有村架純『ひよっこ』は『あまちゃん』を超えられるか?~朝ドラ当初3週データで大胆予測!~

番組ホームページから

NHKの朝ドラマは、2013年上期の『あまちゃん』以降好調が続いている。15年上期『まれ』を除き、すべて視聴率が20%を超えている。

拙文「朝ドラ『べっぴんさん』は『あまちゃん』の貯金を食いつぶす!?」で詳しく説明したが、宮藤官九郎シナリオによる『あまちゃん』はユニークな作品で、伝統的な朝ドラを好むF3(女50歳以上)の中には受け付けなかった人々が一部いた。ところがF1F2(女20~49歳)が通常の朝ドラより反応し、後半になってブレークした。

つまり『あまちゃん』は、新たに朝ドラの視聴習慣を持つ人々を増やした。そしてオーソドックスな作りに戻った『ごちそうさん』以降、逃げたF3が戻って来たため全体の視聴率が上昇したのである。

ではその波に乗って今期の『ひよっこ』も、順調に視聴率20%以上を獲るだろうか。残念ながら、事態はそれほど単純ではなさそうだ。

視聴率の動向

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『あまちゃん』以降では、波留主演の『あさが来た』が23.5%でトップ。高畑充希『とと姉ちゃん』22.8%・吉高由里子『花子とアン』22.6%・杏『ごちそうさん』22.3%が好調だった。

いっぽう土屋太鳳『まれ』は、前作より1.7ポイント落として19.4%。『あまちゃん』以降で唯一、20%を割ってしまった。

そして芳根京子『べっぴんさん』も、20%台は保ったものの、前作より2.5ポイント下落と急ブレーキだった。

実はシリーズ平均視聴率と当初3週の視聴率動向には、一定程度の相関関係がある。

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視聴率が22%を超えた4本は、いずれも当初3週で視聴率が急上昇している。序盤の作りが人々の心に届き、短期間に口コミなどで視聴者を増やしたと考えられる。

ところが前作より視聴率を下げた『マッサン』『まれ』『べっぴんさん』は、序盤で勢いがない。特に『まれ』は2週から3週にかけて1.3ポイントと大幅下落をしている。序盤の勢いは、シリーズ全体の評判に大きく関わる。ここで躓くと、挽回は容易ではない。

この見方に立つと『ひよっこ』は、当初3週で大きく下がっていないものの、3週続けて20%割れと『べっぴんさん』以降最低の記録となっている。これだけ見ると、『まれ』を下回る状況は前途多難と言わざるを得ない。

満足度の動向

いっぽう当初3週の満足度(注)を見ると、やや異なる風景が見える。

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視聴率が22%を超えた『あさが来た』『とと姉ちゃん』『花子とアン』『ごちそうさん』は、いずれも当初3週で満足度を高めている。後半に大ブレークした『あまちゃん』も、視聴率トップだった『あさが来た』と同じように、満足度のカーブは良好だった。

ところが前作より視聴率を下げた3シリーズのうち、『まれ』と『べっぴんさん』は、当初3週の満足度も不調だった。例外は満足度を上げたにも関わらず、視聴率が伸び悩んだ『マッサン』だけである。

これらの実例から判断すると、満足度とシリーズ全体の視聴率との間にも、一定程度の相関関係がありそうだ。

ちなみに『ひよっこ』の満足度カーブは、『とと姉ちゃん』とほぼ重なる。この観点に立つと、『ひよっこ』にはまだ可能性があるという見方になる。

(注)満足度はデータニュース社「テレビウオッチャー」調査による。

視聴者構成

当初3週の視聴者構成を見ると、『ひよっこ』にはさらに希望が湧いてくる。

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朝ドラは基本的にF3の含有率が最も高くなる。次いでM3(男50歳以上)だ。朝8時台の在宅が前提なので、必然的に50歳以上の視聴者が基本となる。

ところがシリーズ後半にブレークした『あまちゃん』は、当初3週の視聴者構成に特徴があった。50歳以上の視聴者が比較的少なく、視聴者層に多様性があったのである。

『あまちゃん』に続き、視聴率を急伸させた『ごちそうさん』など、好調なシリーズも同様の傾向にある。ところが視聴率を下落させた『まれ』『べっぴんさん』は、50歳以上の比率が74~75%と視聴者の平均年齢が高めとなった。どうやら朝ドラなの明暗は、49歳以下の女性の比率が20%を超えているか、切っているかが分かれ目のようだ。

この見方に立つと『ひよっこ』の50歳以上率は、70%と『あまちゃん』と同じ。49歳以下女性比率では、25%とここ数年では最高となっている。

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ちなみに『あまちゃん』の最後の3週は、50歳以上比率が62%に留まり、49歳以下比率が極端に高くなった。当初3週と比べると、F1で倍増、M1M2は1.5倍に比率を伸ばした。既に絶対数の大きい50歳以上より、若年層の方が口コミの影響で行動が変わり易く、結果として途中からの視聴率押し上げに寄与し易い。

『あまちゃん』は典型例だったが、特にF2(女35~49歳)の比率が高い『ひよっこ』にも、口コミ効果による視聴率向上の余地があると言えよう。

視聴者の声

ただし以上の分析は、あくまで当初3週の視聴動向を前提にしたもので、今後5か月がどうなるかは、シナリオの力・役者の魅力・演出の腕が基本となる。

では、この部分に対して、視聴者の反応からどんな分析が可能か。まず特筆すべきは、否定的な感想がさほど多くない点だ。

「面白くない」男70歳(満足度1)

「話の流れが止まっている気がする」女45歳(満足度2)

「話にあまり変化がなく面白くない」男59歳(満足度1)

「イマイチ面白くならない」男59歳(満足度3)

こうした声がないわけではないが、全体の数パーセント程度におさまっている。しかも番組から離脱する人の比率も、『やすらぎの郷』より『ひよっこ』は半分ほどに留まっている(詳細は「データが語るドラマの明暗!~有村架純『ひよっこ』と石坂浩二『やすらぎの郷』の比較から~」を参照されたい)。今後の大崩れを心配する必要はないようだ。

「久しぶりにあさが楽しくなって嬉しい。このようなドラマが見たかった」女74歳(満足度4)

「明るい感じが朝にあっている」女42歳(満足度4)

「茨木訛りがほんわかしていい」女35歳(満足度5)

逆に好感を示すコメントは多い。

まずは序盤、ドラマのトーンに好印象を持った人が少なくない。加えて、シナリオ・役者の演技にも評価の声が見られた。

「脚本にむりがなくて見やすい」女46歳(満足度4)

「重い問題を暗くなりすぎないよう上手くやっている」男49歳(満足度4)

「木村佳乃の演技が良い」女35歳(満足度5)

「架純ちゃん高校生っぽく見える。演技うまい」男49歳(満足度4)

『ひよっこ』には、各話にちょっとした山場がいろいろ工夫されている。そこに反応し、感想を述べる視聴者も多い。

*行方が知れなくなった夫(沢村一樹)の捜索を妻(木村佳乃)がお願いするも、対応をきちんとしてもらえなかったシーン。

「真面目に探そうとしない警察に対して、毅然とした態度のお母さんの言葉に朝から泣けてしまった」女42歳(満足度3)

*村の青年部が聖火リレーの実行を決めたシーン。

「三男たちの甘い考えをガツンと叱り、それでいて協力してくれる青年部の人たちが頼もしかった」女35歳(満足度5)

*村に残ると決めていたみね子が、東京での就職へと翻意したシーン。

「もし正月に父が帰ってこなかったら、自分が東京に働きに出る決意を母・祖父に告げるシーンに感動」男51歳(満足度5)

こうした1話1話のアイデアと工夫、ディテールへの拘り、関係者の努力の集積が番組への評価につながる。

『あまちゃん』の時も、10週までは我慢の連続だった。序盤でM3とF2が普段以上に反応したという事実を活かして、ぜひヒットにつなげて欲しいものである。