視聴者が二極化する『ドクターX』~あなたは中毒派?or 冷静派?~

テレビ朝日HPから

視聴率断トツ!

秋のGP帯民放14ドラマを、視聴率・タイムシフト視聴率・F1数・満足度・(次回)見たい率でランキングすると、テレビ朝日『ドクターX』、日本テレビ『地味にスゴイ!』、TBS『逃げるは恥だが役に立つ』の強さが目立つ。

その中にあり『ドクターX』3話目は24.3%を記録し、今年最高視聴率ドラマの地位をほぼ固めた。プロ野球日本シリーズ「広島vs日本ハム」熱戦の余韻冷めやらぬ中で直にドラマをスタートさせる辺り、17.4%の数字をそのまま取り込もうとするテレ朝の執念を感ずる編成だった。実際2話より4.6%も上がっており、作戦は見事に成功したと言えよう。

しかし視聴率こそ極端に高いが、『ドクターX』視聴者の内実は微妙になってきている。完全にハマっている『ドクターX』中毒患者と、ワンパターンに飽き始めている冷静派の両極端に分かれ始めているからだ。

“中毒患者多数あり”

データニュース社「テレビウォッチャー」は関東1000人のテレビ視聴状況を毎日追跡しているが、これによると『ドクターX』を3話全てリアルタイムで見た人は56人。2話を見た人は64人。1話しか見ていない人は66人となった。『逃げ恥』を3話とも見た人は43人、『地味スゴ!』は30人。如何に『ドクターX』にハマっているファンが多いかがわかる。

しかも『ドクターX』を3話全て見た人の内容への評価が極端に高い。満足度4以上でかつ「次回なるべく見る」以上の人が34人。満足度5で「次回必ず見る」と両指標とも最高点の人が17人。『ドクターX』中毒患者がかなりいることがわかる。

こうした視聴者の感想は以下の通り。

「“私、失敗しないので”と“一切いたしません”のセリフはいつ聞いても気持ちがいい。一度で良いから私も言ってみたい」70歳男

「大好きなシリーズ。見終わるとすっきりする」59歳女

「大門未知子先生を見てるとスカッとした気分になれます」34歳女

「見終わった後、気持ちがいいドラマ。スカッとする」39歳女

「最後の最後にすかっとさせてくれるだろうと思った通りだった」53歳女。

「シズーン4に入っても面白さ落ちませんね。演技・脚本・演出3拍子、文句なし」64歳男

絶賛の嵐という感じだが、ハマっている視聴者はディテールについての指摘も多い。

「焦りまくる外科部長を演じる吉田剛太郎の演技が秀逸。病院長(西田敏行)のちょこっとしたアドリブも見どころの一つ」67歳男

「岸部一徳さんの悪人の演技が冴えわたっていてとても良かった」33歳男

「三佐江(松下由樹)が西園寺(吉田鋼太郎)に“つまらない男、男に捨てられた女は不幸になると思ってた?”と言い放ったのが痛快だった」37歳女

「西園寺の“御意”は声低くスマート、丁寧、かつさりげない、今までの中で一番ではないか」59歳女

シリーズ4作目ともなると、中毒患者たちの視線も鋭い。

“伸び悩み感”あり

さて同ドラマを過去3シリーズの序盤と比べると、やや気になるデータもある。3話目は日本シリーズの影響があるので除外し、初回と2話の平均で各指標を比べてみみよう。

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まず視聴率は第1シリーズから第4シリーズまで、18.1⇒22.9⇒21.1⇒20.1%と推移している。第3から第4シリーズにかけ、伸び悩み感が否めない。

満足度の場合、3.82⇒3.94⇒3.99⇒3.96。第3シリーズまで右肩上がりだったが、第4で失速している。

F1M1という男女20~34歳の年齢層比率でみると、18%⇒17%⇒17%⇒11.3%と、第4シリーズで若年層の視聴者が急減している。逆にF3M3という50歳以上では52.4%⇒53.8%⇒52.5%⇒58.9%と、第4シリーズで中高年視聴者が急増した。

十分に好成績ではあるものの、視聴者の固定化が進んでいる危惧がある。この辺りは、実は「テレビウォッチャー」モニターの声に反映され始めている。

「新鮮味を感じなかった」59歳男(初回で視聴ストップ)

「米倉涼子はかっこ良いが、だんだん敵役が歴代そろい踏み風で無理がありそう」27歳男(初回で視聴ストップ)

「マンネリ化が否めないし、すっきり感がだいぶ薄れてきた感じがする もっと新しい感じがしないとダメだと思う」29歳男(第2話で視聴ストップ)

「ストーリーも演技もくどい」33歳女(第2話で視聴ストップ)

長寿ドラマの光と影

実はテレビ朝日は、水曜9時枠と木曜8時を刑事ドラマ枠として固定している。それで人々の視聴習慣を定着させ得やすくする作戦という。制作する側にとっても、企画の目的が明確で、テーマの絞り込みや番組構成の取捨選択がしやすくなる。つまり番組の水準を保ちやすくなるという。そしてこれら2枠は、長寿ドラマが多い点も特徴だ。例えば、02年に始まった『相棒』は2クールを基本とし、シーズン15に突入している。それより前、1999年にスタートした『科捜研の女』は16シリーズ目だ。他に『警視庁捜査一課9係』もシーズン11まで来ている。

こうした長寿ドラマは、第2シリーズ以降で既に認知度が高いので立ち上げ時の宣伝が楽というメリットがある。ターゲットとなる視聴層も見えているので、時代の変化に合わせ内容の微調整も容易だ。大枠がかっちり決まっているので、新たなシナリオライターや監督に挑戦させ易く、ドラマの質を保ちつつ制作者・スタッフの育成・新陳代謝の促進がし易いという利点がある(詳細は「2016春ドラマの総括(3) “打率トップ”テレ朝に必殺技あり!」を参照されたい)。

ただし、シリーズが長期化することで“マンネリ感”“ワンパターン感”“既視感”などが強くなってくると、次第に視聴意欲は減退してしまう。例え途中で多少の脱落者が出ようとも、新たに見始める人が一定程度いれば連続ドラマの命運は安泰だが、そのバランスは微妙だ。

調査データやモニターの声は、番組の将来に対する警鐘でもある。視聴率が断トツだからと胡坐をかくことなく、“冷静派”視聴者をもう一度熱くさせるような面白いドラマを作り続けてもらいたいものである。