視聴意向も高いポイントを与えた人々の意見で、まず目立つのがこんな声だ。

「コード・ブルーだからこそのスピーディかつ緊迫感のある映像」男32歳(満足度5・次回絶対見る)

「ドキドキハラハラするシーンで緊張感もあって見入ってしまった」女22歳(満足度5・絶対見る)

「ドラマとはいえ、緊急医療現場の過酷さが見えて興味深い」女70歳(満足度4・なるべく見る)

「緊迫感があって見ごたえのあるドラマになっている」男56歳(満足度5・絶対見る)

ハリウッド映画には、ヒットの条件として3つの波があるという。“1つ目の波”は、見た人の8割以上が理解できる“分かりやすい大波”。

『コード・ブルー』では、大災害発生・ドクターヘリ緊急出動・困難を極める手術等、最も緊急性を要する救命医療が現場で、瀕死の負傷者・患者が一命を取り留めるのか否かという物語は、大半の視聴者を惹きつける“大きな波”となっている。

「やまぴー。めっちゃ、かっこいい」女21歳(満足度5・絶対見る)

「新垣結衣さんが可愛すぎる」男33歳(満足度5・絶対見る)

「やっぱり役者が良い!」男54歳(満足度4・絶対見る)

「メンバーが全く劣化してなく、それぞれの魅力が増している」女50歳(満足度5・絶対見る)

“大きな波”を担うのは、旬の俳優たち。彼らが出ているだけで見るという視聴者もかなり巻き込んでおり、ヒットの法則に適っている。

2つ目の波:人間ドラマ

ヒットの条件を構成する2つ目の波は、視聴者の5割以上が興味を持つ人間ドラマ(中波)だ。

登場人物たちの仕事や生活上の課題や心の機微が、大きな波に絡んでいる。視聴者が自分事として共感できるような仕掛けだ。

『コード・ブルー』では、「中核の位置を後進に譲る人々」「中核に立ち始める人々」「新人」「患者」の四層に分かれ、幾つもの物語が交錯する。視聴者は各々の立場から、共感できる登場人物に引き付けて、それら中波を見入る。

今回のシーズン3では、後進に道を譲るのは橘啓輔(椎名桔平)と三井環奈(りょう)。息子が拡張型心筋症のため、医療の最前線から距離を置くことにした。医師ではありながら、患者側の立場に置かれ、意のままにはならない運命と向き合っている。

中核に立ち始めたのは、フライトドクターの藍沢耕作(山下智久)・白石恵(新垣結衣)・緋山美帆子(戸田恵梨香)・藤川一男(浅利陽介)と、フライトナースの冴島はるか(比嘉愛未)の5人。

脳外科医としてトロント大学のレジデントを目指しつつも、救命救急センターを手伝う藍沢。

その救命救急センターで、指揮官を目指し始めた白石。新人の育成が大きな課題だ。

周産期医療と救命救急の間で揺れる緋山。

妊娠をきっかけに、仕事と生活のバランスを考え始めた冴島と藤川。

5人は各々中核を担う専門家としての物語を持ち、そこに人生上の悩みが重なる。

「5人の成長と新たな葛藤。それぞれの視点から楽しめるドラマ」女23歳(満足度5・絶対見る)

「新人だったドクター達が成長して、物語に奥行きが出ている」女55歳(満足度5・なるべく見る)

「人間味があって、面白いドラマだと思う」男36歳(満足度4・絶対見る)

「面白い。群像劇というのだろうか。山Pが主役かも知れないが、主力メンバー皆がしっかり演技している」(満足度4・絶対見る)

3つ目の波:医療問題

ヒットを支える最後の波は、必ずしも多くの視聴者に届くとは限らない小さな波。専門分野や社会問題に関わることもあり、ここが屹立することでドラマが骨太になる。

『コード・ブルー』では、医療をめぐる様々な専門的な物語が散りばめられている。例えば第2話でクローズアップされたフェローの育成問題。

新人の名取颯馬(有岡大貴)・灰谷俊平(成田凌)・横峯あかり(新木優子)をどう指導するかで、藍沢(山下智久)と白石(新垣結衣)は対立する。「意識がない患者は最高の練習台」と横峯にICUの患者で練習するよう促す藍沢は厳しい。ついていけずに横峯は泣き出してしまう。

いっぽう白石は、厳しすぎると辞めてしまうので、円滑に回したいと考えている。

この問題に対しては、視聴者も大いに反応を示していた。

「新米の医師が患者を実験台にして経験しながら実力をつけていくとは、はなはだ恐ろしい。新米にやられる患者はたまったものではない」女61歳(満足度1・なるべく見る)

「あんな使えないフェローがいると思うと怖すぎる」女27歳(満足度5・絶対見る)

「医者の新人はこんなものだろうと思った。練習台にはなりたくないが、経験の一部として名医になる一歩なのだろう」女62歳(満足度5・絶対見る)

医師教育の世界には、“どんな名医にも最初の患者がいる”という言葉がある。

人間は誰も、歩けるようになるまでに何回も転んでいるように、医者も腕を磨くプロセスで失敗を経験せざるを得ない。“失敗は成功のもと”というわけだ。ところが患者は生身の人間ゆえに、痛みや症状の悪化を恐れる。練習台になることを許容する人はあまりいない。

筆者はかつて、新人医師の研修制度で定評のある沖縄県立中部病院で、新人教育のドキュメンタリーをロケしたことがある。国家試験に合格したての新人たちは、どんなに偏差値の高い大学の医学部を卒業していようが、大学の名前は関係なく、ほとんどが失敗から始まっていた。

泣き叫ぶ赤ちゃんへの静脈注射で、5~6回も針を刺し直し、遂に注射できなかった例。

救命救急に運び込まれた全身やけどの男を見て、思わず後ずさりしてしまい処置できなかった例。

大学では豚肉で縫合の練習を積んだはずが、初めての手術で手が震えて糸が結べなかった例などだ。

藍沢が横峯に、人体模型を使った練習ではなく、ICUにいる意識のない患者で実地を踏ませようとしたのは、厳しい研修の現場から言えば決して違和感はない。

「半人前のドクターが成長していく等、これからのストーリーが楽しみだ」男39歳(満足度5・絶対見る)

「新人が成長していく姿が感動的だった」女46歳(満足度5・絶対見る)

「いつもは決してフェローを褒めない藍沢が、よくやったと褒めてあげたのがとても良かった」女31歳(満足度5・絶対見る)

筆者のロケの中では、「お役に立てるのなら、どうぞ」とニコニコ笑いながら、静脈注射の練習台を受け入れていた沖縄のオバーが印象的だった。そして最初に失敗していた新人たちは、1週間後には全員最初の課題を克服していた。

声高に主張しているわけではないが当ドラマは、医師教育はどうあるべきか、仄めかす程度にストーリーの中にまぶすことで、一部の視聴者から深い共感を呼んでいる。

ドラマの今後

他にも“生きがいか命かという、究極の選択”をテーマにすることもある。

将来を嘱望される14歳の天才ピアニストは、命を守るために手術をするか、ピアノを弾けなくなるリスクが伴うために、手術をしないかで悩む。

渓流で足を滑らせて転落したシェフは、後遺症で料理の道が閉ざされかける。人はそんな時にどう対応するのか。

「命について凄く考えさせられた」女23歳(満足度5・絶対見る)

「シェフが極めて前向きに自分の障害と向き合おうとしているシーンはジーンときた。実に骨太な良いドラマです」女61歳(満足度5・絶対見る)

「自分が看護師なので、医療ドラマにありがちな“これおかしいでしょ”という場面もなく、医療監修がちゃんとされている」女33歳(満足度5・絶対見る)

ドクターヘリの飛翔シーンは、理屈抜きで美しく、格好良い。

救命救急の現場は、とにかくテンポよく、緊迫感に溢れている。

ベテランから新人まで、そして患者たちの人間物語も、共感できる思いに満ちている。

そして医療問題は、我々社会の問題として深く考えさせられるものがある。

このように3つの波が見事に絡み合い、多様な視聴者の多様な関心を飲み込み、『コード・ブルー3』の序盤は量的にも質的にも視聴者から高い評価を得た。

これだけ条件が揃ったドラマである。中盤以降も中心メンバー5人のドラマが各々動き出し、さらに面白くなることを期待したい。