テレ朝ドラマはなぜ強い!?~『緊急取調室』『警視庁・捜査一課長』『警視庁捜査一課9係』分析から~

2017年度春ドラマの序盤戦で、テレビ朝日が独走している。

GP帯の民放14ドラマの視聴率(5月1日放送分まで)で比較すると、3シリーズ合計7話放送の平均で13.31%となったテレ朝が断トツの首位。2位は3シリーズ8話が10.7%のTBS。3位は同じく3シリーズ8話で9.99%の日テレ。4位が4シリーズ11話で9.24%のフジテレビとなっている。

視聴率が判明している5月1日までの記録で見ると、視聴率のベスト5は以下の通り。

1位:『緊急取調室』16.05%

2位:『小さな巨人』12.80%

3位:『CRISIS』  12.37%

4位:『警視庁捜査一課9係』

12.33%

5位:『警視庁捜査一課長』

12.05%

なんと上位5本のうち、テレ朝が3本すべてを入れてきている。

ドラマ初回に強い日テレ

これまでドラマ初回の視聴率については、日テレが他局を圧倒してきた。

2年前に「日テレドラマの初回はなぜ強い?」で詳述したように、15年秋までの7クール、日テレのドラマ初回の安定感は他局を寄せ付けなかった。その後の16年冬から今クールまでで見ても、全18本のドラマ初回は、2本を除き二桁スタートを切っている。相変わらず安定している。

その前提には番組宣伝の充実があった。

ドラマ開始1週間ぐらい前から、各局は主演級の役者を情報番組やバラエティ番組に出演させて、ドラマの認知度アップに努めている。ところが日テレだけは格別だ。単に他の番組で露出するだけではなく、視聴率の高いバラエティ番組に多く出演させ、他局より圧倒的なリーチを稼ぎ、強い印象を視聴者に刻み込んでいたのである。

では、他局も真似すれば良いようなものだが、そうは簡単にいかない。情報番組は比較的容易だが、バラエティ番組となると、局内の組織の壁がある。バラエティ側から言えば、「なぜ他部署のためにそこまでしなければいけないのか?」となる。縦割りの中、簡単に話は進まないことが多い。

ところが日テレは、人事制度が鍵となって容易に出演者のやり取りをしてきた。バラエティとドラマの間で、制作者が頻繁に人事異動をしてきており、相互協力が当たり前になっていたのである。

かくしてドラマ初回の視聴率では、日テレが他局を圧倒し続けてきた。

ドラマ初回戦線異状あり!

ところがそのトップの座をテレ朝が揺るがせ始めている。

最初に触れたように、今期序盤はテレ朝が日テレに2%以上の差を付けている。しかも初回だけで見ると、3%以上の差に広がっている。

初回視聴率と初回放送前1週間の番宣の関係を検証してみよう。

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ドラマ主役の放送前1週間での番組出演を1ポイント、うち視聴率の高いGP帯(夜7~11)番組への出演を2ポイント、初回放送当日の出演を3ポイント、当日GP帯を4ポイント加算して番宣ポイントとしてみよう。

一目瞭然、日テレが最も他番組でのドラマ宣伝をやっており、結果として全ドラマ二桁スタートという好成績をおさめている。

ところがテレ朝を見ると、他番組への主役の出演という意味では、視聴率の割に少ないことがわかる。

例えば11.5%発進となった『警視庁捜査一課9係』では、群像刑事ドラマというコンセプトもあり、メインの井ノ原快彦は、1週間の間に9番組に出演、うちGP帯は1本、当日も1本しかない。民放全14ドラマの中では、最低ランクの露出に留まった。

『警視庁・捜査一課長』の内藤剛志にしても、全14ドラマの中では平均以下に留まる。『緊急取調室』天海祐希こそトップクラスの露出だが、それ以上に露出した日テレ『ボク、運命の人です。』亀梨和也や『フランケンシュタインの恋』綾野剛を下回った。それでも視聴率は、5%以上の差をつけている。

ドラマの番組には、5秒・15秒・30秒のスポット、深夜に多く放送される5~15分の番宣番組がある。これらはどの局も番組宣伝部が一生懸命やっている部分だ。

加えて先述の通り、他の番組への主役級の出演がある。

実はもう一つ、テレ朝においてはドラマのシリーズ化による過去ドラマの再放送が大きく寄与していそうだ。

テレ朝の場合、3ドラマともシリーズ化したものである。

そして同局は平日午後帯で3時間のドラマの再放送枠を設けている。3ドラマの初回放送前1週間、実はそれぞれ過去シリーズから再放送を4~5回ずつ続けていた。これがもう1つの大きな番宣になっていたのである。

満足度も高い!

シリーズ化した場合、マンネリとか中高年に偏るなどの批判も出て来る。

確かにSeason12となる『警視庁捜査一課9係』の視聴者は、57%が50歳以上となっている。シーズン2『警視庁・捜査一課長』も61%が50歳以上だ。根強い中高年の固定ファンが大半と言えよう。

それでも『緊急取調室』には62人もの49歳以下の視聴者がいる。これは全14ドラマの中で5位、『リバース』と同数となっている。つまり中高年を確実におさえ高視聴率を確保する路線と、若年層を取り込む実験的な路線を使い分けている。

データニュース社「テレビウオッチャー」の満足度で見ると、全14ドラマの中の首位は『緊急取調室』。

最大の勝因は、ユニークな切り口と見る。

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とかく刑事ものは男の世界になり勝ちだが、紅一点の女刑事を主人公に据えた。しかも刑事の失踪・聞き込み・犯人との格闘などが視聴者の目を引くシーンとして多用され勝ちだが、同ドラマにはこうした要素が全くない。取調室という密室だけで、会話劇が柱となってストーリーが進む。それなのに見ごたえがある。

こうしたアイデアに加え、脚本・演技力・演出の三拍子がそろい、視聴者の支持を集めている。

さらに中高年を確保しつつ、独自性と面白さにも手を抜かない他2ドラマも隅には置けない。

『警視庁・捜査一課長』の主人公は、“ヒラから成り上がった最強の警部”たる捜査一課長(内藤剛志)。沈着冷静で情にも厚い正義漢で、その前提となっている哲学がドラマの随所で簡潔かつ分かり易く語られ、その潔さに視聴者は爽快感を味わっている。これが魅力となって、全体で満足度4位と好位置につけている。

群像刑事ドラマとして、

『警視庁捜査一課9係』は、一見地味だが6人の刑事たちが捜査途上で対立しながら、最後はそれぞれの正義感で一つにまとまり事件を解決する。見る人により共感ポイントが異なる点が、満足度7位の平均点維持につながっている。しかも同ドラマは既に3話放送されたが、11.5%→11.6%→13.9%と視聴率を上げ続ける、早くも唯一のドラマとなっている。決して疎かにはできない番組と言えよう。

テレ朝のシリーズ化戦略

実は同局のドラマ視聴率は極めて安定していると、去年春に「“打率トップ”テレ朝に必殺技あり!」にて詳述した。

最大の勝因は、シリーズ化させることで固定客を囲い込んでいる点。木曜8時枠は“木曜ミステリー”、水曜夜9時枠は、“刑事ドラマ”としている。

前者の代表には、既に16シリーズ放送した『科捜研の女』がある。後者にはSeason15に達している『相棒』がある。

そしてもう1枠“木曜ドラマ”(木曜9時)は、テーマを限定していないが、今回の『緊急取調室』や、既に4期まできている『ドクターX』など、やはりシリーズものが多い。

シリーズ化の強みは、まず人々の視聴習慣を定着させ得やすい点がある。また制作する側にとっても、企画の目的が明確で、テーマの絞り込みや番組構成の取捨選択がしやすくなる。つまり番組の水準を保ちやすくなる。

さらに既に認知度が高いので立ち上げ時の宣伝が楽というメリットもある。

ターゲットとなる視聴層も見えているので、時代の変化に合わせ内容の微調整も容易だ。

そして大枠がかっちり決まっているので、新たなシナリオライターや監督に挑戦させ易く、ドラマの質を保ちつつ制作者・スタッフの育成・新陳代謝の促進がし易いという利点も大きい。

これらの戦略を長年続けてきた結果、今期のテレ朝3ドラマは、結果として多様性に富み、視聴率も満足度も高い実績をおさめている。

定番の2ドラマは、中高年をキープしつつも、差別化しテーマに特徴を持たせることで、49歳以下にも一定程度届いている。さらに残り1枠は、刑事ものの定番をタブーとすることで高い独自性を出すことに成功し、全14ドラマの中でもトップクラスの評価を得ることに成功している。

同局のドラマの安定感と突破力は、しばらくは続くと見るべきだろう。