映画で凡作・テレビで大化けの『となりのトトロ』!今夜ジブリ累積視聴率2400%へ

日本テレビHPから

映画とテレビの関係

スタジオジブリはこれまで、劇場用アニメ映画を20本世に送り出してきた。

1984年公開の『風の谷のナウシカ』から始まり、2014年『思い出のマーニー』までの総興行収入は1500億円を超える。日本の映画史に残る偉大な記録である。

歴代の興行収入ベスト5は、1位が『千と千尋の神隠し』で304億円。これは日本で公開された全ての映画の中でトップに輝く。

2位はキムタクが声優として出演した『ハウルの動く城』で196億円。日本公開の全映画の中の5位だ。

3位は『もののけ姫』の192億円(全映画歴代6位)。

4位『崖の上のポニョ』155億円(全映画歴代11位)。

5位『風立ちぬ』116.4億円(全映画歴代18位)。

ベスト20のうち5本をスタジオジブリが占めている。

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いっぽうジブリの劇場用アニメは、1985年に『風の谷のナウシカ』が放送されてから140回も放送されている。この放送の歴史の中で、興行収入ベスト5のうちの4位までの4本は、最高視聴率や平均視聴率でもベスト5に入っている。

例えば最高視聴率では、興行収入トップの『千と千尋の神隠し』が、2000年に初めて放送された際に46.9%という驚異的な視聴率を叩き出した。これは1977年9月以降に放送された全映画番組の中でもトップである。さらに03年から14年までに7回放送した平均視聴率でも、24.04%と断トツのトップとなっている。

興行収入2位の『ハウルの動く城』は、最高視聴率でも平均視聴率でも3位だ。興行収入3位『もののけ姫』の場合、最高視聴率で2位と5位、平均視聴率では5位となっている。そして興行収入4位『崖の上のポニョ』は、最高も平均も4位に位置している。

放送で大記録を作る『となりのトトロ』

興行収入で上位だった作品は、放送でも上位という関係が一般的だが、例外もある。『となりのトトロ』だ。映画としての公開では、『火垂るの墓』との2本立てで11.7億円しか行かなかった。ジブリ全20本の中では最低ランクに属す。ところがテレビでは、1989年4月以来14回放送され、累積の視聴率が289.9%で全20本の中でトップ。うち20%超が10本でやはり1位。最低視聴率は08年7月だが、それでも17.6%もある。“絶対に失敗しない”コンテンツになっていたのである。結果として平均視聴率20.71%も、全体で2位という超ロングセラーとなっている。

では劇場映画としてはイマイチだった『となりのトトロ』が、テレビでは超優秀作に転じた理由はなんだったのか。小津安二郎の『東京物語』のように、劇的なストーリー展開があるわけではないが、含蓄のあるシーンに富み、複数回視聴に適した作りになっていた点が大きいと筆者は考える。

まずトトロ・ネコバス・真っ黒クロスケなどが登場し、子供の心をガッチリ捕まえる点が大前提。「もしかしたらどこかにいるのでは?」と探してみたくなるような不思議な生き物たちを見たさに、子供たちは何回でも見たがる作品となっている。

しかも大人も引き込まれるシーンに満ちている。

メイが山の中をかけまわった末に出会ったトトロのおなかにボヨーンと飛び乗るシーン。

さつきとメイがバスを待っている時、となりに来たトトロが雨がポツポツと傘に当たる音を聞いて喜ぶシーン。

さつきとメイがトトロのお腹にしがみついて空を飛ぶシーン。

さつきとメイが猫バスに乗って、お母さんが入院する病院へ飛んでいくシーン。

童心に帰って体験してみたいと思うような出来事で、子供と随伴視聴するのが楽しい作品となっている。

単にメルヘンチックなだけでなく、人生の機微に満ちた名言も幾つも出てくる。

「気をつけ。メイがお世話になりました。これからもよろしくお願いいたします」(お父さん)

・・・トトロに出会ったメイが、日常に戻てきた際、誰も信じてくれなくてとても悔しがる。するとお父さんは、「メイが言っていることを誰も嘘だと思っていないよ」と優しく諭す。人間以外の存在を当たり前のように信じていることを行動で示し、子供の気持ちを傷つけないように受け止める。とかく急がせたり、しかりつけ勝ちな日常を振り返ると、子供への接し方はかくありたいと反省してしまう。

「メイ泣かないよ、えらい?」(メイ)

お留守番での寂しさに耐えられなくなり、サツキの学校へ来てしまった幼いメイ。サツキと一緒に学校から帰る際、足を滑らせ顔から思いっきり水たまりにダイブしてしまった。これまでなら大泣きするところを、メイはぐっとこらえる。お姉ちゃんに褒められたい気持ちと、学校まで来てしまった負い目から、これ以上迷惑かけたくないという気づかいの両方が混じっている。メイの健気さと成長をさり気なく示した言葉だ。

「オレ、かわりに七国山へ行ってやるから。おまえは家に戻れ」(カンタ)

行方不明になってしまったメイを必死で探すサツキ。村人みんなが探すがなかなか見つからない。お母さんの入院する七国山に向かったと確信したサツキは、自分もそこに向かおうとする。そこにカンタが、お父さんの大きな自転車を片足でケンケンして漕ぎながらやってくる。無口でろくに口をきかなかったカンタが、いざという時にさらりと男気を見せる。かくありたい振る舞いである。

「今、そこの松の木で、サツキとメイが笑ったように見えたの」(お母さん)

『となりのトトロ』ラストシーン。迷子のメイはトトロとネコバスのおかげで見つかり、事件は解決する。しかもネコバスはメイとサツキを乗せて、お母さんの病院に連れて行ってくれる。ネコバスと一緒のためお母さんには2人は見えないはずだが、母の直観が言葉になる。親子の見えない絆や、ふとした時の直感の大切さ・暖かさを作品の余韻として残した名言である。

さて今夜の15回目の放送で累積視聴率300%を突破する『となりのトトロ』。

この記録は同じ人が何度も見た結果できた大記録だ。つまり最初の映画公開では発揮しなかったが、繰り返し視聴することで新たな発見が出来る名作ゆえの記録である。

幼子が長ずるに従って見え始める機微もある。大人が結婚し、子が生まれ、子が成長するタイミングに合わせて見ることで理解できる心も散りばめられている。こうしたさり気ない振る舞いや言葉は、繰り返し見ることで新たな発見となって登場するのである。

『となりのトトロ』単体として、累積300%を突破すると共に、ジブリ映画のテレビ累積2400%にも届こうとする今夜の放送。さて皆さんは、人生のどんなタイミングに、如何なる人間関係に囲まれているがゆえに、『となりのトトロ』の中のどういう新たな発見をするだろうか。