意外に低い『紅白歌合戦』の満足度~大晦日に面白い番組が見たい!~

番組ホームページから

大晦日である。

毎年暮れのこの時期は、NHK『紅白歌合戦』について、さまざまな話題が取りざたされる。

今年も今日で解散となるSMAPが出場するか否かで、何度も記事が発表された。

他にも出場者・司会者・曲目・曲順・審査員などが決まる度に、多くの記事が出された。果ては歌を歌わないゲストが誰で、何をするかに至るまで取り沙汰される。まるでこの時期は、紅白を中心に世界が回っているかの大騒ぎである。

傍観者から見ると、NHKは言うに及ばず、多くのメディアが『紅白』を大事件の如く扱っているように見える。

確かに娯楽の少なかった“かつて”は、『紅白』は一大事だったのだろう。

『紅白』過去の栄光

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ビデオリサーチ社が発表する「歴代の高世帯視聴率番組」を見ると、トップは1963年放送の『紅白歌合戦』で、2~8位が60%台に対して81.4%と突出して高い。

しかも2位「東京五輪 バレー女子日本対ロシア」(1964年)の66.8%より、『紅白』は1984年まで高かった。つまり歴代の高視聴率番組は、正確には1位から23位までが『紅白』により独占されていたのである。ここまで来ると、確かに日本国民のDNAに深く刻み込まれたイベントのような感じもする。

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しかし栄光は過去のものとなりつつある。89年に初めて50%を切り、04年には40%も割り込むようになった。そして去年は過去最低となった。明らかに80年代半ば以降、右肩下がりとなっている。

娯楽も人々のニーズも多様化した点が最大の原因だ。旅行や里帰り、外食や初詣など、テレビ以外に向かう人が増えている。さらに同じテレビ文化の中でも、多チャンネル化やタイムシフト視聴、さらにはレンタルビデオやVOD視聴がじわじわ浸食してきている。

しかし最大の課題は、マンネリに対する厳しい評価が増えていることだと筆者は考える。

低い満足度

データニュース社「テレビウォッチャー」が調べる、2012年の大晦日以降のNHKと民放5局の主な番組の満足度を見てみよう。

4局は過去4年すべて同じ番組だった。NHKは『紅白』、日本テレビは『ダウンタウンのガキの使い 大晦日年越しSP』、TBSは格闘技『KYOKUGEN』、テレビ東京は『ボクシング』だ。そしてテレビ朝日はバラエティをいろいろ試し、14年からは『くりぃむVS林修!年越しクイズサバイバー』。フジテレビもバラエティで試行錯誤を続け、15年からは格闘技『RIZIN』を放送している。

視聴率的には明暗がはっきりしていた。

NHKは40%前後で推移。対する日テレは10%台後半と、民放で唯一気を吐いている。ところが他4局は全て一桁に留まり、中には5%未満という惨憺たる結果に終わっている局もある。

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ところが満足度となると、状況はかなり違う。

NHK『紅白』は5段階評価の3.2から3.3台に留まり、はっきり言って質的評価はかなり低い。日テレ『ガキ使』が3.6前後、テレ東『ボクシング』が3.7前後となっているので、『紅白』はかなり悪い。

そもそも人々の『紅白』の見方を見ると、4時間半をずっと見続けている人は、全視聴者の3分の1ほどしかいない。半分以上を入れても5割強だ。3分の1以上2分の1以下が15%前後、そして3分の1以下が4人に1人となっている。

見方によって、満足度評価の成績も大きく異なる。ほぼ全てを見ている人々こそ、評価は3.8前後と高い。ところが半分以上視聴者だと3.4前後と既に平均以下に落ちる。そして3分の1以上2分の1以下だと3.1前後、3分の1以下では2.6前後と酷評に近い結果となる。

視聴者の声

去年の紅白の満足度調査から、視聴者の声を拾ってみよう。

まず“ほぼ全てを見た人”の感想は、ポジティブなものが多い。

「やはり大晦日はこれです」男57歳

「毎年恒例行事のように家族で楽しく見ました」女54歳

「待ちに待った紅白、賑やかな明るいステージを楽しく見た」女71歳

「これを見ないと大晦日な感じがしない」男33歳

ただし大半を見ながらも、微妙な意見も出始めている。

「毎年、ツマラなくなってきている」男62歳

「以前と比べて盛り上がりに欠ける気がしました。中年向けの番組になっていたような・・・」女62歳

「ジャニーズと古い曲が多いのがなあ」女37歳

「帰省した子供家族が見ていたのでチラ見、紅白も見る影もないといった感じで詰まらない」女63歳

これが一部のみ見た人となると、感想はかなり厳しくなる。

「マンネリ化している」女59歳(1/2以上)

「歌を聞きたい。衣装と踊りは後でよい。昔はよかった」男72歳(1/2以上)

「何もサプライズもなく無難な番組」女44歳(1/2以上)

「ヒットがないのにどうしてこの人が????という人が多く、つまらない」女66歳(1/2以上)

そもそも紅白に分かれて点数を競うというワンパターンを疑問視する人がいる。

百歩譲ってそこは不問に付すとしても、過去の栄光と比較し今や感動や興奮を得られないと感ずる人がいる。

さらに好みが多様化した結果、それに対応する演出が、結果的に“好みでない部分”を多用することとなり、「つまらない」という感想につながっている現実もある。もはや“最大多数の最大幸福”を実現するのは容易ではない。

一部しか見ない人の意見は、さらに厳しさを増す。

「懐メロとアイドルとイロモノばかりで、もう誰も歌なんて聴いていないのでは」女34歳(1/2~1/3)

「下品なお笑いやバラエティ的でウザイ」女34歳(1/3未満)

「ジャニーズばかりで消した」男27歳(1/3未満)

「大御所と呼ばれる歌手が何人も昔の持ち歌を歌って出場し続けているのは物悲しさを感じる。その年に活躍した人を出すべきだと思う」女48歳(1/3未満)

「なんか古臭かった。今の人たちを出してほしい。あまり知られていない演歌歌手等はいらないかな・・・」女27歳(1/3未満)

やはりニーズの多様化が進み、もはや40組以上の歌手の歌を聞き続けるのは困難と感ずる人が増えている。特に若年層ほどその傾向が強く、ただでさえテレビ離れと言われる若者の“紅白離れ”は否定できない現実のようだ。

今後の大晦日番組について

今年の紅白は、こうした若年層を中心とする声を反映してか、ベテランの常連組が何人も出場しない。その際たるのが、歴代最多となる通算39回、30年連続出場の和田アキ子落選だろう。視聴者層を拡大しようという意図が前面に出た人選だったと言えよう。

しかし若年層を意識して若い歌手を増やしたところで、視聴者の大多数を占める高齢層の離反を招きかねない。今年の紅白の視聴率がどうなるか、大いに不安も残る。

さらに今回は、次の東京オリンピック(2020年)前年末の紅白歌合戦が70回目となるのを前提に、そこまで4回の1年目として“夢を歌おう”ver.1とした。これで『紅白』が70回まで続くことが決定したようなものだか、数時間で何億という予算が投入される今の『紅白』は、本当に視聴者のニーズに合っているのだろうか。

ここで流れを変える提案をしてみたい。

“歌は世につれ、世は歌につれ”というのは確かにある。ただし歌ばかり4時間以上も聞いていたいとは思わない。ならば歌を入口に、1年を振り返る演出を大胆にしてみてはどうか。

例えば今年も、大河ドラマ『真田丸』や、TBSの『逃げるは恥だが役に立つ』とコラボした演出がある。今年亡くなった永六輔を偲んで「見上げてごらん夜の星を」が披露される。大ヒットした映画「君の名は。」の映画音楽を担当したRADWIMPSが、「前前前世[original ver.]」を歌う。

しかしこれらは全て、歌が主でトピックスは従として添えられるようだ。

このバランスを変えて、歌と各トピックスの料理部分を半々かそれ以上とする構成は如何だろうか。

生のステージ番組だから難しいと考えているかも知れないが、時間調整のためのクッションをどう置くか、VTRの使い方をどうするか等を工夫すれば出来なくはない。そもそもNHKホールの客は3000人に過ぎないが、3000万人以上がテレビ番組として視聴しているのである。本当の顧客はテレビの前の視聴者だ。そして最大多数のニーズは、もはや歌だけにあるのではなく、歌を入口にして2016年を感じたいのである。

さてここまで言うと、民放にも注目がある。

今年の大晦日のGP帯メイン番組は、NHKの音楽番組、日テレとテレ朝のバラエティ、そしてTBS・テレ東・フジが格闘技中継だ。これで本当に視聴者の多様なニーズを満たしているだろうか。

例えばバラエティは、軟派なドキュメント・バラエティとクイズ・バラエティだが、今やバラエティと言えば『イッテQ』や『鉄腕ダッシュ』のような硬派ドキュメント・バラエティが最も人気があり、数字もとる。1年を総括するような骨のあるバラエティも作ってもらいたものだ。

また何故、年末に格闘技中継が3つなのか。毎年12月28~30日ぐらいに放送している報道や情報の1年総括番組を大晦日に放送してはいけないのか。1年の終わりをどう過ごしたいのか、人々のニーズから言えば、こうした路線もあるはずだ。例えば情報1年総括番組なら、ドラマ・映画・舞台などのエンタメを総括路線だってあり得る。

いずれにしてもNHK『紅白』の満足度の低さは、多様性の時代にミスマッチを起こしていることが最大の原因だ。では民放が多様なニーズを上手く掬い上げているかと言えば、やはりマンネリ化と守備範囲の狭さが気になる。

今年は間に合っていないだろうが、来年以降、ぜひ「大晦日のテレビ」あるいは「テレビの大晦日」を面白くしてもらいたいものである。