嵐・相葉雅紀『貴族探偵』vs亀梨和也&山下智久『ボク運』対決に見るジャニーズ・ドラマの現実

今期GP帯(夜7~11時)ドラマの中で、ジャニタレ主演はフジ月9『貴族探偵』と日テレ土10『ボク、運命の人です。』の2本。

『貴族探偵』はフジ月9の30周年となるタイミングで、亀山社長が「新たな枠のスタートとしたい」と社運をかけて始まった。

一方『ボク運』は、前期まで土曜9時の放送だったが、『嵐にしやがれ』と順番が入れ替わり、10時からの放送の第1作となった。その意味で、いずれも話題を集めたドラマだったのである。

『貴族探偵』は2勝4敗!

両ドラマの対決を、視聴率・録画数・F1(女20~34歳)の視聴者数・49歳以下視聴者数・満足度・次回見たい率で勝敗表を付けて見た(注)。

相葉雅紀主演『貴族探偵』は、録画数と49歳以下視聴者数で上回った。ところが亀梨和也と山下智久の『ボク、運命の人です。』に、視聴率・F1の視聴者数・満足度・次回見たい率で後塵を拝した。2勝4敗である。

今回の月9は30周年に相当していた。国民的アイドルグループ・嵐の相葉雅紀を主役に据え、武井咲・生瀬勝久・滝藤賢一・中山美穂・松重豊・井川遥・中山美穂・仲間由紀恵・加藤あい・広末涼子・高岡早紀など、錚々たるキャストで臨んだ。1話あたりの制作費は、通常のドラマの倍以上という噂も飛んでいる。

“月9復権”を掲げた勝負作だったが、これだけ注力しながら視聴率一桁、同じジャニタレ主役の『ボク運』に敗れたとあれば、フジの痛手はかなり大きいと言えよう。

ちなみに今回の月9に拘った亀山千広社長は、『貴族探偵』放送途中で退任が決まっている。

(注):視聴率はビデオリサーチ社関東900世帯調査から。録画数・満足度・見たい率などは、データニュース社「テレビウオッチャー」関東2400人調査から。

両ドラマの量的評価

両ドラマ対決を、まずは視聴率で比較してみよう。

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初回は『ボク運』12.0%に対して、『貴族探偵』は11.8%。ほぼ互角のスタートだった。

ところが『貴族探偵』は、2話で3.5%も数字を落とし、7~9%あたりを上下する。9%台を中心に推移した『ボク運』に、平均視聴率で0.8%ほど差を付けられてしまった。

ところが録画数では逆転する。

“月9の30周年”で“月9復権”をかけた話題作だったこともあり、初回の録画数は132と『ボク運』98を大きく上回った。ところが2話以降急減し、6~9話では両者ほぼ互角となった。

もともと日テレのドラマはリアルタイムで見てもらうことを最優先しており、コメディ要素を増やすなどの工夫を凝らしている。録画してじっくり見るタイプのドラマではない。

一方『貴族探偵』はミステリーゆえ、犯罪のトリックなどを録画再生視聴でじっくり味わうタイプだ。にも関わらず、録画数がほぼ同じになってしまったのは、ミステリーとしての出来に課題があったことを示唆する結果だ。

両ドラマの属性別視聴者数

ビデオリサーチ社の視聴率では『ボク運』が上だったが、9話までの総視聴者数では『貴族探偵』が多くなった。ただしこの比較で最大の問題はF1の視聴者数だ。

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もともと月9は90年代を中心に、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』『ひとつ屋根の下』『あすなろ白書』『ロングバケーション』『ラブジェネレーション』『HERO』などの大ヒットを量産した。その黄金期には、単に視聴率が高いだけでなく、F1から絶大な支持を得ていることが広告営業でも大きな武器になっていた。ところが今回のF1視聴者数は、1話あたり18.7人(分母は400人)。22人の『ボク運』に離された格好だ。

ちなみに今期ドラマでは、『リバース』が24人、『あなたのことはそれほど』に至っては27人に及ぶ。F1の月9というイメージは、もはや遠い昔という感じだ。

属性別の視聴者割合を見ると、もう1つの事実が浮かび上がる。

『ボク運』の場合、F1(26%)・F2(29%)・F3(20%)で、女の比率が4分の3に達した。やはり恋愛ドラマは、今も女性が主な視聴者になっている。

一方『貴族探偵』は、F1が19%と少なかったが、男性は全体の38%を占めた。ミステリーだったために、恋愛をテーマにすることが多い通常の月9より、男性視聴者を多く集めていたことがわかる。

ちなみに美男美女のラブストーリーだった前期の月9『突然ですが、明日結婚します』は、F1の視聴者数自体は大きく変わらないが、比率は27.9%と全属性の中で最高となった。逆に男性の比率は24.4%。平均視聴率は6.7%だったので、『貴族探偵』は2%視聴率が上がっているが、ミステリー路線で男性視聴者の増加などが寄与したようだ。

両ドラマの質的評価

以上は量的側面を中心に見てきた。これを質的評価で見ると、月9の深刻な現状が見えてくる。

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まず満足度では、『ボク運』3.70に対して、『貴族探偵』は3.20しかない。実際に見た人に5段階で評価してもらっている調査で、ドラマの平均は3.6~3.7である。『ボク運』はほぼ“中の上”ぐらいに位置付けられるが、『貴族探偵』は極端に低い数字となった。

F1の満足度でみると、「運命の恋」をテーマにした『ボク運』は4.13。恋愛ドラマとして、しっかり若年女性に届いていたようだ。ところが『貴族探偵』のF1は3.50。F1に支持される月9のはずが、平均点に遠く及ばない成績で終わっている。

ちなみに美男美女のラブストーリーだった『突然ですが、明日結婚します』の満足度も全体平均で3.18。しかもF1でも3.60しかなかった。若年女性の支持は、全盛期と比べると大きく後退していることがわかる。

次回見たい率は、「絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」の5段階で評価してもらった数字だ。

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これで見ると、『ボク運』は2話以降8~9割の人に見たいと思われている。ところが『貴族探偵』は4話目でようやく7割を超える程度で、一度も8割に届いていない。しかも「絶対見る」という強い意向を持った人は、3話目まで3割未満で、最高でも42%にしか達していない。一方『ボク運』は初回から38%、6~9話では5割を超えている。両ドラマの求心力には、大差がついていたと言わざるを得ない。

ドラマの原点はやはり作品性

以上が両ドラマの量的・質的な評価の概要だ。

2つを比較する範囲では、明らかに『ボク運』に軍配が上がる。しかし今期GP帯の14ドラマを俯瞰すると、『ボク運』は中位、『貴族探偵』に至っては低位に位置づけられてしまう。ジャニタレを主役に置いたにも関わらず、視聴者の評価はそれほど高くないことが分かる。つまり、人気タレントだからドラマが支持されるとは限らないという、至極“当たり前”の事実を今期は証明したのである。

亀山社長の後を継ぐ宮内正喜新社長は16日の記者会見で、日枝久会長から内示の際「今の惨状をすぐに回復してくれ」と託されたと説明した。具体的には、編成局や制作局などを統合し、現在の21局3室から14局4室にスリム化する組織改革を7月1日付で断行する。「かつての大部屋時代のコミュニケーションの良さ」復活を目指すという。

ジャニタレ主役のドラマが大ヒットとはならなかった今期、特に相葉雅紀で大惨敗に終わった月9を奇貨として、まずは制作陣のモチベーションを上げ、フジらしい面白いドラマを作ってもらいたい。

「ドラマが面白くなければフジじゃない」・・・若手制作者たちの奮起に期待したい。