草食系『カルテット』 vs 肉食系『東京タラレバ娘』~データから見る視聴態度の違い~

番組ホームページから

2017年冬クールのドラマは、今週ですべてが最終回を迎える。

その最後を飾るのが、TBS『カルテット』と日本テレビ『東京タラレバ娘』。思えば両ドラマは、女性に多く見られているが、その見られ方は対照的なようだ。

視聴者のデータから違いを分析してみる。

視聴率と視聴者数

視聴率では初回から6話まで、『東京タラレバ娘』が3~5%ほどリードした。視聴者層の間口の広いドラマで、多くの人の支持を得ていたと言えよう。

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ただし7~8話で両者の差は縮まってきた。『カルテット』の数字が上がったというより、『東京タラレバ娘』が10%ちょっとまでに落ちてきたのが大きい。

そして9話で逆転した。『東京タラレバ娘』が8%台に落ち、逆に『カルテット』がプロ野球WBC日本代表戦が高視聴率となり、その追い風もあり11.0%になったからだった。

ただし同じ2400人のテレビ視聴動向を調べるデータニュース社「テレビウオッチャー」だと、異なる結果が出ている。初回から9話までは、ずっと『東京タラレバ娘』の方が視聴者数は多いままなのである。9話についても、『カルテット』より『東京タラレバ娘』の方が10人多い。視聴者数率にすると5.8%と5.3%で0.5%ほどの開きがある。

調査方法が異なるので比較にはあまり意味がないが、前番組が極端に高い場合、ビデオリサーチの視聴率が大きくなることがある。番組が代わってもしばらくチャンネルをそのままにしたり、テレビから離れても「視聴ボタン」の切り替えを忘れたりで、後番組の平均視聴率が押し上げられる可能性があるからだ。

一方「テレビウオッチャー」の方は自己申告なので、数字が実態以上に膨らむことは起こりにくい。いずれにしても、幾つかの要素が絡んでの逆転だった可能性がある。

終盤は『カルテット』の方に勢いがあるので、最終回がどうなるかが見ものである。

男女年層別の視聴者数

両ドラマの視聴者層を比べると、かなり異なっていることがわかる。

両方とも女の比率がかなり高いが、特に『カルテット』は4分の3を超えており、男にはあまり見られなかったことがわかる。

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年齢層では、若年層がよく見た『東京タラレバ娘』と、中高年に支持された『カルテット』という構図が見えて来る。主人公がアラサー3人娘と、「夢が叶わないまま、人生のピークにたどり着くことなく緩やかな下り坂の前で立ち止まっている」4人の違いもあろう。

“幸せな結婚”に邁進するエネルギーに満ちた物語と、“人生やり直しスイッチ”を押すか否かがテーマになるストーリーでは、年齢層に差が出ても不思議はない。

F1(女20~34歳)とF2(女35~49歳)の合計では、『東京タラレバ娘』を見た視聴者の延べ人数は792人で、『カルテット』を240人近く上回る。M1(男20~34歳)とM2(男35~49歳)の合計でも70人ほど多い。逆に3層(男女50歳以上)で50人ほど『カルテット』が上回ったが、若年層の数の差が視聴率の差につながっていたと考えられる。

満足度の差

量的評価では『東京タラレバ娘』が圧倒したが、満足度では『カルテット』が上回った。

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序盤は同じような軌跡を描いて上昇しているが、4~5話で『東京タラレバ娘』が失速し、6~7話で再び追いついた。そして8~9話、一気に高くなった『カルテット』が逃げ切りをかけている。

特に『カルテット』の8~9話は、今クール全体を通して満足度が最も高かった『嘘の戦争』をも上回るハイスコアとなっている。同ドラマを見てきた人々の納得感は頂点に達し始めているようだ。

「面白かった。濃厚なドラマだ」女56歳(満足度5)

「松たか子演じる真紀の嘘がばれ衝撃の告白の後の皆の優しい反応が心にしみて良かった」男52歳(満足度5)

「すずめちゃん別府さん家森さんの優しさがとても温かかった。そしてマキさんがみんなに迷惑をかけてはいけないという思いからか嘘の告白をするシーンもとても切なかった」女44歳(満足度5)

「まきさんが悪人じゃなくて良かった。すずめちゃんの言葉が深くて感動」女47歳(満足度5)

一方『東京タラレバ娘』の方は、8~9話で満足度の勢いはやや失われた。

あくまで平均値での動向だが、「まだ幸せにたどり着けていないタラレバ娘が、もがきながら幸せを探して突き進む」物語には、視聴者からみて「違うだろう!それっ」的な展開が幾つも出て来る。

セカンドのポジションからなかなか抜け出せなかった香(榮倉奈々)。

慎重だったはずなのに不倫に走った小雪(大島優子)。

そして男を変えながら、ようやく元同僚・早坂(鈴木亮平)で落ち着くかと見えたのに、KEY(坂口健太郎)に心が揺れてしまった倫子(吉高由里子)。

「男は最低だなぁと思った」女38歳(満足度2)

「見ていてイライラしたりもしたけどわかる気もす」女31歳(満足度3)

「みじめな女たち、ドッキりこ」男23(満足度3)

「馬鹿だなあと思いながら見る」女47歳(満足度3)

「早坂さん振るなんて絶対ダメ!嫌な展開ー!!」女33歳(満足度4)

ドラマとして敢えて用意してある展開に、真剣に怒り、それが低い満足度となり、平均値を下げていたのである。

草食視聴者と肉食視聴者

ここまで見てくると、両ドラマの視聴者の見方が真逆であると見えて来る。

『カルテット』は当初からラブ・サスペンスと制作陣が謳っていた。カルテットを組む4人にそれぞれ過去があり、例えば巻真紀(松たか子)は夫さん(宮藤官九郎)殺人が途中まで疑われ、大詰めでは義父殺人の容疑がかかっている。

すずめ(満島ひかり)は、子供の頃に父親の詐欺の片棒を担がされていた。

別府(松田龍平)は、世界的に有名な指揮者の祖父を持ち一家は音楽ファミリーなのに、彼だけ音楽の才能がない。

家森諭高には、離婚した妻と息子がいる。

つまり全員が負の要素を抱え、軽井沢で始めた危うい生活がどう破たんするのか、誰が本当に悪人なのか。悪い予見で引っ張っておきながら、実は皆「本当はいい人」になりそうなのだ。

4人の生活を満たし始めていたのは、「夢は叶わない」「人生のピークにはたどりつけない」が、皆と出会えたので“人生やり直しスイッチ”は押さない充足感だ。そこに視聴者の満足度がピークにたどり着こうとしていた。

いわば過去を持つ草食系の4人がそれなりの居場所を見つける物語で、比較的年齢層の高い視聴者がそこに強烈に共感しているドラマという側面を持つ。

一方『東京タラレバ娘』は、失敗や挫折を厭わず、「残り時間がない」中で自分の正直な思いと向き合いながら、ガムシャラに疾走する物語。その肉食の姿に、「子供っぽい」とか「愚か」と論評している視聴者もいる。それでもまだ人生を達観していない層は、物語に一部没入しながら、時には文句も言いながら見続けてきたようだ。

「見ていてイライラしたりもしたけどわかる気もする」女31歳(満足度3)

「だめだとはわかっていても惹かれてしまう感じは本当に切ない。自分もそういうことあったから共感できた」女35歳(満足度5)

「共感する部分がたくさんあった」女25歳(満足度5)

小説・映画・ドラマは、物語を追体験する中で、見る側が現実の人生をどう生きるかを考えられる点が優れている。

両ドラマは人生のピーク前と、ピーク後(あるいはピークがなかった)を描いているため、視聴者層も物語の味わい方も全く異なっていた。

日本人の人口構成は、既に50歳以上が半分近くになっている。今後も、ピーク後を描く“草食系”ドラマが増えていくだろう。ただしかつてのトレンディドラマと異なるピーク前を描く“肉食系”ドラマもどんどん開発してもらいたい。去年秋クールの『逃げるは恥だが役に立つ』や今クールの『東京タラレバ娘』には、そんな若者向けの新しいドラマの可能性を感ずる。