飛ばす『リバース』の逃げ足は『逃げ恥』より上!~こんなに違う!量的評価と質的評価~

“リバース書き”という実験作のドラマ化『リバース』が、ラストに向け大変なことになっている。

このことは、拙稿「予想を裏切る怒涛の展開で満足度は急上昇!~湊かなえ3部作から予想する藤原竜也『リバース』のラスト~」でも触れた。その時点では、第7話までの実績に基づき説明したが、第9話まで放送され残すは最終回のみとなってみると、想定以上に『リバース』のラスト力が凄まじいことが見えてきた。

昨秋放送され話題沸騰した『逃げるは恥だが役に立つ』との比較で、あり得ない“どんでん返し”の連続と、“怖すぎる”展開で視聴者を釘付けにしている『リバース』のパワーを確認しておきたい。

空前の逃げ足!

もともと編集者から「あのラストになるような物語を書きませんか」と提案され、湊かなえがどう展開したらその最後になるのかを、結末から順に冒頭に向かって書き進めたという小説『リバース』。ラストで読者が最も驚く内容を練りに練って紡ぎ上げた作品だった。

藤原竜也と戸田恵梨香が好演するドラマも、一部オリジナルな要素が加わり、視聴者の予想を次々に裏切り、ここ数年で視聴者の反応が最も極端な作品となっている。

視聴率で見ると、実は『リバース』の初回は、10.3%で『逃げ恥』初回を凌駕していた。

ところが『逃げ恥』は2話以降一度も数字を下げることなく展開し、最終回は20.8%の大記録を打ち立てた。

一方『リバース』は、初回こそ『逃げ恥』の上を行ったものの、2話でいきなり4%も落とし、4~8話も一桁と量的評価では大きく水を開けられた。9話までの平均視聴率8.6%も、近年のTBS金曜ドラマ枠としては平凡な記録に終わっている。

ところがデータニュース社「テレビウオッチャー」が調べる満足度で見ると、風景はリバース(逆転)する。

『逃げ恥』は初回から3.94と極めて高い数字で始まっていた。そして2話で4.0の大台に乗せ、ジワジワ上昇させていた。最高値は7話と最終回の4.25。全11話の平均4.11は、ドラマの平均3.6~3.7から考えると極めて高い。データニュース社が調査を始めた2012年度以降のGP帯民放ドラマでは、最高記録となっている。

一方『リバース』は、初回の満足度が3.52と平均以下で始まった。

ところが2話で3.9台に乗せ、5話で4.0を突破、7~9話はすべて4.28と驚異的な数字を叩き出した。『逃げ恥』と比べると、5話以降はすべてリードしている。

視聴率はなぜ上がらない?

5話以降で空前の高満足度を出しながら、『リバース』の視聴率は5話の9.0%から6~8話7%台、9話でなんとか二桁と、あまりパッとしていない。満足度で後塵を拝した『逃げ恥』が、5話から9話までに3.6%も上乗せしたのと違いすぎる展開だ。

原因は両ドラマのベクトルの違いにある。前向きか後ろ向きかの違いである。

まず『逃げ恥』のキャラクター。みくり(新垣結衣)はまじめで頑張り屋だが、「就職難」「派遣切り」に直面するという、現代の多くの女性と同じ課題を抱えていた。IT会社につとめる地味なサラリーマン・平匡(星野源)も、35歳童貞で「プロの独身」。やはり多くの男性に通ずる部分を持つ。

2人はやむを得ず「仕事としての結婚」という突拍子もない道を選ぶが、次第に恋愛感情を抱くようになり、自分と相手の生き方・感じ方とどう折り合いをつけるかというラブコメディとなっていた。新しい生き方を提示した未来志向のドラマだったのである。

「ストーリー的にも、見ているだけでほのぼの胸キュンしてしまいます」女28歳(満足度5)

「契約結婚なのに、すごく人間味あふれる内容が面白い」女34歳(満足度4)

「ガッキーが適役で、可愛さを十分に生かせているドラマ」29歳男(満足度5)

「よく見るようなベタなドラマでなく、新しい感じの脚本で面白かった」女34歳(満足度5)

明らかに視聴者の共感を集めるタイプで、その求心力が次第に多くの視聴者を呼び込み、視聴率が一度も下がることなく上昇していった。

一方『リバース』は、広沢(小池徹平)の死という10年前の過去に向かっていく物語だ。

関わった全員が、それぞれの闇を持ち、それゆえに後ろめたさを引きずって生きてきた。「ラストで読者が最も驚く」ように練りに練られたキャラクター設定と物語の展開は、誰にでも起こるような普遍性はない。ここでドラマに入り込めない人が大量に発生し、途中で離脱している。

「雰囲気が暗い感じで、なんとなく楽しくなかった」男37歳(満足度2)

「期待していたが、途中で飽きてしまった」女68歳(満足度3) 

「なんだか説明が雑で分かりにくい」女27歳(満足度2)

両ドラマの量的評価の差は、出発点から宿命づけられていたと言えよう。

影があるから光が輝く!

それでも『リバース』の後半の満足度は、凄まじいことになった。特に7~9話が全て4.28というあり得ない高得点は、過去に例がない。

深瀬(藤原竜也)・村井(三浦貴大)・谷原(市原隼人)・浅見(玉森裕太)の4人に告発文を送った張本人が、もともと死んだ広沢(小池徹平)の恋人で、最近深瀬と付き合い始めた美穂子(戸田恵梨香)であることが7話で判明して以降、怒涛の展開が続いたからである。

「まさに予想外の、まさかの展開」男49歳(満足度5)

「(戸田恵梨香が)まさか皆に会っていたとは、驚きでした」女39歳(満足度5)

「最後の最後にまさかの展開で続きが気になる」女27歳(満足度5)

結末から順に冒頭に向かって書き上げる手法は、見事に後半で大きな力を発揮した。満足度だけでなく、「次回見たい」という意向調査でも同ドラマは圧倒的な結果となった。

平均的なドラマでは、「(次回)絶対見る」は半分程度、「たぶん見る」を加えても6~7割が良いところだ。ところが『リバース』では、両者の合計は2話以降ずっと9割を超えている。

『逃げ恥』と比較してみよう。

画像

図の青い棒グラフが『逃げ恥』、赤が『リバース』だ。共に高い「次回見たい率」となっている。それでも『逃げ恥』では、全体はずっと9割ほどとなっているが、「絶対見たい」が6割前後、「なるべく見たい」が3割前後の回が多い。

一方『リバース』は、初回こそ全体が9割に届いていないが、2話以降はずっと『逃げ恥』より高い。しかも「絶対見たい」は7割前後で、『リバース』の方がより強いニーズとなっている。

特に戸田恵梨香が告発文の張本人であることが判明した第7話以降、「絶対見る」が75%前後、「たぶん見る」を加えると95%前後に上がっていた。ほぼ全視聴者を虜にしてしまっていたのである。

以上を勘案すると、未来志向で明るく前向きな物語『逃げ恥』は、設定や切り口の新規性もあり、質量ともに高い評価を得た。これに比べて、人間の闇にスポットライトを当てた『リバース』は、多くの人に受け入れられたわけではないが、ハマった人には強烈なインパクトを与えていることがわかる。影があるからこそ、光も強烈になっていたのである。

“どんでん返し”の連続と“怖すぎる”展開

告発文を送った張本人・美穂子(戸田恵梨香)は、谷原(市原隼人)をホームから突き落としてもいた。

ところが10年前の事故を調べていた元刑事・小笠原俊雄(武田鉄矢)が襲われたことで、10年前の事故を明るみに出したくない犯人が、美穂子以外にいることが示唆された。しかも深瀬(藤原竜也)に脅迫メールが届いていた。

最終回前の第9話で、事件の真相が次々に明らかになっていった。

小笠原を刺した犯人を雇っていたのは、村井(三浦貴大)の父・明正(村井國夫)の秘書・甲野(山崎銀之丞)だった。10年前の広沢の事件をもみ消したのが明正だったので、それを伏せたままにするための措置だった。

美穂子は深瀬を騙していたので、自分にはもはや会う資格はないと考えた。ところが、引っ越し作業を済ませた直後、浅見(玉森裕太)らの配慮で二人は再会を果たす。そこで深瀬は「俺、美穂ちゃんといるときが1番楽しくて、1番幸せで、だから騙されてても憎まれてても、俺、美穂ちゃんのことが好きだから」と告白する。

すると美穂子は、同じ間違いを繰り返すとこだったと気づく。本当は思いがあるのに広沢と別れたという過ちを、深瀬との間でまた犯すところだった。

ところが第9話のラストには、驚愕の事実が待っていた。広沢について二人でノートに書き留めて行く中で、広沢に蕎麦アレルギーがあったことを深瀬は知る。10年前の事故の直前に、蕎麦のハチミツ入りコーヒーを持たせたのは、なんと深瀬自身だった。

「広沢を殺したのは・・・俺だったのか」。

「予想もしていなかった展開で、ビックリして鳥肌がたった」女22歳

「友人の死因がハチミツなんて、残酷すぎると思った」女55歳

「怖い。マジ怖い。さすが湊かなえ。まさかのハチミツ」女47歳

ここまでは基本的に原作に沿ったストーリーだそうだ。そして最終回は、オリジナルな展開が付け加えられるという。

まだ回収されていない伏線、事故現場に残っていた「てんとう虫のキーホルダー」。そこに記された「30」の意味は?

また広沢の死の真実を知った深瀬はどうするのか。

番組ホームページには、“告白すべき唯一の闇”が明記されている。どんでん返しを繰り返した末に、渾身の“ヒューマンミステリー”はどんなメッセージを伝えて来るのか。“圧巻のラスト”を期待したい。