冬ドラマ初回の最高傑作は・・・?~質量両面から評価してみた~

今月始まった2017年冬クールの連続ドラマ(民放GP帯全12本)は、先週全ての初回放送が終わり、視聴者がどう見たかについてのデータも出そろった。

ドラマは見る者の好みで自由に楽しめば良いが、敢えて比較評価するとすれば、視聴率など量的評価と満足度など質的な評価で見ることが可能だ。

特にリアルタイム視聴の減少が続き、視聴率の意味合いが相対化され始めている。

そこで本稿では、敢えて様々なアングルから各ドラマがどう見られたかを考察し、総合的に評価してみたい。

初回視聴率は日テレが優勢

まずリアルタイムの視聴を前提とする視聴率では、1位は14.2%の『A LIFE~愛しき人~』。

渋谷ハチ公前の看板
渋谷ハチ公前の看板

TBSの日曜9時枠では、過去3年間に5作が初回で15%を超えている。『S-最後の警官-』(14年冬)、『おやじの背中』(14年夏)、『天皇の料理番』(15年春)、『下町ロケット』(15年秋)、『99.9』(16年春)だ。

しかも木村拓哉主演のドラマでは、10年前ぐらいまでは初回30%超がたくさんあった。『華麗なる一族』(07年冬)、『プライド』(04年冬)、『GOOD LUCK!!』(03年冬)、『HERO』(01年冬)などだ。

同じキムタク主演で、華々しい記録が続いた冬ドラマで15%未満はやや寂しいスタートとなった。タイムシフト視聴が増えている時代ならではの状況と思われる。

初回視聴率で最も気を吐いたのは日本テレビだ。

日テレ本社前の看板
日テレ本社前の看板

GP帯ドラマ3本中3本とも二桁。しかも全てがベスト5に名を連ねた。同局は連続ドラマの知名度と視聴意欲を高めるための番宣が巧みで、ドラマが週3枠となった14年春以降の全24本では、20本が初回を二桁に乗せている。圧倒的に初回に強い局だが、その実態については後日詳述する。

6位につけたのは11.0%の『就活家族~きっとうまくいく~』。実はテレビ朝日の木曜9時枠は、6クール連続で初回を二桁に乗せている。中には『ドクターX』のように初回から20%越を果たすものもある。シリーズ化や事前の単発特番など、初回から集客する技術は日テレと並びお手の物になりつつある。

課題はフジテレビだ。

去年1年間のGP帯16本でも、初回二桁は3本しかなかった。シリーズ平均視聴率に至っては、二桁は1作もなかった。90年代にトレンディドラマで一世を風靡した同局の低迷ぶりは極めて深刻と言わざるを得ない。

今期も11.8%だった『嘘の戦争』を除くと、他3本は低調なスタートとなった。復調の兆しは今回も見えていないといわざるを得ない。

量的評価のベスト3

視聴率の他に、データニュース社「テレビウォッチャー」が調べる録画数を加えた量的評価では、ベスト3は『A LIFE』『嘘の戦争』『東京タラレバ娘』が入る。

この録画数では、実際に視聴したか否かまでは確認できていないが、少なくとも敢えて予約した人の数を示す。ドラマへの関心の度合いを示すバロメーターと言えよう。

量的評価の一つとして、敢えてF1(女20~34歳)の人数を入れてみた。F1をとるドラマは、ドラマを多く見るティーン女子やF2(女35~49歳)に波及し易く、2話以降に発展する可能性を持つからである。

これで見ると、『東京タラレバ娘』が「テレビウォッチャー」調査の母集団400人中38人で断トツとなった。

同ドラマは視聴率も13.8%で2位、録画数も134で3位と、実際に見られ関心も持たれている。しかも視聴者のF1含有率が高く、全視聴者数154人中にF1とF2の合計が74人。含有率が半分近くと圧倒的に若年女性を集めている。

ちなみに半分近くが若年女性という実態は、去年10月クールの『逃げるは恥だが役に立つ』や『地味にスゴイ!』よりも高い数値となっている。視聴率も高くスタートしている点を考慮すると、切り口の斬新さや話の展開次第で今後大化けする可能性があるかも知れない。

F1数を前提にすると、『嘘の戦争』と『カルテット』も気になるドラマだ。

『嘘の戦争』は視聴率も録画数も高く、しかも若年女性にもしっかり見られている。今後発展して行く可能性を十分持つ作品と言えそうだ。

『カルテット』は視聴率こそぎりぎり二桁に届かなかったが、録画数は多く、しかも若年女性の絶対数も比率も高い。ユニークな世界観を漂わせ、切り口に斬新さもある。視聴率だけで見ると平凡な数字に見えるが、こちらも今後発展する余地を残していると思われる。

ちなみにフジ月9『突然ですが、明日結婚します』がF1で26人と3位に入ったが、他の量的調査・質的調査のいずれも上位には来ていない。今もF1が気にする枠であるのは事実だが、それ以上に発展すると期待できそうな内容が伴っていないのが初回の評価と言わざるを得ない。

質的評価を加えた見方

質的評価としては、満足度と見たい率がある。

いずれもデータニュース社「テレビウォッチャー」の調査項目で、前者は自発的に番組を見た人が満足度を5段階で評価したもの。後者は次回を「絶対見る」「なるべく見る」と答えた人の比率である。

ここでの最大の特徴は、量的調査で下位に低迷していたテレビ東京の『三匹のおっさん3』が、質的調査で2位に浮上している点だ。

番組ホープページから
番組ホープページから

視聴者の6割以上が50歳以上と中高年コンテンツではあるものの、実際に見た人からは高い評価を得ている。次も見たいと思わせる面白さもある。ドラマの多様性を担保するため、テレ東の果たしている役割は大きいと言えよう。

そして一番注目すべきは『嘘の戦争』。

満足度でも見たい率でも圧倒的なトップをとっている。

渋谷駅構内のポスター
渋谷駅構内のポスター

SMAP解散後の、キムタク対草なぎ剛の視聴率戦争がメディアでは話題になっている。量的調査ではキムタクのドラマが一歩リードしているように見えるが、一つにはTBS日曜9時枠であるため、本格的なドラマを見たい中高年に支えられている部分が大きい。

かたや『嘘の戦争』は、「鮮やかな“ダマし”で積年の恨みを晴らす爽快な復讐劇」というサスペンス。男女年齢層的にはバランスよく各層に見られている。しかも状況設定などで説明的になりやすい連続ドラマの初回は、一般的には満足度が低めに出る。ところが同ドラマは、初回から4.03と滅多に出ない好成績を叩き出した。さらに自発的に見た人の約9割が次回も見たいと思い、見たくない人は2%程度とほとんどいない読後感になっていた。

サスペンスであるために、視聴者層がどこまで広がるかは不明だが、話の展開次第では今後大いに化ける可能性があると言えよう。

質的評価から見ると、他には『下剋上受験』『カルテット』『A LIFE』が健闘している。

『下剋上受験』は第3話で視聴率が7.4%と大きく下げてしまったが、質的評価の高さから判断するとタイムシフト視聴に回っているだけかも知れない。

『カルテット』と『A LIFE』は、2話以降でも今のところ大きく下げることなく気を吐いている。条件次第では視聴率が向上することもあり得る。

以上を総合すると、初回だけのデータから判断すると、最も大きなポテンシャルを秘める『嘘の戦争』が総合評価でトップとなる。サスペンスゆえに、今後視聴者層が大きく拡大するか否かは未知数だが、設定・役者・演出などに多くの視聴者が高い評価を下している。

「草なぎ君がいい味をだしていた」男41歳

「久しぶりに面白いドラマきた」男33歳

「難しいドラマですが次回も見たい」女54歳

「かなり面白かった。次回に期待」女45歳

「毎週楽しみになった」女24歳

以上の通り、「テレビウォッチャー」モニターの自由記述も評価が高い。

同ドラマは既に3話まで放送され、視聴率11~12%と安定的に推移している。恐らく大化けするために、もう一つ何らかの仕掛けや要素が必要なのだろう。

昨秋の『逃げ恥』は第6話あたりから弾け始めた。それに続くような妙案を制作陣に期待したい。