キムタクvs草なぎ剛 ドラマ対決!~『A LIFE』と『嘘の戦争』の軍配は・・・~

2017年冬クール、多くのドラマが最終回を迎え始めている。

今期はSMAP対決の『A LIFE~愛しい人~』と『嘘の戦争』、若年女性の間で話題となった『カルテット』と『東京タラレバ娘』、お父さんが主人公の『就活家族』『下剋上受験』『スーパーサラリーマン佐江内氏』など、話題のドラマ対決が幾つかあった。

まず視聴率や満足度でハイスコアーとなった『A LIFE』と『嘘の戦争』では、視聴者の軍配はどっちに上がったのか。量的評価および質的評価の側面から分析してみたい。

視聴率対決

最初は視聴率。初回から直近までの数字は以下の通り。

『A LIFE』 14.2 14.7 13.9 12.3 13.9 15.3 14.5 15.7%

『嘘の戦争』11.8 12.0 11.3 11.1 11.5 10.3 10.9 11.5 10.5%

今クール、全話が二桁となっているのは、今のところ、これら2本と『東京タラレバ娘』だけ。

ここまでの平均視聴率は、1位『A LIFE』14.3%、2位『東京タラレバ娘』11.8%、3位『嘘の戦争』11.3%。視聴率ではキムタクが草なぎ剛を一歩リードした形だ。

それでも『A LIFE』については、序盤でバッシングの声がかなりあった。

中にはTBS社長の「及第点は15%」発言を前提に、「現時点でのキムタクは“落第点”」と斬り捨てる記事があった。

4話で12.3%と少し下がった際、「ついに視聴率がダウンし始めたキムタクドラマ」「主演ドラマには酷評の嵐 キムタクはなぜ嫌われるのか?」など、キムタク叩きの記事が目立った。

ページビュー狙いで敢えて悪者に仕立て上げている部分もあろう。後で詳しく述べるが、こうした軽率な批評は,後に視聴者の判定で覆されることとなる。

視聴者の中にも、アンチ木村拓哉の声が結構出ていた。

データニュース社「テレビウォッチャー」は、同じ2400人のテレビ視聴動向を継続的に調べている。キムタクに厳しい意見の人の満足度(最高が5の5段階評価)と自由記述を拾ってみると、序盤はかなりのものだった。

「正直木村さんはやっぱり木村さんという感じで、新しさがなく平凡なドラマ」女37歳(満足度3)      

「何を演じても変わらないとつくづく感じた」女50歳(満足度2)

「木村拓哉の演技がいつも通りでよくなかった」女60歳(満足度3)

ところが回が進むと、キムタクを評価する声が増え、ドラマの満足度も上がり始める。

「キムタクの手術シーンがすごかった」女33歳(満足度4)

「木村くんだんだん魅力的な医者になってきました」女66歳(満足度5)

「ただ格好いいだけでなく、いるだけで存在感のある役者になったなぁと感心」女51歳(満足度5)

中には途中で評価を変えた視聴者もいた。

初回で「いつものキムタクドラマでガッカリ」と答えた55歳女性の満足度は3だった。ところが7話では「やっと糸口が見えてきた。キムタクがんばれ!」(満足度4)と肯定的になっていた。

初回「結局キムタクをカッコよくするドラマ」(満足度2)の38歳男性も、5話では「だゆだん展開が面白くなってきた」(満足度5)に転じていた。

初回「いつも通りの感が出てて嫌だった」(満足度3)の26歳女性の場合、3話「感動した」(満足度4)、5話「とても愛があって面白い」(満足度4)と変わっていた。

同調査では、キムタクに好感情が持てず2~4回で視聴を辞めた視聴者が少なからずいた。3~4話の視聴率ダウンの理由の一つだったと思われる。ただし6~8回は初回より高くなっている。今クール全ドラマの中で唯一の現象だった。

キムタク批判派の流出を補って余りある流入があったのだろう。ストーリーが展開する中で、木村拓哉が再評価されたり、ドラマの評判が口コミで広がったりした結果と言えよう。

視聴者数&録画数対決

「テレビウォッチャー」では、調査対象2400人の中での視聴者数と録画数も調べている。

これによると、回によって勝ち負けがあるものの、『A LIFE』と『嘘の戦争』は8話までで、ほぼ互角と言った感じだ。

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これは『A LIFE』が平均で3ポイントほど上回ったビデオリサーチ社の視聴率とは異なる結果だ。

ただし調査方法が全く異なるため、両調査の比較はあまり意味がない。

1点注意しておきたいのは、録画数では『嘘の戦争』がかなり上回っている点。「テレビウォッチャー」では、録画再生で見た人も視聴者数に入っているので、ライブ視聴者数では『A LIFE』が上となった可能性が高い。つまりビデオリサーチ社の視聴率とは、特に矛盾があるとは言えない。

ちなみにフジテレビの火曜ドラマは、従来10時の放送だったが、去年10月から9時へと移動した。つまりライブでの視聴習慣がまだ定着していない可能性がある。それでも前枠と比べ、『嘘の戦争』は3%ほど上げている。大健闘と言えよう。

さらにドラマの内容として、『嘘の戦争』は功名な詐欺の手口がストーリーの鍵を握る。布石や謎解きなどをじっくり見たい人は、録画再生に回り易い。ライブを前提とする視聴率が上がりにくい要因を抱えていたと言えよう。

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しかも『嘘の戦争』はクライム・サスペンスの部類で、殺人など残酷なシーンも出て来る。男女年層別の比率で見ると、女性や高齢者の獲得で不利になり勝ちだが、実際『A LIFE』より女性や3層(男女50歳以上)の比率が少なくなっている。

量的に評価すると、以上が『A LIFE』一歩リードの背景と言えよう。

満足度対決

質的評価で両ドラマを比較すると、まず満足度では『嘘の戦争』が圧勝となっている。

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初回から直近までの数字は以下の通り。

『嘘の戦争』4.03 3.94 3.93 3.96 3.92 4.07 3.99 4.17

『A LIFE』 3.46 3.70 3.61 3.77 3.65 3.70 3.74 3.74

ドラマの平均値は3.6~3.7なので、『A LIFE』の評価は必ずしも良くない。

立ち上がりが不調で、2話以降が平均値とほぼ同等、そして後半が平均値以上となっている。

アンチ木村拓哉派で満足度2前後を付ける人が少なくなかった。平均値を引き下げた要因だ。

また後半になっても、キムタクに不満を持ちつつも見続ける視聴者が一定程度いた。平均値の伸びにブレーキをかけていたようだ。

一方『嘘の戦争』の満足度は、今クールの全ドラマの中で断トツに高い。

初回の4.03、8話の4.17は滅多に出ない高得点となった。

「壮絶な復讐劇でハラハラドキドキ」女41歳(満足度5)

「見入ってしまうドラマ。次週もすごく楽しみ」女22歳(満足度5)

「草なぎ君は良い人の顔と怖い人の顔が全然違う」女50歳(満足度5)

ドラマの設定、早い展開、草なぎ剛の演技などで、初回から高得点を入れた人がかなりいた。

「シリアス系のドラマでここまでハマったのは久しぶり」女37歳(満足度5)

「最終回と間違えるくらいいろいろなことが明らかになってハラハラした」女33歳(満足度4)

「最終章に向けて、物語が大きく動き出し見応えがあった」男29歳(満足度4)

毎回のように意外な展開が用意され、特に8話では恩人だった園長(大杉漣)が嘘をついていたことが判明した。浩一が新たな復讐の対象としたのは最も想定外で、4.17という極端に高い満足度につながったようだ。

いずれにしても質的評価では、『嘘の戦争』が大きくリードしている。

視聴意向対決

ところが視聴意向で見ると、両ドラマの評価は再び逆転する。

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「テレビウォッチャー」では、次回の視聴意向を「絶対見る」「なるべく見る」「見るかも知れない」「たぶん見ない」「絶対見ない」で評価してもらっている。これらを「+2」「+1」「0」「-1」「-2」で数値化すると、初回では『嘘の戦争』が大きくリードしていた。ところが徐々に差が縮まり、8話では『A LIFE』が逆転していた。

8話の概要は以下の通り。

深冬(竹内結子)の脳腫瘍の治療法を見つけた沖田は、1週間後に手術をすることにした。

ところが父一心(田中泯)が倒れ、先に手術することになったが、近親者への手術だったためか、沖田はミスをしてしまう。やはり“愛しい人”への外科手術は、特別なプレッシャーがかかるようだ。

一連を見ていた壮大(浅野忠信)は、手術の練習を始める。

そして、かつて怪我のためにマウンドを明け渡した沖田が、連続フォアボールで試合に負けたエピソードを持ち出し、「今回オペだ。自滅されちゃ困る。深冬は俺が切る」と宣言した。

ところが「俺は10年前、シアトルに行った。もう、あの頃の俺じゃない。深冬は俺の患者だ」と沖田は言い返す。

「深冬は俺の家族だ」

壮大が最後に言い放ったところで、深冬が意識不明に陥ったという連絡が入り、二人は深冬の病室に向かう・・・

幼馴染の頃からの経緯、10年前に沖田がシアトルに渡ることになった背景、深冬を巡る壮大と沖田の思いなど、幾つもの要因が絡み合い、物語はいよいよクライマックスへ向かう。

準備を万端整えることで手術への恐怖を乗り越えてきた沖田だが、“愛しい人”を相手にするとミスも出る。そんな中、まだ行われたことのない難手術は果たして成功するのか。

こうした条件の中で、『A LIFE』の次回視聴意向が初めて『嘘の戦争』を上回ったのである。

ラストに向けた期待

ただし『嘘の戦争』のラスト前にあたる9話はまだ質的評価のデータが出ていない。こちらも見る側の想定を大きく逸脱する驚く展開だった。

30年前の一家殺害事件での最大の標的・興三(市村正親)への復讐劇。ところが次男・隆(藤木直人)の反撃で、浩一(草なぎ剛)は苦境に立たされる。詐欺仲間だった百田(マギー)が寝返ったために、決定的な証拠だった録音を消去されてしまったからだ。

さらに浩一が2000万円を強奪した詐欺の証拠を握られ、警察に追われる身になってしまった。絶対絶命だ。

この9話での圧巻は、恩人だった園長に対する復讐を、あと一歩のところで浩一が辞めた点だ。

「嘘をついてはいけない」と幼いころ父に教えられた浩一は、9歳の時に嘘をつくことで生き延びた。そして復讐のために“嘘の戦争”をしかけた。ところが、その闘いで最も強いのが“嘘”ではなく“真実”だったのである。

クライム・サスペンスとして表向きは“嘘の戦争”が展開してきた。

ところが最後に、心の問題として“嘘”と“誠”が戦争を始めた。ディテールで魅せてきたドラマが、普遍的なテーマを持ち始めたのである。

30年前の一家殺害事件に対する復讐劇は、まだ終わったわけではない。

しかし質的に変化した部分を内包しながら、ストーリーは重層的な展開を始めた。これにドラマはどんな終止符を打つのか。視聴者はどんな評価を下すのか。

ラスト直前までの各種データからは、単純化すると量的評価でリードした『A LIFE』と、質的評価で上を行く『嘘の戦争』という構図が浮かび上がる。

ただし両ドラマのエンディングは、想定外のサプライズがまだまだ用意されていそうだ。しかも両ドラマとも、人の心の問題に触れる普遍的なテーマも視野に入れている。これらが絡んで最終回を迎える。

よって最終的な軍配は、「下駄を履くまで分からない」と答えるしかないようだ。