評価が割れた大河ドラマ『おんな城主 直虎』 本当はどう評すべきか?

番組ホームページから

NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の初回の平均視聴率は16.9%だった。

最近はテレビ番組の視聴率が、放送直後に安易にニュースになることが多い。

ハフィントンポストは「『直虎』初回視聴率は16.9% 2000年以降大河ドラマではワースト2位」と伝えた。

スポニチのタイトルは「大河『おんな城主 直虎』好発進 初回視聴率は16.9%」。『真田丸』の期間平均を上回ることを根拠に、「好発進」と評した。

ライブドアニュースの記事は「大河『おんな城主 直虎』」 大惨敗『花燃ゆ』の二の舞い危惧する声」。『真田丸』初回より3ポイント、『八重の桜』より4.5ポイント下回り、2000年以降の大河では『花燃ゆ』に次ぐワースト2位を根拠に「大惨敗」という言葉を使った。

他にもサイゾーウーマンの記事は、「最悪のスタート」「視聴率絶望的」と激しい言葉をタイトルに用いている。直虎の知名度が低いことと、柴咲コウの「大河主演は早すぎる」が理由だった。

多様性に富む視聴者の見方

こうした視聴率に反応するメディアのステレオタイプな評価とは別に、データニュース社「テレビウォッチャー」の満足度など質的な評価を分析すると、視聴者の見方はより多様性に富み、もっと長い目で大河ドラマの初回を見守っていることがわかる。

画像

確かに直近5回の大河ドラマを比べると、視聴率は『花燃ゆ』に次ぐワースト2位。満足度も3.59(5段階評価)と最低だった。この意味では、芳しくないスタートと言える。

ところが視聴者の性年層別データを見ると、意外な一面も浮かび上がる。

大河ドラマは2010年以降、“男の子大河”と“女の子大河”が交互に放送されている。10年以降は隔年で『龍馬伝』『平清盛』『官兵衛』『真田丸』と“男の子”。逆に11年以降の隔年は『江』『八重の桜』『花燃ゆ』と来て今回の『直虎』である。

画像

「テレビウォッチャー」で見ると、『八重の桜』から『官兵衛』となった際、初回の女性比率はあまり変わらなかった。ところが『官兵衛』から『花燃ゆ』では、“男の子”から“女の子”に代わったにも関わらず、女性視聴者は減っていた。女性を意識して制作したはずだが、現実は逆の減少が起こっていた。

子役起用に一定の評価

そして再び“男の子”から“女の子”に代わった今回は、狙い通り女性視聴者が増えている。どうやら子役だけで初回を通した演出が功を奏したようだ。

「子役の演技の素晴らしい事!!!」女60歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「子役の3人の演技が上手くて見入ってしまった」女41歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「子役たちの演技に惹かれた」女29歳(満足度5・次回「なるべく見る」)

「直虎の少女時代の子役の演技や乗馬の見事さに驚きました」女63歳(満足度4・次回「絶対見る」)

中には子役起用について厳しい意見もある。

「子役の演技が嘘くさくて見ていてイライラした。NHKのドラマの子役は皆同じような嘘くさい演技な気がする」女28歳(満足度2・次回「たぶん見ない」)

「子役が気に入らなかった」女31歳(満足度3・次回「絶対見ない」)

ただし不満を持ちながらも、大目に見ている視聴者もいる。

「子供のころなので面白くなかった」女39歳(満足度1・次回「絶対見る」)

子役についての言及では、大半が肯定的で男性視聴者にも好意的な意見が多かった。そして次回への視聴意向につながったとする意見も散見された。

「女性が主役の大河はいまいち面白くないことが多いが、今までよりは期待できそう」男60歳(満足度4・次回「絶対見る」)

「最近では幼少期が短いものが多いが、今回は初回全部が幼少期で新鮮だった」男52歳(満足度5・次回「なるべく見る」)

満足度では課題も・・・

子役起用は成功だったようだが、番組の満足度は性年層で意見が大きく分かれた。

画像

まずF1(女20~34歳)の評価。『真田丸』初回より急上昇し、直近5回では最も高い。

「展開が気になる」女34歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「思ったより楽しめそうな内容」女31歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「今回の内容は先の雰囲気がわかるようで、これからどうなるかはらはらと期待して見られた」女28歳(満足度4・次回「見るかも知れない」)

ところがM1(男20~34歳)・M2(男35~49歳)・F2の3層は『真田丸』より悪くなっている。

「試しに見てみたが、一年間継続してみるのは厳しそう」女49歳(満足度3・次回「見るかも知れない」)

「内容が分かりにくい」女38歳(満足度3・次回「見るかも知れない」)

「いつもと変わらぬ大河感・・・」男41歳(満足度2・次回「たぶん見ない」)

「話の掴みが悪い。音楽も今一つ。今回は見ないかも」男49歳(満足度1・次回「たぶん見ない」)

「なんだかよくわからなかったため、途中でテレビを消した」男33歳(満足度3・次回「なるべく見る」)

低い満足度の説明としては、自由記述の内容が明確ではない。

恐らくこれらは、『真田丸』の時のテンポの早さ、奇抜な演出、時代劇としてユニーク女性の描き方などに高い評価を与えていた若年層が、ノーマルな描き方に戻った『直虎』で物足りなさを感じた人が少なくなかったためなのではないだろうか。

次回見たい率では健闘

その証拠に、満足度は低めとなったが、次回見たい率では実は『直虎』はかなり健闘していた。

画像

初回から3.78と直近5回で最も高い満足度となった『真田丸』と比べ、『直虎』の満足度は0.19ポイント下がっていた。ところが次回見たい率では、両ドラマには大きな差は出来ていなかったのである。

自由記述でも、「今後が楽しみ」という旨の発言が最多となっていた。

「今後の展開が期待される」男66歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「テーマも面白そうで期待が持てる」女50歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「思ったより楽しめそうな内容だと感じました」女31歳(満足度5・次回「絶対見る」)

「これから始まる内容が楽しみ」男20歳(満足度5・次回「絶対見る」)

満足度で低い評価をした人の中にも、次回見たいという回答が少なくなかった。

「これからの展開を期待したい」女69歳(満足度2・次回「なるべく見る」)

「まだこれから」女23歳(満足度2・次回「なるべく見る」)

「歴史ドラマの展開としては、ひょっとして異質ではないでしょうか???」男68歳(満足度2・次回「絶対見る」)

「現時点では面白いかは評価できない」男42歳(満足度2・次回「なるべく見る」)

サイレント・マジョリティの声

ソーシャルメディアでは、激しい言葉が拡散され易く、結果としてメディアにも取り上げられ勝ちだ。前述のライブドアニュースの記事も、「あ~あ、結局こんなド陳腐な表現しかないのか」「テンプレ通りの公家キャラ」「マンネリ感はんぱない」などの極端な表現が取り上げられた。

しかし人に読まれることを前提に、しかも「いいね」や「リツィート」を前提に書かれた声は、本当にサイレント・マジョリティの声と言えるのだろうか。ある種の意図やバイアスを持ったラウド・マイノリティの色彩がより強いと筆者には見える。

むしろ無作為に抽出されたサンプル調査のモニターの声こそ、発表を前提にしていない分、普通の視聴者の感想に近い可能性がある。少なくとも思惑が介在しない分、最大多数の意見に近いだろう。

そんな調査モニターの『直虎』に対する声の最大多数は、「次回見たい」であり、「今後に期待」である。

視聴率だけの比較を根拠にすると、「好発進」「大惨敗」「最悪のスタート」と極端な評価になってしまうが、恐らく現実はそんなに劇的ではないだろう。

人が創る表現である以上、個性があり、一長一短がある。よって見る側との波長の合う・合わないもあり、その結果として話題の広がり方が変わって来る。

突出することでページビューを狙う短兵急なネット上の無責任な発言に惑わされることなく、『おんな城主 直虎』2話目以降の踏ん張りを今しばらく見守りたい。