データが語るドラマの明暗!~有村架純『ひよっこ』と石坂浩二『やすらぎの郷』の比較から~

両ドラマのHPより

今年度から平日に放送される帯ドラマが2つになった。

NHKの朝ドラ『ひよっこ』(主演・有村架純)に加え、テレビ朝日の昼ドラ『やすらぎの郷』(主演・石坂浩二)が始まったからだ。

両ドラマ3週までの平均視聴率は、19.3%と6.6%。放送時間帯が異なるので単純な比較は禁物だが、視聴者層の違いや3週にわたる見られ方の変化を見ると、ターゲットを広く持つドラマと高齢者に限定した場合の違いが見事に表れている。検証してみたい。

視聴者層の違い

両ドラマの視聴者構成は、一目瞭然、まったく異なる。

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同じ2400人のテレビ視聴動向を追うデータニュース社「テレビウオッチャー」で見ると、『ひよっこ』は女性の方がやや多いものの、男女のバランスはほぼ拮抗している。年齢層で見ると、50歳以上で約7割となっているが、35~49歳も4分の1以上いるし、F1M1(男女20~34歳)で2%強となっている。

F3M3(男女50歳以上)が圧倒的に多いNHKの通常の番組と比べても、49歳以下の含有率が高くなっている。また普段の朝ドラと比べると、F3よりM3の方が多くなっているのは珍しい。1964年の東京オリンピックという時代背景、および集団就職という状況がM3を惹き付けているかも知れない。

一方『やすらぎの郷』の視聴者構成は極端だ。

F3だけで3分の2強。M3も含めた50歳以上で9割を超えてしまう。『ひよっこ』にはF2が22%いるが、『やすらぎの郷』では4%しかいない。F1・M1・M2だとそれぞれ1%になってしまう。“シルバータイムドラマ”とか、「高齢者向けに本気で取り組んだ番組」などと評価する声も多く出ている。高齢者にターゲットを絞った大英断というのである。

ところが実際には、F2で15%、F1でも10%がこの時間帯でもテレビを見ている。なのに『やすらぎの郷』は、F1がわずか0.1%、F2でも0.5%に届いていない。いわば若年層を切り捨てる道を選んだのである。

世帯視聴率でみると、第3週までの平均は6.5%。前年同期比では1%以上あがっており、編成的には成功と見える。ところがF1~2層は壊滅的だ。しかも第1週から第3週までを比べると、世帯視聴率も7.4%→6.0%→6.2%と当初の勢いを失っている。今後、再び7%に戻すのか、6%台で踏みとどまるのか、はたまた6%を切ってしまうのか、“高齢者限定戦略”が問われるところだ。

3週にわたる変化

今後を占うために、『ひよっこ』と『やすらぎの郷』の、当初3週間の見られ方をみよう。

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比較しやすくするために、両ドラマとも第1週の視聴者数を100とした(実際には『ひよっこ』がのべ648人、『やすらぎの郷』のべ122人)。『ひよっこ』は視聴率と同様、「テレビウオッチャー」での視聴者数にも大きな変化はない。ところが『やすらぎの郷』の方は、視聴率が1%以上さがっている通り、視聴者数も15%以上減っている。

視聴者総数の変化以上に両ドラマで大きく違う点は、毎話を欠かさず見続ける人の数だ。『ひよっこ』では、3週までの全18話をすべて見続けた人は初回を見た人の43%もいた。NHK朝ドラの視聴習慣が如何に定着しているかの証明だろう。

一方『やすらぎの郷』では、3週までで全15話と3話少ないにも関わらず、全話を見た人は7%に留まった。新設されたばかりで視聴習慣がまだ定着していないとは言え、50歳以上の比率が9割を超えている割には数字が低すぎる。ドラマの内容に課題があるという仮説が頭をよぎる。

満足度の違い

ではドラマの内容に対する視聴者の評価はどうだろう。

3週までの満足度平均で見ると、『やすらぎの郷』の3.69(5段階評価)に対して、『ひよっこ』は3.64とほぼ互角。「テレビウオッチャー」でのドラマの満足度は平均が3.6~3.7なので、両ドラマともの今のところ並みの評価ということになる。

ところが男女年層別の満足度で見ると、両ドラマには大きな違いが生ずる。

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F3(女50歳以上)とM3(男50歳以上)では、共に大差はない。ところがF2(女35~49歳)とM2(男35~49歳)については、『やすらぎの郷』は視聴者がほとんどいないので、満足度評価が算出できない。一方『ひよっこ』では、両層とも一定程度の視聴者が存在し、F2で3.7前後、M2に至っては第1週に3.28しかなかったが、どんどん上昇し第3週には3.72とドラマの平均を超え始めた。

明らかに『ひよっこ』の方が幅広い視聴者層に届いており、しかも視聴者数を落とさないまま満足度を上げる層を創り出している。今後の展開次第ではあるものの、視聴率や視聴者数の増減に対しての期待感が異なると言えよう。

視聴者の声

このあたりの期待感は、視聴者の声にも反映されている。

『やすらぎの郷』は会話劇が中心で、シーン転換が極めて少ない。高齢者にターゲットを絞ったために、敢えてこうした演出にしたようだが、視聴者の評価は必ずしも高くない。

「話がちっとも先に進まない」男47歳(満足度2)

「毎日同じ場面に感じられる」女74歳(満足度4)

第1週から高齢者仕様に対する不満が出ていた。

「女性には3つのターニングポイントがあると言っていたが、私にはなかった」女74歳(満足度4)

「昔の有名人がオールスターはいいが、内容的に乏しい!」女73歳(満足度2)

第2週で脚本に対する不満が噴出し始めている。

「ストーリーの展開が回りくどい」男66歳(満足度3)

「やっぱりつまらない。期待はずれの番組!」女73歳(満足度3)

「セリフをしっかり聞かないと分かり難い」女69歳(満足度5)

自由記述をみると、満足度などの数字だけではわからないニュアンスが伝わって来る。はっきり言って『やすらぎの郷』は、今後について不安は残る出来と言わざるを得ない。

実際に3週までの全15回で、一話でも『やすらぎの郷』を見た人は59人いた。そのうち完全に見なくなってしまったと予測される人々(離脱者)を、第3週の5回をまったく見ていない人と定義すると、45%の離脱率である。

一方『ひよっこ』の離脱率は25%に留まっている。

この数字は、自由記述の中での否定的なコメントの少なさでも確認できる。さらにプラス評価する記述では、感情が動いたことを示す文言が多くみられる。ドラマの機能の1つに、視聴者の喜怒哀楽を惹起することがある。明らかに『ひよっこ』は、『やすらぎの郷』よりこんな側面が目立っている。

「茨城の田園風景と主人公の表情が良い。穏やかな気持ちになった」女60歳(満足度5)

「時代背景が懐かしい。ヒットすると思う」男58歳(満足度3)

「みんながみずみずしくて好きです。青春ですね」女55歳(満足度4)

「朝からくすっと笑えて元気になれた」女48歳(満足度5)

「父の失踪に対して気丈に振る舞うみね子。それを支える友情にも感動した」女43歳(満足度4)

「村中の盛り上がりの聖火リレーは感動的」女74歳(満足度4)

「子を思う親、親を思う娘の優しさが伝わった」女68歳(満足度5)

「みね子が東京に働きに出る決意を母・祖父に告げるシーンが感動」男51歳(満足度5)

外形でドラマを断ずる危険

筆者の拙文「『やすらぎの郷』はそれほど名作か? はたまた“裸の王様”は織り込み済み?<反批判のドラマ批評3>」では、放送直後から『安らぎの郷』を絶賛する記事がたくさん出たが、本当にそれは当たっているのか、率直な疑問を視聴者の評価と声で検証した。

改めて同じ帯ドラマの『ひよっこ』とデータも交えて比較すると、『安らぎの郷』が過剰に評価されていることを確信する。それらの記事は、大御所が久しぶりにシナリオを担当したことと、かつての大俳優がたくさん出演していることで、批評に手加減があるような気がする。

あるいは、シナリオライターや主人公初め主な登場人物が70~80代という関係者の年齢、そして「高齢者向けに本気で取り組んだ番組」という外形的なことで、予め評価しようという気持ちがあったのではないだろうか。

織田裕二主演のドラマ『踊る大捜査線』には、「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きてるんだ!」という有名なセリフがあった。

これになぞらえて言うなら、ドラマの評価は送り手側の事情で優劣が決まるのではない。視聴者をどれだけ動かしたのかが基本、となるのではないだろうか。

ただし筆者の両ドラマの評価は、あくまで初回から第3週までに対するものである。2つともまだ9月まで5か月分の放送を残している。序盤の明暗はあくまで序盤の話。今後の奮起に期待したい。